1-03_此処は異世界なのか・・・?
全員の食事が終わり外の様子を確かめるように外へ出ると、そこには何一つ電柱や高い建築物のない青空とのどかな村風景が広がっていた。
田舎ぽい田舎な村はこの日本に存在していたっけ?海外なのかここは?
流されるままここで暮らすことになった訳だが、まずここがどこなのかをはっきりしなければ。
流石にあそこから海外まで流されただなんてあり得ないだろう。あり得るのか?
一緒に外へ出たオルターに尋ねてみた。
「そういえばここはどこなんですか?」
「ここか?アースカ国グランデレス領のクヒドって村だな」
アースカ国…。聞いたことがないな。自分はあんまり地理は得意ではないほうだったから、マイナーな国なんて知らないな。
待て、ここは海外なのか!?
海外のどこかを知りたく続けて質問する。
「北アメリカ大陸か南アメリカ大陸らへんですか?」
「キタアメリカ?ミナミアメリカ?なんだそれは。というかお前さんはどこから来たんだ?」
「日本から来たのですけど…」
「ニホン?聞いたことがねぇな。もしかしてお前さん未開拓人か?」
日本という言葉に首をかしげるオルター。
海外ではだいたい知られているだろう日本を知らないことに驚いた。
また俺のことを未開拓人と呼ばれた。まるで未確認生物のような扱いをされた気分だ。
「おっと、すまんすまん。この国と他の交流国では、まだ国々が踏み入れていない大陸から来た人ことをそう呼んでいる」
「え、踏み入れていない大陸?」
オルターの話に疑問を感じた。まるで全世界を把握をしていない口ぶりだ。
「あぁ、まだまだ把握していない大陸がいくつもあるって話だ。様々な冒険家や船乗りがまだ見ぬ大陸を目指し旅立つ輩が多いんだが、だいたいが途中で連絡が途切れて行方不明になるの恒例なんだがな」
オルターがこの国事情について話を続ける。
「以前、どこからか来たかわからない多数の船がこの大陸を襲来してんだ。続々と人が降りてきて国々の村や町を襲ってな結構な被害が出たんだ。なんとか近隣国と協力して追い払えたんだが、そいつらがどこから来たのが今も不明なんだ」
結構な被害が出でいるのなら世界的にニュースなってもおかしくないはずだが、
そんなものは聞いたことが無い。
「それからまだ国々が開拓していない大陸から来た奴らは危険だという印象が付いたんだ。だから安全と平和のためにもまだ見ぬ大陸の発見を急いでいるんだが、結構難航しているって話だ」
この国にはインターネットが無いのだろうか、
随分と時代遅れな国に感じる。
「だから、自分の出身を人前では語らないほうが良いぜ。前にお前さんと同じように流された未開拓人が国に捕まって酷い尋問を受けされた話を聞いたぜ」
どうやら、俺はこの国では未開拓人扱いなのか。
念のため気をつけておこう。
「まぁ、安心しろ。お前さんが悪い奴じゃないことは俺も娘も思っているし、お前さんが未開拓人ということは誰にも言いふらさないぜ。」
オルターがそう言って笑いながらバシバシと背中を叩いてくる。
「えぇ、ありがとうございます…。」
オルターは信頼できそうなので安心できるが、先ほどの話がどうも自分が今までいた世界とは違うと感じた。
ここが異世界なのではないかと思い始めたが、急すぎて信じられない。
だけど、とりあえず今自分の身分が危険なのが理解できた。
いろいろと考えていたら、食後の片付けをやっていたアリサが遅れてやってくる。
「あっジョージさん。あなたが着ていた高価そうな服、慎重に洗濯して干しているんですが大丈夫でしたか?」
アリサはそう言ってある場所へ指さした。
そこには俺が着ていたスーツがひらひらと風に吹かれて干されていた。
そういえば、俺の格好がファンタジーもので出てくる布の服装を着ていたことに気が付いた。
サラリーマンからただの村人へ転職した気分だ。
「お前さんが着ていたあの服、いったい何なんだ。よくわからない材質が入ってるんだが。お前さんの国じゃこういった服装が普通なのか?」
「まぁ、ある意味働いている人がよく着る服装の一種です」
あのスーツは確か安物のポリエチレン100%のスーツだ。
ああいった服装を知らないなんて、もしかして本当に異世界か?
「あの、ジョージさんってどこから来たんですか?」
先ほどの会話を聞いていないアリサが聞いてくる。
「こいつ未開拓人らしい。誰にも言うんじゃねぇぞ」
「そうなのですか。でもジョージさん大丈夫です、絶対に言いませんよ、私口堅いですから!」
アリサが自信満々に宣言してくる。
手をグッとしているところが可愛らしくて癒されそうになる。
「さて、そろそろ仕事を始めるとするか。さてお前さんの初仕事だ、ちゃんとよく働いてくれよ。」
話を区切り、オルターが仕事を始める。
急遽決まった新しい土地での暮らし。
ここが異世界なのかまだ信じられないが、とりあえず今は前へ進むしか無いな。