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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
九章だけど海会をダラダラしすぎてめっちゃダルい
107/133

Family

もう盆もとっくに終わったある日。 ある日っていうか、8月21日。


車を走らせ、俺はある場所にやってきた。


車を下りると、心地良いそよ風と墓地・霊園特有の香り。


そう、墓地である。 香りの正体は線香と近くの養鶏場の獣臭さ。 俺の鼻はいい。


トランクから花束と、各種参りセットを取り出して目的の墓へ。 あ、水も汲まなきゃ。


色々重くなったが、目的の墓へ進む。 墓前だけど台車とか使いたい。


夏休みと言えどお盆も過ぎれば人は居なくなる。 この霊園も今は俺1人だ。 ちょっと怖い。 昼間だけど、どうしてもこういう場所だと視線とか気配とか感じちゃう。


墓に着いた。


放置していたというのにそこそこ綺麗だ。 花も添えてあるし、俺の前に誰か来たのだろう。 花の萎れ加減から察するに一昨日…………いや、先週か。 丁度お盆だな。


となると、俺はそこまで綺麗にする必要は無いな。 軽く汚れを拭う程度にしておこう。


と言っても、水ぶっかけて軽く拭いてお終い。 夏だし濡れたままの方が死体もとい霊魂も生きやすいだろ。 死んでるのに生きやすいもクソも無いが。


あれだ。 墓に生前好きだった酒垂らす感覚に近い。 そういうことにしておく。


持ってきた花束から数本選定して剪定して花立にぶっ刺す。 生け花も得意な奏士くん。 多才ね! 自分で言っちゃうなんて多才なのにダサいね! やかまし。


墓前に膝を着いて線香に火を灯す。 チャッカマンとかマッチとかちょっと無かったからガスバーナーで。 線香を焼き尽きる火力だぁ。


線香の熱さになんとか耐えて線香置きに半ば投げ入れる。 だって熱いし。 生者は死者と比べて物理的干渉力高いんだよ。


……熱さの大半がガスバーナーによるものだけど。 火力が高ぇけど酸素バーナーじゃないだけマシ。 酸素バーナーマジヤバい。


線香を置いたら手を合わせるだけ。


今更ながらこの手を合わせてる間どうすればいいのかよく分からん。 分からなすぎてぽけーっとしそうになる。 墓前で茫然つって。


はいこんなことやってるから話進まないんですぼちぼち進めましょう。 墓地だけに。 黙れや。


残念ながら、俺の意識と脳はだいぶ前に平和条約の期限切れで冷戦と世界大戦を繰り返してて、今思考がエグゾダス状態なんですよね。 色んな意味で頭大丈夫かコイツ。


無言。 と言っても声に出さないだけでモノローグは煩い。


毎年墓の前で、家でも遺影の前で手を合わせていると近況報告のネタも尽きてくる。 漫画のネタも尽きてる。 どうしよう。


祖父と祖母、とても恩がある人達だ。 俺が今、五臓六腑五体満足朽木糞牆行尸走肉魑魅魍魎で存在しているのも、1割はこの2人のお陰と言っても過言じゃない。


なお、9割は俺の意思。 周りが整えても当の本人が生きる意思無かったら意味ねぇよ。 これが我田引水ですか。


あ、でも今の俺胃がヤバいから五臓六腑は無事じゃねぇ。 それより後半部分を取り上げろ。 今のが正しかったら俺バケモンじゃねぇか。


柳家がどうとかジジイがどうとかばかり言っているが、正直俺はもう片方の祖父祖母に会ったことがなくてな。 所在地も生死も名前も顔も、存在含めて何もかも知らん。


悠ちゃんはあんなでも、本当にあんなでも俺にとって唯一の家族というか縁者だ。 悠ちゃん1人というよりは如月家全体かな。 そんなデカくないただの1家族だけど。 俺的家族のイメージって二極化してる。


いや、他にも叔父叔母従兄弟その他血縁は存在する。 だがしかし、柳家の血なのかそれとも純粋にそういう人種なのか、大半がロクでもない奴らだらけ。 俺からはもう好き嫌い超えてどうでもいいし、相手側も俺の事は嫌いだろう。


そりゃ爺さんの莫大な遺産配分で揉めてたのに、急に知らんガキが横から全部かっさらったら色々と遺恨もあるわな。


後悔はしてないし、相手側が何しようと正々堂々卑怯に歪に陰湿にやり返すので問題は無い。 遺産抜きにしても素の財力で圧勝してますしお寿司DEATH死。 会長?


もう奴らとは何年も顔合わせてない。 正月にも盆にも顔出さないし、墓参りに来てる様子も無い。 やっぱ色々あったから気まずいのか?


