1-08
隣村での行商はなんの問題もなく終わり、クヒド村の帰路へ着いている最中である。
そういえば、いくときは何度も遭遇して倒していったポムポムがさっきから出てこないことに気がついた。
「あれ、さっきからポムポムの姿が見かけないようですけど、この時間はいないんですか?」
「あぁ、それはこいつのおかげだ」
オルターが荷台からランプのようなものを取り出す。
ランプのようなものは青く美しく光を発している。
「これは幻獣除けのお香のようなものでな、焚いている間は幻獣は近寄れないんだ。」
そんなのがあるんだったら行くとき戦う必要なかったんじゃ…
といっても戦わせたのは俺を成長させる為と言っていたし、しょうがない。
「まぁ、ポムポム自体は無害なんだよな。敵意を見せなきゃこちらに危害を加える気のない可愛い生物なんだぜ」
なんだって。
あんな可愛らしくて無害なポムポムを掃滅していた俺はなんて無慈悲なんだ。
「そんな暗そうな顔すんなって。結局ああいう幻獣は全て滅ぼさなければいけない運命なんだぜ」
「滅ぼされる運命なんですか。」
「まぁな。幻獣というのは、元々《祝福》で生み出された生き物なんだ。生物錬成の系統の持ち主が乱用して多種多様な生物がこの世界に拡散してしまったんだよ。しかも厄介なことに勝手に自分で繁殖出来るから数は減らなく殲滅出来ないのが今の現状だ」
そういえば倒した時、死体も残らず消えていくのは少し不思議に感じていたが、能力によって作り出されたものだからか。
自分で作った生物を全世界に広めることができちゃうなんてある意味侵略行為だよな。
「祝福を悪用する人はいるものですね」
「あぁ、そりぁいるさ。祝福を用いた争い事や暴動なんて当たり前だし、事件の真相には必ずってぐらい祝福が出てくるもんだ。」
やはり、力を持てば悪いことに使うやつはどの世界にもいるもんなんだな。
「みんなこの力を神様からの祝福って呼んでいるけど、私はそう思いたくないんです。祝福なんだったらみんな幸せで平和な世界になっているはずなんです!」
すると一緒に荷台を引いているアリサが急に声を大きくして言う。
「《祝福》のおかげで幸せになれた奴はたくさんいる。じゃなきゃ《祝福》なんて呼ばれ方はしねぇぜ」
祝福というのは神から与えられる恵みという意味だし、意味としては間違ってはいない。
力というのは結局使い方次第でどのようにもなるものだ。
「まぁ…神様はただ力を与えただけで、それをどのように活用するのは俺たち次第なんじゃないですかね。」
俺の世界では、祝福なんて力がなくても戦争は起きている。争いが起きるのは人間のせいであり自然の摂理なんだと自分は思う。
「そうですよね…。結局、悪く使う人間が悪いのですね…。」
「アリサ。あんまり過去のことは振り返るな。元気なお前が暗いと心配されちゃうぜ」
オルターが意味ありげにアリサを慰めるように言ってくる。
何かがこの二人に起こったのが察せるが、関係ない自分が探るものではないな。
とりあえずあんまりこの話題を続けるのはよろしくなさそうなので終わらせた。
違う話題に変え、オルターとアリサと俺が暮らすクヒド村へ帰っていった。