2-06_屋台くじ
試しにサブタイトルをつけてみる。
後ほど、前の話にも付ける予定。
アリサと屋台通りという所を見て回っていると、屋台通りという名に相応しいことが感じれた。
縁日には必ずと言っていいほど、フランクフルトやベビーカステラ、射的やくじといった屋台が立ち並ぶが、この屋台通りもそのような感じで屋台が立ち並んでいた。先ほど食った氷クリームの屋台もいくつか出ていた。
他にもフリーマケットのように要らなくなったものや自分で製作したものを売りに並べていて、壺などの焼き物や本、服などと色々と売りに出されており、この世界の文化を感じ取れるものがあり、興味深いものばかりだった。
するとアリサが何か探していたものを見つけたらしく、すぐさま売り場へ駆け寄り品物を物色する。自分も気になりアリサのもとへ向かおうと思ったら、近くの屋台くじが何か気になり、そこへ少し離れたところで観察する。
その屋台くじはアニメとかに出てくる、ヒョロそうなやつとゴツい体格のチンピラの二人組が店主をしていた。その店にいかにも普通そうな金髪の青年が挑もうとしていた。
「お、兄さんやります? なんと一等は最新型魔導具ですぜ! 他にも2等以下はこの通りいいものが揃ってるよ! 1回銅貨10枚、景品を考えると安いでっせ!」
「へぇ~、それは良さそうだね。でもこういうのってだいたいがイカサマだよね」
「まぁ~疑うのはしょうがない! こういったクジはイカサマが多いけど、そんなことをしたら刑務所送り! 流石の俺らもそんなところへ送られるのは御免だからそんな細工はしませんでっせ!」
確かに屋台くじはインチキなものばかりで、俺も前に縁日の屋台で挑戦したことがあったが当たった試しがない。あんなチンピラみたいな身なりでそんなことを言っても信用し難いよな。
「でしたら、ワイらが試しにやってみまっせ!」
するとヒョロチンピラが、テーブルの下からくじの箱を取り出し、隣のゴツチンピラに引かせるように向ける。
「兄貴、お願いしまっせ」
「あぁ」
ゴツチンピラが見せつけるように箱に手をいれる。
まだこの時点でイカサマしいるようには見えなかったが、箱の中に細工を施している可能性があるかもしれないな。
「おや、外れ。まぁ最初の1回はこんなもんでっせ、さぁ兄貴あと何回か引きまっせ」
「1枚目は6等でっせ、2枚目は…。お、1等が出ました!客だったら兄貴、豪華景品を手に入れたのに残念!こんなふうにちゃんと当たりは入ってまっせ!」
当たりくじがあることを青年に確認させてから、くじを箱の中に戻し、客側から見えない机の下に置いた。
その行動に怪しさを感じるが、とりあえず成り行きを見届ける。
「ふ~ん、それだったらやろうかな。はい銅貨10枚」
「毎度でっせ!はいどうぞ!」
チョロチンピラがまた机の下からくじ箱を取り出し、青年に差し向ける。青年が箱からくじを取り出し、店主に見せる。
「はい、どうぞ」
「さ~て、なにが出ましたかね・・・。え、1等?ちょちょちょっと待ちまっせ」
何故かヒョロチンピラが慌て始め、ゴツチンピラと一緒に奥へ話し込んでいった。
いきなり1等が出るなんてすごいな、1回で出ることを想定していなかったから慌てているのか?
「おい、どういうことだ。何故1等が入っている?」
「知りませんよ! ちゃんと右側の客用の箱の方を渡しましたし、実演用の箱を左側に置いたから間違いないないっせ!」
奥で二人が何か揉めているようだ。イカサマが失敗でもしたのかな、見えないようにくじの箱を下に置くところが怪しかったし、何か手違いでも発生したのだろう。
「でも1等がすぐに出るのはおかしい、もしかして運関係の祝福の可能性があるかもしれん」
「お、それかもしれない!それだったら拒否出来まっせ!」
チンピラ二人が何か思いついたのか、ニヤケ顔しながら戻ってくる。
「おい兄ちゃん、お前の祝福はどういったものか聞きたい」
「僕の祝福? 鍵を開けられるかもしれないという、不確定解除という使いづらい祝福なんだよね」
青年がカードのようなものを取り出し、それをチンピラ二人に見せつける。
「不確定解除…。関係ないですし、へんてこりんな祝福ですな~」
チンピラ二人がまた困り顔になり、奥へ再び話しこんだ。
「どうしまっせ、あの祝福じゃあ言い掛かりも難しいですし、もう逃げちゃいます?」
「ここで逃げて問題になるのは面倒くさい、だといって景品を渡すのは商売上がったりだ。しょうがない消すか」
「お、やっちゃうんすか。あのガキなら楽勝ですし、処理簡単でっせ!」
またチンピラ二人がニヤニヤしながら戻ってくる。ただ今度の表情は何か企んでいるようなニヤケ顔に感じた。
「1等の景品ですが、ここにあるのは見本用で、もう一つ倉庫にある。それを渡そうと思うから付いてきてくれないかな」
「いえいえ、別に僕はここで待つよ」
「せっかくの豪華景品ですし、すぐに手元に欲しいでしょ。ほらほら付いていくっせ!」
ヒョロチンピラが青年の肩を捕まえるように連れてかれる。
傍観者のように成り行きを見守っていたら、いきなりゴツチンピラがこちらを睨んできた。
「さっきからこっちを見ているおまえもだ。お前もちょっと来い!」
「え」
どうやら気付かれていたようで、嫌な予感がし逃げようとしたが失敗し捕まってしまった。
あ、俺もヤられるパターンだ。終わったな俺の人生。
ゴツチンピラに引っ張れるように人気のない裏路地へ連れてかれていった。