素直に頭下げることが出来て漸く大人って言うけど、実際の大人は頭を下げない。 年齢上がればより頭下げない。 大人って本当になんなんだろうな。


…………あ、家族の話に戻るが、重政の事は忘れてないぞ。 あれは本当に唯一の家族だから。 重政への愛は限界を知らない。 重政からの愛は限界を知ってる。 泣ける。


…………家族、ねぇ。


今まで何度考えたか。 えーと1回2回3回…………あ、3回しか考えてないわ。 今回で4回目。


1回目 意味


2回目 定義


3回目 概念


…………となると、家族について重い意味で考えたのゼロだな。 なーんだ何も考えてねぇや。 それは今も変わらずってやかましいわ。


今更家族が欲しいとは思わない。 重政が猫である以上、俺より先にくたばるのは自然な事。


しかも、急死してもおかしくない年齢だ。 1人で悠々自適に生きる準備も覚悟もは出来ている。


生物学的親とは縁切ってるし彼女作る気無い俺は生涯独身を貫く孤高の戦士ソルジャーと言える。 今年もクリスマス男子シングル優勝は俺の連覇で決まりだな。そろそろ殿堂入りで審査員になれそう。


…………帰るか。 特にジジババと話すこと無かった。


あ〜 帰ったらどんなゲームすっかなぁ。


何か土産でも買って帰ろうか。 ゲーム中の菓子は…………常備してるし、軽食か? もしくはゲームショップ寄って新しいの何か買って帰るか。


でも欲しいゲームは大体買ったしなぁ……


例え複数人プレイだろうと1人で遊ぶのが最強の戦士たる所以。 複数兼任すると覚醒へと至る。


今の俺は覚醒を超え、超越へと至った1種の神と言える。 確実に邪神ですね。 というかアホの極みですね。 俺はペリカンですか? あ、コアラか。 ちゃうわ。


まぁどうするかは帰りながら考えよう。


ポテチとか味の好みがあるから別味買うのもいいし、暑いからアイスか? 俺の部屋にはミニ冷蔵庫の他にもミニ冷凍庫もあるけど、基本的にICE B0Xと角+棒しか入ってないし。


紅葉が好きなアイスか……そういや知らんな。 よくチョコ系のアイス食ってるけど、冷凍庫にアイス入れとけばそこにあるもの食うし。


あ、そういや前にヒ°ノの写真投稿してたな。 もしかしてあれが1番か?


となると、バラ4つもしくはアソートで買っていけばいいかな。 ついでに手が汚れない塩味系も買ってくか。


なるほど、こうして人のことを考える事が出来るようになった俺は成長期って事だな。 ついでに背も伸びろ。 体感1センチで180だ。


最後に一礼して立ち上がる。 ここに来るのはまた次回。 次はどんな話が出来るかね。


荷物を持って車へと向かう。


その時、そよ風ふわり。 そよ風ふわりってなんか1番スカートめくれそうな感じするよね。 クソみたいな連想ゲームすな。


夏の暑さを吹き飛ばすような心地良い風。 なんだかいい匂いがした。 こんな風なのにあんなクソゲーしたんかこいつ。


ジジイかどうか知らんけど、どっかで見守ってたりすんのかね。


そういうの辞めてマジで。 盆終わってんだから早くあの世戻ってクレメンス。


あーそうだったあのジジイあの世で迷惑かけて今出禁になってるとか抜かしてたな。


じゃあ六門船にでも乗ってろ。 それはアヤカシになりますねぇ……いやはぐれ外道になるか?


でもおじいちゃま外道じゃないし。 ちょっと性格悪くて悪知恵働いて顔悪くて詰めが甘いだけ。 うーん言葉にして改めて思う我が祖父のどうしようもなさ。 孫の俺がこうなのも納得だ。 おいおいおい責任のレーザービームまだ使うんか。


もうこれだ。 ちょっとしんみりさせようと頑張ってみても最後はこうなるんだ。 しかもこの作品特有の「重要箇所ポイ捨て問題」がまた発生してやがる。 もうちょい長く深くやれそういう所。 さっき割と重要な事言ってたぞ。


あーもう馬鹿らしい。 帰ろ帰ろお家に帰ろう。 俺の愛車ロードローラーで帰ろう。 俺は鏡音一族か何か? 機械音声じゃないし。 勿論、機械音声に近いゲボ声でもない。


俺の美声を聞かせてやろうか地上波で。 無理なので永遠に黙れ。 どうやら耳と口の友好条約も期限切れの様だ。


─────────────────────────


「たでー」


玄関を開けて言ってみた。 返事は無いどうやら屍だらけの様だ。 我が家が死体だらけって怖すぎん? 死霊だらけではある。


そういや、最近スマホに変な電話が来た。 「私メリー」だとかどうとか。


まぁ「何故か貴方の家に入れないの」って電話以降音沙汰無いし、気にする必要は無いだろう。 俺ん家は知り合いの神社の人に結界貼ってもらってあるし。


ほら、昔から存在する系はその分そういう邪気とか悪いものを集めたり溜める力あるらしいし。 付喪神とか半分近い。


もしかしたら、我が家の幽霊らしい出現・物音が消えないのは結界のせいで家から出られないのではないか?


でも解いたら再展開面倒臭いし……我慢してもらおう。


俺は最初から知らん。 人の家無断で住み着いて家賃も詫びも無しならこれくらい妥当だ。 視点がおかしい気がする。


「重政ー」


部屋を扉を開けて呼んでみる。 重政不在なんだけど。


え、もしかして重政死んだ? 猫って死ぬ時消えるって言うし。 いやぁフラグって怖いですねぇ。


じゃあ遺影とか準備しないと。 今朝の写真でいいかな……


「にゃ(何やってんだお前)」


「あ、生きてた」


「にゃ?(何言ってんだお前)」


尻尾をピコピコさせてる重政を撫で回す。 こいつから他の猫の臭いがする。 私というものがありながら!


