2-07_逃走
さて今オレは、ゴツチンピラによって青年と共に人気のない裏路地へ連れ込まれている。
この世界へ来て、初めてのピンチ。どうやって切り抜けよう…。
裏路地の突き当りに到着し、ゴツチンピラに乱暴に投げ飛ばされる。
「痛っ…」
「いてて。おや、もしかしてあなたまで巻き込んじゃったかな」
クジに挑戦していた金髪の青年が余裕そうな表情で話しかける。
巻き込んじゃったって、まるでこうなることが分かっていた言い方だな。
「さて一等の商品だが、新型魔道具よりも素晴らしいものを用意できた。」
ゴツチンピラが、投げ飛ばした俺たちを見下ろしながらニヤケ顔で言ってくる。
「ただそれは二人一組の旅行切符で、ちょうど近くにいたそちらの兄ちゃんも特別に行くことになったから安心しな。行き先は・・・・・お前らにとって素晴らしい天国だ!」
「ヘヘ、お前らに恨みはありませんが、ワイらのために死んでくれまっせ!」
チンピラ二人組が、ナイフや斧を取り出し、俺達を殺そうとする態勢に入っている。
「あらら、どうしましょ。お兄さん何かこの状況を覆す“祝福”を持ってない?」
「えっとすまん、俺にはそんな能力、持ってない」
「はは。僕の"祝福"もこの状況じゃ役に立たないんだよね」
確かこいつの祝福は不確定解除という、ヘンテコな祝福って聞いた気がする。
こいつの祝福じゃ、ここから逃げ出すことは出来ないだろう。
俺の懐には前にオルターから貰った幻獣討伐用のナイフがあるが、これを武器にして二人で立ち向かうにしても、相手の図体や武器を考えれば素人の俺では勝てるはずもない。
「人生最後のお喋りはそこまでで良いかい。そろそろ旅立ってもらうぜ。天国にな!」
ゴツチンピラが持っていた斧をこちらに向けて振り下ろそうとしてくる。
しょうがない一か八か、あれをやってみるしかない。俺が高校時代、部活でやってきた、あの技を!
俺はすぐに立ち上がり、ゴツチンピラが斧を持ち上げている方の腕と首元の服を掴み、相手の体勢を崩す。
「うわっ」
いきなりのことで対処しきれなく体勢を崩され、持っていた斧を地面に落とす。
相手に動く隙きを与えず、すぐさま自分の肩に引き込み、勢いのあるままゴツチンピラを持ち上げ、近くいたヒョロチンピラの方へ叩きつける。
「うわああああやめるでまっせえええええ」
「ぐはぁあ!」
ヒョロチンピラは覆い被さられるように潰され、ゴツチンピラは叩きつかれた衝動で動けなくなっていた。
俺が高校時代の部活でやった合気道がここで役に立つとは…。
まぁ俺は下手くそであんまり形はなってないと思うけど、上手くはいった気がする。
「さぁ、今だ!はやく!」
「意外とやるねぇお兄さん。拍手したいぐらいだよ」
まったくこの青年は何なんだ。こんな危険な状況なのにヘラヘラしている。
さっきからこの状況分かっているのか?まぁとりあえずここから離れよう。
チンピラ二人組が起き上がる前に、俺達はこの場から立ち去った。
「兄貴ぃ、重たいでまっせ…」
「クソぉ、あのガキ共ぉ…。舐めやがって…。俺に喧嘩を吹っ掛けたことを後悔させてやる。おい、起きやがれ。あいつらに、黒髪で冴えない顔した奴と金髪の青年の二人組を捕まえることを伝えろ」
「は、はいぃでまっせ!」
「あの衛兵に通報される前に、とっ捕まえて、苦しい思いをさせながら殺してやる…」
・・・
・・・
屋台通りから、結構遠くまで連行されたから、ここがどこか検討がつかない。
早く人通りが多いところへ出たいのに、さっきから同じような道を走っていて迷路を進んでいるような感覚だ。
「そんな無闇に走っていても、ここは抜けられないよ」
後ろから一緒に逃げてきた青年がそう言う。
流れで一緒に逃げることになっているが、ことの発端はお前なのだから一緒に逃げなくても良いのだけど。
まぁ遠くから何もせず見ていただけの俺にも非はあるが。
「だったら、ここから人通りがある方へ抜けるにはどうしたいいの?」
「ん~?まぁとりあえず付いてきてよ」
頼りなさそうな返事で先導を切るが、何か不安を感じる。
まぁ今は、この青年を信じてついていってみるしかないな。
青年に付いていくように走っていると、前方から人の姿が見えた。
よく見ると男性が何かキョロキョロと何か探しているような感じのようだ。
すると青年がなにか気づいたのか、
「ん、お兄さん。どこかテキトーなところへ隠れて!」
唐突にそう言われ、近くの物陰に気付かれないよう咄嗟に身を隠す。
前方から見えた男性が何か面倒くさそうにブツブツいいながらこちらへ歩いてくる。
物陰から相手にバレないよう顔を出し、様子を探る。
「黒髪の男と金髪の青年の二人組…?あのデカヒョロの二人め…。またやらかしたのかよ」
黒髪と金髪…。俺達のことを言っているのか?
「まったく尻ぬぐいは俺達がやるはめになるのだから仕事増やさないで欲しいぜ。そのまま詐欺で捕まれよもう…。」
先程の男性が色々と愚痴をこぼしながら、姿が見なくなるところまで遠ざかっていった。
辺りに他に誰もいないことを確認し、物陰から出ていき、青年と合流する。
「ふぅ…。どうやら仲間を呼ばれたみたい。ここから慎重に動いていかないと危険だね」
「そうみたい。早く人通りが多い所へ出ないと。こんな入り組んだ所からちゃんと出られる?」
「まぁ〜安心してよ。ここからどうやって抜け出すのか分からないけど、この状況を抜け出すことは出来るかもしれないよ」
こいつ、抜け道知っていると思っていたのだが知らねぇのかよ。てかこの状況を抜け出せるって、だったら早くやれよ…。
「どうやら疑っているみたいだね。まぁ僕を信じてよ。大丈夫、運だけはいいからさ」
青年が自信満々に言ってくるが、今はこの青年を信じるしかない。
俺は若干の不安を感じながら、この青年を信じ後を付いていくのであった。
忙しくて、全然投稿出来ませんね…。
少し落ち着いたら、以前の話を大幅に修正していこうと思います。