その後...のちょっと前の話①
1週間後、来週、過去・現在・未来・平行世界の全てにおいて最強の究極生命体が王国に攻め込んで来る。
その予言が王都の教会本部から齎された。
俺がこの世界に迷い込んで来て優に10度目の『○○系最強の生命体襲来』だったので「またか」という感想しか俺は持てなかったが他の人は違った。
「神よ、お助けくださいっ…!」と言って街中で跪いて祈るのは当たり前のことで、中には「もうおしまいだぁ…フヒャヒャヒャヒャ」と狂う奴もいる。
いや、君ら何回それすんだよ。もう10回目だぞ?などと思いつつ俺は顔を隠して街から出た。
俺が顔を隠した理由は単純で、何故か人々は俺を『勇者パーティーの賊奴(肉盾)』と思っている節があるので、こんな非常時に俺を見つけたら「お助け下さい勇者様のお仲間の方!」と頼み込んで来るのだ。3回目と5回目の襲来時にそうされたから間違いない。その対応が面倒くさくて俺は顔を隠しているのだ。
街を出た俺は、1回目の襲来以前に存在していたこの世界の最強最悪の敵、魔王を討伐する旅中に見つけたダンジョンに向かった。
因みに『ダンジョン』というのは一般的には『人類の天敵』であり、『資源の宝庫』、そして『神が人類に与えた試練』として認識されている。
街を出て30分ほど早歩きをしたら目的地である洞窟に着いた。徒歩30分の場所にこんなやばい場所があっていいのかと思わないでもないが、RPG風の世界だからいいのだろう。遠すぎたら攻略する気なくなるからな!
ダンジョンの中に入ってすぐ右側にある扉をノックし、自分の名前を告げた。
返事がなかったので懐から針金を取り出しドアノブの下にある鍵穴に差し込んだ。
カチャリ、と鍵を開け扉を開くと、そこにはまるで隠す気のない落とし穴があった。
その穴が何百m続いているかも分からないが、いつものように穴に向かって跳び下りた。相変わらずいつ来てもまるで吸い込まれるかのような感覚に陥る穴だ。これが吸引力の変わらないただ一つの穴というやつか。これからはダイソンと呼ぼう。もしくはマン(自主規制)、またはアナ(自主規制)。
下らないことを考えているうちにめっちゃ槍が刺さってる床が見えてきた。更に今回は槍と槍の間に糸が張り巡らされており、その糸からバチバチッという音が聞こえた。また侵入者対策が増えてるなと思いつつ槍と糸を回避して床に無事着陸した。
床に足を着けた途端、足元からピチャンという水音がした。更にどこからかブチンッと糸が切れた音がし、床が発火した。どうやら糸には高圧電流が流れていたらしい。そして床にはガソリン的な何かがばら撒かれていたようだ。
危ねえなあと思いつつ咄嗟に近くの金属製の槍の穂先に登った。火も熱いが槍も熱い。穂先の上でピョンピョンと爪先だけで飛び跳ねつつ安置を探した。…が、何処にも安置が無かったので、取り敢えずこれからどうするか考えようとした瞬間、槍の穂先からピューッと勢いよく水が出てきた。
チン(自主規制)を守る為にも槍の穂先を思い切り蹴飛ばし空中に避難した。そして俺が穴を通り抜け天井にぶつかり、体がめり込んだ所で真下からボカンッという音と凄まじい熱気が襲い掛かってきた。俗に言う水蒸気爆発だ。…俺じゃなかったら死んでたぞ、コレ。
殺意の高い侵入者対策に戦慄しながら天井を蹴り、先程よりも速いスピードで穴の中を通り抜けた。床には障害物の一切が無くなっていたことから、先程の爆発がどれ程の威力か分かるだろう。因みに床も抜けており、俺の真の目的地が丸見えの状態だった。