「お前、他の奴ら知らん?」


聞きながら重政を持ち上げる。 猫ってほんと伸びるよなぁ……


「にゃぁーふ(知らんから降ろせ)」


欠伸の時の口の開きデカ。


床に下ろすと、てててっと駆けてどっか行っちゃった。 お猫様消えてポツンと一転や! テレビでも取材しねぇこんなの。


なんというか、我が家って曲がりなりにもっていうか確実に(ロクでもない)歴史ある建築物と支配権持ってるのに、古いお家〜とかそういう系の取材来ないね。


少なくとも俺が当主変わってからは無い。 爺さん以前に何かしたのかしら。 何かやらかした・・・・・だと思うのは気のせいじゃない。


家鳴りがしないように音殺して歩く。 人居ねぇ……人の気配無いのに人以外の気配がするのは慣れた。


LDK・不在。 風呂トイレ・不在。 道場・蒸し暑い。


各個人部屋・不在。


え、というか紅葉も居ないんだけど。 どっか行った?


まぁ昨日のあれその場程度の口約束だし別にいいか。


でもこのアイスどうしよ。 俺の部屋のはもう入らないし、ダイニングの冷蔵庫にぶち込むか。 なんでアイス持って家中徘徊してんだ。


そう考えて立ち上がった瞬間、庭から人の気配を察知。


動きを止めて一切の音を消す。


泥棒か? いや、不審者系だとしたら俺の端末に警報が届くし、家中のセンサーも無反応だ。


莇が運動から帰ってきたのかと考えたが、あいつは今日、例の『お手伝い』とやらだ。 今はこの付近に居ない。


というかクソ暑い夏の昼間に運動とか自殺行為だろ。


ベルが鍵忘れたか? いやそれなら誰かに連絡入れるよな。


宅配は門で受け取るから違う。 となると、候補は1人か。


そっと、気配の元へ向かう。 吐息が聞こえた。 呼吸のリズムと深さ的に、緊張はしてないな。 一定のリズムで安定した呼吸してるから、かなりリラックスしてると言える。


障子をそっと開けて少しだけ確認する。 よし、悪意は感じない。


完全に開けて庭に出てみる。 太陽が世界を焼き付くそうな暑さ。


庭を一通り確認したが、どこにも居ない。 俺の勘違いか? 俺のセンサーも万能じゃないし。


そう処理して、この夏の外ムスペルヘイムから涼しい部屋ニブルヘイムに戻ろうと踵を返したその時、縁側の済に白く丸い物体を発見した。 それより部屋寒すぎるやろ。


一瞬何かの繭かと思ったが、近寄ってみるとそれは人間でした。


というか紅葉でした。 縁側で丸まって寝てる。 猫か。


熱中症の心配は無さそう。 上手い具合に日陰に収まって寝ている。 体温も安全圏内だ。 元が高いから上昇も少ない。


というかなんでこいつこんな場所で寝てんだ? 日向ぼっこでもしたんか? クソ暑い中飲み物1つ用意せずに日向ぼっことか自殺志願者かコイツ。


流石の俺もこれ放置するのは腐乱死体的な意味で怖いから声をかける。


「おい、起きろ」


肩を掴んで揺らす。 寝相が悪いからワンピースの各所がはだけて色々と見えそう。 なんなら白いの見えてる。


そこは俺の絶技によって一瞬で元通りにさせてもらった。 夏とはいえ風邪引くし、起きた時に罪を擦り付けられそうだし。


「……ン〜……」


揺らして声をかけてを繰り返してみても、紅葉は少し唸って再び寝る。


寝相悪くて寝起き悪くて、本当によく一人暮らしできたなコイツ。


起こすのに手間取るものあれだし縁側普通に暑いし部屋戻りたい。


という訳で強硬手段、エサを使います。


簡単です。 食料を紅葉の鼻の近くに持っていくと自動で目覚めます。 犬かな? いや猫なんだけど。 人間です。 情報量多いって。


部屋に戻って箱からヒ°ノを1つ開けて取り出す。


「……ん…………」


近付けると、紅葉は寝ながら鼻をスンスン鳴らして匂いを嗅ぐ。 匂いで安全かどうか確かめているのだろう。 もう人間じゃねぇ。


「…………」


とか考えてたら寝ながら食われました。 これ寝てるってマジ?


口周りをペロリと舐めて再び深い眠りに。 コイツ…………


しかし諦めない俺。 もう1つ取り出して、次は食おうとしたら即離れる。


「…………ん…………」


再び匂いを嗅ぎ始める。 よし、ここまでは順調。


「…………あ………」


紅葉が口を開けた瞬間、素早く手を引いて離れる。


「………んむ」


しかし紅葉の方が速く、素早く手首を掴んで捕獲。


「…………♪」


そのまま食べ始めた。 ねぇこれ本当に寝てんの?


「…………ん……」


ついでに俺の指も食われた。 あ、ちょっとお客様当店はそういうお店ではございません。


「………ん〜〜〜」


離れようと手を引いても、指を加えたまま掴んで逃がさない。 なんでこんな細腕からこんな力が……今更だけどさ。


あー、ちょお客様。 私の指は食べ物ではございません。 なんかゾワゾワするって言うか普通に不快だから指食べんな舐めんな嫌そうに吐き出すな。


「…………美味しくない」


コイツ1発脳天にぶち込もうか。 俺のまきわりチョップぶち込もうか。


うげ……指が唾液濡れてる。 とても不快です。


しかしその甲斐あったのか、紅葉の目が徐々に開く。


「……ん…………?」


キョロキョロと当たりを見回す。 寝ぼけてるのか? なら俺の指を食ったとしても仕方ないとは言わないぞ許さん。


「…………奏士が私の部屋に居る」


「目覚めろ。 ここはお前の部屋じゃねぇ」


なんなら俺の部屋沿いの縁側なので実質俺の部屋です。


「…………おかあり?」


「それだと俺がお前に『おかえり』言ったことになるぞ」


「…………ただいま」


「続けなくていいから」


紅葉は目を擦って伸びをする。 背伸び縦じゃなくて横にする人初めて見た。 やっぱ猫だろお前。


「…………帰ったの?」


「帰った。もう用事は終えたぞ」


「……遊べる?」


「遊べる遊べる。 目一杯遊べる」


「…………おー……」


紅葉の目がキラキラしてる。 いやなんか物理的に光ってね? 気の所為?


