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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
第二章 第二の始まり。それ即ち、面倒事の増大也
14/133

雷は恵みと恐怖を同時に齎す

「……ん、あぁ……」


朝は自然と目が覚める。今日も習慣通りに六時前に起きる。だが、今日は普段は感じない感覚があった。


「……重」


顔が凄く重かった。正確には、顔の上に何か重いものが乗っていた。


「……またお前か駄猫だびょう


「なーう」


身体を起こすついでに、顔に乗った猫を退かす。


これは、我が家で昔からの飼っている白猫♂である。名を重政しげまさ。品種は忘れた。フリーダムでマイペースな正確で、猫の癖に一匹狼みたいなやつだ。まぁ猫は基本、群れないらしいが。いつもは飯時以外はどっかに行っているのだが……


「今日はどうしたよ。いつもならこの時間は日向ぼっこの時間だろ」


「なー」


重政の趣味は、縁側で朝日が登って間も無い時間の日向ぼっこと、月の光を浴びることだった。時々、猫かなぁ?とか思うこともある。まぁ猫と月は割とセットみたいなところあるし。


「あーはいはい飯な。お前、時間くらい統一しろよ」


「にゃふ」


俺とこいつは十年以上の付き合いだ。言ってしまえば、俺生において現存する一番の古参。だからか、俺はこいつの言いたいことが何となくわかるし、こいつも俺の言っていることを理解しているように思える。


ま、長い付き合いと言っても、ある日突然ジジイが寄越したんだけどさ。


背骨を鳴らして欠伸をする。そして立ち上がろうとすると、重政が頭に乗ってくる。こいつめ、歩くのがめんどくさくなったな?


「……お前、もう成猫なんだから歩けよ……重い」


「にゃにゃ」


多分『ヤダ』って言ったんだろうな。めんどくさい。


それでも、頭から退かさずに持っていくのは俺が動物(人類の殆ど・虫を覗く)に甘いからだろうか。だってこいつでも猫って暖かいし。モフれるし。ちゃっかり対価を要求してくるけど。


ちなみに、俺とこいつの我が家のカーストは同じ。あくまで対等でいたいと思っている。


重政の朝飯を皿に盛って、食べている間に俺達の分も用意する。


「そういやお前、昨日は居なかったけど、何してたんだ?」


「(かふかふかふ)…………にゃにゃふ」


どうやらまた近所の家を回って飯を食ってきたようだ。ま、俺は食費を抑えられるし、名も知らない近所さんは猫を可愛がれるし別にいいか。


……もうちょっと飯のグレード上げた方が良いのかしら。


「なーお」


「ああ、はいはい……行ってらー」


飯を食い終わった重政は、一鳴きして俺に伝えてから出かけた。


「……あ、やべ。今日天気悪くなるから早く帰るよう言うの忘れてた」


まぁ猫だしいいか。どうせ、降る前に感知して帰るだろ。


弁当を作り終えて、紅葉を起こしに行く。


紅葉を起こしに行くの重政に頼めば良かったな。


「もーみーじーさーn」


名前を呼んだ瞬間扉が開く。反応が遅れて思いっきり鼻をぶつけた。超痛い。


「……何してるの?」


制服姿で出てきた紅葉が変なものを見る目で聞いてくる。


「いや、ちょっとぶつけてな」


「……そう」


紅葉を攻める訳にもいかず、鼻の痛みを我慢しながら食卓へ。


「「この世の全ての食材に感謝して、いただきます」」


まさかの一言一句違わず、タイミングすらズレることなくハモった。まさか同じタイミングであの台詞を口にするとは……『いただきます』は大事だよ。やっぱり。


飯を食ったら歩いて学園へ。そしてそのまま放課後ドーン!!


