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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
第二章 第二の始まり。それ即ち、面倒事の増大也
12/133

引越しの準備は余裕を持って終わらせろ

〜〜引越しの荷造りの日〜〜


今日は土曜日。次の日も休みという週五日人類にとっては最高レベルの日。でゅほっw半ドンとは言え土曜も授業とかマジ勘弁でござる。


……ダメだこいつ。きめぇ。


それはそうと、一向に紅葉から手伝いの妖精が来ない。そんなもん操れんのかあいつ。正しくは″要請″である。


いつものように甚平姿でスマホを片手にパソコンの画面と向き合っていると、とある事実に気付く。


「やっべ、連絡先教えてねぇわ」


俺が思わず声を出すレベルのうっかりだ。いやだって……個人情報大切ですし?おいそれと人に明かして漏れたら大変ですし?お寿司?久しぶりに食べたくなったですし?イカが好き。


……なんだったんだ今の流れは。


とりあえずこっちから連絡先を調べるしかないか。


と、学園情報ファイルを開こうとすると、スマホの着信音が自室に鳴り響く。メールでは無い。この曲は電話だ。


画面を見ると知らない番号だ。俺の登録は数える程しか無く、他には誰にも公開してないので多分迷惑系とか中国語とか韓国語を延々と聞かされる系のやつだろう。そういうたぐいは出ないの最適。何言ってるか全然わかんねぇし。


とりあえず、番号検索をしてみる。が、特にこれといって出てこないのでスルー。


とりあえず切ろう。


そう思い、拒否を押そうとし、指を動かしたーーのだが、スマホを滑らせ、間違えて応答を押してしまった。


まずいな。とりあえず、一通り聴いて上手く逸らして切るか。


『ーーはい』


『もしもし、紅葉』


『は?』


なんと、電話口から聞こえてきた声はまさかの紅葉。教えてない、知らない筈の紅葉さん。紅葉の名を語る偽物とかでは無い、恐らく本物の紅葉。


『てめぇなんで俺の番号知ってやがる』


『理事長が教えてくれた』


紅葉は、いつものように抑揚も無く答える。


あんのロリババア次会ったら幼児退行して涙目で懇願する位嫌がらせしてやる。俺には個人情報保護とかプライバシーとかは適用されないの?


『成程、とりあえずあの理事長は後でシバくとして……何用だ?』


『引越しの、荷造りの手伝いの要請。……今、空いてる?』


『今か……空いてる』


予定帳を確認してみるが、今日は特に用事もない。家のことは朝済ませたし、特に買うものも無かったはずだ。


『それじゃあ……住所送るから、私の家まで来て貰える?』


『分かった。何か必要なものは?』


『軍手と……飲み物とお昼ご飯』


『軍手と飲み物はわかるが、別に昼飯は要らなくないか?既に食ったぞ』


『奏士のじゃない。私の』


『自分で買えボケが』


くぅぅぅぅぅぅ〜


『…………』


『…………』


俺のツッコミが終わると同時に、電話の向こうからお腹の音が聞こえて来た。そして、両者固まった。


『……腹、減ってるのか?』


『今のは私がやった声真似』


『くたばれボケナス』


音は似ていたけど、それが故にイラッとくる。


『奏士、口が悪い』


『少なくとも今の原因はおめぇだ』


俺は自分の口が悪いのは自覚しているが、今この状況下において俺は殆ど悪くない気がする。


『お腹すいているのは本当。昨日から』


『俺が言うのもなんだけど、飯はちゃんと食え』


『とにかく、ご飯please』


『わかった、わかったから。すき家で味噌汁とチー牛買ってから行くから。金はお前の家行ったら貰うぞ』


『奏士……』


『なんだ?』


『私、豚汁派』


『知らねぇよ』


どっちでもいいだろうが。


『後、大盛りで』


『意外と食うのな。とりあえず、十五分くらい待ってろ』


その言葉を最後に通話を切り、服を着替えてチャリに乗る。


行く途中にすき家寄るのも忘れない。


ハンドルにセットしたスマホの画面に表示された住所を頼りに紅葉宅へと向かう。着いた場所は意外と大きかった。表札とか。


ピーンポーン


呼び鈴を鳴らすと、パタパタパタ……という足音と共に、微かな声が聞こえる。


『……はい』


「俺だ。奏士だ」


『今、開けるね』


ガチャッという音と共に玄関の扉が開く。そこに居た紅葉の服装は動きやすいTシャツだけだった。下はショーパンすら見えない。ついでに、光を反射して白く輝いているサラサラの銀髪は、何時ものロングではなく、現在ポニテになっている。