「…………お散歩、行こ」


「こんなクソ暑い中?」


自殺志願者なのは間違いじゃないのかもしれない。 人を巻き込むな。


「…………遊ばない?」


「遊んであげるが、散歩以外な。 今外出たら死ぬぞ」


「……むぅ……」


紅葉の頬が膨らみました。 針でぶっ刺したら空気抜けないかな。 血が抜けるか。


「…………じゃあ、夕方。 それなら涼しい」


なんだこいつの散歩好きは。 前も散歩行きたがったな。 犬なのか? 猫です。 人間だって。


「あー…………洗濯物畳んでからなら良いぞ」


「……! なら今直ぐ畳む。 手伝う」


「夕方つったろ」


今取り込んでもまだ乾いてねぇよ。 いや夏だし昼には乾くか。


「…………分かった」


紅葉は残念そうに受け入れた。 少ししょんぼりしてる。


「…………で、お部屋で何するの?」


「それは今から決める」


「……行き当たりばったり」


「遊ぶってのはその場しのぎだから良いんだ」


ガチガチに決めるよりその場でなんとなく決めた方が楽しいだろ。 ゲームとか気の向くままに代わる代わるやると楽しい。


その時、紅葉の腹が鳴った。 可愛くない音で。


「…………お腹空いた」


それを恥じる様子無し。 流石です紅葉さん。


「お前昼飯は?」


「…………奏士が用意しなかったから食べてない」


「いや俺居ないから自分で用意しろつったろ」


「…………記憶に無い」


そう言いながらそっぽ向いた。 さてはこいつ聞き流してたな? 言った時ゲームしてたし。


「はぁ…………何か食べたいものは?」


「…………ガッツリと」


「肉?」


「…………今から遊ぶのにお肉は合わない」


「え何遊びながら食うの?」


「…………食べる時間も大事だけど、遊ぶ時間が勿体ない」


今紅葉の中では食と娯楽がせめぎ合っている。 欲に正直が故に葛藤している。


「…………デリバリー」


「宅配? 残念ながら我が家はUb○rも出前も届かんぞ」


誰も行きたがらないからな。 こんな端に。


「…………ピザなら届く」


「ピザか……いいんじゃないの?」


「…………これなら2人で食べれる」


「俺も食うん?」


「……ご飯は、一緒に食べると美味しい」


おおなんか押し切られそう。


確かに、今日は朝軽く食って以降何も食ってない。


現在時刻13:05、流石に腹も減る。


基本的に省エネな俺は3日に1食でも十分活動可能だが、食う以上に健康的なものは無い。 不健康の極みですが。


しかし、俺はなんやかんやあって昨日(祭り)食い過ぎた。


このままだと俺のムキムキボディがぶよぶよボディになってしまう。


どうする。 どうする俺。


「…………一緒。 駄目?」


おっと残念ながら上目遣いは俺に対して効きませんよ。 特性『ぎしんあんき』でエスパー・フェアリーの技無効です。 悪持ちだからエスパー無効だけど。 テラスしても平気だね! いやエスパーってそこまで対策必要か?


※ 作者は第7世代で止まっております。


「…………一緒に食べよ」


「あ〜もうはいはい分かったから」


あくタイプなのでゴリ押しのかくとうタイプに弱いんですよね。 いやはや参りました。 ゴミカス言い訳マン。 そこまで?


