表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
第二章 第二の始まり。それ即ち、面倒事の増大也
15/133

落雷って言うけど実際は地面からも昇ってる



「……」


「お前……」


見上げた紅葉の顔を見る。大きな瞳は涙で濡れ、身体は目に見えるほどに震えていた。よほど、雷が苦手なのだろう。


というか、俺からは眼が暗闇に慣れているからちゃんと見えているが、紅葉からすれば突然扉が開いて、うっすらと輪郭が見える程度だろうが。


一応、そばに置いてあった電池式の壁掛けライトをつけると、俺のことがはっきりと見えるようになった紅葉が身体をビクッとさせた。


「奏、士……」


「もーー」


紅葉、と言いかけたところで、思いっきり紅葉が抱きついてきた。


「みじっ!?」


「……」


服越しに伝わる冷たい感覚。顔の位置から察するに、涙を流しているのだろう。


「…………」


俺の服を掴んで離れない紅葉と、どうすることも出来ない俺。これがイケメンの陽キャなら簡単に頭を撫でて、甘い言葉の一つでも吐けるのだろうが、生憎俺にそんな度胸も考えもない。俺にできたのは、紅葉が落ち着くまでそこに居ることだけだった。


紅葉は五分程泣いていた。五分、秒で表すなら三百秒。赤○きつねが出来上がるくらいの短い時間だが、この五分はとても長く感じた。


漸く泣き止んだ紅葉を座らせて、ついでに重政も隣に置いてやる。頼んだぞ重政。


重政は、こちらを向くと、前足を器用に折って、(おそらくサムズアップの真似)「なう」と一声鳴いた。さすがだぜ。報酬はちょい高めのおやつを用意してやる。


「さて、と」


「っーー奏士、どこ行くの?」


立ち上がった俺を止めるかのように紅葉が見上げてくる。


「ここら一帯が停電しているからな、家中のプラグを抜いてこないと危ない」


「なら、私も行く」


「は? やめとけ。お前、ただでさえ雷と停電で泣きじゃくってただろ」


「泣いてない」


紅葉は、プイとそっぽを向いた。


「いや、どう見てもn」


「泣いてない」


今度はこちらを向いた。


「じゃあこのシミはd」


「泣いてない」


まるで駄々っ子のように主張する紅葉。いや、明らかに俺の服が二箇所濡れているんですけど。これが涙じゃないとしたら、俺がピンポイントに汗をかく変人みたいじゃん。位置的に乳首に近いから、男なのに母乳染みができてるみたい。全く萌えない。むしろ、吐き気がする。


留まらせたい俺と、ついて行こうとする紅葉。膠着状態が続いたが、俺は重政にアイコンタクトでヘルプを送り、重政は理解したように頷いたがーー


「…………」


知らんぷりしてデスクの下へと戻った。あんの野郎今完全に故意だろ。今絶対伝わっていただろ。前言撤回だ。てめぇはいつもの安いおやつ食ってろ。


俺がそんなやり取りをしている間にも、涙目の紅葉は俺を見上げたまま( ˘•ω•˘ )みたいな顔をしている。


どうしよう、すげぇめんどくさい。この状況を解決出来る最も効率的な手段はどれだ!?


①.後でどうなろうと、紅葉を気絶させてから一人でやる。

②.振り払って一人でやる。

③.諦めて二人で回る。


とりあえず、①は論外だな。紅葉は思ったより力が強い。俺の体格差じゃおそらく反撃を食らう。それに、この状況じゃ明かりを消して不意打ちしようにも、パニックになった紅葉がどう動くか危険だ。②も、後々がめんどくさい。となると結局、最も効率的なのは消去法で答えーー③ 答え③ 答え③


……はぁ、めんどくせぇ。要は面倒が後回しか先にやるかの選択肢ってことかよ。後、こんな時にジョークを持ち込んでくる俺もめんどくせぇ。


「……着いてきても良いが、『邪魔はしない。騒がない。大人しくしている』この三つを守るなら許可する。なお、一つでも破った場合、お前を暗闇の中に置いていくことを覚悟しろ」


