2-01
譲治がこの世界に来て数日が経った。
クヒド村の住民とは交流を深めており、畑や家の修繕の手伝いなど若い自分に任せされる仕事ばかり押し付けれているが前の仕事に比べれば楽な分類だ。
今日もこの村の爺さんの家の周りの手伝いで駆り出される予定だ。
目的の家に向かって歩いていると、以前ポムポムに襲われて土だらけだった中年の男性と出会う。
「やぁ、ジョージくんおはよう」
「おはようございます。フラートさん」
「そういえば、明日から街へ出掛けるのだよね?」
「そうですけど、何か仕入れて欲しいものがあるのですか」
そう、明日から商品を仕入れるためにオルターと一緒に街へ行くことになっている。もちろんアリサも一緒だ。
街へ出掛けることを聞きつけると、村の住民から日用品や作業道具などといったものを頼まれることが多い。
「…の以上だけど、買っておいてくれるかな」
フラートさんの注文を記憶していく。
注文品は可愛らしい雑貨品のようなものばかりだった。
そういえばフラートさんが無害であるはずのポムポムに襲われた理由が最近になって分かってきた。
実はこの人はすごく可愛いもの好きらしく、ポムポムを見かけるたびに抱き着こうとするらしい。
ただしそれがポムポムにとって敵対行為に見えるらしく、襲われることが日常茶飯事だった。
「はい、わかりました。ちゃんと仕入れておきますよ」
「そうか、ありがとうね。それじゃあ明日、気をつけて行ってきてね」
そういってフラートは立ち去っていった。
このように色々と欲しいものを頼まれていく。
明日から色々と楽しみだけど、その前に今は仕事を片付けよう。
そう思いながら約束の爺さんの家へ向かった…。
・・・
・・・
そして翌日の朝。
今日はいつもより早く起き、出かける準備を始めていく。
荷台がいつも行商で使っているものではなく、人が乗れるような馬車で行くようだ。
するとオルターが馬を2匹連れてこちらへやってくる。
「よし、馬を調達してきたぜ。そっちの準備は大丈夫か?」
「はい、頼まれたものは全部積みましたよ」
「よし、それじゃアリサを起こしに行ってくるぜ」
オルターが馬を適当なところへ繋ぎ、まだ寝ているアリサを起こしに家へ戻る。
実はアリサはしっかりそうに見えるが、朝は弱くいつも起きるのは遅かった。
アリサの準備を待ち、しばらくすると二人が戻ってきた。
「すいません、待たせてしまって」
アリサが可愛いらしくおしゃれをしている。服装は白いワンピースのようで、似合いすぎて可愛い。
街へ行くのだから綺麗に身だしなみをしないとねとのことらしい。
自分もあの村人ぽい布の服で行くのは気が引けるのでオルターからお古を貰ったが、やはり少し大きかったので、スーツのベルトを駆使して着れるようにしている。
「よし、二人とも準備はいいか。馬車へ乗り込んでくれ」
俺とアリサが馬車へ乗り込み、オルターが御者台に座って馬を引くようだ。
「なるべく、明日の昼前には着きたいから、夜は適当なところで野宿する予定だ」
野宿か…。人生で初めてするな。野宿というとホームレスみたいなイメージがあるがここでは普通にやるからおかしくはない。
あんまり外で寝れる自信はないけど。
「それじゃ出発するぜ。」
オルターが手綱を引き馬を走らせていく。
これから初めてこの世界の都市といえる場所へ出向く。
どのくらいこの世界が発展しているかが分かるチャンスだ。
ここの村だとあんまり情報が手に入れられなかったが、都会だったら色々と情報が手に入るだろう。
もしかして元の世界へ帰れる手がかりも…。
俺はそんな期待を胸に膨らませながら、ただ街へ着くのを見守っていくのだった。