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短編

先生と僕の時間

作者: oga

 この作品は、リレー小説です。

起→oga

承→謎猫 

転→oga

結→謎猫


の順番で執筆しております。

  






「起」 作者 oga


 私はとある学校で教師をしている。

私の目標は、3クラスある中で、テストの平均点でトップに立つことだ。

点数の悪い生徒は一人ずつ呼び出し、個人的に指導する

しかし、その中でも全くと言っていいほど成果のでない生徒がいる。

イソノカツオだ。


「……12点、だと」


 私は採点をしていて、愕然とした。

あれほど指導したのにもかかわらず、コレか。

私はイソノを呼び出した。


 それから数日が立ったある日、私はイソノが自殺したという報告を受けた。


 





「承」 作者 謎猫


 警察からの説明では、郊外にある普段は誰も訪れる事の無い森で

ボロボロの吊り橋を渡った先にある木の根が剥き出しになった場所で

発見されたらしい。


「原因は・・・」


確かに、個別の指導として宿題を増やした。

放課後も居残りで授業をした。

それでも成果が出ず、数日前に呼び出したが


「原因は、私なのだろうか・・・」


生徒が発見された森は、大きくはないが澄んだ池もあり

すごく綺麗な場所なのだが不思議と人を寄せ付けない雰囲気がある。


それ故に・・・

訪れる者はなく、とても静かで

それが少し不気味にも感じる森だ。


「なぜ、あの森へ・・・」


人目を避けるのなら都合の良い場所だろうが

何故か私にはそう考えられなかった。

 




「転」 作者 oga


 イソノがこの森で遺体として発見されたのは、昨日。

吊り橋の下で発見された。

遺体は頭を強打しており、即死だったらしい。

イソノは本当に自殺だったのか?

それを確認しなければならない。

もし本当に自殺であったとしたら、私は自責の念で生きては行けまいだろう。

イソノはまだ子供だった。

校庭で遊んでいた後ろ姿が、妙に印象に残っている。

私にも当然、あのような時代があった。

そのことを、ふと思い出した。


 小学校の頃、私は一人でよく森に足を運んでいた。

その頃は、街の開発がそこまで進んでおらず、森も昔の姿のままだった。

遊び相手は、森に住むコマドリやキツネ、リス、ヘビ、中にはアライグマもいた。

私は妄想を膨らませ、彼らと会話をしたりして、時を過ごした。

その日は、アライグマがキツネに、自分の木の実を盗んだだろう! と口論になっていたが、コマドリの軽快なさえずりのおかげで、そんなものどうでもよくなり、みんなでダンスした。

でも私は、その犯人が食いしん坊のヘビであることを知っていた。

しかも、それを促したのがいたずら好きのリスである、ということも。

私は、思わず吹き出しそうになり、みんなから不審がられたものだ。


 しかし、今は何も見えない。

さえずりの上手なコマドリも、キツネも、リスも、ヘビも、アライグマも。

見えるのは、うっそうと茂る、木々だけだ。

この森は、私をどこか暗い場所へといざなおうとしている。

この景色は、私の心の中の不安を反映している。

 木々をかき分け、私はとうとう、吊り橋へとやって来た。

ボロボロのつり橋を渡り、周辺を探る。


「……」


 もし、吊り橋の足場が腐っていたり、そういった形跡があれば、恐らく事故の可能性もある。

だが、いくら探しても、そういったものは見当たらなかった。

やはり、自分でここから飛び降りたのだろうか?