「……展開が早い」


「いいだろ」


紅王症候群とかそんなやつだ。どっかの邪神様も使ってただろ。


本日の生徒会の仕事は、校内の見回り。不調箇所等の検査らしい。この仕事は二人一組でやる仕事らしく、必然的に俺と紅葉で回る訳だが……


「ねぇ、あれって会長様じゃない?」


「うそ、ホントだ。生徒会の仕事かしら」


「でも、あの隣にいる人は誰かしら?」


「あれじゃない? 不良学生の更生。ほら、見た目がいかにも不良って感じじゃない」


「ほんとよね。なんであんな男が天下の会長様と一緒に……」


まだ、放課後とはいえ生徒は残っているわけで……二人でいるとこんなヒソヒソ話が聞こえてくる。と言うか俺って不良に見えるかなぁ……


「おい会長様よ。これ、どうしてくれんだ?」


「……奏士、頑張って」


「お前が未だに紹介とかやらねぇからこうなってるんだが? 確かに目立ちたくはないけど、これは逆の意味で目立っているぞ」


今の今まで忘れてたけど、俺の紹介とかいつやんの? 生徒会に入ったらなんか壇上でなんか話すらしいけど。


「……そのうち」


紅葉が別方向を向きながら曖昧な返事をする。これはやはり、


「お前忘れてただろ」


「…………」


「コラこっち向けや」


あくまで知らぬ存ぜぬを通す紅葉。


「そうか、なら今日の夕飯は青椒肉絲にするか」


「待って」


紅葉が俺の手首を掴んで制止させる。すごい力を込められている。あの、超痛いです。


紅葉は青椒ピーマンが苦手でした。この前細かくして炒飯に入れて出したら、綺麗に避けて食べてた。今度は持っと小さくしてやる。なお、パプリカも苦手らしい。


「安心しろ、ちょっとは苦味が無いようにーー」


「ほっ……」


「してやると言うとでも思ったか?」


「……(ムカッ!)」


紅葉が怒りらしき表情を浮かべると格闘技のポーズを取りーー


「……インパクト」


「ピンポイントっ!」


紅葉から頭部に綺麗なフォームでコーススクリューブローを喰らい、俺はバランスを崩して後ろに倒れた。痛みをこらえて顔を上げると、紅葉が某格ゲーの勝利時の様に、肩幅に脚を開いて拳を頭上に高く掲げていた。


と言うか、俺がすぐ下に居るのにそんなに足開いたらパンツ見えるぞ。見たくないが。


「K.O. PERFECT」


無駄に発音の良い宣言をする紅葉。


「……即死技の癖にコマンド緩すぎだろ……」


「……これはブ○ドーブレード」


「一撃死かよ……」


確かに、急所の頭やられたからな。と言うかさっきから複合ゲーになってる。ポーズはスト系なのにシステムはブシブレとかなんなんだよ。企業コラボ? あんな狭い横移動で一撃死とかすぐ終わるぞ。ちょっとやりたい。


と言うかおかしい、俺は何もしてないぞ。


「よっと」


とにかく、いつまでも廊下で寝ている訳にもいかないので、反動を利用して飛び起きる。


「……奏士、前にも思ったけど、結構身体能力は高い?」


「そりゃ、毎日運動してるからな。普通の人でも練習すれば出来る」


ま、俺の場合は昔見てた本でキャラがこうやって飛び起きてたのを見て『カッケー』とか思って、練習してたらできるようになったんだけどさ。案外バカも馬鹿にできないものだよね。


「奏士の紹介は、纏めてやる予定だから大丈夫」


「纏めてって何時だよ」


「……後二人集まったら?」


「このペースだと永遠にやらねえだろ」


一人増やすのに最低二年はかかっている。そして、俺は生徒会が勧誘とかしているとか聞いたことがない。俺だって、悠ちゃんにドナドナされなければ入らなかったからな。


でも、一応やるらしいので、さっきのことはそこら辺に投げ捨てておいて本来の仕事へと戻る。


「切れた蛍光灯の補充に花壇の整備、掃き掃除にその他諸々……なぁ、この仕事って美化委員の管轄じゃねえの?」


紅葉に『予定表に目を通しておいて』と言われて渡された紙を見てみるが、どうにも俺の仕事には思えない。


「基本的には美化委員の仕事……でも、生徒会も手伝うことになってる」


前に読んだ記事には『皆に慕われる生徒会なんてのは妄想です。本当は裏方の雑用係です』って書いてあったけど、あながち間違ってなかったんだな。いや、紅葉こいつは皆に慕われているみたいだけど。皆紅葉これの本性知らないんだろうな。いっそ公開してやろうか。


そんなこんなで目当ての部屋に着いた俺達。なんでも、蛍光灯が同じタイミングで切れたらしく、至急、交換して欲しいとの事。『自分たちでやれよ……』と思うのは俺だけじゃないはず。


俺が脚立に乗ってやった方が手っ取り早いのだが、安全面を考慮して紅葉が上で交換、俺が下でサポートすることになった。


「奏士……」


「はあふっ!」


「……」


紅葉に呼ばれて返事をしながら上をむくと、すぐ目の前に蛍光灯が迫っていた。普通に直撃した。しかも、尖ってる方が鼻根の、あの、眼球と眉の間の凹んでいる部分に、両方ピッタリと……