「…………届くまでちょっとかかるけど、お前はそれまで待てんのか?」


「…………頑張る」


まぁこいつの事だ。 軽食くらい常備してるし、普通にカップ麺食った後でも余裕でLピザ3枚食えるだろ。 何枚食うのかは知らん。


「で、どれにすんの?」


スマホのピザアプリを起動して渡す。 決まったら即行動。


「…………私がお金出す」


「いやもうめんどくせぇからいい。 はよカート入れろ」


「…………分かった」


タプタプと操作して返される。 素早い指の動き……注文のプロかよ。


俺も軽くカートに入れてポチる。


「……できた?」


「できたできた。 ちょい待つ」


「…………今のうちに準備する」


「はいはい走ると危ないぞ」


とか言う前に容赦無く俺の部屋に入って機材とスペースの準備を始めた。 もう部屋に無断で入られることに坊ちゃんつっこまない。


──────────────────────────


「…………という訳でお散歩、行こ」


「あれ今過程が吹っ飛ばされた気が…………」


「……これがキング・クリムゾンの能力」


「ただの手抜き定期」


ねぇ過程面倒になったらいきなり飛ばすのそろそろ辞めない? 俺なんのゲームしてたのか何があったのか知らないんだけど。


「…………お散歩」


紅葉が腕を引っ張ってくる。 俺の腕はプラモみたいに取り外し可能じゃないぜ。


「はいはいちょっと待ってな」


押し入れを開けてガサゴソ。 あ、あったあった。


「ほら、これ被れ」


「……う?」


ポスッと麦わら帽子を投げて被せる。 綺麗に収まる俺流石。


「…………麦わら帽子」


「暑いからな」


「…………奏士のお下がり?」


「いややらんが」


「………………」


なんでそこで残念そうにするのかは聞かない。


あ、これ使用済みじゃないから。 絵の参考用に買ったやつだから未使用。


「…………行ける?」


「まだ。 これも塗りぃ」


「……日焼け止めは流石に必要ない」


「暑いから」


「…………要らない」


「あ、そう……」


でもその肌の白さ、万一焼けたら痛そうだけど。 本人がいいならいっか。


「……今度こそ行ける?」


「ん、行ける。 そっちは?」


「…………準備万端ゲームアカデミー」


「何言ってんだお前」


なぜ唐突にクリエイター育成校の名を?


「…………行こ」


「はいはい」


一応書き置きを残して家を出る。


外に出て夕日を浴びる。 昼間よりは涼しくても夏だ。 暑い。


あ〜ビタミンデーが生成される。 Dをそう呼ぶの老人以外に初めて見た。


というか、夕日でもビタミンDは大丈夫なのだろうか。


「…………ヒグラシ」


「だな」


武豊原ゆたか自然豊かなこの一帯は、都会とは違い季節の虫を感じられる。 春はゴキブリ夏はカナブン、秋はコオロギ冬は極稀に出現。 なんで不快虫で例えた。 だってコオロギってほぼゴキブリやろ。 カナブンは純粋に大量発生。


四方八方から聞こえる蝉の声。 アブラゼミヒグラシクマゼミニイニイゼミツクツクボウシ……俺的にミンミンゼミが1番好きかな。 やっぱり蝉って感じがするし。


俺は俺の領域に不法侵入する虫が嫌いなのであって、自然界で生息してる虫とか画面越しは平気。 虫の声とか好き。 これはだいぶ前にも言ったな。


「…………暑い」


「言ったろ」


敷地から出て住宅街を歩く。 ここら辺は見慣れてるから目新しさが無い。


「散歩ってどこ行くん?」


「…………気の向くまま」


「そうか」


俺は漫画で詰まったらチャリで知らん場所へ行くけど、紅葉の散歩も似たようなものなのか? 気分転換というか。 気まぐれの権化が気分転換ってのアレだが。


フラフラと行先不明のまま歩く。 ここら辺は家族住まいの一軒家が多い。 近くに保育園があるからだろうな。


大通り挟んで向かいには高専があるし、そっちの方は学生が多い、と。 くっきり別れてるのなんか生存分布みたいだな。


…………


……………………


…………………………………………


特に会話無し。 いやぁなんでこんなのが学園代表2トップなんでしょうね。 コミュ力を他にステ振りしたからさ。 努力値とも言う。


「…………」


なんだか紅葉が不機嫌そう。 何? あの日?


「…………さっきから奏士が道路側歩いてる」


「で?」


「…………子ども扱いされてる気分」


「だってお前、興味あったらフラフラそっち行くだろ」


「……さすがにそれくらいの分別は出来────飛行機飛んでる」


「ほら見ろ」


あでもホントだ飛行機が低空飛行してる。 でっけー


飛行機に気を取られるとか子どもかって思うけど大人になっても空飛んでるの見たら自然と目が行くだろ? そういう事だ。


そのままなんとなく歩いていたら公園にやってきた。 夕方でもまだ明るいからか、そこそこ小さな子ども連れの家族が居る。


俺は今すぐにでも離れたかったが、その前に紅葉が公園の中に入ったので渋々着いていく。 精神安全的に帰りたい。


「……子どもがいっぱい」


「そうだな」


「…………子どもは好き」


「そうか」


「……私は子どもに懐かれやすい」


「さいすか」


まぁ中身が近いからな。 とは言ってないからセーフ。


「…………奏士、怒ってる?」


「いや、怒ってないが」


「…………もしかして、子どもを襲いたいけど人の目があるのを気にしてる?」


「どうやら熱中症みたいだな。 今すぐ頭の病院連れてってやるよ」


「……私は平常」


だって思考回路が崩壊してますやん。 今運行ストップですやん。


「…………奏士は子どもが嫌い?」


「……まぁ、嫌いではある」


「…………同族嫌悪?」


「喧嘩売ってんのかお前」


同族嫌悪って意味知ってんのか? 俺とガキ、どこがどう同族なんやねん。


「…………子どもは可愛い」


「……さいで」


ベンチに座ってぽけーっと会話。 中身ねぇ。


どうしようかと考えていると、足元にピンクのビニールボールが転がってきた。 ちゃんと見てなさいよ親御さん。


「何処のどいつだ……?」


ボールを掴んで辺りを見回す。 こっちを見て近づいてくるガキを発見。 こいつか……全力でぶん投げてやろうか。


「そえ、あたしのー!」


3歳かそこらのガキが舌足らずながら声を上げて走ってくる。 普通におっせぇ。


「ほれ、次は気をつけろ」


こっちに到達したガキにボールを渡す。 俺なら片手でも、子どもにとっては両手でいっぱいだ。 俺がこれくらいの歳の時って何してたかね。


「うん! あえがとー! パパ!」


「はいはい。 お母さん待ってるから早く戻りなsちょっと持って今なんつった?」


思わずパパとはなにか考えちゃった。 俺の行き着いた答えは「バナナはおやつに入らない」でした。 パパは? そういや脳と和平結んでないんだった。


「…………パパ?」


「うん! パパ!」


「…………奏士、説明」


「ちょっと肩砕けそう」


なんか怖い顔で両肩全力で掴んでくるんだけど。 俺の両肩もぐ気だな? 辞めて許して何を許してもらうのかは知らないけど。


折角の可愛い…………可愛い? 可愛いのかな。 ヒロインだし可愛いんだろうな。


ゴホン。 折角の可愛い顔が怖いぜ紅葉ガール。


「えーと、少女。 パバってどういう意味かな?」


「あのねー! パパはパパなの!」


あれこれ哲学? 俺は今難題示されてる?


