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輪廻のFate Line  作者: 怪人アホ面男
九章だけど海会をダラダラしすぎてめっちゃダルい
102/133

睡眠の重要性が分かる小説を目指しています。 寝ろ

夏休みと言えど、生徒会は登校することが多い。 主に休み明けの行事の準備で。


もうさー 生徒会の4/5が俺ん家に居るんだしそこに泉ちゃん呼んで仕事するかリモートでやりたい。 でもそうなると必要資料を毎回取りに戻る羽目になるな……やっぱ超重要機密資料以外はデータ化しようぜ。 クラウドに上げろ。 そしてもっと楽に仕事させろ。


とか言ったらどうせあの理事長は

「したきゃ自分でやれ」

とか言うんだろうなぁ……やっていいならやるけど、俺の任期はどの道10月、実質9月で終わるから差程楽にならんなぁ……これが誰もやらない所以か。


「あ゛ぁ〜 終わったデース」


仕事をやりきったベルが机にベチャッとうつ伏せになる。


本日8月20日、夏休み終了も残り僅かである。


だと言うのに生徒会役員は学園に来て仕事仕事。 も助は生徒会室に来てない。 どうせ喫煙所か屋上かは知らんがヤニ入れてる。 屋上禁煙なんだけどなぁ……だから携帯灰皿持ち込んでるのクソムカつく。


「終わったかお前ら」


仕事終わりの一時を過ごしていたら我らがロ理事長参戦! 攻撃範囲狭いくせにアホ毛で当たり判定広いから使いにくそう。 武器も徒手空拳だし。


いや、手が出るのが早いからフレームで見れば有利か? どっちにしろ届かない問題が発生するな。


「その思考を辞めないとお前の人生も終わりにするぞ」


おっと覇王色の覇気だ。 退散退散。


「ったく……ほれ、頑張ったお前らに褒美だ」


そう言って悠ちゃんはコートのポケットから缶ジュースを取り出して皆に渡す。 あれ、俺の分は? またハブられた?


クラスの人が引越しでお別れだからってクラス全員に手紙渡してたけど俺だけ貰ってない過去の記憶を思い出した。 よく考えたら俺も顔も声も思い出せないしなんなら名前知らねぇから別にいいか。 結局誰が引っ越したん?


「奏士、1番頑張ったお前にはこれをやろう」


あ、ちゃんと俺にもくれるのね。 失敬失敬。 誤解してたぜ、俺。


「ほれ、冷えてるぞ」


「ああ、サン────」


受け取ったのは冷えた炭酸ジュース。 皆がオレンジやリンゴ等のフルーツジュースで俺だけ炭酸……嫌な予感がする。


悠ちゃんが俺を特別扱いするか? いやしない。 学費面ではしてるが、それは無理矢理の優遇じゃなくて元凶の義務というものだ。


つまり怪しい。 何を……何を企んでいる……


「それで、だおm「ブシャァァァァァッ!!」…………」


やはりか。 やはりこやつ事前に缶をシェイクしておった。


念の為と思って悠ちゃんに口を向けて缶を開けてみたが、予想通り缶は暴発して悠ちゃんを濡れ鼠に変える。 というかこの缶のサイズから出る量じゃない。 これもしかして超絶圧縮されてる?


「「「「…………」」」」


4人も唖然としてる。 ちょっとやそっと、砂に埋められても動じない莇ですら。


ポタ、ポタと悠ちゃんを濡らしたジュースが床に滴り落ちる。 ついでに悠ちゃんの肩も震える。


「……………………で、だ。 お前ら、今日は予定あるか?」


「……平然と続けた」


「そ、それより早く拭かないと染みが……」


「あんなに綺麗に決まるものなんですねぇ……」


「アオバはどこに関心してるデスカ!?」


これには俺も驚き桃の木バナナの草。最後草にしちゃうのか。


「何、気にするな。 因果応報と言うやつだ」


「だそうだ。 全員気にしなくていいらしいぞ」


「ああ、お前も気にするな。 私が仕掛けた罠だしな」


「そ「おらぁ!」あっぶね。 待て、台詞と行動が一致してない」


笑みを浮かべる悠ちゃんの手にはバチバチと鳴るスタンガンが。 濡れてる状態で使うと感電するぞ。


「貴様……どこからそれを調達した」


「企業秘密だ…………よくもやってくれたなクソガキィ!」


「ガキはてめぇだ幼女が!」


立ち上がっての大乱闘スマッシュドンブラザーズ。 何その狂気。


ところで、スマブラの女性版としてシスターズよりもブラジャーズの方が語感的にいいんじゃなかろうか。 語感以外を犠牲にしすぎてる気がするしんなタイトル世間が許さないな。 とあるゲームも漫画化した時はタイトル変えたし。 ○きたし。


いやあれよく見ればタイトル変わってねぇ。


「オラァ!」


悠ちゃんの電気を纏った全力の突きを避ける。 スタンガンボッシュートします。


「あばばばっばばっ!」


ついでに奪って押し当てて反撃。


※ スタンガンの効果について、若干のファンタジー要素を混ぜております。 まじ危険なので止めましょう。


ドサッと悠ちゃんが床に倒れる。 よく考えたらギャグ補正してても俺の方が余裕で強いんだよな。 やはり暴力……!! 暴力は全てを解決する……!!


「で、話って何?」


「あ今のやり取り無かったことにするんだ……」


ベルたそ素が出てるって。 似非外人口調どこ行ったの。 可愛い子だから旅でもさせたの?


「…………」


しかし悠ちゃんの返事は無い。 なんだただの屍か。


と思ったが、手を組んで目を閉じ、安らかな顔で動かない。 つまりこれは────


ただの屍だな。 後々くさったしたいになる。


「おーいお前らー「ぐぇぇっ!?」 ……悠、お前扉の前で寝て何やってんだ?」


入ってきたも助に腹を踏み抜かれて悠ちゃん蘇生完了。 いやまだ腹貫通してないから。 まだ。


「……ちょっと、姉弟のじゃれ合いをな……」


「何言ってんだお前」


まぁいいや。 と言った感じで話を終えるも助。 何故かでかい箱を持ってる事について聞いた方がいい?


閑話休題 最近使用増えましたね。


「──さて、話を戻すが…………お前ら今日は暇か?」


「忙し「お前には聞いてない」は?」


貴方校舎裏でおボコボコにしますわよ?