「て、てめぇ……さっきからわざとやってるだろ……」


「不慮の事故。これは、誰も予想しえなかった偶然の連続」


「いけしゃあしゃあと……」


痛い。今まで感じたことの無い痛みに冗談すら言えない。なんか涙出てきた。これがドMだったら喜べるんだけど……生憎、俺はそこまでじゃない。後、暴力とか痛めつけられるのは苦手です。痛めつけるのは好き。あ、合意の上でだよ? あとは相手から仕掛けてきた時に完膚なきまでに返り討ちして、徹底的に心を折るのも好き。


二度目の痛みを堪えながら、仕事は進んでいく。途中、脚立から落ちそうになった紅葉が俺の腹にヒップドロップして、トドメと言わんばかりに鳩尾に肘をめり込ませられたり、花壇整備中にボールが飛んできて避けたらボールの先に花壇があってはねた土が口に入ったり、紅葉がまた虫を持って近づいてきたりしたが、それでも変わらず進んでいく。ねぇ、俺不憫過ぎない? とりあえずあの野球部許さん。


なんてことがあって、生徒会室に戻る頃には俺はボロボロだった。重労働はしてないはずなのに、どっと疲れた。身体中が痛い。


「なぁ、俺もう帰っていいか?」


「……仕事は終わらせたから、もう終わりにする」


良かった。これで『仕事が残っているから、帰っちゃダメ』って言われたら逃げようかと思った。実際、ちょっと椅子から腰を浮かせて鞄の持ち手を握ってた。


「それじゃ、お疲れ様でーす」


「お疲れ様」


終わりの挨拶をして二人同時に立ち上がる。何故か、昇降口に行くまでも並んで歩いて。


「今日の夕飯は炒飯でいいよな?」


「……青椒は入れちゃ、ダメ」


紅葉は、俺の方を向いて両手の人差し指をクロスして✖を作ると( ˘• ▵ •˘ )みたいな顔を作る。


「そこら辺は気にするな」


「……だったら、いい」


話を終えて靴を履くと、外は雨が降っていた。……俺よく気づかなかったな。


「……傘、持ってない」


「そうか、じゃあ濡れて帰るこったな」


そう言って俺は持ってきた傘を広げる。そして帰ろうとしたのだがーー


「待って」


紅葉に肩を掴まれて制止させられた。


「離せ紅葉」


「私は傘を持っていない。そして、この雨だからかなり濡れる」


「……つまり」


「そう、傘を貸して」


紅葉は頷いて肯定する。だけどな……


「丁重にお断りさせていただきます」


俺は態々頭を下げてお返事を。


「!??」


紅葉が驚きの表情を浮かべ、落ち込んだ。紅葉の後ろに『ガガーン』って文字が見えた気がする。


「そう、わかった。ならせめて入れて」


「それこそ嫌だ。大人しく濡れ透けの羞恥を受けるながら帰れ。そして男どもに視姦されるがいい」


「こんないたいけな絶世の美少女にそんなことさせるつもり?」


ちょっとイラッとくる言い回しだが紅葉よ、お前は一つ勘違いをしている。


「いいか?紅葉、いたいけな絶世の美少女っていうのはうちの『いもうと』のことを言うんだ。いや、『絶世の美少女』なんてちんけな言葉じゃいもうとの細胞一つ、素粒子一つ表せない」


あれは人智を超え、最早生物の垣根を超えた超常現象的存在。言葉に表せる中で最も近いのはそう、


「うちのいもうとは『天使』とか『女神』とか『聖女』とかそれ以上のレベルだ」


「奏士……それはシスコンを超えて病気……雨に打たれてないのに風邪でも引いた?」


「ばっかお前、俺如きがシスコンなんて恐れ多い」


割と本気の否定をするが、紅葉は割とマジに引いてる。なぜだ?