「っ……わかった」


未だ、眼に涙を浮かべている紅葉が頷く。ついでに、動く猫耳と尻尾も見えた気がする。


本当はロープか何か身体を繋げる物が欲しかったが、動くのに邪魔になるので結局、俺の裾を紅葉が掴んで歩くことになった。


手に持った懐中電灯が暗い廊下を照らすが、先は見えない。歩く度に床がギシギシなる。後で修理しないと。


「おい、やけに静かだが、大丈bーー」


言いかけた瞬間、再び雷鳴が轟いた。


「……っ!!!」


その音にびっくりした紅葉が思いっきり背中にしがみ着いてきた。


「おごっ!……」


腰に紅葉の頭が直撃して、鳴ってはならない音がした。


一瞬、離そうとしたが、ルールは一応守っているし、さすがの俺もこの状況で突き放す程鬼畜じゃないと思い、留まる。だが、紅葉がしがみつきから抱きつきに変わるくらいぎゅっとして来たので、一つ問題が生じた。


「…………」


そう、乳が当たっているのだ。悠ちゃんでは発生しない未経験の感触に、一瞬俺の思考と動きが停止する。前にも言ったが、紅葉の胸は決して小さくない。むしろ、大きい方に軍配が上がる。詳しく言うと、ブラによる圧縮を考慮して計算した結果EよりのDだ。つまり、小さなことで済ませられないのだった。大事だし大物だ。まさにダブルミーニング。なんつって。反応してくれるなよムスコよ。あの日の誓いを忘れたわけではあるまいな。……余裕で無事だった。当事者とはいえ、さすがの俺も心配になってきた。


幾ら対象は二次元限定とはいえ、エターナル童貞の俺はこういう状況に慣れていない。今は背中の触覚伝達をを意識的に切断しているから何も感じないが、今の紅葉は風呂上がりの為桃色の薄手のパジャマだ。さらに、女は大抵、寝る時にブラを着けないらしい。つまり、今の紅葉との境界線は、薄手のパジャマとおそらく着けていないであろうブラの代わりのキャミソールだけだ。下手すると、アレの感覚すら伝わるくらいだ。よかった即座に切れて!


ちなみに悠ちゃんはそもそもブラをしない。する程無いから。ついでに雷は平気なのでこういう展開にはならない。


閑話休題


今までに読んだどの本も、この展開の次は大抵ラブコメかセクハラだった。俺はそんなのゴメンだ。勘弁してくれ。


とーー


「ーーっ!いでででででででででで!!!」


紅葉の力が更に強まり、俺の腰が圧迫される。正直、下手すれば俺がコンパクトな折り畳み式 (分離可能)になりそうなくらいだ。


さすがにこの状況でイケメンだのなんだの言っている暇は無いので、紅葉の肩を叩いて気づかせる。すごく華奢だった。


あ、そろそろ意識がーー


結局、俺が気絶する前に正気に戻った紅葉が離れてくれたが、見えた顔はすごく真っ赤だった。そして俺の顔は真っ青だった。


真っ赤だな〜 真っ赤だな〜 蔦の葉っぱは今無いが〜 紅葉のお顔は真っ赤だな〜


やべぇ、新しい歌ができちまった。殆どパクリだけど。


女と二人で過ごして、夜の停電イベントとかいかにも青春ラブコメの展開なのだが、全くもってそんなことは起きない。せいぜい、俺の顔が春に青くなったくらいだ。そこで青春を取られても……