「すんません、間違えました」


「待って、ここであってる」


俺が即座に引き返そうと方向転換すると、紅葉に肩を掴まれる。


『……痴女?」


俺がそう言うと、紅葉は顔を赤くして、シャツの裾を下へ引っ張って隠そうとするーー仕草とかは全く無く、むしろ堂々としている。


「荷造りするのに、動きやすい格好」


「合理的だなぁ」


そういうの悪くない。それと、普通は恥ずかしがるものなんじゃないのだろうか?やはり、こいつはどこかおかしい。


「とりあえずはよ入れろ。玄関先でこんなことやってる時間はないぞ」


「……ご飯は?」


「ほれ」


紅葉にすき家の袋を渡してやる。紅葉は目を輝かせた。お腹の音が鳴っている事は無視して。


「入って」


「おじゃましまーす」


「邪魔するなら帰って」


「関西人かてめぇは」


今回も、紅葉のボケはスルーできなかった。


「……3-4-3-2」


「は?」


紅葉が何か言いだした。


「奏士の評価。ツッコミが甘いのと、発音のボケに突っ込まなかった」


「だったらいきなりのファ○通クロスレビュー方式の採点はやめろよ」


しかも総合で12点とか辛口過ぎる。これは信頼度高いですね。


人間高い評価よりも低い評価の方が信じられるって虚しいな。


ゴタゴタしつつ、ようやく家の中に入る。物が整いつつ、散乱している。文字にするとすげぇ違和感。


「こりゃ……最低限の足の踏み場しかねぇな」


そこら中にタペストリー、書籍、グッズ。正しく物コンボ。略すならタキッズコンボ。何か強そう。多分ベルト付属限定とか一枚ずつ別売り限定。もしくはカンドロ付属。あれ集めるのに苦労したなあ……後で総合セットが発売された時はちょっと落ち込んたけど。というかカンドロ付属はコアじゃなくてセルだった。


「これでも片付けた。それでも、まだ残ってる」


「これで片付いてるなら、お前はどれだけ溜め込んだんだよ……冬眠間近か」


「とりあえず、そこの本系からこのダンボール箱に入れて。ちゃんとわかってるよね?」


紅葉は、大量のダンボール箱を取り出した。すごく…大きいです…ダンボール箱が。後、それを持っている紅葉がプルプルしている。重いんだろうなぁ。持ってやらないけど。


「ちゃんと背表紙揃えて、順番に、丁寧に入れるから安心しろ」


「なら安心」


そう言い残すと、紅葉は別の部屋へと消えていった。たぶん、私服を片付けに行ったのだろう。


俺は言われた通り、大量の本を片付ける。紅葉もお年頃。R18な本が出てきても俺は気にしないで見なかったことにしてあげよう。


「先ずは……ジャ○プか」



食戟にト○コ、ニ○コイにゆらぎ荘……統一性が無いな。サ○デーとかマガ○ンの漫画も多いな。


次は予想通りまん○タイムか。これは……別に言う必要ないか。


とりあえず、色々他にもあったが、紹介は省いて漫画はこれで終わり、と。次はラノベだな。


FにMF、HJ……他にも多数。あ、やっぱりあった美少○文庫。


やはりエロラノベは見つかったが、俺も持っているのでスルーする。同人誌とかもあったけど、スルーする。後は、一般書籍をしまって本はおしまい。


それから、俺はとにかくしまった。紅葉のオタグッズも、エッロイアレも、物の内容は気にしないように。とにかく無視して整頓した。数時間経過した頃には部屋はダンボール箱の山になったが、綺麗になった。ちゃんと足の踏み場が余分にあるし、なんならここでゴロゴロできるくらいには綺麗になった。しないけど。