これまた見事に着地を決め、フィニッシュポーズを取った後、この部屋の主に来訪を告げた。
「おーっす、来たよー!」
すると目の前に不定形のフヨフヨしたものが現れ、ピカピカと明滅した。その様はまるで俺の来訪を喜んでいるようだったので、少し照れる。しかし今回はいつもよりも長くピカピカしているので余程俺が来たことが嬉しかったのだろう。その喜びように思わず照れ隠しをしてしまった。
「ちょっ、そんなに喜ばれるとこっちも照れるだろ!」
俺はフヨフヨを軽く叩いた。ペチンッという音がし、フヨフヨは壁に叩きつけられた。いつものことなので気にしないが、アイツはノリが良過ぎるんだよなぁ。あんなソフトタッチで壁にめり込む程ぶっ飛んでくれるんだもん。芸人魂ってヤツだな。
壁に叩きつけられたフヨフヨは明滅を辞め、ピクピクと震えていた。まるで死に掛けのようだ。芸が細かいことこの上ない。…ただ毎回このやりとりをしているので若干飽きてきた気がしないでもない。まあ向こうが折角歓迎してくれているので飽きたなどとは口が裂けても言わないが。
取り敢えず壁からフヨフヨを引っこ抜き、エリクサーとアムリタとソーマとその他諸々をぶっ掛けた。するとたちまちフヨフヨが先程よりも激しく明滅するので、それに合わせて俺もハッハッハッと笑った。ここまでがいつもの流れだ。要するに俺がツッコミ担当でフヨフヨがボケ担当だ。
フヨフヨの明滅が止み落ち着いたところで話し始めた。まずは世間話から入る。
「おう、兄ちゃん。最近儲かりまっか?え?客が来んの?そらぁ商売あがったりでんなぁ。かなんなぁ…ほなら今どないして生計立てとんの?あぁ、貯金からちょっとずつ出してんのかい…蓄えあってよかったなぁ、ホンマ」
紹介が遅れたが、このフヨフヨは『ダンジョンマスター』と呼ばれる存在らしい。何でもダンジョンを統べる存在らしいが俺からすると全く信じられない。この気の良い不定形の謎生物がそんなにすごい存在には思えないのだ。そして今居るここは『コアルーム』と呼ばれる場所で、ダンジョンマスターのみが立ち入ることができる場所だそうだ。これも眉唾な情報だ。だって実際俺が入れてるんだから嘘八百もいいところだってもんだ。まあコイツがダンジョンマスターであれ何であれ、今更付き合いを絶つつもりは無いのでどうでもいいことなんだが。話は変わるが突然関西弁になったのは、商売といえば関西、という意識があるからで他意はない。
世間話が終わったところで本題に入る。
「そういえばまた『襲来イベント』があるんだってさ。これで10回目だぜ?どう思う?…
だよなぁ。またか、って感想しか出て来ないよなぁ。分かるわぁ。しかも今回もどうせ裏ボス的なヤツが居るんだろ?ほら、裏から操ってたヤツとか、あと何回か変身を残してるヤツとか。…うんうん、表面のボス戦クリアした後に出て来る宝箱が実はミミックで、そいつが裏ボスだろって?えー、そんな敵が居るんだー。ってそれは魔王の話だろ!いつまでそのネタで引っ張るつもりだよ!ハッハッハッ」
そう、100年に一度蘇ると言われていた魔王の正体はミミックで、今までの勇者パーティーが討伐していたのはミミックの中で作られる『ドール』と呼ばれる擬似人格の付与されただけのただの人形だったのだ。因みに何故俺がこんなことを知っているかというとその魔王を発見、討伐をしたのが他でもない俺だったからだ。他の勇者パーティーの連中は魔王の城の宝物庫でお宝を漁っていたから知らないだろうけど。というかこの話を知っているのは俺とこのフヨフヨだけである。