動かなくなった紅葉を放っておく訳にも行かず、いつも使っている台車に乗せて運ぶというさっきとは真逆のラブコメ要素の皆無な方法で事は進んだのだった。


「もう部屋帰って寝ろ」


「…………」


部屋に戻った俺は、紅葉を部屋に返そうとするが、全力で首を振る紅葉。


「雷、怖い、一人、無理」


何故かカタコトの紅葉。


「ふむ……一人じゃなけりゃいいんだな。なら、寝るまで隣に居るから早く寝ろ」


「……」


紅葉がポケ〜っとしたような、驚いた表情でこちらを見る。


「あ、いや、やっぱりナシで。早く一人で寝ろ」


俺は自分の台詞を再確認して痴態を晒したことを理解して、前言撤回をする。だが、


「……この際、それでいい」


「あらやだ」


紅葉さんは了承した。思わず、市○悦子みたいな台詞が出た。相変わらず俺のネタは古めである。


「……おやすみなさい」


「あ、おいコラ」


紅葉は一言言うと、モゾモゾと俺の布団へと潜り込んだ。廊下に出ることすら嫌なのだろうか。


とりあえず、布団から紅葉を引っ張り出そうと肩を掴もうとした。だがーー


「……すぅ、……すぅ、……」


「寝るの早い!」


あれほど寝れない言っていたのに布団に入ってすぐに就寝である。の○太レベルだ。これ程早いと、ただ単に自室に戻るのがめんどくさかっただけなのでは無いのかと疑う。


ぐっすり寝ている紅葉を無理やり起こす訳にもいかず、枕すら盗られた俺は結局、前に自作した『超巨大だらクッション (堕落+クッション)』要は、ビーズクッションの上で寝ることになった。重政も一緒に寝てくれたが、掛け布団が欲しかった。猫だけじゃ地味に寒い。





目を開けると、すぐ近くに紅葉の寝顔があった。


ああ、夢か。


そう解釈して目を閉じると、重政に「なう」と猫パンチされた。痛い。


……痛い? 感覚がある。つまり、これはーー


「っ!」


全てを理解してはね起きる。その際、紅葉が起きないように丁寧に。


いや待て落ち着け。俺は寝る時は確実にクッションの上で寝ていた。だが、起きたら布団で寝ていた。俺は寝相が悪い方ではない。寝ている間に布団に入るなんてことはまず無い。ならば一体ーー


と、そこであることを思い出す。


そういや俺は夜中にトイレに行った後、お茶をdrinkした。その時の俺は、あまりのexhaustionに最低限の意識を保って、後は殆ど寝ている状態だった。そして部屋に戻った俺はーー


