1話
西暦、2020年、日本。
「火」の代わりとして、異能をもった人類は、異なる世界でもこちら側の日本と同じような道を辿り、繁栄、衰退していた。
分かりやすく形容するならば、平行世界、であろう。
一部分が違うだけの、大してこちらと差のない平行世界だ。
たとえ、文字通り火の変わりとして異能を与えられようが、人類の本質は変わらない。
考えてもみてほしい。我々は、生まれた時から世界を五感で感じることが出来る。その五感に、与えられた異能が当たり前のようについてくるだけ。それをさながら手足を動かすように、当たり前のものとして動かす。最初から当たり前にあるものが、知恵をもった動物である人間の本能を歪ませることはない、ということだ。
我々の辿ってきた歴史と些事はなく、その異能で道具を作り、争い、群れ、また争う。格差を作り、それに叛逆し、常に入れ替わりが起きる。そうして、同じように科学が発展したり.....
そうして、こちらの現代と何も変わらない、異能をもつ人々の生活が行われているのが、この世界である。
これは、そんな世界で生活する、ある1人の男の物語である。
―――
「ふわぁ....ねむ....」
思わずあくびと眠さをひとりごちる。今日も今日とて朝起きての登校。今日から高校生、だと言うのに、いつもと変わり映えのしない登校だな、とつまらなく感じる。
なにせ中高一貫なのだ。小学校で周りが遊んで楽しんでいたころ、こっちはお塾で中学受験のお勉強である。まあ、その分高校受験しなくてよかったからそれでいいのかもしれないが..... などとくだらないことを考えていたら、いつもの駅につく。高校の最寄りだ。いつものように電車を降り、改札から出て、歩く。そうして高校への道を歩く。
そういえば、今日から向かう校舎違うんだったな、間違えたら恥ずかしいな、などと考えていると、
「よ、識。」
と声をかけられた。
「ああ、煉か。おはよう」
「ああ、おはよ。なんか浮かない顔だったけど、何考えてたん?」
「いや、今日から高一だし、校舎間違えたら怖いなって」
「なるほどね、ま、俺もいるし大丈夫だろ」
「....2人揃って間違える可能性も、あると思うんだが」
「あっはは、ないない、識じゃないだしさ」
「やかましいわ、もはや全能みたいなイケメン高スペックは黙ってろ」
「そうでなくても、普通迷わないと思うんだけど?」
「間違える可能性を考えてないってのが根っからポジティブだって言ってんだよ、ってか俺だけが迷うみたいに言うなよ」
「ははっ、去年の修学旅行の時みんなとはぐれかけた識ならやりかねないからね」
「それは思い出さないでくれよ...」
などと会話をしながら高校生として暮らす校舎へ向かう。
そのとき、トントン、と肩をたたかれ振り向くと、
「おはよ、久しぶりだね、識」
「久しぶり....ってほどじゃないと思うけどな、昨日ふつーに会ったろ」
「ふふ、そだね。でも、こうして学校、って場所で喋るのは久しぶりじゃない?」
「あー、確かにそだな、なんか懐かしいわ」
「おっ?もうおじいさんですか。昔からおじいちゃんぽかったとこあるけどとうとう....」
「うるさい」
などと会話を繰り広げていると、
「....あの、識。もしかしてとは思うけど、その......彼女?」
と煉が聞いてくる。ので、
「なわけ。出来ると思う?」
と返してやる。
「無理」
「即答!?」
「で、彼女じゃないとすれば、その綺麗な人は誰よ」
「幼なじみ」
「.........」
「急に黙るな、怖いだろ」
「.....綺麗な幼なじみって、虚構の存在では?識はラノベ主人公か何かかのかな?」
「ブーメラン刺さるようなスペックの奴が何を...鏡みてこいよ」
と、これを聞いた幼なじみが、
「いやー、聞いた?識、綺麗だって綺麗。綺麗だってー、こんなイケメンに言われるとは、照れますね〜」
と反応してくる。
「似たようなセリフ言われ慣れてるくせに、今更何を...」
と返すと、
「で、識。この人は?」
と話を切り替えてくる。
「そこ反応しないのかよ...まあいい、んで、このイケメンは」
「冷洌 煉です。漢字は冷にさんずいに行列の列、煉は煉獄の煉です。よろしく。」
「俺のセリフとるなよ」
「自分で言った方が早い」
「ふふ、識、面白いねこの人」
「これでこの顔なんだからほんと嫌だわ」
「やだ、大事な幼なじみが取られちゃう〜、って?」
「そういうんじゃない」
「ははは」
「識の幼なじみだけあって、なかなかキャラが強いね..」
「だろ、こいつ顔だけだよ」
「うるさいなあ、方向音痴のくせに」
「それは今関係ないだろ!」
「はいはい、えと、ひれつ、で合ってたかな。ひれつさんが待ってるでしょ、静かに」
「そっちが先に....まあいい、んでこっちが幼なじみの...」
「戔鐺 鳴と申します。漢字は....名字がちょっと難しいんだよね。鳴はくちへんの方の鳴く、でそっちを覚えて貰えたらいいかな、とりあえず、よろしくお願いします」
「なるほど。じゃあよろしくお願いします、鳴さん。」
「....いきなり名前呼びかよ、これだからイケメンは...」
「別にそんな気にすることでもないと思うけど...それより、クラス分けどうなってるかとか、そろそろ気にしてもいいと思うんだけど」
と、煉が話題を変える。するとすぐさま、
「よし、煉。見てきて」
と鳴が言う。
「なぜ」
「名字天夜だからすぐ見つかるでしょ、あ行だし」
「それはそうだけど、なんかむかつく」
「鳴さんの言う通りだと思うよ、識、悪いけど見てきてくれない?1人で行く方が見やすいだろうし」
「2対1かよ....わかったよ、行けばいいんだろ」
「助かる」
「ちょろいよ識」
「見てこいって言ってその態度は何!?」
などとやり取りをした後、渋々掲示に目を通し、同じクラスであることを確認し、2人と一緒に教室へ行く。
とまあ、こんな感じで俺の高校生は始まったのだった。
見てくれた方、ありがとうございます。
面白いな、と思ったら高評価入れるノリでpt入れてやってください。別に見るだけで何もしない、というのも全然構わないですがねw