「今日……ってことは夕方と夜デスカ?」


「そうだ。 と言うより、今から、今日の残り全部だ」


「……特に予定は無い」


「ワタシも無いデスネー」


「わ、私も無いです……お姉ちゃん、何かお手伝い?」


「いや、手伝いとかじゃないんだ。 無いならそれでいい」


そういうと悠ちゃんは指をパチンと鳴らしても助を動かす。


「あ〜 よっこらしょ」


も助が箱を置いて蓋を開ける。 中には色とりどりの浴衣や巾着といったお祭りセットが3つ。 これはまさかもしや……


「も助……お前いくら女縁が無いからって脱ぎたてを盗んでくるのはどうかと思うぞ」


「違う。 お前は俺をなんだと思ってんだ」


「酒とヤニが恋人で趣味がパチスロ。 台の前で泣いた回数数しれずのオカン泣かせ」


「よーし分かった教師の力思い知らせてやる。 今のお前は俺の采配で成績がどうとでもなる立場なんだからな」


そんな不正は理事長が許さないから不可能だけどな。


「いいぞー! もっと言ってやれも助!」


そうだった今の理事長俺の敵だった。 この学園は腐ってやがる。


「まぁいい。 誤解を解いておくと、これは俺のじゃなくてお前らのだ」


「俺の?」


「私のですか?」


「なんでお前ら男が1番反応してんだ?」


だって俺の事見ながら言われたから……レディースは体格的に入らんぞ。


「そうじゃなくて、そこのガールズの浴衣だよ」


「……私の浴衣?」


「今日って何かあったデスカ?」


「今日…………あっ」


泉ちゃんが何か思い出したのか頭上に丸形蛍光灯が。 天使かな? いや天使ってより聖女とか女神とか救世主とかの方が近いけど。


「今日はお祭りです」


「そうだ。 暇人共、夏の思い出作りに行くぞ」


悠ちゃんがニヤリと笑う。 何考えてるのか知らんけど俺は1つ言うことがある。


「俺、今日用事があるんだけど」


「……なんだ言ってみろ。 本当にあるなら強要はしないが、くだらん用事なら許さんぞ」


「いや超大事だろ。 夏祭りではしゃぐリア充カップル共を呪うっていう」


「お前まだやってんのかそんなこと」


そんなこととは何だそんなこととは。 俺は毎年やってるぞ。 念入りに、綿密に、徹底的に呪う。 こうすることで人からリア充という概念は消え去って皆が一つになる。 これも1種の人類補完計画と言えないか? 言えるかボケ。


「人を呪う暇があるなら楽しんだらどうだ。 夏祭りは楽しいぞ」


「ごった返す人、路上に捨てられたゴミ、バカ高い屋台価格のくせに量の少ない飯……どこが楽しいのか言ってみろ」


「夢壊すなぶち殺すぞ」


あれ俺「脅迫言葉を言ってみろ」なんて言ったかしら。


「そういうのも思い出として楽しむのが祭りのルールだろうが。 少しは無邪気に楽しんでみろお前は」


いやそうは言っても祭り屋台で売ってるもの全部自宅で作れちゃいますし。 それなのにバカ高い金払って人の多い場所で食うとかマジばっかじゃなかろかルンバ。 清掃とか準備を差し引いても綿飴を食いたいとは思わん。


「え〜 いいじゃないデスカ〜 ソージも行くデスヨ〜」


「……お祭り行きたい」


うぉなんか群がってきた。 蟻か? 俺は甘いもん持ってないぞ。


あ、もしかして体臭が甘いとか? それ糖尿病じゃんヤバ。


というか行きたきゃガールズオンリーでGOしなさい。 突然のルー○柴憑依に驚きを隠しきれたわよかった。


「イズミも! 3人で押せばソージは折れるデス!」


いやそんな簡単には折れ\ボギッ/……俺もしかして骨粗鬆症? 骨粗鬆症って言いにくっ


いや骨スカスカの肉は良い肉では無いと思うが。 そっちじゃねぇよハゲ。 ハゲじゃない! 俺はハゲじゃないぞ!


「え!? え、あ……そ、奏士さんも行きましょう?」


なるほど俺はこちゅちょ…………骨粗鬆症だったらしい。モノローグで噛むってどゆこと? 割とマジでどゆこと?


なんか泉ちゃんに後光が……後光って前にあったら前の後光になるのかしら。


「まぁちょい耳を貸せ奏士」


「何?」


群がる蟻んコを振りほどいて悠ちゃんの元へ。 一応討伐されないように警戒はする。 まだ何か隠し持ってるかもしれないし。


「シェアァァ「あそういうのいいから」はきゅんっ!?」


やはりというかなんというか、襲いかかってきた悠ちゃんを躱してすれ違いざまに立派なアホ毛をぶち抜く。


「…………」


一瞬身体を震わせた後、動かなくなる悠ちゃん。 あれ、これもしかして制御装置か何かだった?


試しにアホ毛を戻してみると動き、離すと停止する。


……なにこれちょっと面白い。


「ソージは何やってるデスカ?」


「んー? おもちゃで遊んでるだけだ」


悠ちゃんのアホ毛を付けたり離したり、その度に動いて止まってを繰り返す悠ちゃんを見てると

「この体質は時間停止AVに生かせるんじゃないか」

とか考えちゃったり。 いやさすがに従姉を出演す事は無いけど。 こういう体質の人集めたら行けるんじゃないかって話。


…………飽きた。


飽きたのはしょうがないのでアホ毛は念の為にテープで纏めて悠ちゃんの亡骸に添えておく。 永遠に眠れフォーエバーつって。 最近は懐かしのネタを出すね。 作者原始に回帰した?


「……話進めていいか?」


「あ、すまん」


も助を放置してた。 も助は放置プレイ好きじゃないもんね。 そういう話じゃない。


「じゃあ悠が死んだから俺が変わりに進めるが、まず、この浴衣は悠からお前らにプレゼントだ」


1人1着プレゼントとは太っ腹な。 腹出るより胸が出て欲しい悠ちゃんならではのジョーク。


「えーと、確かサイズで色が別れてるんだよな…………分かんね。 奏士分かるか?」


「知るか」


「だよなぁ〜」


も助は箱から紙を取り出して目を通したが諦めたのか即ポイ捨て。 ゴミを捨てるなゴミが。


「まぁ着てみれば分かるだろ」


切り替え早いな。 そんでもって下手したら1名が2人との違いに落胆するぞ。


「で、だ。 えーっと……そうそう、祭りまで時間あるけど、学園から行くか1回家帰るか、どうするよ」


「うーん……準備もあるから1回帰りたいデース」


「……シャワー浴びたい」


「わ、私も同じく、です」


「そうか。 なら着付けは────奏士、出来るよな」


「出来るけどそういうのって同性がやるもんじゃないのか?」


「というか、なんでソージは着付けが出来るデスカ……」


それは浴衣萌えが来た時に「乳があっても美しい浴衣」というものを研究したことがあるからだとは言えない。 その名残で俺の部屋には女性物浴衣があります。 変態1歩手前(と思い込んでるド変態)なの危ういな。


「前に本で読んだ。 それよか、着付け出来るやつ居ねぇの?」


「ドレスなら出来るデス」


「……浴衣は着ないから」


2人は駄目、と。 紅葉とかもしかしたら行けるかと思ったんだがな。


「泉ちゃんは?」


「す、すみません……私もできないです」


手詰まりか。 あ、ウチの学園の茶道部にでも頼めばいけるんじゃなかろうか。


でもコネクションがな〜 基本的に理事長経由だし。


そもそも生徒会役員全員が交友関係狭いしな。 1番広いベルでも基本的にクラスメイトとしか話さないし。 何気に人見知りなんじゃなかろうか。


まぁそれ言っちゃったら人見知り極めてる俺はどうなんだって話だよね。 交友関係広いとか狭いとかそういうレベルじゃないから。 概念が無い、つまりゲームならグレードゼロもしくは枠外。 果たしてこの領域に到達出来るかな? そこ最下層なんよ。


「あ、あの……」


泉ちゃんがちょこんと手を挙げた。 泉ちゃんのお手手は小さくて可愛い。


「お、お母さんが……着付け出来ると思います」


へーあの人そんなこと出来たんだ〜(興味無し)


