第八話 戦い火蓋
様々な問題を乗り越えて遂に、賢者に、会えなかった
居なかった………
「『全く人が来なくて暇なので、人里を旅します』だと」
その声は静かに怒気を孕んでいた
手を握り締め、眉間に皺が寄る
その顔はまさに冷酷な鬼の様………では無いが
それでも百人見れば数人が怯える顔だった
「えっと、その、ドンマイ」
ステフが腕を上げ、肘を曲げ、グッと胸の前で拳を握る
ガッツポーズ
その返事が皮切りだった
大気圧による表面張力は人の手による振動で直ぐに溢れる
、という情景想像した
「ふざけんなよ賢者ーーーーーーーー」
というのが前回のオチだ
ーーー
「どうすれば良いの?」
「しょうが無いなぁ、追跡の魔法を使えばいいんだよ」
その言葉を聞いて俺は物凄い勢いで顔を上げる
それに対しステフは少し狼狽えている様に見えた
魔法!流石は異世界、やる〜
「それは出来るのか!?
スゲー!魔法俺も使えるのかな?
これはイベントの予感がする、ここでステフにまryーーー」
「残念だけど、私にその魔法の適性は無いんだよ」
ぶつぶつと自分の世界に入っていた俺はステフの言葉で現実に戻る
鼻息は荒いまま
期待度MAXだ
「適性?」
「うん、えっとね、魔法には、魔力と魔法適性があってね
魔力は魔法の威力、魔法適性は、その魔法が、使えるかどうか
シンくんには、追跡の魔法適性が、あるかも知れないんだよ」
「ステフは俺にそういう魔法かけて無かったっけ?」
「それはだよ、シンくんの眼を借りてるんだよ、私の魔法は、シンくんの視界を見る魔法?まあ今はいっか、追跡は、対象の跡を探す魔法」
途中の言葉が引っかかるが気にしない方向で
「別物だな、じゃあその追跡って魔法を使えば良いのか?」
「うん、まず自分の身体の中を意識して見て」
自分の身体の中、こんな感じか?
心臓の音と、血管の流れが分かるな
この世界はこういう系統の魔法か
「そうしたら中に何か流れてるものがない?」
「血のことか?」
「ううん、違うよ血じゃない、もっと綺麗な、シンくんだったら、禍々しい何かかな?」
禍々しい何か、うーん無いなもっと探せ、もっと奥まで
………うん、無い!
「無いぞ、そんなもの」
「えっ……そっかじゃあ仕方ないね」
ステフは何かを驚いた顔をして考え込むような顔をしてそう言った
「どうしたことか、こうなったら、聞き込み調査開始だ」
「そうだ、あの魔法(?)のなら、できるかも」
「何するのか?」
「まあ、見ててよ
ヘイムダルよ其の力をお借し願おう、眼は時を越えて無限の世界を映し出す、時空を詠む其の力の名は、【千里眼】」
「クレアボイズ、ヒュストンさんの究明の瞳に似てる気が………」
ステフの目が光り、透き通るように瞳が白銀になった、だがそれはほんの一瞬で元に戻った
「何したの?」
「私の最高傑作、千里眼これはある程度なら
過去も未来も見えるんだよ、でも持続時間が少ないのが欠点」
「未来を、詠む」
ゴクッと唾を飲み、喉を鳴らして爛々と少年の様に目を輝かせる俺を見てステフは苦笑いをする
「そ、でもいま見たのは、過去、賢者は西南西
ちょっと北に寄るけど、これまでと殆ど同じ方角に行くよ、目的地は聖都グランディール」
「聖都って言ったら、教会とか、あるのか?
世界の宗教の集まった所とか?」
「大体そんな感じかな?
でも私達は人混みには入れないんだよ」
「魔女と魔女の使い魔だからか?」
「うん、だから、グランディールの外で待ってるの
グランディールには正門と、南門の2つがあってね、その2つで賢者を出待ちすればいいんだよ」
「でも、俺は賢者の顔なんて知ら無いぞ」
そうだな、最古の賢者なんて言うんだし老獪な爺さんか?
賢者だから魔法を使うよな、じゃあローブとか着てたりして
「それは大丈夫、シンくんの眼を借りるよ」
俺の見当違いな妄想をステフがスパッと切る
「眼、そうか、そこであの魔法を使う訳か、魔法って凄いな、俺もつかいてー」
「ドンマイ」
「何でそんなこと言うの」
ブーたれる俺を見てステフがクスリと笑う
「ふふ、早く行かないと置いてっちゃうよー」
「行動が早い。家の中は見ないのか?」
ステフは上目遣いの暗い微笑みを見せる
「シンくんは見ない方がいいよ」
「おお、分かった」
口は笑ってるけど目が笑ってねー
俺は少し気圧されながらも承諾した
ーーー
しばらく進み、一日目の夜を迎えた
「今日もキノコか、美味いが、流石に飽きた」
「何言ってるの?マッシュルームロード何て、1キロ銀貨30枚もする超高級品なんだからね
それにこんなに美味しいロードのキノコなんて食べたの何年ぶりだよ
シンくんキノコの神髄が分かってないよね!