「って、ちがーう!そうじゃないって!もうそろそろ10回目の襲来イベントが来るって話だよ!今度の敵は過去・現在・未来・平行世界の全てにおいて最強の究極生命体が来るらしいんだよ。やばくない?何回最強の敵が攻め込んでくるんだよ。正直、もう最強の敵とか究極の生命体とか食傷気味なんだよね。しかも本当に1回毎に格段に強くなっているから相手するの面倒くさいんだよ!…えっ、なんで戦うのかって?いやもう何回も言ってるけど命を懸けて戦うのって性に合わないから早く日本の家に帰ってぬくぬくしたいんだけどその手段がないんだよね。襲来イベントが終わるたびに謎の技術革新が起こるからそれに期待して日本に帰る手段が出来ないか待ってるんだよ。ていうか一番期待してるのはお前なんだからな。裏ボスのドロップ品とか襲来時に回収したアイテム全部お前に渡してるんだから頑張ってくれよ?それに魔素回収の為だっけか忘れたけど裏ボスはわざわざこのダンジョンに連れてきて倒してるんだからホント頑張ってくれ」
表ボスは勇者パーティーとして勇者達と一緒に戦っているが裏ボスはいつも俺一人が片付けていた。これは魔王討伐の時から依然として変わっていない。恐らく今回の裏ボスも俺一人で討伐するんだろうがそれはそれでメリットがあるから別に問題はない。そのメリットとは、裏ボス討伐時のドロップの質の向上とドロップの独占、そして裏ボスの用いる技術を俺とフヨフヨだけで独占できることだ。確かに勇者パーティーとして裏ボスを討伐する方が圧倒的に仕事量が減って楽なのだろうが、俺は基本的にアイツらやこの世界の住人が嫌いなのだ。それに俺の勇者パーティーでの役割は肉壁なので結果的に一人で戦うより傷が増えるのは確かであり、たとえ討伐できたとしてもドロップの質は低下し独占出来たはずのドロップは分配され裏ボスの用いた技術は世界に流出するだろう。そして文字通りの意味での俺の血と汗と涙の結晶であるそれらを、俺に『呪職』を押し付けて来やがったこの世界の連中が我が物顔で利用するようになるであろう。そんなの我慢出来るはずがない。偶々此処にいるフヨフヨのおかげで早期の段階で呪いは解けたが、そうでなければ今でも俺は自由意志のない奴隷として今よりもこき使われていただろう。まあ今は勇者パーティーに隷属している風に見せかけてアイツらが得た表ボスのドロップをちょろまかせてもらっているから過去の清算は済ませたつもりではいる。『賊奴』という主には絶対服従という呪職を押し付けられたのが今では役に立っているいい例だ。…というか俺も強くなってるんだから呪いなんて自力で解けるとは思わないのかね?どうでもいいが。
「まあ今はそれは置いといて。何か武器とか防具とか創ってくれないかな~、なんて。いや、今のでも十分満足なんだけどね?でもちょっと不安っていうか~。ほら、俺とお前の誼で何か一発すごいの頼むわ!ね?今使ってるこの装備もアイテムもあげるからさ!」
今日ここに来たのはアイテムをたかりに来るためだ。謎の技術革新があるとは言え、今この世界に出回ってる技術よりも遥かに高い水準の技術がこのダンジョンに集約されているのだ。つまり性能も段違いなわけだ。どうせなら良い物を使いたいと思うのは人として当たり前のことであり、したがって俺がフヨフヨに装備やアイテムをたかりに来るのも当たり前のことである。因みに今使ってる装備もアイテムもこのフヨフヨから貰ったものだ。