「本当デスカ!?」


「……嘘偽り無い?」


「ふえっ!? え、あ……た、多分ですけど……学生の頃にそういう部活に入ってた様なこと言っていたので」


とりあえず泉ちゃんに迫る2人を引き剥がす。 小動物を怖がらせない。


「い、一応確認してみます」


そう言って泉ちゃんはスマホを持って給湯室へ。


その間暇だから生徒会室について触れよう。 このモノローグは無かったことにして。


この学園の生徒会室は設備が良い。 一般学園って長机とパイプ椅子、資料棚とかがある程度って聞いたけど、明らかに差が凄い。


まず生徒会長専用席。 高級そうな机と黒い椅子、そして謎の羽根ペン。 マジで羽根ペンの存在意義が分からんが、これだけでかなりの額だ。 前に調べたから多分合ってる。


ちなみに羽根ペンは何も書けない。 文字通り置物。


で、役員はキャスターと肘掛付きの椅子と机。 机はまぁ……広い机ってこと以外はそこまで。 高い机出されても邪魔やし。


そして応接用の1人掛けソファ2つとガラス天板の机。


と言っても、基本的に直接相談やちょっとした手伝いの依頼に来る人は立ったままなことが多いからそこまで使わない。


他にも、休憩時に横になれる3人掛けソファや大型モニター、資料棚、簡単な調理も出来る給湯室に、掃除用ロッカーが隠し扉になってる会議室。 会議室っていうか休憩室だけど。 一応会議も出来ます。


そして「お、お待たせしました」 おっと誰か来たようだ。 いやこれは違うか。 泉ちゃん戻ってきただけやし。


という訳で説明はここまで。 さぁて止めた本編時間を進めよう。


「イズミ、どうだったデスカ?」


「えっと、お母さんから許可貰えました」


「……何時頃お邪魔すればいい?」


「い、今からでも大丈夫と言ってました。 良ければお昼も一緒にどうかって……」


「……どうする?」


「うーん……シャワー浴びたりメイク道具とか取りに帰りたいデス」


「……正直着替えたい」


「となると────」


ん? おやおや俺を見てるな? 何見てんのよ。


「何?」


「Hey taxi」


人をタクシー呼びする無礼さとか色々言いたいことあるけど一つだけ言うなら発音良いのがムカつく。


「ソ〜ジ〜♡」


うわキモ。 語尾が特にキモイ。 ウザイ。


「車出して欲しいデ〜ス♡」


「めんど」


全員車で学園に来てるから家に帰るだけなら俺の車で帰ればいい。 つまりこれは泉ちゃん家まで送れってことだな? めんど。 二回言いました。


「俺に頼まずにそこら辺に潜んでる護衛集団に頼めよ」


「それだと防弾ガラスの黒塗り高級車でイズミ宅に向かう事になるからすんごい目立つデス」


それに関しては俺の痛車もどどすこどどすこだと思うんだけど。 間違え方ラブ注入じゃん。 しんごお呼びじゃないっす。 読者に伝わるか不明なボケを入れるな作者。


「それに、途中でお昼の食材も買わないとデス」


「つまり俺は更に待たされるってことか」


そして場合によっちゃ俺の財布が軽くなる。 免許だけ抜いて財布は家に置いていこうかな。 俺Sumica以外の電子マネーとかバ○ドルカードとかやってないし。 m付け足して別モンになってますよ。つーかアレcじゃなくてkだし。


「ああ、流石に食材費はワタシ達で出すから大丈夫デス。 主にクレハが」


「……私?」


「エンゲル係数的に大半をクレハが出すべきデス」


「……面倒だから全額私持ち」


ヤダ、この娘太っ腹。 そしてなんて男らしい。 これが稼ぎの差か……


※ 総額ならこいつの方が上です


「という訳でソージ、お願〜い♡」


「送ってくから徐々に近寄ってくるんじゃねぇ。 だるまさんがころんだじゃねぇんだぞ」


「ワタシはソージと『向かい合ってのおしくらまんじゅう』がしたい!」


遠回しに聞こえるド直球の下ネタに驚いちゃったよ。 奏士くん思わず手が出そうになったね。


「……着付け終わってからの待ち合わせ場所はどうする?」


「うーん……イズミの家とワタシとソージの愛の巣から考えて……」


不法侵入で処刑されろ。 司法の崩壊っぷりが凄い。 三権分立の教えはどうなってんだ教えは!


「この神社前で待ち合わせってどうデス?」


「んー……ここだと近くに駐車場無いんだよなぁ」


ちょっと歩くというかそもそも祭り行く気が無いというか。 今更な気がするけど。


「ん〜 じゃあソージがバスで来るとか」


「というか、普通に泉ちゃん家待ち合わせにすれば万事解決じゃない?」


「待ち合わせしたいから却下デス」


「なんだこいつ」


確固たる意思で棄却されたんだけど俺はどうすりゃええねん。


「行きは待ち合わせ、帰りは並んで歩く……これこそがロマンかつ王道! ソージにはそれをする義務があるデス!」


そんな義務は存在しない。


「ちなみにこの義務は勤労教育納税と違って放棄しちゃダメデス」


「国民の三大義務を放棄するな非国民が」


「ワタシイギリス人デス」


「クソが」


シンプルに「クソが」ってワードが出ちゃった。 こいつ無敵か?


「祭りをやる場所と終了時間から夜遅くなるのは目に見えてる。 そして我が家は知っての通り祭り会場の対極にある。 夜にそんな距離歩かせるか」


「それはソージがおんぶするなりホテルで休憩するなりすれば……」


「論点そこじゃないしこの近くにラブホは無ェ」


まぁラブホっぽいのならあるけど。 言わないでおこう。


「……お願〜い♡」


「初手効果無しなのに2度目をやる意味ある?」


「1人でダメなら3人で、デス! 2人もソージに媚びればこれで勝つる! デス」


キングベヒんもスにメテオ落とされてしまえ。


「…………お願い?」


何故に疑問形なのか。


「お、お願いしまちゅっ…………あう」


泉ちゃんが噛んで口抑えながら涙目。 これは勝つる。


仕方ないのでここは大人の男らしく対応してやろう。


「しゃーねぇな……バスがある内に帰るならそうしてやろう」


「わーい!」


2人を巻き込んでハイタッチするベル。 あんまり飛び跳ねると泉ちゃんが1部を比べて落ち込むから辞めなさい。


「だそうだが、莇、お前もそれでいいか?」


我関せずの姿勢で会話に参加せず、スマホを弄っている莇も巻き込む。 味方の犠牲は少ない方がいいが、それ以外の犠牲は多い方がいい。


「あ、私今日は別行動でお願いします」


「何か用事でもあるのか?」


「用事……と言いますか、少々お手伝いがありまして」


「手伝い?」


こいつそんな人脈持ってたのか。 祭りってことは屋台かな。


「以前からお世話になっている方が出店するとのことで、私もそのお手伝いを」


「それって何時頃までやる予定デス?」


「特に決めてませんが……夕方人が空いたらでしょうか」


「じゃあ、その後皆で一緒に回るデス」


と、役員全員で楽しもうと莇を誘うベルだが────


「いえ、その後はその方と一緒に回る約束でして」


「ふーん……それって男か? 女か?」


「じょ「総員構え!」」


「わわわっ!?」


号令とともにワラワラと現れた仮面の集団。 見事な手際で莇を縄で縛って各々武器を構える。


「そ、奏士殿? これは一体……」


「黙れ……貴様は禁忌を犯した」


「同じ屋台で2人きりになるだけでは飽き足らずあまつさえ祭りを一緒に回る……もってのほか!」


「よって神に変わって裁きを下す」


「「「我らリア充撲滅委員会が貴様を殺ぉす!!」」」


なんか某学園の団みたいになってきたな。 というか俺の予想以上に人増えてない? 最初は10人ちょいだったと思うんだけど。


「そ、ソージ!? この人たちは誰デスカ!?」


「……一体どこから……」


「あわわわわ……」


「お、落ち着いてください皆さん! 女性と言ってもまだ中学生程度、子どもです!」


「そんなことは関係無い! 貴様がイケメンである時点で極刑は免れるというのに、その上中学生……極刑では生温い!」


「そうだそうだ! イケメンは敵だーっ!」


「俺にその娘を紹介しろー!」


「イケメン、死すべし……」


今更だけど血の気の多い連中だ。


まぁそいつら集めた場所作ったの俺だけど。


「連れて行け」


「「はっ!」」


縛り付けた莇を担いでわっせわっせと外へ連れ去る。 運が良くて莇は四肢が繋がった状態で火葬できるだろう。


「御協力、感謝します」


「気にするな」


委員長の「吊るされた男コンストラクト」が、俺に一礼して部屋から出ていく。 俺の立ち位置的には委員長の下だけど創設者だからね。 年上の部下とか社長の息子とかそういう感じ。 ちなみに委員長は2年。