ロードは汁が多いからさ、包み焼きとかも良いよね!でもここにはそんな器材は無いから
でも焼いて食べるだけでもじゅ〜ぶん美味しいよね〜!
私これなら一しょーーー」
「お、おう分かったから?
あーそうだ!俺はー銀貨30枚の価値が分からないんだ、教えてくれるか?」
油断した!ステフはキノコの話に成ると節操無しになる
俺の完璧な話術で話題を逸らしたから良いものの普通なら狼狽えて何時間か話し込まれるぞ(経験済み)
「も〜しょうがないなぁ、これからが良い所なのに……
農民が月に稼ぐ金額が銀貨2〜3枚、都で下働きして月に稼ぐ金額が、銀貨5〜銀貨30枚くらい、都の上層部の人間が金貨1枚〜白金貨数枚、貴族なら金貨3枚〜白金貨1枚、って感じかな?」
銀貨2枚が20万くらいだとしたらこのキノコ1キロ、300万円(こっちの農民は貧乏なので正確には一万〜二万程)
そう考えると、目の前のキノコが物凄く美味しく……ならんな
子供のころキャビアを少し食べて塩っ辛くて食べれ無かったのを覚えている
高ければ美味い、というのは間違いだ
ふふ、平民には分からん感覚よ
「どうせ、商人に会っても逃げられるか、護衛に攻撃されるかだしな」
移動中に何回か人にあったが、逃げられるか襲われるかしか無かった
うぎゃーとはヒョエーとか聞き慣れてしまった
魔女の使い魔とは悲しいものだ
そう物思いに耽ていた所
影が差している事に気付いた
まだ明るいがもう少しすれば何も見えなくなる頃合いだ
「そろそろ、寝るか」
「うん、そうだね」
食事を終え、絨毯の様な布を広げる
背負っていた小枝を立ててステフが灯火という指先に火を灯すだけの魔法を唱える
何時も通りの行動だ、何時も通りの
俺は寝付き、ステフは起き上がり、呪文を唱えながら魔力を注ぐ
それが何時も通りの俺が知らない日常だ
ーーー
それから1週間後、森から抜けた
「ふー、抜けたー」
「こういう時は開放感があるよね」
「そうだなー」
森を抜けた先には平原があり、そこからはもう、都市が見えた、その更に先には海があり、潮風が吹いていた
森から見える距離に海があるのはファンタジーだから………いや、普通にあっちにもあったか?
「どこに陣取って門を見るかだな」
「近くに行かなきゃ分からないね」
「ああ」
更に進む
暫く歩いていると喧騒が聞こえてくる
「居たぞー」 「こっちだ」等様々な、誰かを見つけ誰かを呼んでいる声だ
何やら兵隊と思しき集団が向かってきた
兵隊……兵隊!?
「これ、ヤバくないか?」
「うん、相当ね」
少し下に顔のあるステフの方を向くと目を横に広げダラダラと汗を流していた
『やっちまった』そう言っている様に見える、実際に言って無いけど
でも焦ってはなさそうだし大丈夫だよね?
すると、ぞろぞろ人が集まって来て、瞬く間に陣形を作ってシン達を取り囲む
「密集陣形ーーー」
「逃げるよ」
「あ、ああ、クッソ何でこんな事に」
『ふっ』
兵隊の中から一人の大男が出てきて俺達の前に立ち塞がった、その巨体からは考えられないスピードで、風の様に
「商人らが魔女が進行してきてるって言って
まさかとは思ったが、まさか貴様に会えるとはな‼︎」
大男が叫ぶ
賢者の家の時の紛い物の怒りでは無い、本物の怒り、恨み
怒髪天を突く勢いで顔を赤く染めて皺で眉間をぐしゃぐしゃにしていく様子はいっそ爽快だ
素人の俺でも分かるこいつはやばいキノコ刈りの時のステフ以上の圧力だ
「ター………ッ!
これは、本気を出さないといけないかもね」
ステフは一瞬驚愕した顔を浮かべ苦悩している顔に切り替わった
「ステフ?」
「まっさか、こんな形で会えるなんて〜
私は嬉しいよ〜、本当ね」
ステフの口調が豹変し、殺されるかと思う程の殺気を放った
でもそこには儚い思いを感じた
それを隠そうと虚勢を張っているのが分かる
「お、おい、ステフどうすんだ」
俺はおどおどして少女に助けを求める
卑屈な奴である
「………じゃあね、シンくん、またどこかで」
「何言ってッ、ちょ、お前、離なせよっ」
後から兵隊に縛られ、俺は呆気なく捕まった
ーーー
「邪魔が居なくなったな」
「出来れば見逃して欲しいんだけど」
「出来ない相談だな」
「そうっだよねー」
大男が名乗る
「我が名はターロス、6大武人剛拳ターロス」
「そう、六代武人か〜!
頑張ったんだね〜ターロスも」
「貴様に何が分かるッ‼︎
時空の魔女ステファニー、ここで貴様を討つ」
「うっへー、礼儀臭っ」
一つの戦場で、戦闘が始まる