というか、気がついたら普通に掃除してた。はっ!としたら手にクイックル○イパーとハンディモップが握られていた。


『奏士……終わった?』


扉をノックする音と、紅葉の声が聴こえる。


「紅葉か、終わったから入っても大丈夫だ」


「……私の家って、こんなに広かったっけ?」


「掃除の後は、皆そんなもんだ」


実際、大掃除とかすると、驚くような変化を見つけたりする。無くしたと思ってたナイフとか。


「今日は、ありがとう……もう、こんな時間」


窓の外を見ると、燃えるように赤い夕焼けは殆ど沈み黄色くなり、星の煌めきが見え始めるようになっていた。


「すっかり暗くなったな……とりあえず、俺はもう帰るわ。洗濯物干しっぱなしだし」


今は秋冬では無いので、濡れたように冷たくなるとかは無いだろうが、干しっぱなしだと防犯上とか色々危ないのだ。それに、花粉とかも付着するし。


「本当に、ありがとう……バイバイ」


「そんじゃ」


紅葉が少し微笑みを浮かべながら手を胸の辺りで小さく振る。とても分かりづらい表情の変化だったが、確かに笑っていた。俺は、なんだかいたたまれなくなって、即座に靴を履いて家を後にした。


もうすぐ、紅葉との共同生活が始まる。正直、この俺がまともにできるとは思えない。ぶっちゃけ、今すぐにでも別の場所を見つけて変えて欲しい。


だけど不思議と、紅葉との生活は少し楽しみにしている自分が微かながらに居た。少しで微かなのだから本当に微量なのは気にしないでおく。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今日は紅葉が引っ越してくる日である。


一応事前に間取りから部屋を決めてもらっている。一応最低限の掃除はしておいたので大丈夫だとは思うが……


ピーンポーン


チャイムの音を聞くと同時に飛び起きる。別に楽しみにしてるとか待ち侘びてるとかじゃなくて、密林でポチッたやつが今日届くのだ。


『はーい』


玄関を開けると、業者が居た。ついでに、先に来て待っていた紅葉も居る。


「それじゃあ、お願いします」


「「「了解しゃっしたー」」」


業者の兄さん達のハモリで開始した荷物の受け渡し作業は、滞りなく終わった。そこまでは良いのだが……あいつら帰りがけに


『二人とも、同棲?お若いねー……ちゃんと避妊はしなよ?』


とか言い残して帰っていきやがった。後ろで残りの兄ちゃん達がニヤニヤして、怨嗟の念を発していた。だが、こっちだって好きでやっていることじゃ無いのだ。


見送って、中に戻ろうとすると、不意に袖が引かれた。紅葉が俺の袖をちょいちょいと引っ張っていた。


「んだよ。伸びるからやめろ」


「奏士……襲うの?」


「は?何言ってんだお前」


「さっきの人から聞いた。男は気にしないようにしていても、そのうち襲ってしまうから気をつけろって」


あいつら上に連絡してクビにしてもらおうかな。


とにかく、一緒に暮らす以上紅葉に釘を指しておかなければならない。


「いいか、俺はお前に対して性欲を抱くとかは無い。その逆も然り、だ」


「必要最低限のマナーとルールさえ守ってくれれば、俺はお前をどうこうする気は無い」


「俺は、何かされなければ基本は手を出さない。だから、お前が何もしなければ俺は何もしねぇよ」


何もしないよりも、何かすることは良い事だと良く言う。だが、それで取り返しのつかない事になったらどうしようもない。過去は変えられないのだから、何もしないで何も起こさない。これが、平穏に生きる鉄則。まぁ、全て回避か事前潰ししておけばいいんだけどさ。


もし、原因はどうあれ、俺が紅葉に手を出した時点で、『俺が紅葉を襲った』という事実は消えない。真実はどうあれ、その事実は一生付き纏う。そんなのはお互い御免だ。


そのことを告げると、紅葉は納得してくれると思ったが……


「……?」


頭上に? マークを浮かべていた。


「奏士……不能?」


「いきなり失礼だなこいつ」


まさかの不能呼ばわり。泣けてくる。いや、もし俺が風俗行っても勃たない自身がある。ソースは前に悠ちゃん達の裸体を見てしまったことがあったが、お互い大した騒ぎも無く、


『……悪い』


『はよ閉めろよ』


という会話しか無かった。もちろん、その時に我が息子はピクリとも反応しなかった。むしろちょっと萎えた。


というか、あれは俺悪くない。夏場で「汗かいたからシャワー借りるぞ」と言って、人ん家の風呂場勝手に使った挙句、風呂上がりに首にタオルかけただけで徘徊している方が悪い。


ついでに、悠ちゃん俺ん家来すぎ。元々祖父の家だったから、おじいちゃんちに遊びに行く感覚なのだろうが……自分家帰れよ。ご両親が心配してたぞ。昔の話だけど。今となっては、帰りが遅くても「ああ、奏士君の家に居るか飲んでるな」って思っているらしい。それを告げられた俺はどうすれば良かったんだ?


