人の縁は割と長く続く
「データベースに侵入とか、そんなこと奏士にできるの?」
紅葉がちょいと心配そうに聴いてくる。まぁ、単なる学生がそんなことできないとか思うわな。
だが、安心召されよ。
「実はもうとっくに手に入っちゃってたり」
ノーパソに挿したUSBのデータを紅葉に見せる。いやー去年やってみといて良かった。
「・・・・・・奏士、犯罪」
「・・・・・・バレなきゃ犯罪者ないんだ。どっかの無貌の神もそう言っただろ。」
「じゃあ、その後どうなったかもわかる?」
そう言って紅葉はスマホの録音を再生する。スマホからは俺の声が聞こえてくる。脅されてる感半端ないけど俺には効かんのだよ。
「残念だが、お前のスマホくらい簡単にクラックして今のデータ消すくらいできるぞ。ちなみに、クラウドに保存しても同じだ」
そう言うと、スマホを操作していた紅葉の動きが止まる。やはり保存しようとしていたか。
「・・・・・・小人閑居して不善をなす」
「俺がどうしようもない人間なのは事実として、何もしなけりゃ俺は不善も何もしねぇよ。俺はガンディーをも超える非暴力・不服従・無関係・猛反抗だぞ」
まぁ、俺はあの人みたいになる気は無いが。いや、だって色々やらかしてるらしいし・・・・・・それが本当に事実かは知らんが。事実はその場の人間のみぞ知る。そしてセカイは神のみぞ知る。
「ま、それは置いといて……」
「置いといていいの?」
「置いといていいんです」
んじゃ、この話はおしまい。でまかせでまかせ。嘘なのかよ。
「そんじゃ、この生徒リストから相性の良さ良さそうな男をピックアップするぞ」
「……ん」
相変わらず紅葉の返事は短い。
それからというもの、下校時刻までひたすら生徒の整理と精査。まずは男女で分ける。これはPCがやってくれるから楽。その後は書類に書かれた趣味・特技欄をひたすら解析。もう目が痛い。残った生徒の中から良さそうな男を調べ上げ、照らし合わせる。この作業はさすがに明日にならないと終わらないので後でやる。決して面倒臭いからでは無い。
そして翌日の昼休みーー
「ねぇねぇ、どう?」
焔が笑顔で話しかけてくる。そして俺はついつい睨んじゃう。普段、昔から知ってる人以外、俺に話しかけないからついつい警戒しちゃう。もはやパブロフの犬状態。
「……ん?ああ、お前か……もう、用意は出来ている。時間あるか?出来れば昼休み中に終わらせたいんだが」
「いいよー。ボクもなるはやで終わらせたかったし」
こうして、俺達二人は旅立つーー訳ではなく、とりあえず廊下に出る。だって教室で書類出す訳には、ねぇ?
あ、一応紅葉も隣にいます。依頼人は最後まで付き合うのが役目らしい。真面目だねぇ。
「んじゃ、手っ取り早く行くぞ。先ずはあいつだ」
皆(三人だけど)で教室の窓側後方を見る。主人公席に居るのはーー
「学園一のリア充として名高いご存知クラスのイケメン君だ」
さすがに俺でも知ってるイケメン君。お馴染み名前は知らん。興味無いし。
「……私、あの人なんだか苦手」
「ボクも苦手かなぁ」
二人とも「うげぇー」みたいな顔をしている。わかる。凄くわかる。だって俺もあいつ見てたらなんか吐き気してきた。それでも俺は二人ほど酷くは無い。その理由はイケメンにある。
あのイケメン。実家は父親が医者で母親は大学教員。つまり金持ちだ。そんでもって息子のあいつはあの見た目に加えて学年七位の頭の良さと、体力テスト全国トップレベルの運動能力だ。(これについてはさすがに『らしい』レベル)友人も多く、常に女が近くに居る。そんでもって、ウチのバスケ部のエース。まさに勝ち組リア充。氏ね。
大して俺は実家(現在住の)は昔からある一般家庭。多少金持ちだが、貴族とか富豪とか大名とかじゃなくて一般家庭。親? 知らん。何してんのか興味ねぇし。で? 俺は顔はイケてるメンズとは行かずとも整っている方であると思う。ちゃんと手入れもしてる。頭は学年首席で体力テスト全国トップレベルじゃない。鍛えてはいるので運動能力は高い方だ。ソースは体力テストの結果。常に誰も近くに居ない。そんでもって、ウチの帰宅部エース。まさに普通の男。わぁーい全然リア充じゃない。
と、ここまで見れば『頭の良さ以外に勝ち点有るの?』とか言われそうだが、ぶっちゃけ俺の方が人生楽しんでるから俺の勝ち。なんだろ、あいつは見た目リア充だが、ぶっちゃけそんなに楽しんでる感じがしねぇ。あれか、リア充とマダム達特有の『こうしてる私凄いでしょ?』ってやつか? もしそうなら氏ね。
ぶっちゃけ俺の方が遺産抜いても資産多いしどっちにしろ俺の勝ちってことで。まぁ、友が居ない時点で俺とあいつには絶対的な壁があるんだけど。宛ら『ビバ!』って言っちゃうような万里の長城の様に。宛ら、第一位と第二位の様に。俺が相入れることは無いだろう。