「そんなんで、今日は濡れて帰って下さいお願いします。風呂沸かしとくからそれで我慢してくれ」


「むー……」


紅葉は、少し不機嫌な表情を浮かべたが、諦めたのかため息を一つ吐き、


「……だったら、この際相合傘で我慢する」


「言い換えただけで変わってねぇよ」


諦めねぇなこいつ。それに、また変な噂たつの嫌だし。それに、俺と相合傘をして帰ったなんて知られたら、こいつの名誉とか沽券に関わる。俺は他人に迷惑をかけないダメ人間でいたい。


「…………」


紅葉がとうとう落ち込んだ。女のプライドとかそういうのが塵になったようだ。


…………なんだろう……この謎の罪悪感は。すげぇ何かが痛い。


数瞬の思考の結果、どうやら、この痛みを消す方法は一つしかないようだ。


しょうがない。ここは、俺が折れるとしよう。


「わーった、わーったよ。傘貸してやるからその顔をやめろ」


「……ありがと」


紅葉はお礼とともに微笑んだ。やはり、まだ少しなれないなぁ。


「最初から素直に渡せば良かったのに……奏士は、ツンデレ?」


「そうか、やっぱり傘はいらないのか。じゃあまたn」


「ごめんなさい貸してください許してくだちぃ」


傘を取り返して帰ろうとする俺の腕を紅葉が両手で掴んで離さない。あの、それすげぇ痛いんですけど。あ、爪くい込んでる。肘窩ちゅうか?にくい込んで痛い。制服越しでも痛い。


「お前も余計な一言さえなければいいのに……」


「それは、奏士も一緒」


そういうと紅葉は俺の傘を広げる。


「……大きい」


「そりゃ、男向けだからな」


紅葉は小柄な方でも無いが、あと一人くらいなら入る大きさだ。


「……でも、この傘を使ったら、奏士は濡れる。……入る?」


「その辺は心配すんな」


そう言って俺は傘立てに戻る。その中からーー


「俺にはまだ傘が残っているからな」


そう、置き傘が残っている。俺は用意周到なのだ。


「……」


だが、紅葉はそんな俺をジト目で見てくる。


「んだよ。何か文句か?」


「奏士……二本あるなら最初から……」


「だって置き傘使ったらまた持って行く必要があるだろ。めんどいから極力避けたい」


俺がそう言うと、紅葉は傘を閉じて降って水を切り、先端を俺に向けてーー


「……せい」


思いっきり突いた。


「何をする」


だが、そこは俺。難なく避ける。


「……」


紅葉は二度三度突いてくるが、それも難なく避ける。


「なんだなんだ今日のお前は。そんなに気分をコロコロ変えて。……生理か?」


「……」


紅葉は突きを止めて、右手で傘の中間を持って回し始めた。あの、それ俺の傘……


「……ライトニ○グランス」


「なんなんだよ今日のお前」


紅葉の繰り出した必殺ファンクションを傘を持っていない右手で掴んで止める。


「別に……セクハラをしてきた無礼な男に粛清をするだけ」


「お前も《女》という立場を利用したセクハラをしたと思うのは俺だけかなぁ……」




その後、役十分の攻防戦を昇降口で繰り広げた俺達は、ようやく帰路に着く。不機嫌な紅葉は、手持ちのチョコクッキーで大人しくさせた。で、今食べながら歩いている。両手が塞がっているので、俺が二本傘を持っているが。


その後、『どちらが道路側を歩くか』というなんとも醜い戦いが怒ったりもしたが、無事、家に着く。


いや、無事なのは紅葉だけだ。俺はーー


「ぶえっくしょい!」


「奏士……風邪?」


「てめぇいけしゃあしゃあと」


全身がずぶ濡れになっていた。幸い、鞄は濡れなかったが、顔も、髪も、制服も何もかも濡れてぐっしょりだった。水を吸った制服はとても重い。


帰り道の途中、車に思いっきり水をかけられたのだ。それを、紅葉が俺を盾にしたのでこうなった。当の本人は殆ど濡れてない。


「風呂沸かしてくるから、これで拭いて待ってろ」


そう言って、俺はバスタオルを紅葉に渡す。少しとはいえ、風邪でも引かれたらたまったもんじゃない。


「ん……くしゅん」


紅葉は、くしゃみまでも抑揚が無かった。


風呂のスイッチを入れ、俺は身体を簡単に拭いて、着替えるだけして頭にバスタオルを巻いて床掃除だ。濡れ鼠のまま歩いた床はびしょびしょだった。水で足跡ができてる。こうしてみると、やっぱり俺と紅葉の足って結構な差があるな。


『〜♪ お風呂が湧きました』


風呂が湧いたことをあのなんとも言えない曲? 歌? が知らせる。まずはレディーファーストってことで。いや、風呂場に虫とか入ってきてたら嫌だから、紅葉に犠牲になってもらおうかとね。これが本来の意味でのレディーファースト。