「パパはパパパーパ・パーパパなの!」


なんかどっかで聞いた事ある名前。 名前なのか? 見た目バリバリの日本人ですけど。


「すいませーん!」


色んな意味でピンチなその時、助け舟という名の人が!


「あ! ママァ!」


なんだママか。 つまりクソガキの親だな。 許さん。


「ウチの子が失礼をー────何してんのあんた」


あれあれママさんどっかで見たことあるぞ。 凄い足が自慢胸がコンプなギャルさんだ。


「ママァ! パパがボール拾ってくれたの!」


「あ〜はいはいそうなのね」


ギャルさんもといさっちゃんもといなんとか皐月さんはクソガキを抱き上げて頭を撫でる。 ママだ。 紛うことなきママの手際だ。


「…………皐月と奏士ができていた」


紅葉が目を丸くして驚いてる。 奏士くんは目がとび出そう。


「…………高級住宅から曰く付きの違法建築にお引越し」


「喧嘩のサマーセールしてんのかお前」


「あ、紅葉ちゃんも居たのね…………その前にそいつ離したら?」


「…………なんで?」


「いやだって……そろそろそいつ死ぬわよ」


さっちゃんが指さした先には紅葉に首絞めされて瀕死の俺。 冷静装ってるけどそろそろ逝く。 あ、やばい六文銭見えてきた。


あ、出禁食らった。 どうやら柳祖父の関係者だとバレたらしい。 クソジジイが。


「…………皐月、ま……まなんとかは捨てたの?」


「捨てるも何も……というか、私とそれが出来てるで決定するんじゃないわよ」


「…………でも、ママとパパ」


「ちゃんと説明するから落ち着きなさい。 そいつもう本当に死ぬわよ」


「…………」


ようやく解放された。 本当に死ぬかと思った。


締めの過程で柔らかな霊峰に包まれたりミルクの香りがしたりと普通なら役得なんだろうが、それどころじゃない。 死と引き換えにする程じゃ無い。 いや死と引き換えにできるものってこの世にないけど。 いのちだいじに。


「えっと、まずは自己紹介ね。 ほら、お姉ちゃん達に挨拶しなさい」


「あい! ふみちゅきよちの! 4ちゃい!」


漢字が分からないから便宜上文月芳乃としよう。 4歳だったか。 元気な子だ。


あれ、文月ってどっかで聞いたような……


まいっか。


「この子の親が今ちょっと仕事で家に居ないのよ。 その間、私の家で預かることになったって訳」


「あい! お兄ちゃんと一緒です!」


元気なガキだなー


「…………皐月のおめでたかと思った」


「それだと私10代で産んだことになるじゃない」


「…………アレとファイト一発でご懐妊」


「発言がオヤジ臭いわね……それと、アレじゃなくて恭平よ。 いい加減覚えなさい」


「…………善処する」


「…………」


「あんたは興味無さそうね」


「いや他人の事情とかどうでもいいから。 こいつが俺をパパと呼んだ件について詳しく」


「はいはい分かったわよ」


さっちゃんが芳乃んの頭を撫でながら言う。 もう見た目完全にギャルママよ。


「単にこの子の癖よ。 とりあえず大人ならパパとママって呼ぶだけ。 他に他意は無いわ」


他に他意は無いって重語じゃね?


「…………まぁ事情は分かった。 で、ママさん」


「誰がママさんよ」


「………ママ、旦那は?」


「紅葉ちゃんまで…………旦那────じゃなかった。 恭平は家でこの子のお兄ちゃんと待ってるわ。 読書好きみたいだからパパ…………私のお父さんの書斎を貸してるの」


「今一瞬旦那って呼んだ」


「読んでないわ」


「…………新婚夫婦」


「うるちゃい。 紅葉ちゃんも新婚夫婦にするわよ」


「…………せめて人と夫婦になりたい」


「あんた、人として見られてない訳?」


「全自動お世話ロボ的な見方されてる自覚はある」


「色々心配になってきたわ…………」


でも俺は紅葉のこと半分神格化してるのでどっこいどっこい。 神とロボって相性悪くね? いやデウス・エクス・マキナとか存在するし最悪ではないのか。


「まぁいいわ。 デートの邪魔して悪かったわね」


「いやただの散歩なんだけど」


「うるさいあんたに言ってない」


俺居るのに除け者にするの良くないと思います。


クラス対戦ドッジボールで俺だけ初手外野確定だったの思い出したわ。 しかも俺にだけボール回さねぇしかと言ってサボったら怒られるの俺だし。 無駄な時間だったわあの時のクラスメイトと無視した教師は死ねクソが。