その時だった。

コマドリが、ロープの先に、止まった。


「……!」


 手すりのロープが一本、切れていた。







「結」 作者 謎猫


 突然の訃報で自責の念に囚われた先生・・・


数日前も、僕はテストの点数が良くなかった。

いつもの様に、先生に呼び出され個別の指導や

放課後の授業を受けた。


僕はどうにかして成績を上げたかった。

自分なりに頑張ってはいた。

先生だって僕の為に頑張っていた・・・


そんな時、街外れにある森に澄んだキレイな池があって

ドングリを投げ込んでお願い事をすると叶うとの噂を聞き

学校の帰り、僕は急いで森へと向かった。


途中、今にも落ちそうなくらいボロボロの吊り橋が現れたが

急いでいたので走って渡っていたら僕は足を滑らせ

勢いよく転んだ際に引っ掛かった手摺り下のロープが切れ

大きく揺ゆれた橋から放り出される様に落下してしまった。


普通に歩いていたのなら、例え足を滑らせたとしても

ロープは切れなかっただろう。

もし、バランスを崩し踏み外してしまっても

橋の真下に落下するだろう。

けど、僕が落下した地点が少し離れていた為

発見時には橋から飛び降りた様に見えてしまったらしい。


「誰かの責任じゃない・・・」


誰かが悪い訳ではない。

テストの成績が悪く呼び出され

個別指導や放課後の特別授業。


「分かっていた・・・」


頑張っていたのは分かっていた。

分かっていたから、あの森へ向かったんだ。

願いの叶う池に行こうとしたんだ。

けど、吊り橋を走って渡っていたら

僕は足を滑らせてしまった。


「先生は何も悪くない・・・」


僕の願い事は『テストの成績が良くなりますように』

そうお願いしに池に向かって居ただけなんだ・・・


落下した直後、吊り橋と空をずっと見ていた。

空には、コマドリが飛んでいた。


しばらくすると、アライグマやキツネやヘビの他

リスやクマが僕を囲み、器用なアライグマが

僕のポケットからドングリを取り出して

それを、全て動物達が持って行ってくれた。


僕は吊り橋から落下して頭を強く打ち即死だったが

不思議と、その後の記憶があった・・・

突然の訃報で自責の念に囚われた先生の事も

何故か分からないが知った。


「後は頼んだよ・・・」


別に動物達と話した訳ではない

お願いした訳でもない・・・

けど、動物達は僕の代わりにドングリを池へ

新しい願いと共に投げ入れてくれたハズだ。


『先生を自責の念から救ってあげて』


そこで全てが終わるハズだった。


 けれど、次の瞬間。

気が付くと目の前に先生の顔があった。

どうやら、今までで一番大きな声で

僕を呼びつけているらしい。


「・・・先生?」


泣きながら僕の名前を何度も呼ぶ先生の顔を見て

1つだけ分かった。


どうやら『願い事』が叶ったらしい。


先生を自責の念から救って欲しいとの願い

それは、僕が死なない事だったらしい・・・


刹那の長い記憶も願いが叶った事で、突然の訃報も

その後、何年も何十年も自責の念に囚われた先生の未来も

何もかもが夢幻となって消え去り

僕は、いま先生の泣き顔を見て泣いている。


涙に霞みながら見た吊り橋と青い空には

コマドリが飛んでいて、逆さ虹が架かっていた。


 

 




終わり






以上です

今回協力して下さった謎猫様、ありがとうございました!

最後はハッピーエンドにして下さり、後味は悪くないかと思います。

謎猫様は普段は猫の作品をたくさん書かれている作者様で、本人も猫? かも知れません。

童話チックな話から、ホラーなども手がけ、猫とホラー好き? なイメージの作者様であります。

もし興味をもたれたら、一読の方、よろしくお願いします。








 番外編


「……くっ、また12点か」


 私は、何度もテスト用紙を見直し、間違いが無いか確認した。

採点ミスで、多少なり得点を上乗せできれば……

しかし、何度見ても得点は変わらず、12のままだ。


「これが10点満点なら、いいんだがな……」


 その時、私は閃いた。

何も、100点満点である必要性はない。

120点満点にして、20点サービスで与えてしまえば良いのでは無いか?

なぜ、今までその考えに至らなかったのか。

私は、名前を書いている生徒に、無条件で20点をサービスすることにした。


「これで、32点。 赤点は免れる」


 私は、ほっと胸をなで下ろした。

が、甘かった。

イソノカツオのカツオが、ツでなくシになっていたのだ!


「お前はいつからカシオになったんだっ」


 

    





終わり


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