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1話


私が前世を思い出したのは、10歳で父が亡くなった後、継母に虐められ始め、頭から灰を被せられ、


「今日からあんたの事はシンデレラと呼ぶから。」


と言われた時でした。


シンデレラ~シンデレラ~。

すごく聞き覚えがあるような?


女の子に人気だった『シンデレラ』って女の子が主人公の絵本。私もその話が好きで、普通の絵本も、残酷版も、アニメも実写化のやつも全部見てました。



私は記憶の奔流に巻き込まれ、その場で倒れてしまいました。

(起きたら、倒れた場所でした。継母の命令で、10歳の子を放置です!寒くなり始めた頃だったので、思いっきり風邪引きました!)



私の前世はただの女子高生でした。

死んだ原因は分かりませんが、その日は新しく購入した携帯を取りに行っていたと思います。最新型で、目当ての色も売り切れてて。でも、どうしても欲しくて予約待ちで待ちに待って。手に入れた嬉しさで、危ないからしてはいけないと言われていた携帯いじりを歩きながらしていました。

そして・・・そのあとの記憶はございません。


私は、お母様との秘密の小部屋に走りました。

私が生まれた時に一緒に出てきた、アレを思い出して。


そう、私が欲しくて欲しくて仕方なかったピンクゴールド色の携帯!

何と、この携帯、光にかざすとピンクゴールドをベースにキラキラキラキラ虹色に光るのです!


お母様はとっさに背中に隠してお父様にも内緒にしてくれました。

私を取り上げたのは、お母様の生家からついてきてくれたばあやだったので、その秘密が漏れる事はありませんでした。

お父様はとても優しい方だったのですが、陛下の追っかけをしていて、(男爵家のうちでは取り巻きにはなれません。追っかけが精々です。)携帯が見つかれば、珍しい物が好きな陛下の為に献上してしまっただろうとお母様は言っていました。

だから、内緒ねっとイタズラそうに笑うお母様の笑顔が忘れられません。


「あった…」


秘密の小部屋は地下にあります。地下の石壁を正しい順番で押すと扉が開きます。この部屋の事は継母は知りません。お父様が、お母様との思い出だからと教えなかったのです。


もう既に体はゾクゾクして熱が上がりそうな気配がしていますが、そんなの関係ありません。


「お母様…お父様…」


私は、6つでお母様が亡くなって以来、泣いていませんでしたが、携帯の中の1枚の写真を見て泣き崩れました。


ピンクゴールドの携帯、ピンクゴールドの携帯と何回も言うのは長いのでPG携帯と呼ぶ事にします。


PG携帯はとても不思議な事に充電が切れる事はありませんでした。

どこかに電話する事はできません。

でも、写真を際限なく写す事ができました。

お母様と私は、お父様の隙を見て、お互いに写真を撮りまくりました。 この中にはたくさんのお母様がいました。

そして、待ち受け画面は、執務室の机で居眠りをしているお父様を挟んで、満面の笑顔で写っているお母様と私。


6歳の私はもういない大好きなお母様を見るのが辛くて、携帯を封印してました。


携帯を一度置いて部屋に戻ります。

熱が上がってフラフラでも、自分でどうにかしないと誰も見てくれる人はいません。


庭の温室から勝手にもらって来た薬草を磨り潰して、お水で無理やり飲み込みます。

この部屋には防御魔法がかかっているので、私の許可がないと誰かが勝手に入って来ることは出来ません。

色々考えることはありますが、今は熱で頭が回りません。

おやすみなさい・・・




***

『おはようございます、シンデレラちゃん。今日の天気はいかがですか?』

『おはようございます!アリシナ様。今日は残念ながら朝から雨です』

『雨も憂いがあっていいものですわ。今日はどうお過ごしですか?』

『ん~、いつも通りですよ。ご飯作って掃除して、いつも通り1と2に嫌味言われるか…でも、最近は娘達の婚活に夢中で、イジワルママがあまり絡んで来ないから楽です!』

『わたくしが側にいたら、皆さん、もうこの世にはいらっしゃらないかもしれませんわね。

婚活と言うのは、婚約者探しの事でしょうか?』

『えーっと、ありがとうございます?アリシナ様の冗談、少し怖いですよ(笑)