「いきなり不能呼びとか、喧嘩売ってんのか?」


「だって、奏士はおかしい」


まったく、俺のどこがおかしいとーーどこもかしこもか。でも、まともな部分はあるよ?多分。少なくとも生徒会一まともな自信がある。そこ、どんぐりの背比べとか言わない。後々わかるから、こういうのは。


「こんな美少女と、一緒に暮らすって事実を前にして、一切の無反応」


「鏡見て物言え」


そう言って、玄関に置いてある鏡を向ける。


「大丈夫、美少女が写ってる」


「この鏡で殴り飛ばしてぇ……」


大きな男が鏡を振りかぶって。略しておお振り。怒られそう。


「いいか、俺はお前に興味は無い! 例えるなら、肥えてオイリオな薄毛のおっさんの裸体で興奮しろって言うのと同じだ」


「私=おっさんの裸体は不愉快」


「先はお前だ」


こうして戦争は起きるんだろうなぁ。


「……むぅ」


「なんなんだよさっきから」


紅葉はさっきから微妙に不機嫌だ。それも、自分がなぜ不機嫌なのか理解が曖昧なのだろう。


「手を絶対に出さない宣言は……安心するけど、ちょっぴり虚しい?」


「俺はどうすればいいんだよ……今すぐお前のパンツ剥ぎ取って仮面装着して嗅ぎまくればそれで満足か?」


完全に変態仮面である。でも、俺は正義の味方でも無いし、正義は俺の味方じゃないどころか、完全なる敵になってしまう。


というか、紅葉がスマホでサツに電話しようとしている。


「もし、そんなことをしたら……一生をHey! の中で過ごしてもらう」


「塀の中だろ。なんだその陽気なラッパー集団」


そんな集団に囲まれて一生過ごすならまだ塀の中の方がマシだ。多分。


「もしくは、切る」


スマホをしまった紅葉が、今度は取り出した西洋剣を抜く。


「おいそれどこで見つけた」


「靴箱の隠し扉にあった」


もしも何か会った時にそこいらに隠しておいた模造武器の一つをこいつに見つけられるとは……と言うか、そこの扉は見つからない自信があったのに……


「つーか何を切る気だ」


「ナニを切る」


途端に、ムスコがヒュっとする。


「やめろよ。俺はまだ別れを告げる気は無いぞ」


「どうせ、使う機会なんて無いんだから……別にいいよね」


「よくないよ?」


だから止めて。早く納刀して。そして元に戻して来なさい。


「とにかく、もし誘惑とか夜這いとかしてきたら追い出して入出禁止にするからな」


「寝言は寝てから言うのがルール」


「生憎、こちとらそうそう簡単には眠れないんでな」


そんなことをぼやきつつ、愛する我が家へと戻る。


紅葉は、これから引越しの後片付けをするので暫くは部屋にこもっているだろう。間取りは教えてあるから部屋の紹介も無用。となると……裏の畑にでも行くか。


一応、紅葉に裏にいることを伝えて出る。我が家は前にも言った通り広い。庭も広い。だったら余りあるスペースの有効活用として、家庭菜園をやってみた。主に食費減額目的で。


畑は、大きなビニルハウスを置くようなサイズは無いが、それなりに広く作ってある。毎日せっせと世話をして、採れたてを冷やして食べると美味いのだ。難点は俺が虫嫌いだということ。まぁ、家に入ってこないなら別に平気だから、ギリギリ何とか対応できているが。


外の虫は別にいい。虫の住処だから。畑を荒らすなら全力で排除するし、そこら辺は俺と虫の戦ってわけで、セーフ。だが、家の中に入って来るなら話は別だ。ここは俺の住処。俺のテリトリーだ。随意領域だ。ここに無断で入るもの、皆同じく滅されよ。だから我が家は虫退治に全力を出す。