「それじゃ、あたしはそろそろ帰るわ。 芳乃ちゃんもそろそろ帰る時間よ」


「あい! パパが待ってるす!」


「そうねお留守番してるわ」


「愛しの旦那さんが我が家で愛する妻の帰りを待ってます!」


「ちょっと持ってどこでそんな言葉覚えたの!?」


今めっちゃ滑舌良かったな。


そんなことより、向こうから旦那もとい禍塚が例のお兄ちゃん連れてやってきた。 あ、お兄ちゃんと目が合った。


「…………」


お互い無言でぺこり。 お兄ちゃんってあれか幼稚園行った時のあいつか。 あの後どうなったのかと思ったけど、普通に元気そうだ。


…………妹居るって言ってたかは定かでは無い。 知らねそんな昔のこと。


「…………羨ましい」


と、そんな2人〔4人〕を見て紅葉が呟いた。


「何が?」


普段の俺なら聞き流す呟きだが、この時の俺は家族連れで精神が麻痺していたのか聞き返してしまった。 いやぁ関心しないねぇ。


「…………仲良し家族」


「…………そうか」


深く踏み込むのはよそう。 デリケートそう。


「…………聞かないの?」


「俺は他人の事情に不干渉なんだ。 聞かれたいのか?」


「…………奏士にも知って欲しい」


「なら好きにしろ」


「…………ん」


家族連れも帰って2人きりの公園。 ベンチに座る人影もだいぶ伸びてきた。


そんな中、紅葉がぽつりぽつりと始めた。


「…………私には親が居ない」


初手重そうだと思ったが、感想としては「まぁだろうね」だった。


夏休みに帰省する時も「実家」ではなく「おじいちゃんの家」と言っていたし、こいつの引越しの際、親から何も連絡が無かった。 娘を宜しくなり反対なりあると思った。


それに、こんな生活力無い紅葉が一人暮らししてた理由も合点が行く。 普通こんなのを一人暮らしさせる親は居ない。 居ないと思う。 俺の親はアレだし。


「…………昔。 本当に小さい時にママとパパが事故にあった」


「小さい時、ね」


子どもにとって親は絶対的な支柱だと聞く。 幼少という多感な時に親を失う事が何を意味するのか、俺は理解してるつもりだ。


「…………交通事故。 相手は居眠り運転のトラック」


「ふーん」


居眠り運転ねぇ。 高速でのハイウェイヒプノシスってよりは公道での事故って感じか。 こいつの両親は異世界転生出来たのだろうか。


「…………ママとパパが死んだ後、私はママのおじいちゃんの家に引き取られた」


「そうか」


「……学園に入るまではおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしていた」


「色々あったんだな」


「……中学を卒業したら働こうとしたけど、2人が許してくれなかった」


「まぁそりゃそうだろ」


隣の某国レベルじゃないが、日本も結構な学歴社会だ。 中卒、しかも女性を雇う企業はそう無い。 男なら、ある程度学歴悪くても土木関係で採用されるって聞いた。 筋力体力人手の問題かね。