そうですよ~。貴族って大変ですよね~。平均結婚年齢が18歳って。イジワルいっちゃんが17歳だから、ママさん焦りまくってますよ(笑)』

『冗談ではありませんのに………。

他人事のようですね。貴女も貴族ではありませんか』

『私は、多分、どこかの金持ちの婿を取らされると思うんですよね。娘二人が婚約者見つけたら、すぐに!です』

『嫌ではありませんの?』

『もちろん、嫌です!!あの、ですね…』

『何ですの?』

『私、成人したら逃げようと思ってるんです。その時は、会いに行ってもいいでしょうか?』

『まあ。嬉しいわ。シンデレラちゃんに会えるなんて。その家はシンデレラちゃんの物なのに、逃げなきゃいけないのは釈然としませんが、是非会いに来て下さいまし。わたくし、眠っておりますが歓迎いたしますわ』


シンデレラ、15歳です。

友達が出来ました!

ねずみさんではありません。

ねずみさんは諸事情により、屋敷の中にはもういません。

ことりさんでもありません。

ことりさんに上げるパンは申し訳ありませんが、ないのです。

私だって育ち盛りなのです。


10歳のあの日から、誰も部屋には入れず、PG携帯所持の秘密は守られています。

11歳頃から、寂しくて辛くて、何か嫌な事があると携帯に慰めてもらいました。メール機能でその日に会った事、感じた事をつらつらと書き綴って、保存してました。

それだけでも、少し心が晴れました。

ある日、何も考えずに“送信”ボタンを押したんです。すると、メールが送信中となり、どこかに送信されました。宛先も入力していないのに。送信したメールは送信BOXに残るので、毎日メールを送信しました。

そして・・・


『はじめまして』


3年間、毎日送信し続けたメールに返信がありました。


最初は、私があまりの淋しさや辛さに耐えきれず、自演で偽造メールを作成したのかと思いました。

あの頃は、お父様の財産が少なくなって来て、ストレスからか、継母の虐めがピークでしたので。


『シンデレラさんですか?』


ジーっとPG携帯を見つめていると、ブルッと携帯が震えメールを受信しました!

おう!私じゃありませんでした!

“誰か”です。


『どちら様ですか?』

『名も名乗らず申し訳ありません。わたくし、プレナーレ王国のアリシナと申します。』


はてっ?プレナーレ?

あまり聞いたことはない国です。


『通称、“眠り姫”と呼ばれておりますわ。』


キターーーッ。眠り姫、キタコレ。

知ってる。知ってるよ!


そういえば、プレナーレ王国の事も聞いたことあるかも。

50年前に、魔女の協力な呪いのせいで、

眠りに入った王国。

隣の隣の隣にあった国だ。


今、王城以外は、隣の隣の国が治めているんだよね?

城下町は城から発生した蔓に飲み込まれて、今では深い森になってるとか!


『どうやってメール送信しているのですか?眠っていたとの事ですが、もう起きられたのですか?』


相手は、姫と名乗っている。

失礼のないように、貴族言葉でメールを作成したかったのだけど、中途半端な貴族マナーしか習っていないので、そんなスキルは持っていなかった。

だから、普通の敬語になってしまった。



眠り姫によると、起きた訳ではなく、今も体は眠っているらしい。ごくたまに意識が浮上することはあったけれど、今みたいにはっきりと意識が覚醒することはなかった。数年前から突然、夢の中に不可思議な箱のような物が現れ、そこにメッセージが浮かぶようになったそうだ。初めは、単なる夢だと思っていたけど、姫が知らない知識がよく書かれていた。

それは、継母への愚痴であったり、掃除の方法であったり、一度も料理なんてした事ないのに、レシピであったり。


初めの頃は、独白めいたものがほとんどであったが、そのうち、“おはよう”から始まり、“今日は暑いねぇ”“今からこっそり出かけてくるよ~行ってきまーす”“ただいまぁ。フフフッいい買い物出来ましたよ~今日はハッピー”等々、自分に送られて来るような内容になってきて、夢でも何でもいいから、この相手にメッセージを送りたいと毎日思うようになっていたんだって。


そして、初めてメールをくれた夜中………。

突然意識が浮上して、しかもメッセージを送れる!って確信したそうです。


ちょ、ちょっと待って!