そんなことをブツブツと述べている俺は今ーー


「おい、ほらあっち行けよ……ほら!こっち来んなって!」


芋虫と格闘していた。両者一歩も譲らない戦い。芋虫移動しまくってるけど。


一応、俺も使い捨てのゴム手をしている。しているんだけど……触りたくない。


「……奏士、何してるの?」


「んぴっ!? も、紅葉か……」


「んぴ?」


「気にするな。それで、何用だ?」


「作業終わったから報告しようと思って……そしたら奏士がーー」


どうやら芋虫という小さい大物と戦っているうちに、結構な時間が過ぎていたようだ。


と、俺の状況を察したのか紅葉が、縁側のサンダルを履いて近付いてくる。


そしてーー


「はい」


あっさりと、戸惑いも、躊躇も無く、素手で芋虫を捕まえてくれた。


「……あざっす!」


思わず敬語になった。


「…………」


紅葉が何か考えるように、俺と手に持った芋虫を交互に見る。


「…………っ!」


何やら閃いたようだ。紅葉はほんのり笑顔を俺に向けてくる。そして俺は危機を察知してその場から立ち去ろうと立ち上がる。


「待って」


「だったらそれを置け! そして手をソープでよ~~~~~~く洗って除菌してから来い!」


立ち上がった俺を追いかけるように紅葉は芋虫ごと近寄ってくる。それはもう猛スピードで。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!それを今すぐ捨てて来い! そして二度と俺に近寄るな! こっち来んなァァァァァ!!!」


「大丈夫、怖くない怖くない。奏士のそれは同族嫌悪。同じ虫けら同士仲良くしなきゃ」


「同じ虫けらでも俺は人間族だバカタレェ!!お前これ以上追っかけて来るなら飯抜きか今すぐ追い出すぞ!!」


全速力で走り回る俺と紅葉。笑顔で虫を持ちながら追いかけてくる狂気の紅葉と殆ど涙目で全力で逃げる俺。


走り回る男女というのは、傍から見れば大変仲睦まじく、イチャついてるカップルの定番なのだか……実際は笑顔で嫌がらせをしてくる性悪と必死でそれから逃げる被害者という夢もクソも無い現実。なんだよ。女の子と同居とかラブコメの定番じゃないのかよ。そりゃあ当人に問題があることも理解してるけど、ラブコメの神ってバカなの?こんなもんラブもコメディもないじゃん。


とにかく、一刻も早く紅葉バカから逃げる必要がある。


俺は、全力ダッシュの勢いを利用して、三角飛びで塀に登る。


「ちっ」


紅葉が舌打ちしたが、構わず逃げる。


塀に飛び乗った俺はそのまま上を伝って木に飛び移り、幾つかの木を伝って屋根に移動する。


「カーーーーっ!」


屋根の上から紅葉に威嚇する。流石の奴も片手じゃここにはこれまい。


紅葉は凄く悔しそうにこっちを見てる。あ、芋虫めっちゃ遠くに投げ捨てやがった。ごめんなサダルメリク(芋虫)


「おい紅葉、さっきも言ったがその手を良く洗浄して来い。ついでにその心も洗浄してこい。そしてできるなら二度と戻ってくるな」


「……」


紅葉は至極残念そうに中へ戻っていく。そんなに俺が嫌いか。俺も嫌いだ。


その後、しっかりと洗浄させた紅葉と飯を食った。最初は当番制にしようかと思ったけど、ちょっとやらせてみたら点でダメだと言うことがわかったので、変わらず俺が全てやることにした。今までどうしてたんだと聞くと、


「今までは……外食か出来合い。後は宅配が多かった」


それを聞いて、不摂生の結晶たる俺も、流石に見逃すことは出来ず、しっかりと飯を食わせることにした。ちなみに、お菓子だけはずっと作って来たからまともにできるとの事。その実力は後々。


「ふい〜~~~」


そして俺は今、湯船に浸かっている。


流石の俺も……というより俺だからか、今日は疲れた。


こんな時は風呂に入ってリセットするのも手だ。そして俺は意外と風呂が好きだ。一人風呂限定だけど。温泉とかも好き。特に露天風呂。あの湯は熱いが、上がった時のあの寒さが好き。サウナも好き。


というか、改めて見返すと俺って風呂好きすぎ。源の血とか流れてるんじゃないかと勘違いしそう。一日に何回も入る気はしないが。シャワーは兎も角、湯船は一日の終わりに入るから効果があるのだ。これは決定事項だ。異論は認めん!