室内に残った委員も「ザッザッザッ」と足並み揃えて出ていく。 そして訪れる静寂。


「な、なんだったデスカ今のは……」


そして静寂破りのベルフローラ。 なんか異名感あって素敵。 後半のベ〜ラ除いて。


「……奏士のお友達?」


「名誉毀損も大概にせえ」


「……それが一番の名誉毀損」


「クレハクレハ、ソージに人間の友達なんかいる訳ないデス」


その通りだけど他人に言われるとぶち殺したくなるな。


「……青葉達は?」


「本人曰く『あれが友なら人生の汚点でしかない』って」


「……めんどい」


「デースねー。 ソージの孤高(笑)ならぬぼっちキャラなんて物語序盤で消え去るってのに本人はまだ友達居ないと思ってるデス」


落ち着け。 まだ慌てる時間じゃない。 こいつを殺すのはまだ早い。 犬鳴村で殺せば無罪だ。


あれでも憲法と刑法って違うよな。 でも実在するかわからん場所で殺して死体発見すら不可能なら無罪だろ。 証拠が無い以上有罪にはできまい。


「それより、奏士殿の交友関係云々よりも重要なことがあるのでは?」


「うおっ!?」


莇がしれっと戻ってきてた。 無傷且つ息も乱れずに。


「無事だったのか」


「えぇ、あまりの手際の良さに一瞬戸惑いましたが」


「あいつらは?」


「どうやら寝不足のご様子だったので皆さん寝てしまいまして」


確実にこいつ役員全員昏倒させたな。


そうか、そういやこいつ俺以上に強かったな。 俺が全員余裕ならこいつも余裕か。


でも……残念だがその程度では止まらないのが奴らだ。


憎しみが生み出す力は底知れぬぞ。


「FG班は3階へ! ABE班は2階以下の捜索を続行! CDH班は校舎外を捜索! J班は後方待機で各隊に伝達! F班はこのまま俺に続けーっ!」


「「「うぉーっ!!」」」


「いいか! 絶対に奴を逃がすな!! イケメンリア充モテ野郎が踏み付ける雑草の怒りを思い知らせてやるのだーっ!!!」


「YES! YES! YES!!!」


「見敵必殺! 見敵必殺ぅ!」


「死すべし……イケメンは死すべし……」


廊下から賑やかな声と足音が。 学園生活を満喫してるようで何よりだ。


「……短い付き合いだったな」


「待ってください。 いくら何でも決別の受け入れが早すぎでは?」


「アオバ……骨は拾ってあげるデス」


「……名無」


「お嬢様も早すぎます。 それとまだ死んでいません」


「え、えっと……」


自分はどうするべきかオロオロしてる泉ちゃんに手を差し伸べてあげるのが大人というもの。


「泉ちゃん、こういう時は静かに手を合わせてあげるのが一般的だよ」


「そ、そうなんですか? でしたら……」


「泉殿まで!?」


深く突き刺さったのか膝から崩れ落ちる莇。


「さて、別れも済んだし帰るか」


「了解デース! あ、ソージ」


「……浴衣の箱はどうする?」


「トランクに積んどく。 泉ちゃん家に行った時に降ろせばいいだろ」


「じゃ、じゃあ私も失礼します」


箱を担いで生徒会室から出る。 これ地味に重いな……


「ソージ、重かったらクレハも持つデス」


「……なんで私?」


「この中で1番力があるからデス!」


「……私はペンより重い物が持てないか弱き乙女だから」


「この前30kgの米4つを片手で軽々持ってただろ」


「……ペンが2tある」


「無理矢理すぎるって」


それだとこの箱2t以上あるってことになるじゃん。 力持ちってレベルじゃないぞ俺。 ギネスだよ。 ギネっちゃうよ。 狼だよ。 それギネス違い。


そしてそんな中でも端っこをそっと持ってくれてる心優しき泉ちゃん。 お前も見習えこの優しさを。


「見つけたぞーっ! 追え追えーっ!!」


活気のある指揮官。 廊下を走り回る足音。 殺意に満ちた顔────は仮面で見えないけどヒシヒシと感じる。


「……あれも奏士のお友達?」


「あんなのが友な訳あるか」


「……付き合う人は選んだ方がいい」


ホントにな。 お前の事だぞ紅葉。


「そうデスよ。 もっとワタシとかワタシとかワタシと付き合って膣内なかで突き合うべきデス」


お前のことでもあるんだけどな。


「ま、まぁ……仲良しなのはいいことですし……」


泉ちゃんの事では決して無い。 みんなも付き合う人は選ぼう。 俺は選べませんでした。


その後のことは知らんが、莇が再び無傷で帰ってきた事からまたぶちのめしたのだろう。


まぁ多分頑丈だし別に死んでも俺的に悲しくないからいいか。 所詮は赤の他人だし。


─────────────────────────


なんやかんやあったけど、3人ってか正確には2人だけど、泉ちゃん家に送ってその後。


俺は家に帰ってシャワー浴びて一休みして、重政をブラッシングしている。


「お前白猫のくせに毛が多いな」


「んな〜(あーそこそこ)」


なんとなく白猫ってシュッとしてるというか、毛が短いイメージあるけどこいつはそこそこ長い。


まぁだからこそモフいんだけど。 なんだかんだ言って俺は重政大好きな典型的ダメ飼い主だから。


これは読者全員が知ってるか。


「これ終わったらお前もちょい手伝え」


「(欠伸)」


さてはこいつ聞こえないフリしてるな? 無理矢理にでも背中マッサージさせてやる。


ブラシを嫌がる猫が多い中、我が家の猫は見事なリラックス。 貫禄すらある。


そういやこいつ、ここいらの猫のボスなんだっけか。 飼い主に似ずに威厳皆無だけど。


……3人とも大丈夫かな。


泉ちゃんママは甘やかしたがりというか、天音さんに似てるというか。 誰だか知らない人は過去の話を遡れ。


とにかく、息子は反抗期で構ってくれず娘は友達や生徒会で忙しい。 夫は仕事中。


つまり、この時間帯は1番甘やかしたい欲が強い。


そんな中あの2人を放り込んだら……


まいっか。 他人だし。 俺関係ねーっと。


「にゃ(反対側やれ)」


「はいはい」


この猫様にも泉ちゃんの謙虚さを見習って欲しい。いや、泉ちゃんの場合は謙虚ってより人見知りなだけだけど。 それでも千分の8くらいは見習え。 約分しろ。


─────────────────────────

Girls side


「ただいまー」


「お邪魔シマース!」


「……ベル、せめて返事待つ」


奏以下略


泉宅にやってきた3人。2人? 多分2人。


返事も待たずにベルが家に入ったが、最低限(本当に最低限)の礼節はあるらしく靴は脱がすに玄関で待つ。


「はーい、待ってたわ〜」


家の奥から泉ママの声が聞こえ、遅れてエプロンを着たまま現れる。


「ただいまお母さん」


「おかえりなさい。 手、洗ってらっしゃい」


何気ない親子の会話。 のはずだが……


「……妹?」


「……イズミは三人兄弟だったデス?」


どうてみても泉の方が歳上に見えるその見た目に2人の処理は追いついていない様子。


「えっと……こちら母です」


「どうも〜 泉がお世話になっております〜」


そっと三指付いて頭を下げる泉ママ。 泉は気恥しそうにしている。


「……ども」