全部読んでたの?私の黒歴史!!

継母を陥れるにはどうしたらいいかとか。掃除の時に、床を拭いた汚い雑巾でイジワルいっちゃん(一番上の義理姉、今では略して1と2ってしか書かない時もある)の机拭いたとか書いちゃったんですが…


『メッセージ、どんどん消えていってますか?』

『いいえ。全て大事に取ってありますよ。カギもちゃんとかけて、消えないようにしてますわ』


ガーン。オワタァ。

携帯初心者のはずなのに、ロック機能使えるんですね。


『あの、昔のメールは消して頂いてもいいでしょうか…』

『このメッセージはメールというのですね。退屈な眠りの世界から救いだして頂いた、わたくしのとても大切なものですわ。消すなんてありえませんわ』


…………おうっ。


***

それから、一年、私とアリシナ様は毎日メールで交流しました。

アリシナ様はたまに私を救世主であるかのように持ち上げる事がある。

だけど、違うよ。

アリシナ様こそ、私の心を救ってくれたんだよ。

も一個、私の心を救ってくれたモノはあるけど、狭い世界で生きている私にとって、アリシナ様とのメールはとてもとてもかげがいのないものなんだ。



『シンデレラちゃん♪聞いて下さいまし!!!』


ある日、アリシナ様から大変テンションの高いメールが届きました。


『どうしました?』

『わたくし、ポルターガイスト?が出来るようになりましたのよ!』


…んっ?


『どういうことでしょうか?』

『ヤダッ!そんなよそよそしいかんじはおよしになって』


メールなのに、私の冷たいニュアンスを感じとってアリシナ様が、そう返してきました。


私の影響で、アリシナ様のメール言葉も少し砕けてきてます。私も砕けてきてて、タメ口と敬語が混じったかんじになっています。


『シンデレラちゃんには言ってなかったのですけど、一ヶ月前ぐらいにまた“出来る”って感覚が降りてきましたのよ。

初めは、机の上の写真たてを少し動かすぐらいだったのですけど、ここ数日、部屋の中の物ビュンビュン回すぐらいまで出来るようになりましたわ。シンデレラちゃんの前世の世界のお話であったでしょう?超能力の話。わたくし、思いましたの。

このメールも、眠っているわたくしの脳内で起きていることでしょう?

それは魔法の力ではなくて、超能力に近いんじゃないかしら?って。すごく集中して、わたくしを広げるかんじでいたら、少しずつ、部屋のどこになにがあるか分かるようになりましたの。

ベッドなのに、わたくしなの。イスもラグもこの部屋の全てがわたくし。わたくしがわたくしの一部を動かすなんて当たり前のことでしょう?』


ちなみにこのメール、まとめて送られてきた訳ではなくて、メール画面を開いていると話しているように、ダーッと文が浮かび始めました。

メール機能に、そんな機能ついてましたっけ?


黒歴史時代に、私の転生の事とか、前世の事とかを書いてしまっていて、(日記気分でしたから)アリシナ様には前世があることは知られています。

そして、アリシナ様は、私が話す前世の世界の話が大好きなのです。


そりゃ、話しましたよ!色々と。


この世界には魔法があるけど、前世の世界には魔法はないと言われていて、超能力と呼ばれるものがあったって。ものすごい食い付きだったけど、いつもとは違う、子供みたいに何でも聞いてくるアリシナ様が可愛くて、たくさんたくさん話しました。


でも、出来るって思わないよね!?

“ポルターガイスト”は、話のネタとして話した、前世の世界のホラー系の話が混じってるんだと思うけど、えーっと、物を動かす力って、サイコキネシスとか念力とか呼ばれるあれだよね?


えっ?魔法のある世界なのに、えっ、そっちなの?


***

16歳になりました。

ここ最近、あった事を話します。


なんと、いっちゃんに結婚相手が見つかりました!

あれ?王子さまの婚約者を探す舞踏会は3ヶ月後だよ?

シンデレラって舞踏会あってこその話じゃないの?義理姉達も脇役ながら、重要な話のスパイスではなかったんじゃないですか?