……俺に異論を唱えてくるほど仲のいいやつは居ないんだけどさ。


「……そろそろ出るか」


段々と逆上せてきた。長湯すると気絶するから気をつけないと。あ、そういやこの湯どうしよう。紅葉が入るなら張り直した方がいいかな?自分から言われる前にやった方が傷つかないだろうし。


そういや同居だとお風呂イベは定番だよなぁ。ま、俺はラブコメ主人公とは違って、そこんところはちゃんと警戒してるから大丈夫だが。俺が覗くなんてそんなイベントはありえない。万が一にも。


と、全裸で頭を拭きながら考え事してると洗面所の……なんだっけ?スライ扉?が開かれる。


「「あ……」」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……もうこんな時間」


今日、とある男の家へと引っ越してきた。その男は性格と口と態度が凄く悪いけど、なんだかどこか優しい感じがする。それで、なんだか安心する。


「お風呂……」


引越ししてスペースは確保できたけど、この家は広すぎる。間取りを説明されているけど、お風呂場がどこなのか分からない。迷った。


「ここは……トイレ?」


さっきから、それらしき扉を開けてみるも、一向にたどり着けない。方向音痴……って訳では無いと思う。


「……あ、あった」


扉に『風呂』と書いてある。とても分かりやすかった。


「お風呂♪……」


私はお風呂が好き。一日の終わりに入るとリセットされる感じがして。サウナなんかも好き。


「ふふっ……」


そういや、同居だとお風呂イベは定番だ。もしかしたら覗かれてしまうかも。でも、私は、しっかりと警戒するから、そんなイベント起きないけど。


そう考えながら……なんだっけ?スライ扉?を開ける。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「「あ……」」


二人の声が重なった。目の前には着替えを持った紅葉が居る。俺をまじまじと凝視している。


そして、紅葉の視線がある一点で停止する。そこで俺は思い出す。俺は髪を拭いている頭以外に一糸まとわぬ裸体である。そして紅葉の視線の先には濡れてしっとりしている我が息子が。


「「……」」


再び目線があう。お互いに時が止まる。俺って時を止める力とか持ってたっけ?でも、頭グリグリなんてハイレベル自傷行為した覚えはないし、短命の運命って訳でもない。なんなら社会的に優れた地位でもない。更には左目が金色で、時計板だとかそんな訳でもない。確認してみたけど無かった。ちょっと残念。あれ、かっこいいのに……


そして、時は再び動き出す。


「……おい、普通逆だろ」


自分でもまさかの答えが出てきた。予想以上に動揺しているようだ?


「……やり直す?」


そして紅葉もまさかの返答をしてきた。というか乗ってくれるのね。


「やり直さんでいいからはよ閉めろよ」


「ん……」


カララララ……ピシャン


「………………」


俺は扉が閉まるのを確認するとその場にしゃがんで、心の中で叫んだ。


『観られたぁ~~~!』


おい! 普通逆だろ!? なんで男の俺が見られる立場なんだよ! まじで神何やってんだ! ホント馬鹿じゃないの?


まぁ、見られたことは仕方ない。諦めよう。逆にこう考えるんだ。俺は被害者。つまり、何かあっても俺は貸しを作れたということだ。よし、大丈夫。




その後、服を着て洗面所から出ると、紅葉が扉の横で座っていた。俺に気づくと、顔を上げ、


「……大丈夫、十分誇っていいサイズだと思う」


「お前それが慰めだと思っているなら大間違いだぞ」


俺の感想を言ってきた。多分、こいつはまだ動揺してるんだろう。


「……風呂、はいってもいいぞ」


「……ん」


何となく気まずい空気を振り払って、紅葉は扉の向こうへと消える。俺は自室へ向かおうとすると扉が開いて紅葉がひょこっと顔を出し、


「覗いちゃ、ダメ」


「寝ぼけてんなら風呂入んな」


なんか、この生活続けてたら胃が蜂の巣になる未来が見えたのは少し逆上せたことによる幻覚だと思いたいが、キリキリと胃の痛みが現実だと告げてくる。胃腸薬残ってたかなぁ……

とりあえず、毎月十日、二十日、三十日投稿にしてみようと思います。でも、我慢できなくて追加投稿しちゃうかも?

それと、タイトルは嘘です。バッチリ起こりました。逆のイベントが。ほんとに何やってるんでしょうね。あの神様。

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