「…………その時既にイラストレーターとして活動してたから収入はあったけど」


「知ってる」


俺が何年こいつのファンだと思っている。 フォロワー1桁どころか0の時からの最古参を名乗れるぞ。


「…………でも、安定はして無かったからどこかの事務職につこうと思った」


「だろうな」


収入と言っても、大人気の今よりは少ない。 まだ駆け出しに近いあの時なら生活に副業も考えるだろう。


「…………そしたら、宿木学園の理事長から連絡が来た」


その頃は確か悠ちゃんが理事長になってまだ数年の時か。


「なんて」


「……『良かったら特待生として学園に来ませんか』って」


「え待ってお前も特待生だったの?」


「…………それはどういう意味?」


「いや……」


作中展開的に登場するのは俺一人だと思ってた。


でもそうだよな。 成績良いし生徒会長として仕事してて教師評価高いし、見た目だけはいいから人気もある。


性格除けば完璧超人なんだよなこいつ。 そりゃ特待生取れるか。 しかも勧誘。 俺と近いのなんか同族嫌悪っていうか個性潰れそう。


「…………おじいちゃんが色々進めて、私はなし崩しで通う事になった」


「端折ったな」


「……私も詳しくは知らない」


「そうか」


「…………色々あって今に至る」


「そこは喋れるだろ」


もうこいつめんどくさくなったな。 普段こんなに喋らねぇし。


「……だから、私は家族に憧れがある」


「憧れとは羨ましいこって」


要するに、こいつは寂しいって事でおk? 温もりに飢えてる的な。 だから割とベタベタしてくるのか。 ベルのハグも普通に受け入れてるし。


「………私は本当の家族が居なかった」


「急に話戻すじゃん……ん? 居なかった?」


「…………今は皆が家族」


「あっそ」


「…………奏士も家族の1人」


「えぇ……」


「…………すごく嫌そうな顔する」


「いや俺家族とか要らないし…………」


「………決定事項」


というか皆って誰? 生徒会?それとも我が家に住んでる4人? だとしたら年齢差ほぼねぇなこの家族。


「……いまは毎日楽しい」


「良かったな」


表情的にそうは見えないがな。 基本ボーっとしてるし。


「…………奏士は時々楽しくなさそう」


「そうか。 それは多分お前かベルが莇が原因だな」


「…………そっちじゃない」


「は?」


「…………家族連れだとか、テレビで家族特集とかやってるのを1目見ただけでも眉間にシワがよってる」


そんなに顔に出たのか。


まぁ、確かに俺は家族を好かないが。 あんなん今はもう不要だし。


「…………何かあった?」


「…………特に、話すことは無い。 俺が単に嫌いなだけ」


そう返すと、紅葉は俺に顔を近づけて鼻を鳴らした。 近いっす。


「…………何か隠してる」


「匂いで判別すんの?」


「…………嘘ついてる匂い」


フ"チャラティかこいつ。


「…………話して」


「………なんで」


「…………知りたい」


「…………嫌です」


「…………話さないと奏士がお面被ってコミケ参加してたことを皆にばらす」


「えちょっと持って何知ってたの?」


「…………匂いは消えてたけど、微かに同じ匂いがした」


ええ怖ぁ…………普通に恐怖感じてるんだけど。


「…………ホテルで荷物の中にお面が見えた」


「それ先に言った方がいいよ」


じゃないと俺の中でお前が恐怖に変わるところだったから。


「…………」


「…………」


「…………あーもう分かった少しだけな」


「…………ん」


「と言っても話すことは無いぞ。 親と喧嘩して絶縁。 以上だ」


「……喧嘩の原因は?」


「それは言えん。 強いて言うなら俺の大事なものに傷付けた」


「…………大きいのか小さいのか分からない理由」


「両方じゃねぇの?」


「…………凄い他人事」


「いやもう解決したし過去に戻ってどうなる訳でもないし」


「…………切り捨てた?」


「元々くっついて無かっただけだ」


「…………すごく寂しそう」


「おっと哀れみは要らんぞ。 もう終えた過去は振り返らないタイプだからな」


それからは何も話すこと無く。 紅葉はスマホを触って何かしたかと思ったら何かを考えるように空を見上げる。


「…………」


その時、紅葉のスマホが震えた。 1目見ると立ち上がった。


「……帰ろ」


「もう良いのか?」


「…………散歩より大事なものがある」


「はぁ………」


アニメか? アニメなのか? 夕方アニメか?


「…………ん」


「何?」


手を伸ばしてきた。 取れと?


「………立てないならお手伝い」


「…………いや、自分で立てる」


色んな意味で自立してるからね。 股間のモノは自立しません。 本当に不能なんじゃないかと疑いを持ち始めました。


「…………帰ろ」


「はいはい」


並んで家へと向かう。 突然何を考えたのか知らんが、ろくな事じゃなさそう。


「…………」


紅葉の顔を横目で見る。 何か思いついたような。 企んでる顔だ。 表情変わってないけど。


「…………何?」


「いや、何企んでんのかなって」


「…………奏士の気のせい」


あくまでしらを切る紅葉。


だが甘いぞ。 お前が匂いで嘘を見分けるように、俺も嘘判別は得意だ。 これも1人で生き残る術。


嘘つきが騙されちゃかなわんからな。


てくてく歩いて家に着く。 鍵はどうせ開いてる。


「たでー」


玄関開けて1歩。 飛び込む人影。


「あ帰りデェェェッス!」


「あぶね」


「ほぎゃっ!?」


間一髪、ベルの突進を避けて靴を脱ぐ。 ベルは放置。


「おや、おふたり共おかえりなさい」


「お、おかえりなさい奏士さん。 お邪魔してます」


次に迎えたのは莇と泉ちゃん。


「どしたん。 泉ちゃん何か用?」


「い、いえ。 紅葉さんにお泊まりに誘われました」


「…………」


「…………」


無言で紅葉の方を見ると無言で顔を逸らした。 泉ちゃんなら許可するからせめて聞けや。


「……お、お邪魔……ですか?」


「ん、いやそんなことないぞ。 ゆっくりしていきな」


そしてベルが鼻を押えてフラフラと戻ってきた。


「う〜〜ぶつけたデース」


「自業自得」


「だって今日はソージにに会えなかったから……」


「……どこ行ってたの?」


「街の探検デス!」


「小学生か」


くすくすと笑い声。 こうして5人集まると賑やかになる。 大半がベルだが。


「ヘーイイズミー! 今日は何色のパンツ履いてるデスカー!」


「い、いい言えませんよそんなこと!」


「ちなみにワタシはsexyで桜花爛漫優美華麗龍翔鳳舞行尸走肉魑魅魍魎な紫デース!」


「あの……最後の方悪口入ってましたけど」


ベルあんなのと同じ思考だった自分を恥じるばかりだ。 羞恥心もとい羞恥神だな。 ほら、俺神になってるし。


その時、袖を引かれた。 紅葉ですか。


「………これが奏士の家族」


「え何それだけ?」


「…………暖かくて楽しい」


「…………そうかねぇ……」


傍から見ればとても暖かいのだろうな。 俺は体感温度バグってるからよく分からん。


「…………これから徐々に知ればいい」


なんというか、子に物を教える母親みたいな目で言ってきた。 いやイメージだけど。


「……さいすか」


そう言って紅葉はガールズトークに混ざった。 何したかったんだアイツ。 あ、ベルがスカート捲りしてる。 紅葉の捲りなさい。 泉ちゃん捲っちゃらめよ。 舌足らずやないか。


そしてその晩、ガールズトークと称して俺の部屋に3人で強襲仕掛けられたが、持ち前の技術とかエトセトラで何とかなった。 最後特有の雑な締めにも慣れてきた。


「…………で、なんでお前人の布団に潜り込んでる?」


「…………そこにお布団があったから」


「なんだこいつ」


本当に紅葉こいつは何がしたかったんだ? というか何かしたいんだ。 俺が思考を読めないとか本能で生きてるだけあるわ。

特に無い

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