フヨフヨは少しの間悩むように明滅していたが、いつも通りポンッと体の中から装備とアイテムを出してくれた。装備は武器から、ダガー・糸・吹き矢・小銃・小型爆弾・弓矢、防具は、全身タイツ・鉢巻き・イヤリング・コンタクトレンズ・マウスピース・リストバンド・指輪・・グローブ・胸当て・肘当て・肩当て・腰帯・股間ガード・膝当て・脛当て・靴下・靴。アイテムは、丸薬・各種回復ポーション・毒・毒消し・針・望遠鏡・錠剤薬・御守り・ポーチ・針金・コンタクトレンズケース・通信結晶・水筒・簡易食糧・ハンカチ。あとは細々としたものが数点。以上だ。
因みに俺がフヨフヨにあげた、もとい返品したものと同じ構成だ。
「ありがとう!さすが大将!…あと、厚かましいついでに今日から一週間此処に泊めてくんない?」
今度は嬉しそうに明滅したのでお言葉に甘えてお泊りすることにした。
新しい武器の訓練をしたり、フヨフヨに食事を出して貰ったり、フヨフヨに絡んだり、裏ボス連中の使っていた魔法や気功術や幻術を使ってみたり、と色々してるうちにあっという間に一週間が過ぎた。
そして10回目の襲来イベント当日の朝。
俺は寝坊していた。
〇〇系最強の生命体、もとい襲来イベントの発生源
第一:世界
第二:銀河
第三:銀河群
第四:銀河団
第五:超銀河
第六:超銀河群
第七:超銀河団
第八:宇宙
第九:平行世界
第十:過去・現在・未来・平行世界の全てにおいて
主人公(♂)のステータス
Lv:MAX(Limit Over)
体:MAX(Limit Over)
攻:MAX(Limit Over)
防:MAX(Limit Over)
速:MAX(Limit Over)
技:MAX(Limit Over)
知:MAX(Limit Over)
職業
賊奴→肉盾→肉壁→守護隷ー解呪→盗賊→盗賊頭→暗殺者→忍者→隠者→死神→無職
種族
猿人→超人→虚人→無人
職業スキル
《忠誠》《防御》《防壁》《防護》《窃盗》《統率》《暗殺》《察知》《隠蔽》《確殺》
戦闘スキル
《無手格闘術》《蹴術》《護身術》《回避術》《盾術》《短剣術》《操糸術》《銃術》《投擲術》《剣術》《槍術》《弓術》《鎌術》《斧術》《鞭術》《槌術》《杖術》《爪術》《豪体術》《柔術》《刀術》《鉾術》《銛術》《鎌術》《棍術》《鎖術》《針術》
戦闘補助スキル
《狙撃必中》《威力増大》《精密操作》《受け流し》《自己流武術使用時練度上昇:極》《硬化》《軟化》《ターゲット》《隠密》《身体強化》《瞑想》《威圧》《覇気》《集中》《筋肉縮小》《筋肉肥大》《戦闘回避》《威力減衰》《手加減》《空間把握》《覚醒》《体操》《歩術》《走術》《自己客観視》《俯瞰》《リラックス》《無心》《遠見》《平衡感覚》《高速多重思考》
魔法スキル
《火》《炎》《陽》《水》《氷》《海》《土》《地》《星》《風》《嵐》《天》《光》《聖》《生》《闇》《邪》《死》《精霊》《神格》《世界》《重力》《時空》《宇宙》《支援》《紋章》
技能スキル
《口論》《交渉》《憤激》《怠惰》《強欲》《超克》《独占》《偽証》《精神安定》《鑑定》《解析》《耐寒》《耐暑》《状態異常耐性》《孤独耐性》《薬耐性》《酒耐性》
異能
《隠》《気》《重》《時》《幻》《耐》《殺》《壊》《創》《全》
称号
《迷い人》
《魔王完全討伐者》
《第一の襲来完全討伐者》
《第二の襲来完全討伐者》
《第三の襲来完全討伐者》
《第四の襲来完全討伐者》
《第五の襲来完全討伐者》
《第六の襲来完全討伐者》
《第七の襲来完全討伐者》
《第八の襲来完全討伐者》
《第九の襲来完全討伐者》
《独占者》
《絶対守護神》
《盗神》
《死神》
《ステータスオールカンスト》
《ステータスオール限界突破》
《脳筋》
《人類の敵の自称親友》