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祝福された世界への逃避録  作者: 加耶ヶ咲みちる
第2話 グランデレス領の中心街
14/23

2-03_グランデレス街

 日が昇り始めて、辺りが少し明るくなってきた頃。

 オルターが目覚めたので、出発の準備を始めていく。

 俺の近くで寝ていたアリサはまだ夢の中にいるようなので、取り敢えず寝かしたまま、お姫様抱っこのように持ち上げる。すぅすぅと寝息を立てている姿が可愛らしい。

 そんな様子を眺めながら、起きないように馬車へ優しく乗せる。


 野営した後の痕跡を残さないよう焚火などの片づけを行い、取り敢えず周りを来た時の状態のように綺麗にし終わったら、オルターが出発の準備が出来たようなので馬車へ乗り込み、出発する。


 出発したのにも係わらず未だにアリサは寝ているので、昨日のお返しとして寝やすいように肩を貸す。

 これなら揺れは少しましになり、気持ちよく寝れるだろう。この様子だとまだ起きなさそうだしな。

 俺も少し目を閉じていよう、夜は見張りで寝ていなかったし。


 そしてしばらく馬車を走らせること数時間後。


「おーい、街が見えてきたぜ」

 

 オルターの声で気づき目を開ける。アリサも声で目覚めたようで肩から離れ起き始める。

「ん~? …あ、ジョ〜ジさん。おはよう~」


「あぁ、おはよう。どうやらもうすぐ街に着くらしいよ」


「ん~、もう着くのですか~…早いですね~」

 起きたばかりのアリサはまだ寝ぼけていて、うとうとしながらふらついている。

 そしてハッと気づいて、「ん~」と腕を上げながら完全に目覚める。

 そんな姿におもわず笑みがこぼれる。


 どうやら、街が見えたようなので外の様子を確かめるべく車窓から顔を出す。


 辺りの道は整備されていて、遠くのほうを目を向けると石造りの建造物がいくつも確認でき、活気づいている街が見えてくる。それを遮るように門が立ちはだかっている。

 どうやらあれが街の入り口のようだ。


 馬車が入り口近くまで到着し、近くにいた門番らしき人らが立ち塞がるので馬車が止まった。

 そしてその門番の一人がこちらへ近づく。


「通行許可証等の身分証明の提示を!」


「あいよ、ほら通行許可証だ」


「了解した。少し中を確認しても構わないか?」


「あぁ問題ない。中に連れが二人と農作物といったものしか入ってないぜ」


 何人かの門番がこちらへ近づき中を覗き込む。目が合ってしまったので会釈をしておく。

 そして「ふむ」と言いながら問題ないことを理解したのか、その場から離れ、道を開け始める。


「異常なし!どうぞお通りください!」


「おう、ご苦労さん」


 再び馬車を走らせ、整列して敬礼している門番の間を通り過ぎ、街の中へ入っていく。


 街の中はまるで、世界史の教科書で見たことがあるような中世の欧州らしき街風景が広がっていた。

 建物は石造りで出来ているものがほとんどで、地面は石のタイルが綺麗に張り巡らせていた。


 今、馬車が走っている道は元の世界のように自動車が走るような2車線道路になっており、さまざまな馬車が行き交っていた。

 交差点では信号の役目として人が笛と手信号用いて交通整備を行っている様子が趣を感じられる。


 そういえば、この馬車はどこへ向かっているのだろう。聞いていなかったからオルターに尋ねてみる。

「あの俺たち、どこへ向かっているのですか」


「あぁしばらく滞在する予定の馴染みの宿に向かってる。そこの宿主とは長い付き合いだからな」

 オルターの仕事柄からして、交友関係は広そうだし何かと助けになっているのだろう。


 そして、街の賑わいを眺めていたら、いつの間にか目的の宿へ着いたらしい。

 馬車を近くの空いているところへ止めたら、俺たちは馬車から降りた。

 宿の外観は欧州風な木組みの建物で風情を感じられる。


「ここへ来るのは久しぶりですね。いつも私は家でお留守番でしたから」


「そうだな、アリサがグランデレス街へ来るのは3年ぶりか」


 グランデレス…。

 そういえば、この地域はグランデレス領って言っていたな。

 つまりはここはグランデレスの中心街ということか。


「さてと、営業中だな。部屋空いてればいいのだがな」

 オルターが入口の看板を確認し、中へ入っていくので付いていくように俺たちも入っていく。

 中へ入ると、綺麗で落ち着いている雰囲気が広がっていた。


「おい、主人。俺だ、オルターだ」

 オルターが受付にある呼び鈴を鳴らしながら、宿主を呼ぶ。


「ん?オルターかい…それとアリサちゃんか久しぶりだな大きくなったの」

 奥から白髪で少し年季の入った風貌男性が出てくる。


「こっちは見ない顔だの、珍しく人を雇ったのかい」


「あぁ、そいつは色々と事情があってな拾ってきた。今は俺の手伝いをやらしてる」


「はい、働かしてもらってる譲治です。宜しくお願いします」


「ほう、ジョージか。俺はジタローだ、この宿の主人をやっている。よろしくな」

 そう言ってジタローという男性が手を差し出してきたので、握手する。

 ジタロー…次太郎…日本名ぽく聞こえるな。中世らしき世界でこんな名前とか何か似合わないな。


「いつものように一部屋…。いや、あんまり年頃の若い子らを一緒の部屋にするのは良くねぇな。二部屋空いてるか?」

 どうやら俺とアリサの中が縮まったことを察しているのか警戒されているようだ。

 別にアリサをそういう対象には見るつもりないし、やましい目で見るつもりもない。


「おう、ちょうど空いてるぞ。どのくらい滞在するんだ?」


「今回は10日間の予定だな、こいつにこの街の観光させてやりたいし、あと野暮用でやらなきゃいけないことがあるんでな」


「野暮用かい…また変なこと始める気かい」


「へへ、まぁな。いいものが手に入ったからな」


「ほら鍵だ。お代は後でいいぞ」


「アリサ、一人でも構わないよな?」


「別に、一緒でも構わなかったのですが…」


「いや、もうアリサは子供じゃないんだ。過ちを起こるといけないからな」

 オルターがこちらを睨み、アリサが顔傾げてこちらを見てくるが、あんまり気にするなとアイコンタクトしておく。


「それじゃジョージ。馬車の中にある荷物と売りさばく用の農作物を中へ運んでおいてな。農作物はジタローに言えば倉庫を貸してくれると思うから、その中に置いておいてくれ。俺はその間、馬を預けに行って来るから頼んだぞ」

 俺に仕事を任せてオルターが外へ出ていった。


 そろそろ眠気がしてきて休みたかったけど、仕事を頼まれたし頑張って取り掛かりますか。

 そう張り切り外へ出ていくと当然のようにアリサも付いてきて、一緒に沢山の積み荷を何回かへ分けて中へ運んでいくのであった。



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