まあ、いっちゃんの結婚相手が見つかった切っ掛けは、私かもしれませんが。



近況を話す前に。


そろそろ、もう1つの心の救いの話をしましょうか。


13歳のあの頃。


男爵の財産を散財で使い潰しそうだった、継母。

どんどん屋敷のメイドや下働きを解雇しても足りず、本当に13歳の私を売る準備が進んでいました。

逃げようにも先立つものもなく、

まだ見た目は13歳の私。

アリシナ様とのメール交換は始まっておらず、誰も味方がいなくて八方塞がりになっておりました。


毎日、秘密の小部屋で泣き暮ら…してはいなかったけど、逆にブツブツブツブツ言うヤバイやつになってました。

ある日のこと、私は、秘密の小部屋に寝転んで天井を見つめてました。もちろん、下は綺麗ではない、石畳です。

疲れて動けなくなっていたんですね。


ボーッとしてると、どこかでチューッとねずみさんの鳴き声がしました。

緩慢な動きで、その鳴き声を探ると・・・見つけたのです!

ねずみさんが通れるぐらいの穴を!


13歳だけど、普段からあまり食べていなかった私の腕は、とてもとても細く、スルッとねずみさんの穴を通り抜けました。

そして………その先は空洞でした。

肩ギリギリまで入れても、何も触れるものがありません。

私は、一つの可能性を思い付きました。


(お父様の隠し部屋だ)


急いで秘密の小部屋から出て、石壁をくまなく探しました。すぐに、壁の違和感が見つかりました。


隠し部屋を開く、キーとなる石の順番は、秘密の小部屋と一緒でした。お父様は忘れっぽいところがあったので、一緒にしたんでしょうね。

(お父様が生前、石を押す順番は、当主が代わる毎に魔法屋を呼んで変えるんだよと言っていました)


そこは、ワインの貯蔵庫でした。

しかも、ビンの。

この世界で、ビンは高価な物です。

ビン入りのワインを売れば、お金になるでしょう。


こんな痩せた子供が売りに行けば、怪しまれるかもしれない。買い叩かれるかも知れない。取り上げられるかも知れない。


でも、背に腹は変えられないってやつです。

久々に10歳の時のドレスを着て、髪を結い上げ、軽く薄化粧をしました。

10歳の時のドレスが着れる悲しさは何とも言えません。

化粧品は持っていなかったので、にっちゃんの化粧品を少し借りました。

(継母やいっちゃんだと美容に神経質なので、勝手に使ったら、すぐにバレたと思います)


おやつを用意する時間までには戻って来なければいけません。

急がなければ。

目的地は決まっています。

小さい頃、何回かお父様とお母様と訪れたワイン商会のお店。

店主さんが優しい笑顔で対応してくれたのを覚えていました。


店に着き、意を決してお店の中に入ります。


あの店主さんがいました。私に背を向けています。


「あのぅ。」


とても小さな声が出ました。

でも、聞こえたみたいです。

パッと振り向き、少しキョロッとして、大分目線より下にいる私を見つけてくれました。


「あっ、男爵んとこの?」


覚えていてくれました!


「はい!」


私を上から下まで見て、少し悲しそうな顔をしています。


「病気は治ったのかい?」


病気?


