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スイッチ・オフ  作者: 南戸由華
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スイッチ・オフ-1-

軽く私の経験に沿って書いてます。

多くの人の反感を買いそうな記述もあるかも知れませんが、こういう考え方もあるんだと流していただけたら幸いです。

 

 私はひねくれ者だ。

 何がどうひねくれているかって?


 じゃあここで具体例を挙げようじゃないか。


 例えば、就活中の年上の彼氏を持つ友人がいたとする。


「こないだね、修羅場だったんだよ〜。」


 へー、修羅場か。少し胸が高鳴る。

 まず、人の不幸を喜ぶ時点でひねくれている。


「…それでね、彼が就活上手くいかないみたいで、すごく落ちこんでて…でも私はまだそんなことわからないから、何も言えなくて…となりで寝てるのに、初めて何もしゃべらないで、気づかれないように泣いちゃった…」


 ここで、普通の人なら、うんうん分かる。どうしようもないのって辛いよね。って考えるのだろう。


 だけど私はそんな考え方をありきたりだと嫌い、反射的に普通とは違うように考えてしまう。要するに、相手に素直に共感したくないのだろう。


 この場合、それって修羅場じゃないじゃん。別に別れる心配さらさらないじゃん。と心でツッコミを入れてしまう。

 それと、ドラマや漫画の心優しき主人公のような、ありきたりな話だな、と。


「何も力になれないって辛いね。」

 彼女は特に話す必要の無い話をまだ続ける。


 要約しよう。

 要するにこの子は「私は人のために泣けるいい子です。」と言いたいのだ。


 泣いたのを知られたくないはずなのに、それを私に言うってことは、本当は人のために泣いている優しい自分を誰かに知らせたいんじゃないのか。

 彼氏にアピールするのは露骨だから、適当なやつにでもアピールしとくか、みたいな。

 いずれ私から人づてに、「あの子はあなたのために泣けるいい子ですよ」と彼氏に伝わるのを期待しているのかもしれない。


 彼女の本心はそうではないかもしれないが、絶対少しはそういう思惑があるのではと私は疑っている。


 私なら、誰にも言わない。

 別に優しい人だってわざわざアピールして人に好かれたいなんて思わないし、まず、さっきの話題だと、聞いた相手にしてみれば特にどうしようもない人事だ。

 相談にもなっていない。一方的なアピールじゃないか。


 と、こういう感じだ。

 ほら、普通とは違うだろう?


 数少ない友人にさえこうなのだ。

 というか、友人が少ないのにも納得だな。


 私は確か、彼女に当たり障りのない返事をしたと思う。自分の思いとは反対の、それこそドラマや漫画の「良き友人役」のようなありきたりな返事を。


 本当に、普通でない自分に苛々する。

 すべてが自慢や、私への当てつけに思えてしまう嫌味な性格に。

 その本心に嘘をついて当たり障りのないように人と接する自分にも。

 人と違う意見を持ちたがる心じゃなくて、もっと素直に人に共感できる心を持って生まれたかった。


 これは、そんなひねくれた私のお話。



 ***



 夜寝る前、私はいつものようにスマホを見る。


 画面のロックを解き、LINEを開く。

 今まさに、友人の遠まわしな自慢話に付き合っている所だ。どうやら彼氏と旅行に行ったらしい。無駄に写真を送り付けてくる。


 適当に区切りのいいところで会話を止め、SNSを開く。

 ちなみに、私はSNSもあまり好きではない。あれこそ人の自慢大会だと思っている。


「○○達と飲んだ〜!やっぱこのメンバーが1番好き!」とか、

「彼氏と1年!これからもよろしくね!」とか、

「誕生日サプライズ超嬉しい〜!みんなありがとう!」とか、


「自分充実した日々を送ってます」というありきたりな話を、わざわざ全国に向けて知らせる必要などないじゃないか。


 そんなこと知る必要もない。

 と、頭では分かっているのに、ついつい見て、私も楽しいことを載せなければ…と張り合おうとする自分も本当にくだらない。


 画面を閉じ、ベットに入る。

 友人との会話がまだ続いているが、もう返信する気力はなかった。


 今夜はもう限界だ。


 私は部屋で1人、静かに泣いた。

 一人暮らしなので、誰にも見られる事はないが、部屋に誰かいたとしても、きっと気づかれないように静かに泣いた。


 きっと、この涙は誰にも言えない。


 本当に自分はくだらない。

 自慢話を聞きたくない。張り合おうとするのも虚しいだけだと強く思うのに、完全に断ち切ることができない。


 きっと、自分も何かを自慢したいのだろう。誰も経験しないような、少し人と違うようなことを。

 でも、そんなことは起こらないし、自分から経験しに行く勇気もない。


 日々相反する気持ちにもやもやしていると、何かが胸の中に溜まっていき、それが一杯になると、こうして夜1人で静かに泣くのだ。


 明日、朝起きたら、少しはすっきりしているだろうか。

 明日も学校に行かなければならないが、決してこんな私を知られたくはない。


 涙を流しながら、私は眠りを迎えた。





読んでいただきありがとうございます。

少しだけ続きます。

おそらく2-3話で終わると思います。

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