そして既に処理しきったのか、いつもと変わらぬ様子でぺこりとお辞儀をする紅葉。


「えぇ……クレハ順応早くないデスカ」


「……ロリママは定番」


とんでもなく失礼だが、紅葉の言うこともわからんでもない。


泉ママ。 2児の母。 つまり経産婦である。


「うふふ〜 それにしても泉がお友達連れてくるなんて初めてじゃないかしら〜」


だと言うのにとても若々しい。 いや、若々しいでは片付けられない見た目だ。


泉ちゃんと同じく明るくフワフワな茶色の髪。 身長は140に満たないかギリ。 白くスベスベな肌にはシワもシミも無く、体付きも平坦と言える。


そう、見た目だけなら泉ちゃんの妹にしか見えないのだ。 実際、泉ちゃんの方が背も発育もまだ上である。


どんぐりの背比べ等では無い。 決して。


「……これ、お昼をご馳走になる代わりに」


「あら〜 態々どうも〜」


紅葉が食材でパンパンの袋を手渡す。 紅葉ですら少し重いと思っていた袋だが、それを受け取った泉ママは軽々と持つ。


「お2人とも靴脱いで上がっちゃって〜 せっかくいい食材くれたんだし、お母さんお昼は腕によりをかけて作っちゃうわよ〜」


グッと細い腕の力こぶを見せる泉ママ。 勿論、腕の筋肉はピクリとも動いていない。


「……お邪魔します」


「お邪魔するデース」


2人は靴を脱いで上がると今に案内される。 集合住宅ながらそれなりに広さがある。


「2人とも自分の家だと思って寛いで〜 今ご飯用意しちゃうから」


そういうと台座を取り出して調理を始める泉ママ。 見た目は料理に挑戦する幼女だが、動きは手馴れていて淀み無い。


「こ、これが母の強さ……」


「……ベルのママは?」


「mamはバリバリのキャリアウーマンだから基本的に家に居ないデース。 家事はメイドとワタシがやってマシター」


「……お嬢様」


忘れがちだが、これでも大きな製薬会社の社長令嬢である。 こんなのでも社長令嬢である。


「あ、お2人とも何か飲みますか?」


「……麦茶でもあれば」


「……マスター、彼女と同じものを」


「……泉はマスターじゃなくてママだと思う」


「突っ込む所そこなんだ……」


泉が冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップを持って戻ってくる。 麦茶の濃さって家庭で変わるよね。 三倍希釈が最高。


そして待つこと数十分。


「みんな出来たわよ〜」


暖簾を掻き分けてエプロン姿の泉ママが現れる。 机の上には沢山の料理が所狭しと並んでいる。


「紅葉ちゃん……でいいのかしら? いっぱい食べるって聞いてたから沢山作っちゃった〜」


ニコニコ笑顔の泉ママ。 そして目を輝かせる紅葉。


「さっ、ご飯にしましょ。 泉、柚希呼んできてもらえる?」


「あ、うんっ」


泉は柚希を呼びに部屋にと向かう。 2人はキョトン顔。


「ユズキ?」


「あっ、2人には紹介がまだだったわね〜 泉の弟で、私の息子。 今ちょうど帰ってきてるのよ〜」


「……ああ!」


成程と言った感じで手を打つベル。


「……」


そして一緒に思い出した紅葉だが、その切っ掛けは奏士が柚希に呪いをかけていたからとは口に出さなかった。 ちなみに背が伸びなくなる呪いをかけていた。


「お母さん」


と、泉が戻ってきた。 しかし、柚希とやらの姿は無い。


「柚希、今日は外で食べてくるって」


「ンも〜 そういうのは早めに行って欲しいのに〜」


泉ママが可愛らしく頬を膨らます。 違和感が無いのが1番怖い。


そして「柚希が食べない分が残ってしまうんじゃないか」という懸念に対しては「紅葉がどうにかする」で万事解決。


「それじゃ、柚希は放っておいていただきましょう」


「……ご飯」


奏士の料理並に上機嫌な紅葉の腹が鳴る。 音は言わないでおこう。


「いただきまーす」


「「「いただきます」」」


─────────────────────────

ゴミ side


おっともう名前に合わせずに直接罵ってきたな。 俺という聖人をゴミ呼ばわりとは無礼千万言語道断粉砕玉砕大喝采であるぞ。 誰だ大喝采してる奴は。


というかgirlsside長くない? つーかほぼ泉ママだったけどgirlsと呼んでいいのかコレ。 急に木ノ葉丸になるじゃん。


時計をチラリ。 体内時計は既に狂ってる。


時間的に3人とも飯を食ってる頃合か。 俺もそろそろ食うかね。


莇は戻ってきてないというか多分二度と戻らないというか。 式場と墓石の用意はしておこう。


「お前飯食ったしなぁ」


「にゃ(?)」


くりくりおまなこの重政はどうでもよさげ。 というかそこ「御目目」じゃないんだ……


何食うか考えながら重政の前足揉む。 猫は足を触ると嫌がると言うが、重政は基本的にどこ触っても受け入れる。


前足の絶妙なモフミと柔らかさが俺のアニマライズを高めていく。 せっせっせのよいよいよい。あーるーぷーす……これは違うか。


アルプスは1万尺、ドンペリは3万弱、俺の財布には5万も入ってない。 銀行行かなきゃ。 「銀行行かなきゃ」みたいに同じ文字連続してるのなんか気持ち悪い。 御目目とか。


重政こいつ悩みとかストレスとか無さそうだなぁ……


とか思ってたら重政は伸びをして外へ出てしまった。 熱中症には気をつけろよなー


重政もどっか行っちゃったし、俺もたまには外で食おう。 今日はこの後疲れそうだから体力温存しておかなきゃ。


なんて言って外に出たはいいものの、特に食いたいものがある訳でもなく。 家から出たばかりだけど帰りたくなってきた。


車庫に行って自転車を取り出したがそれで何処へ行くか聞かれると悩む。


とりあえずガッツリ系じゃないな。 そしてこの後屋台巡りに付き合わされる未来が見えるので軽くでいい。


そんでもって米より麺やパン系だな。 屋台で米系食いそうだし。


となると……アイムラビニかうどんそばのどっちかだな。 すき家もアリ。


ちなみにマック・マクド・ナルド過激派に配慮してここではアイムラビニと呼ぶことにする。 あ、そうなるとモス・モスバ過激派とかキング・バーキン過激派も参戦しそう。 仲良くしようや。


という訳で牛丼を食おう。


《牛丼(米・肉・割とガッツリ系)》


さっき言った条件に何一つ当てはまってないけど食いたくなったから食う。 それが自由ってことだと思う。 自由過ぎる気がするけど。


「えらっしゃいしゃせー 空いてる席にどうぞー」


迷わずカウンターに座る。 隣は1席開けて座るのがお互いに良し。


ここで俺はメニューを迷わない。 稀に気分転換で変える時があっても基本は変わらず。


パネルを操作して注文し、麦茶を飲みながら待つこと数分。


「お待たせしましたー 牛丼特盛と唐揚げ6個です」


ぺこりと頭下げて箸とレンゲを取る。 牛丼の半分にはごまドレ、残り半分には醤油を数的と七味少々。 唐揚げはあえて何もしない。


ほんのり味濃いめの牛丼が完成する。 これと熱い唐揚げを交互に食うのが凄い罪悪感吹っ飛ぶ美味さ。 やっぱシンプルイズベストってやつだな。 ベースがシンプルな牛丼だからこそ味が広がる。