「男爵の後妻さんが、以前来られた時に、あの子は男爵が亡くなった後に病気になったんです。って言ってたからよぉ。こんなに、細くて……ちゃんと食べてんのかい?」


私は、継母が話した病気の話に乗ろうかと思いましたが、止めました。

私には後がないのです。

前世でも彼氏なんか居たことないのに、お金持ちの変なおじさんに売られたくありません。


「それ、嘘です。」


私は、卑怯ながらも、同情を煽ることにしました。


でも、継母にバレた時の報復が怖いので、全部本当の事は言いません。


男爵が亡くなった後から、生活が苦しくなり、あまり食べてない事。

継母とあまり上手くいっておらず、肩身が狭い思いをしている事。

偶然、父親のワイン貯蔵庫を見つけたので、ワインを買い取って欲しい事を話しました。


「でも、後妻さんやその嬢ちゃん達は綺麗な格好していたぜ?」


ワイン屋の店主、グローリーさんは訝しげな顔をしています。


「あの人達は、あの、見栄を、その、張りたがるから…」


私は、少し儚げに苦笑します。


「でも、下の嬢ちゃんはふっくらしてたぜ。」


グローリーさんは納得いかないようで、更に言ってきます。


私がうつむくと、


「ちょっと待ってな。」


と言って店の奥に引っ込みました。

少しして戻って来ると、


「ほら、飲みな。ホットワインだ。」


と言って、子供の私には大きめな、木のコップを渡してきました。


「えっ、お酒は…」


「酒は飛ばしてあるから大丈夫だ。それに、これも食べな。俺のかみさんが作った、サンドイッチだ。」


涙が出そうでした。


人の優しさってこのホットワインみたいに体に染み込むんですね。


それから、グローリーさんは、ワインを買い取ってくれました。

その上、ワインの知識も教えてくれて、安物のワインも多分適正価格より少し上乗せして買い取ってくれました。


ワイン貯蔵庫には大量のワインがあったので、なかなかの金額になりました。


しかも、ビンのワインは重いだろうからと、夜中に押し車を引いて、屋敷の側まで来てくれて、重たいワインを運んでくれました。


屋敷に入る事は出来ないからと言ってグローリーさんは、屋敷の門前で待っていました。

平民が主の許可なく屋敷に勝手に入ることは、許されてないのです。

私は、地下のワイン貯蔵庫と屋敷の門まで何十往復もしましたが、自身が売られる事に比べたらへっちゃらでした。


「へへっ、何か悪いことしてるみたいだなっ。」


そう言って、イタズラ坊主みたいな笑顔をしたグローリーさんを見たら、なぜかお母様を思い出しました。



私は、ワインを売ったお金の半分をお父様の執務室にある隠し金庫の更に奥の隠し隠し金庫に入れ、大袈裟に騒ぎ立てました。



「お義母様、お義母様。お父様の隠し金庫は二重になっていたみたいです。」


継母は、すぐにやってきて、お金の硬貨の入った袋を見つけました。


その日は執務室の掃除を隅から隅までしろと言われ、何も入っていない隠し金庫もオープンにされ、隠し金庫は、全然隠されていなかったのです。


「お義母様、たくさん入っていましたか?」


私は、何もしらないような顔で、首をコテンッと横に倒します。


「うるさいわね、あっち行きなさい。」


いつものように、邪険にされます。

それでも、これだけは聞かないといけません。


「お義母様。チラッと見えましたが、たくさん金貨が見えました。私、ここに居てもいいですか?お金があるんだったら、まだこのうちにいられますよね?私、今まで以上に、掃除もご飯も頑張ります。どうか、お願いします。」


継母は一瞬、ギクッとした顔をしました。私を売る計画を内緒にしていたのに、バレていたと思ったのでしょう。

でも、次の瞬間、悪い顔になりました。


「そうねぇ。じゃあ、あんたの部屋をローズに明け渡しなさい。それで、明日からはメイド部屋で過ごしなさい。」


嫌な交換条件を出されました。

夜中に絶対誰も入って来れない安心安全な私の部屋。お風呂もトイレもちゃんとついているのです。

お父様が私の為に、高いお金を払って防御魔法をつけてくれたのに。

継母と上手くいっていないのを感づいてて、何もないようにって。


まあ、お母様が亡くなって、半年も経たず後妻を娶ったお父様に少し不信感はありましたが、私の事はとても可愛がってくれてて、そんなお父様の事は大好きでした。私の部屋の物は全てお父様が自分で選んで買ってくれたものなのです。


部屋を移るのは本当に嫌でした。


でも、仕方ありません。


「分かりました。明日からはメイド部屋に移ります。」


継母は意地悪な顔のまま、満足そうに頷きました。


「ったく。あんないい部屋に住まわせてあげてたんだから、感謝しなさいよ。ほらっ、早く出てって。当分、近づかないでよ。」


………。後、3年の我慢です。

この国では、16歳で成人を迎えます。後、3年…3年経てば私はこの家を出ていきます。

男爵家などいりません。

貴族なんて……………




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