それにしてもいやほんと、最近勘違い地雷女が多い。この前クラスでも、

『最近の男はレディーファーストがなってないわー』

なんてことを言っている女が居たが、レディーファーストの由来は男をたたせて自分は身を引いておくだとか、主人の前を歩いて盾になるとかそういうことだぞ? まずお前たちは『レディ』じゃない。『ベティ』だ。つまり『ペティ』だ。それに、お前ら男をたたせるとかできないだろ。男を勃たせることは出来るかもしれんが。ビッチだし。……あれ、なんか話がズレてきた。


「入っても大丈夫だぞ」


「ん、行ってくる」


着替えを持った紅葉がサムズアップしながら洗面所へと消える。が、すぐに扉からひょこっと顔を出した。


「……覗いちゃ、ダメ」


「風呂と一緒に頭も沸いたか? もう一度雨で冷やしてこいよ」


「……へっ」


紅葉は俺に向かって嘲笑をすると、音もなく扉を閉めた。あの野郎絶対許さねぇ。台所の主を敵に回したことを公開するがいい。


紅葉が風呂から上がる時間はおおよそ把握してある。それに合わせて夕飯を出すために、俺はとある場所へと向かう。


それは厨房。祖父祖母両方とも料理に関わることをしていた為、我が家には大きな厨房と多種多様な道具がある。無論、業務用大火力コンロも。


愛用のエプロンを装着して棚から中華鍋を取り出し、炒飯の準備をする。普通のフライパンじゃなくて中華鍋で作るのって楽しいよね。


食材を刻んで炒める。ただそれだけの短時間調理なのにすげぇ美味いし、結構な量を作れるから便利なのです。冷蔵庫にタッパーで入れておけば冷えてもそのまま食えるし。俺は冷えてもピロリしないでそのまま食うタイプです。


……うん、前に某二コマ漫画で読んだけど、レンチンをピロリって言うのはやっぱり無しだな。


作り終えて皿に盛ると同時に、風呂上がりでホカホカの紅葉と、抱えられた重政が厨房の暖簾から覗いた。


「くぅぅぅ〜」


「なー」


「はいよ、今できたぞ」


紅葉のやつ、腹を鳴らすなんて器用だな。


できた炒飯と、中華スープを食卓へと持って行く。紅葉と重政は、真っ先に座っていた。


重政の皿に飯を盛り、配膳を終えたら食事開始。


「「いただきます」」


「なーう」


両手を合わせて感謝の挨拶を。重政は鳴き声を。


紅葉は、まずは炒飯へとレンゲを伸ばし、掬おうとした瞬間、手を止めた。


「奏士、小皿ある?」


「そう言うと思って、ほれ」


予め用意しておいた小皿を紅葉に手渡しする。やはり使うか。


受け取った紅葉はそのままーー


「……」


前より細かく刻んだ青椒をレンゲの先っちょを使って器用に素早く小皿に移していた。


「食えよ」


「……いや」


だろうね。やっぱり使うと思ったよ。今度は気づかれない自信があったんだけどな。色まで炒飯と同化させて、匂いもカモフラージュさせたのに。


結局、青椒は俺が食べ、重政はちゃんと全部食べてた。もうちっとこの猫を見習って欲しいものだ。


「さて、そろそろ戻るぞ重政」


「にゃふ」


重政が俺の頭の上に乗る。外は雷が鳴っている。重政は雷が苦手なのでこういう時はすごく大人しい。


「それじゃ、お前も気をつけろよな」


「ん、気をつける」


紅葉と別れて俺達はお互いに自室へ。今日は見ているアニメは無かったはずなので、久しぶりにアレをやることにした。


と、俺が準備をしようとすると、いきなり家の電気が消え、一拍遅れて雷鳴が轟いた。


「ふにゃぁぁぁん!?!?」


「うおっ」


俺は、落雷よりも重政の声にびっくりした。重政が超飛んでた。


驚いた重政は、俺のパソコンデスクの下へと走って隠れる。あのちょうどいい狭さがお気に入りのようで、時々居るのを見つける。完全に丸まっているので、暫くは出てこないだろう。


とりあえず、窓から外を見てみるが、そこら一帯が停電しているから家中のプラグを抜きに行かないと。パソコンは、予め保存しておいたから直ぐに抜ける。まじでやめて欲しい停電。


と、部屋を出ようと襖を開けた瞬間、寝巻きを着て立っている紅葉がいた。

さぁ、久しぶりの二部構成。次回もお楽しみに!

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