1口目は決まってごまドレから。 ドレッシングで熱い牛丼が少し冷めてるから火傷しない。


「…………」


訂正する。 火傷はする時はする。 超熱い。


麦茶で冷やしてもう一口。 口の中がまだ冷えてるから今度は大丈夫。


熱さに慣れてきたところで唐揚げを1つ一口で。 中は熱いがこの熱さを超えた先が美味い。


唐揚げを飲み込んだら牛丼。 牛丼飲み込んだら唐揚げ。 なるべく交互に、バランス良く食べる。 栄養バランスは既に崩壊してるから今だけは気にしない。


そして1番中止すべきポイントは麦茶。 飲むのは食事前に胃を慣らすのに1回、食べ始めに口内を冷やすために1回、中盤に口内に溜まった味を流してスッキリさせるのに1回の計3回が望ましい。 それ以上は胃の中で米が水分吸って余計に膨らみかねない。


そして残った麦茶は食後に口の中身を全部流すために飲む。 これが最適解である。


更に、これを行うことで得られる1番のメリットは……………………


「追加の麦茶注ぎますか?」


「あ、ねがぃしま(す)……」


こういうことが起こらない。


そして俺がおかわり貰うくらいに麦茶飲んでる理由は外が暑かったから。 最適解がどうしたその場その場で変わるんじゃい。


そのまま飯食って会計して外に出る。


なんか飯食った後って少し仰け反って腹叩きたくなるよね。 こんがり肉食った後はより一層。


「「あー美味かった」」


と、隣のラーメン屋から出てきたであろう誰かとハモってしまった。 ヤダ恥ずかし。


気にせずその場を去ればいいものを、つい気になって声のした方を見てしまうのが人間というもの。 俺は猫を殺した好奇心を飼い慣らしてるからしゃーない。


そして好奇心を飼い慣らしてる俺は猫に負け、猫は好奇心に負ける。 これが「ぺぴゃーぷす」か。 コロコロでしか見たことない単語出てきてびっくりしちゃった。


「「…………」」


目と目が逢う瞬間嫌いだと気付いた。


会話もしてない声も聞いてない名も知らない。 そんな相手だけど目が合った瞬間本能が「嫌い」だと言っている。 デスボイスで。 本能風邪引いたん? トラ○ロップ飲めよ。 それ乗り物酔いの薬やで。


本能が風邪引いたとするならベンザブロック買う時なんて言えばいいんだろうか。


Q.あなたの風邪はどこから?


A.私は本能から


こんなんベンザブロックの管轄外だろ。 風邪薬ねぇよどうしよう。


とりあえず本能にトローチ舐めさるとして、目の前のこの敵をどうするか。


こんな妄想巡らせてる間にもお互い目が合って0.09秒でガン飛ばしてますからね。 そこまで刻むなら0.1で良くないかって質問には沈黙で答える。 それが正解だって言ってたもん。


「「…………」」


じりじりと、お互いに目を見ながら離れる。 なんか熊と遭遇した気分。


まぁ、今見てる相手は熊っていうより蛆虫だけど。 こいつチビだし。


「…………なんでテメェがここに居る……」


「……休みだから帰省してんだよ」


もうこいつ殺っちゃっていいよな? 店の前だけど殺っちゃっていいよな?


こいつよく見るとツリ目だな。 タレ目の姉とは大違いだ。


のくせに見た目だけは姉とそっくりになりやがって……成長期ガン無視でチビだけど。 俺がこいつと同じ歳の頃は170はあったぞ。 今からざっと4、5年くらい前。


……5年で8cmしか身長伸びてない俺って……これもう限界ってことかな。 経験値だってレベル上がる事に必要数増えるし、ロードだって98%くらいから微塵も進まなくなるでしょ。


「お前こそなんでここに居る……」


「俺はここ住まいだ……」


お互いに殺気が最大限にまで高まった次の瞬間


「「…………けっ!」」


弾けるようなことは無く、お互い顔を背ける。


「そのムカつく面二度と見せるな」


「テメェこそ二度と近付くんじゃねぇ」


ガキが……舐めてると色々と潰すぞ。


まぁ俺は大人なんでね。 ガキ相手に本気は出さない。


でもムカつくからその姉弟共通のアホ毛と明るい茶髪を全部抜く。 それくらいで許してやろう。 何、最近はスキンヘッドも人気あるらしいぞ(笑)


お互い相手関わると良い事ない事を熟知している。 だから威嚇だけしてこれ以上は不干渉。 平和に生きよう。


俺の数少ない天敵(負けないけど排除不可って意味で)と別れて本屋に向かう。 単行本はメロンとかで買うけど雑誌は近くの総合本屋で買うタイプです。


俺の本棚は自室5棚、隠し部屋に7棚あるけどそれもかなり埋まってきた。 そろそろ増設しなきゃな……


でもそれより本が増える方が早い。 稼ぎがあると買ってしまう。


そしてラノベを好きな絵師だからって表紙で買って後悔した数は今更数え切れるか! 唐突な克己ちゃん。


という訳で本は買わず、冷やかしだけして店を出る。 いや、買うつもりは当初あったから冷やかしではないのか? 日本語って難しいね。


店を出て時間を確認する。 約束の時間は午後5時55分55秒。 まだ時間があるし何この濁点だらけの約束時間。 そして刻むねぇ。 もう午後6時でええやろ。


家帰ってゲームするにはちょい時間が足りない。 俺ゲームはちょこちょこじゃなくて一気にやりたいタイプなんだよね。


そしてこの思考こそ積みゲーの原因である。 だってシーンの途中でセーブするとCG回収できないし……


どうか1日でいいから誰にも邪魔されず部屋でエロゲーをしたい。 俺3年前に発売した奴を発売日に予約したやつ買ったのにまだクリアしてないんだぞ? それは完全に俺が悪いけどそれを進めさせてくれない2人にも問題はあると思う。


奏士くんも男の子かどうかはさておき男だからね。 最悪おっ勃つ事もあるし、それ見られたら死ねる。


というか、男女関係無くR18なシーンを一緒に見るってキツくない? 俺はアニメ見てる時に微エロシーン流れただけで誰にも聞こえてないか見られてないか気にするぞ。 でもテレビ以外で見てる時は気にならない不思議。


そんなことを考えながら公園の滑り台を滑って鉄棒で絶技を披露して疲労して腰と腕が疲労骨折しそう……


なので休めるためにブランコギーコギコ。 夏休み真昼間だけどガキは家でゲームしてるだろうから公園には人っ子一人居ない。


ガキの声の代わりに蝉の声が響き渡り、そして巡回中のポリスメンと目が合う。 俺怪しまれてる?


