1-09(終)
クヒド村へ帰宅した俺たちは、いつものように荷台の片付けをし、夕食をとる。
そしてもう辺りは暗くなっている頃。
譲治は小屋の近くの柵にもたれかけながら夜景を眺めていた。
都会では絶対に見られない星空が一望でき、長く見ていても飽きないぐらい綺麗な星空だった。
ここの夜景は俺の世界とは全く異なる天体がはっきりわかる。
月のような惑星が何個か確認でき、発している色がそれぞれ異なっている。
この世界の夜景に感動していたら、オルター達が暮らしている家からアリサが出てくる。
アリサがこちらへ気づき、近寄ってくる。
「こんな夜遅く何をしているのですかジョージさん」
「あぁ、ちょっと夜空が綺麗だったから夜景を眺めていただけだよ」
「夜景ですか。いつも見慣れすぎて気に留めていなかったですが、改めて見ると確かに綺麗ですね」
アリサが自分の隣へ立つ。
いきなり隣へ立ったのでいつもの癖でびくつく。
あんまり彼女以外の女性と接するのは慣れていないので緊張してくる。
荷台で一緒に引いていた時もすこし緊張していたんだが、まだアリサと接するのは慣れない。
にしても、アリサは何回見ても可愛い。清楚で可愛いらしくほっそりとしている。
しかも性格も俺の彼女に負けていないぐらい優しい。
こんな美少女、俺の人生で見たことがない。
見惚れていたら、こちらへ顔を向け目が合ってしまい、すぐに目線を逸らす。
「どうしたんですか?」
「いえ、なんでも無いです…。」
「?」
彼女がいる身として、他の女にうつつ抜かすのは良くないだろう。
煩悩を振り払い、彼女の真澄について考える。
昨日は混乱していて、彼女のことを疑っていたがよく考えたらあれが浮気とは限らない。
まだ俺は彼女のことを信じていたい気持ちがある。
「ジョージさん。帰り道で気まずい雰囲気にさせてごめんなさい」
突然アリサがこちらへ体を向けて謝ってきた。
「私、あんまり祝福というものが好きではないのです。私の祝福は人を癒すことが出来るから好きなんですが、人を傷つける祝福は嫌いです」
アリサが複雑な心境で語る。
帰り道でのオルターのやり取りで意味深な感じだったが、
《祝福》関係で何かあったんだろうか。
「ごめんなさい。また変な感じにしちゃう所でしたね。とりあえずジョージさんに謝りたかっただけです」
「別に帰り道のことは気にしていないから、安心して」
「そうですか…ジョージさんが良い人で良かったです。それではおやすみなさい」
アリサに笑みが戻り、家のほうへ帰っていく。
一人になった譲治はまた思い更けていく。
ずっとここで俺は此処に居ていいのだろうか。
真澄は俺がいないことを心配してくれているのか。
もし心配していたら早く戻ってやらないといけない。
だけど元の世界へ帰れるのだろうか…。
まだこの世界のことが分からないまま、無暗に動くのか何かと危険だろう。
俺はいまこの国では<未開拓人>として扱われる可能性がある。
ボロを出さないようここでしばらく居たほうが良いな。
「はぁ…」とため息をつき、結論を出す。
オルターさん達は優しいし、しばらく居させてもらおう。
帰る手がかりを見つけたら、出ていけばいいだろう。
とりあえずの結論を付けて小屋を戻り、譲治は眠りに就いた。
ここから譲治の異世界物語が始まろうとしていった。
果てして元の世界に帰れるのだろうか…。
<第1話 ここは祝福された世界 終 >
なんとか第1話を書き終わりました。
このように一つの話を少しずつ投稿していくのでよろしくお願い致します。。
活動日誌にて第1話のあとがきと登場人物・用語解説を載せましたので、そちらも拝見していってください。