身体中の血の気が引いていく感覚。まさか俺が寝惚けて布団に入っただとでも? いや、過程はどうあれ今重要なのは『俺と紅葉が同衾していた』という事実だ。


幸い、この家は俺と紅葉の二人だけ。落ち着け俺。動揺のせいかルー語が出ているが慌てない。まだあわてるような時間じゃない。誰かに見られる可能性はnーー


「おい奏士、朝だzーー」


ノックも無しで入ってきた悠ちゃんと視線が合う。そして、未だ同じ布団にいる俺と紅葉を交互に一瞥した悠ちゃんは微笑んで親指を立てながらーー


「奏士……卒業おめでとう」


「おい待てやコラ」


とんでもなく失礼なセリフを吐いた。


「お前がこんなにも早いとはな……今夜はみんな呼んでパーティといこうぜ!」


「誤解だ誤解だ誤解だ。 話を進めんなロリっ子」


悠ちゃんがスマホで連絡を入れようとしたところを全力で止める。


「だってお前、あんなにも人嫌いのお前が年頃の女と同衾してたら……もうそういうことだろ?」


「まず最初に出る発想がそれかー。こちとらまだ童貞だわ」


「えっ……つまり、れる前に果てた? 早漏で候?」


悠ちゃんが口元に手を当てて涙を流す。


「そもそも何もしてねぇ」


というか誤解でも酷すぎる。後、俺は早漏じゃない。そう思いたい。


「ナニもしてないのか!?」


「おうおうおう変換ミスがあるぞ」


「でも、今まで一人暮らしでヌキ放題だったのに、急に年頃の美少女と一緒に住むことになったら……そりゃあもう我慢しまくりでテント張りまくりだろ?」


「そもそも一回も張ってねえ」


「えっ……奏士はEDだったのか!?」


「ねぇ喧嘩売ってる? 朝早くから他人の家に入り込んで喧嘩売りに来たの?」


というかこの状況でもすやすや寝ている紅葉が凄い。


「第一、見ろこの布団を。一滴の血も流れてないだろ」


紅葉が寝ているが、背に腹はかえられないので布団を捲って証拠を見せる。


「成程……つまり奏士のチ○コは膜にすら届かない長さと」


「膜に届かない長さならそれはもうチ○コじゃねぇ」


後、俺はそんなに短小じゃない。膜破って口に届くくらいにある筈。挿れたことないから知らんが。


「いや、お前のナニが小さくなくて、花伝からは血が出ていない。そして、花伝え処女であることを仮定すると……」


ブツブツと呟きながら考え事をする悠ちゃんを、俺は冷たい眼差しを向け続けた。俺の聴力ならバッチリ聞こえてる。


暫く考えた悠ちゃんは、いきなり「はっ!」と声を出しながら顔を上げ、戦慄を浮かべた顔を俺に向けてこういった。


「まさかお前……初体験をア○ルで……」


「んん〜そろそろ怒っちゃおうかな〜?」


もうツッコミを入れるのもめんどくせぇ。もうヤダこの人。口を開けばネタとボケのオンパレード。そして毎回律儀にツッコミを入れちゃう俺が。


俺は、諦めてため息を一つ吐いた。


「あんたは後でシバキ倒すとして……何しに来たんだよ」


「何って……あれ、何しに来たんだっけ?」


悠ちゃんは数秒考えた後、首を傾げて俺に聞いてくる。


「知らねぇよ」


「ま、忘れたってことは大した用事じゃないんだ。朝飯にするぞ」


「いや帰れよ」


俺の願いは叶わず、悠ちゃんはさっさと食卓へと向かった。重政と一緒に。重政……お前のことは忘れるまで忘れないぜ。


気分を切り替えて、俺も朝の支度をする。紅葉は後回しで。


着替えてリビングへ行くと、飯を食ってる重政と、入る時にポストから取ってきたのであろう俺の新聞を読みながらホットミルクを飲んでいた。あの、それ俺の茨城新聞……


「おう、奏士。早かったな」


「とりあえず新聞置いてミルク飲んで帰れよ」


「母乳飲んで帰ればいいんだな?」


「″牛″のだぞ。人間は対象外だからな」


「…………」


ニヤリと笑って言った悠ちゃんのボケなのか本気なのか分からない台詞にツッコミを入れると、無言で新聞に目を戻す悠ちゃん。まさか本気? 自分の母乳は飲めないよなぁ。まだ処女だし。母乳が出る体質とかでも無いはずだし。そもそも絞れる乳が無いし。そう考えてたら思いっきり近くの岩塩を投げられた。見ないでキャッチした。素手で塊キャッチはちょっと痛かった。


「まぁそう焦るな……昨日、帰れなかったんだから……」


「は? あんたの家は学園のすぐ近くだろ」


俺は掌を擦りながら聞く。


確か、歩いて十分もかからない距離だったはずだ。幾ら外は雷と雨と風の満員御礼だったとは言え、さすがに……


「昨日は仕事で遅くなってな……帰る頃には外は嵐で傘は忘れたから無い。そして親父も母さんも昨日は仕事で泊まり込みでな……」


「ああ、なるほど」


帰る手段が一つも無かったらしい。


「あれ? いつもなら「お前の傘は頂いた!」って置き手紙を残して俺の傘をパクってるだろ。どうした?」


「傘を逮捕パクった覚えは無いが……」


「その『パクる』じゃねぇよ」


傘を盗んで逮捕は兎も角、傘が逮捕ってどういう状況だよ。


「お前の傘は昨日だけ無かったぞ?」


ふむ……あ


「もしかして……」


さっき隣で眠りこけていた一人の女を思い出す。全ての元凶あいつかよ。いや、俺が相合傘をすれば全部解決したのか? でも、俺は何一つ悪くねぇな。傘を忘れた二人が悪い。


その後、渋々悠ちゃんの分の朝飯も作り、紅葉を起こして何故か三人で学園へ向かう。あの……俺自転車なんだけど。


自転車にリアカーをつけて乗せていくことも出来ず、俺は自転車を押して歩くことになった。超非効率。


教室の席に座った途端、なんかどっと疲れた。まだ朝なのに。もうなnーーいや、これ以上は止めよう。フラグの気配。俺はフラグをとことん折りまくる男。


ふと訪れた警戒心と謎の自信をそこら辺に投げ捨てて、ブレザーのポケットに入っていたルービックキューブに意識を持っていくのだったーー




「ソージィ!!!!」


「失せろくそビッチがぁ!!!」


何故か俺は、HRで転校してきた外国人に抱き着かれるのを阻止するという謎の攻防戦を繰り広げることになった。

次回、新キャラ再び登場!!奏士の胃薬摂取量は再び増える!そして気になる人は気になる投稿日は……ちょっと前の後書きを見よ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