違いますニートとか不審者じゃないです。 いやちょっと前までニートでしたけど今は学生やってます。 いや留年じゃないですある意味では留年とも言えるかもしれませんけど。


なんて遠くからだけど目線で会話をする。 それをわかってくれたのかポリスメンは去っていった。 よかった……俺今ポケモン持ってきてないからバトル挑まれたらどうしようかと思ってた。 俺マサラ人じゃないから生身じゃ渡り会えない。


前から思ってたけど心配するポイントがおかしい。


奏士くんは通りかかるマダム達のヒソヒソ話にめげないメンタルの持ち主だから気にせずブランコを漕ぎ続ける。 立ち漕ぎは危ないからしない。


「ほぉーれ、公園だぞぉ〜」


「わぁーい!」


「あらあら、走ると危ないわよ」


と、公園に小さい子どもを連れた家族が何組かやってきた。 2、3歳くらいか。 それくらいならゲームより身体動かす方が楽しいのかね。 というかゲームが分かるのか知らん。


「パパ〜 ブランコ押して〜」


「はっは、良いぞ〜 お父さんとっても力持ちだから、飛ばないようにしっかり捕まっているんだぞ」


「うん! 掴んだー!」


「よーし、それっ」


隣で仲良し親子がブランコ漕ぎ始め、気付けば公園は親子連れだらけになっていた。


……不快だ。 心底不快だ。


不快なら去るに限る。 自ら飛び込むほど馬鹿じゃないんでね。


「ほら、お兄さんブランコ譲ってくれたよ。 ちゃんとお礼言いなさい」


「うん! お兄ちゃんありがとー!」


「…………」


真っ直ぐでキラキラした目で言われた。 別に譲った訳でもないのに。


あの子どもはきっといい子に育つんだろう。 父も母も優しく、暖かい家庭で。


生憎と俺は"家族"という物には縁が無くてね。 それでか知らんが『仲良し家族』に対して嫌悪感が凄い。 とても不愉快だ。


幸い、俺は表情に出さない訓練をしてきたから俺の眉間にシワは無い。


ただ、近くにいた野良猫がいつもなら寄ってくるはずが逃げ出した事を見るにオーラには出ていたのだろう。 オーラしまえしまえ。


…………霊圧が……消えた……? 霊圧ってこんな感じで消えるもんだったっけ。


聖人の奏士くんがグレちゃいそうになる公園はさっさと出てチャリを漕ぐ。 飯も食ったし、特にやることも思いつかんし……帰るか。


結局は帰宅に集約される俺のお出かけ。 やっぱり家は最高だね。


気分転換に素振りでもしよう。 シャワーはまた浴びればいい。


部屋に入りダミーコンセントをずらしてスイッチを起動する。 すると壁が動いて一振の刀が出てくる。


これは俺の愛刀、大切な親の形見────なんて設定は無く、正真正銘俺の物。 ちなみに真剣だけどちゃんと申請してあるからセフセフ。


クソどうでもいい設定だが、我が柳家には

「次期当主の証として前当主より名を掘った刀を贈る」

という本当にどうでもいい設定が今の今まで隠されてたし今後も隠されてて欲しかった。


しかもなんだそのアホらしい設定。 俺の代で終わりにしてやるよどっちにしろ終わりだけど。


という訳で今までの当主が持ってた刀は蔵に眠っている訳でして、なんやかんやあってそれも全て俺の持ち物となっているので見方を変えれば危ないマニアだ。 でも刀ってドキドキワクワクしちゃわない? 男だもの。


奏士くんこれでも神速の居合切りできちゃうくらいには強いんだぞ。 真似したくて練習しまくったからね。 剣聖あるある「切ったけど切られたことに気付かずに生きてる」とか「切ったけど断面が癒着しかけてる」みたいな。


庭に出て────と思ったけど外が思った以上に暑く感じたからまだ涼しい道場へ。 扇風機最高。


剣の道と言っても千差万別であり、人の数だけ流派と型がある。


そして我らが柳なんとか術にも一応の型はある。


ちなみにそれら全ては「自分がカッコイイと思えたならそれが型であり流派の開祖を名乗れ」という前提の元作られた型なので事実上型が無いし先祖の能も無い。 本当に馬鹿なんじゃなかろうか。


つまり子孫の俺がこんなにも馬鹿だと思われてる原因は先祖にある。 遺伝なら致し方なし退路なし。


「…………」


さっきから目を閉じてじっとしてるけど寝てるんじゃないぞ。 こんなモノローグ垂れ流すために集中してるだけだぞ。 さっさと切れろそんな集中。


目の前には木製の台の上に立てただけの巻藁。 立てただけということはつまり固定も何もしてないということです。 下手な小泉構だな。逆に上手い小泉構文って何?


開眼して一閃。 遅れて巻藁が切れて徐々に落ちる────なんて高等技術は俺には無理だ。 切っても落とさずに乗せるのがせいぜい。


切れた巻藁の断面を見て少ししょんぼり。 あーやっぱ腕落ちてる。 前はもうちょい綺麗だったのに、藁に力の向きができちゃってる。


と、常人には理解が難しいことで悩んでる俺より、皆girlsガキになるんじゃない? よしそっちを見せよう。 チャンネルとファンネルはそのまま。


─────────────────────────

girls side


「んぐぐ……き、キツいデス」


「……おっぱい痛い」


「あらあらどうしましょう〜 私の家って皆小柄だから大きな胸の方の着付けは習ってないわ〜」


「…………」


「大丈夫よ泉。 あなたは私、おばあちゃん、ひいおばあちゃん、それより前のご先祖さまと比べても、1番女の子らしい身体しているんだから」


「……私で、1番…………」


「あら〜 フォローのつもりだったのにより落ち込んじゃったわ〜」


「……脱いでいい?」


「苦しいデス……」


「あらあらそうね〜 無理に潰すと逆効果にしかならないし〜……2人とも浴衣に合う下着はもってる〜?」


「ゆ、浴衣に合う下着デスカ?」


「……ラインが出ない下着」


「そうそう、それと締め付けが無いタイプの下着ね〜 ナイトブラとか、ちょっとアレだけどスポーツブラなんかも良いかしら〜」


「うーん……家のタンスにはあるデス」


「……私も一応」


「あらあらそうなのね〜」


「でもソージに取ってきてもらえば万事解決デス」


「奏士くんに下着見られちゃうけど大丈夫〜?」


「……洗濯物干して畳んでるのは奏士だから」


「むしろ普段から見ない分ここで意識させるくらいは必要デス!」


「あら〜」


─────────────────────────

UNKO side


「…………!!!」


うぉなんか寒気が。


汗かいてて熱 身体が熱いってのに寒気がする……つまりこれは風邪かな。 なわけあるか俺は無病息災だ。 無病息災ってこういう時使うワードか?


\どすこ〜い! どすこ〜い!/


と、そこで入口の棚に置いたスマホが鳴る。 誰もが忘れてたであろう設定その9「着信音が力士」を掘り出した。 忘れてた設定が最低8個眠ってるの怖すぎん?


「…………ぅ゛ぇ゛」


思わず声に出るくらいには不快なメール。 メール使わずにライン使えライン。


大至急と書かれているので急いで片付けてシャワーを浴びる。 俺のサービスシーンは有料だよ。


シャワー終えて着替えて髪乾かして、もう一度メールを見る。 うん、見間違いであって欲しかった。


ベルの部屋と紅葉の部屋の扉をそっと開け、そっと入ってタンスをそっと開けて言われた下着をそっと取り出す。 なんか泥棒の気分。


ところで、これも見間違いであって欲しいんだけどさ。


さっきベルの部屋入ったら机の上にサプリみたいなのがあって、しかも英文の手紙が添えてあって、更に差出人が海外ブランドでしかもイギリスの会社だったんだけど…………


これあの似非アンブレラから届いた違法薬物とかじゃないよね。 いやどっちにしろ見た目違法感凄かったけど。


……暫く飯には気を付けよう。


外に出てチャリ取り出して漕ぐ。 目指せ泉たその家。 おいおいおい文面からキモオタ臭が凄いぜ。


シャーっとチャリを漕げば10分ちょいで泉ちゃんの家、聖域に着く。 そういや、自転車漕ぐ際の擬音ってコキコキ、キコキコどっちなん?