「と、とりあえず次行くぞ…・そろそろ吐き気が限界だ」
「私も……もう無理」
「ボクも……」
こうして、三人して逃げるようにその場を去る。というかみんなして扱いが酷い。微塵も心痛まないけど。
その後も、隣のクラス、紅葉のクラス、下級生、上級生ーーはなんか危険そうだから却下。まぁ、そんな感じで当たって見たが、どれもいまいち。中でも一番やばかったのが、
『そんじゃ、次だ。二年最後のクラスのやつだ。』
『ようやく終わる……』
『そんなに辛いなら来んなよ』
『生徒会長の義務がある』
『さいですか』
『それで?その最後の人ってどんな人?』
『最後は一番あるやつだと思うんだがな。ほら、あの窓側三番目の男』
『ああ、あの人。それが?』
『俺が調べた所、あいつは大の男の娘好きだ』
『その理由は?』
『まず、あいつの一番好きなゲームが「オトメ」ってことだな』
『『あ〜』』
『二人して納得しちゃう程説得力高いのかよ』
『だって、あのゲーム最高じゃん』
『激しく同意』
『俺もそれに同意するが……そこまでの説得力になるとは思わなかった』
『他の理由は?』
『あいつの読んでる本に男の娘が出てきたり、付けてるストラップが男の娘キャラだったり、保存してある音声作品が男の娘ものばかりだったりーー』
『奏士……一日でそれを調べたならさすがに引く』
『ボクもそれは……』
『扱いひでー。これ今日の朝態々早く来てこっそりと調べたんだからな。お陰で今日は朝飯抜く羽目になった』
『というか、ボク、あの人と一緒に居たら襲われる気がするんだけど』
『さすがに現実に手出しはしねぇだろ』
『もし、手を出したら?』
『そんときは頑張れ』
『やり投げ!』
『投げやりな』
『ヤり逃げ?』
『そこ変えんな』
『ボク、掘られるの?』
『わからんぞ?お前が掘る側かもしれん。知らんけど』
『アフターケアもしっかりして』
『お、なんだ?またお得意のジト目か?いつも眠そうな目してるからわかり辛いぞ』
『そういうわけで、この人は絶対却下で』
『んじゃ、諦めろ』
ということがあった。で、今は放課後の生徒会室。
結局、見つかることはなく、この依頼はなかったことになった。
「ホントに有難うね」
「礼はいらねぇよ。結局、依頼達成してねぇんだから」
「でも、やってくれたでしょ?だからだよ」
「……さいですか」
多分、これはこいつの心からの礼なんだろう。だからか、何故かちょっとむず痒い。
出ていこうとする焔が振り向いて言った。
「ボク、君となら友人になれる気がするよ」
初めての事だった。誰かに『友達になれる』なんて言われたのは。いや、正しくは「友人」だけど。昔は『お前と居ると不幸になる』だの『お前なんか消えちまえ』だの『氏ね』だの散々言われてきたからそっち方面の対応は慣れてるのだがーーこっちの対応は知らん。教えてG○ogle先生! ……載ってませんでした。
まぁ、それなりに応えてやればいいか。覚悟を決めた俺が言うことはただ一つ。
「そうか、俺は丁重にお断りするぞ」
「ちょっ! ここは『ああ、宜しく頼む』って返す所でしょ!?」
「やだよ友人とか。んな煩わしいのはごめんだね」
「ブーブー」
「五月蝿いあざとい可愛くねぇんだよやめろ」
「奏士も……辛辣」
そうか? 俺的にはだいぶ優しく接してるぞ?
「はぁ〜、まぁいいや。同じクラスだし、また機会がありそうだからね。それじゃ、バイバーイ」
焔は笑顔に戻ると、手を振りながら生徒会室を後にする、騒がしい。
「そんじゃ、いつも通りに依頼書片付けるとしますかね」
「…………ん」
紅葉と二人で大量の依頼書を片付ける。正直、ここに来てから半月も経ってない。だが、俺はこれがいつの間にか『いつも通り』になっていた。ちょっと前までは有り得なかった事だ。
またギチギチに詰められた目安箱から紙を取り出し、仕分けして処理する。相変わらずセクハラが多い。もうこれシュレッダーにかけたら時短で片付くんじゃないの?
開けた窓から入ってくる風が少し心地よい。まだ、綺麗な夕焼けを拝むには早い時間だが、これくらいが俺は意外と好きだ。
『できるなら、この感じが続けばいい』なんてふと、思ってしまう。それくらいにはこの場所は俺にとって新しい居場所となりつつあるようだ。
「…………」
「紅葉さんや、どうしたよずっと考えて」
思わず聞いてしまう。紅葉は今日、ずっと考え事をしていた。何か問題でもあったのだろうか。
「……ずっと、疑問に思ってたんだけど」
「言ってみぃ」
「これって、そっくりそのまま出会い系」
「言えって言ったの俺だけどそのことは秘匿しとけよ」
やはり、最後の〆は台無しになるのだった。
十日なのでキリがいいとのことで投稿してみた。まだ、気まぐれ投稿になりそう。ちょっと投稿日の修正してるから堪忍して。