そろそろだ……そろそろ着くぞ。


「はぁー……ったく。 買い物頼まれるならもうちょい遅くに帰ればよかったぜ」


と、角から現れたのは憎きあんちくしょう。


「うぉっ!? 」


あっちも俺に気付いた。


だが俺はチャリを止めない。 轢き殺し絶対ジャスティスだから。


「あっっっっぶねぇ!!!」


「ちぃ!」


間一髪、泉ちゃんとは対極の運動神経で避けられた。 惜しい惜しい。


「っと。 大丈夫か?」


「テメェ! さっきワザと轢こうとしただろ!」


「見間違いじゃね? 俺は自転車漕いでた。 そしたら、角からお前が現れた。 だから加速しただけだ」


「それを轢こうとしたって言うんだよ!! 怪我したらどうすんだ!」


「俺が悲しまないからセーフ」


「頭イカれてんだろお前!?」


まぁ実際こいつが怪我したら泉ママとか泉ちゃんが悲しむから、本気で轢こうとはしてない。 泉パパ? あれは娘と妻を愛して息子は割とどうでもいいと思ってる人だから。 まぁ怪我したら相手を殴る位のことはするかもだけど。


「それよかてめぇなんで現れた! 二度と顔見せんなつったろうが!」


「と言われても俺ほ了承してないし。 俺はこれからお前の大好きなお姉ちゃんの家に呼ばれて行くんだよ。 邪魔だ退けクソガキ」


「はぁ? てめぇなんか姉ちゃんが呼ぶわけねぇだろ。 妄想は大概にしろよ童貞」


「いや呼んだのは姉ちゃんじゃなくて……後てめぇ! 童貞バカにすんなコラァ! 童貞貫けば英雄になるんだぞオラァ!」


「知らねぇよんな事! 結局は女子に話しかけられなくて手も出せないチキン野郎ってことじゃねぇか!」


「残念だったな! 俺は話しかけれずとも会話は出来る!」


「……そこ威張って言う程じゃねぇよ。 つーか結局話しかけられねぇんじゃねぇか!」


「うるせぇ黙れ。 お前も同じ穴のムジナだろうが!」


「……え、あー……いや俺かのじ「セェェイヤァッ!」あっぶねぇ!? お前今の蹴りは本気だっただろ!」


「黙れ……禁忌を犯した貴様を殺す……」


「やべぇよ目がマジだよこいつやっぱ頭おかしいぞ……」


お互い殺る気は十分、血の海に沈むのは俺か、こいつか。


静寂の中、同時に1歩を踏み出す。 その次の瞬間、


『カラン……カラン……』


という下駄の様な音と共に凄まじい圧を感じ、お互い停止する。


「奏士さん……柚希……」


錆びたロボットの様にゆっくりと声のした方を見る。 そこには浴衣姿の泉ちゃんがゆっくりとこちらに向かっていた。


─────────────────────────

girls side


何やら外が少し騒がしい。


奏士が行くと返信してから既に20分近くが経過している。 歩きで来るとは考えにくく、自転車だとすれば既に得着している頃合いだ。


何かあったんじゃと思い、泉は玄関から外に出てみる。


着替え前の紅葉とベルも続いて。


すると、地上には騒がしい原因である見慣れた2人が取っ組み合いをしている。


しかも聞いてみれば、泉(姉)の話をしている。


それに恥ずかしさやら近所の人に対しての申し訳なさが高まって限界に達した泉は、自宅がある階から物置屋根等を伝って飛び降りる。 高さは最低10mはある場所のに。


シュタっと綺麗に着地。 これには流石の紅葉達も驚きを隠せなかった様で、目を白黒させている。


そして話はさっきに続く。


─────────────────────────


「い、泉ちゃん?」


空色か水色かは分からんが、浴衣もアップにした髪もメイクもとても似合っている。


それまでは良し。


笑顔なのに目が笑ってない。 目の部分だけなんか黒いっていうか影がある。


「柚希……」


「ね、姉ちゃん?」


泉ちゃんはその笑顔のまま、ゆっくりと近付いてくる。 俺の本能が逃げろと叫んでいるが、不思議なことに別の本能が「逃げたら死ぬ」と叫んでいる。 つまり逃げても死、逃げなくても死。 俺はここで死ぬことになる。


グッバイ現世、あの世で暫く楽しむとするよ。


いやまだ死ねない。 未練タラタラ汗ダラダラ。 おかしいな夕方になって涼しくなったはずなんだけどな。


「2人とも、大声を出してご近所さんに迷惑かけるだけじゃ飽き足らず、約束まで破りましたね?」


「や、約束?」


柚希の方を見ればこっちも冷や汗が凄い。 というか足の震え凄いなお前。


「し、してないしてない!」


柚希も俺も記憶に無い。 約束って何? 昔結婚の約束とかしたっけ?


ゴメン……泉ちゃんまだ学生だから卒業してからにしようね。 学生結婚は手続き面倒だから。


「お忘れですか? 私、昔2人に言いましたよね……」


人はこういう時全力で脳をフル回転させるんだそうな。 俺は頭の回転が早いから尚更ウップ。 酔った。


「『二度と喧嘩はしない』……柚希、暫く会ってないからって忘れたの?」


「────!! 忘れてない忘れてない!!!」


「奏士さん……ちゃんと覚えてますよね」


「え、あ、はい」


泉ちゃんは1歩1歩近付いてきて、ついに目前に。


「…………正座」


「「……え?」」


にっこり笑顔で言った内容に思わず声が漏れた。 それは柚希も同じ。


「……2人とも、正座、してください」


「い、いや泉ちゃん?」


「お、おう……ここ外でしかもアスファルトだぜ?」


「…………正座、してくれますよね?」


「「……………………」」


昔植え付けられた本能的恐怖か単なる覇王色か知らんが、圧倒的覇気に押されて硬い地面に正座する。 ああ、夏の日差しで温められたアスファルトがほんのり暖かいよ……これが人類の叡智か。


その後、紅葉とベルが止めに入るまでお説教は続いた。 内容は「次喧嘩したら本気で怒る・二度と喧嘩しない・恥ずかしいから私の話を大声でするな」の三本です。


大人の威厳とか兄役の威厳とかはとっくに治外法権だけど、無言で笑顔を見せてくる泉ちゃんが異様に怖かった。


「なんというか……イズミ達の力関係って凄く偏ってるデスね」


「…………怖い」


2人の話し声が聞こえ「奏士さん? まさか余所見はしてませんよね?」


「してません!」

はいどーも最近この入りが如何に便利か理解したゆっくり作者です。 ゆっくりなんだ……


という訳でやっと登場しましたね、柚希とか何とかそんなやつ。


一応言っておきますが、柚希と明言されるまで時間ありましたけど奏士が食後に出会ったのは柚希です。 分かりにくかったらそれは朝6時の私に言ってください。


それはそうと、柚希の学校はそこそこ夏休みが長めなのでもしかしたら9月頃でも登場するかもしれません。 表面上は仲直りしたので奏士との絡みがあるかもですね。 あのドシスコンには困ったものです。 いや2人ともですけど。


これ書いてて思ったのですが、食事の描写だけ妙に具体的というか細すぎませんかね。


まぁそれはそれとして、今回ちょっと長くなってしまいましたね。 途中のガールズサイドが幅取ってしまいました。


ですが、その分睡眠の重要性はよくわかるお話になれたと思うので、安心してください、吐いてますよ。 寝不足で乗り物乗ると吐きそうになりますよね。 今朝の私とか。


それでは、長々とやりましたが次回は夏祭りです。 現実世界ではハロウィンだってのに作中時間は夏祭り……現実時間に追い抜かれる小説って中々無いですね。


ではでは、次回10/30「奏士 死ね!」デュエルスタンバイ!

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