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涙跡

作者: 真雪



私は日向 佳奈。

いきなりだが私は前世の記憶がある。

前世での私は殺されて死んだ。

あまり思い出したくはないが、今でも自分の手でお腹を刺している光景は、はっきりと覚えている。

ゔ……思い出したら気持ち悪くなってきた。

吐き気が治るまでちょっと待って……


ふぅ……気持ち悪さは治ったよ。

でなんの話しだったっけ?

死んだときの話か。

ん?殺されたって言っているのに、何故自分でお腹を刺しているのかって?

まぁ確かにこれだけ聞いたら自殺に思えるかもしれない。

でも決して私は自殺などしていない。

あくまで殺されたのだ。

なら誰に殺されたのかって?

んーそれは今から話す話を聞けばわかると思うよ。






前世の私は今と同じ普通の少女だった。

同じって言っても家庭関係は今より最悪だったけれど。

それが変わってしまったのは高校に入学してひと月ほどたったときだ。


その夜はいつものように過ごし、いつものように眠りについた。

だが気づけば体が勝手に動いていて、等身大の鏡の前にいた。

わかりやすく説明すると、自分は映像を見ているだけで体を動かしているのは、別の誰かという感じだ。

もの凄く怖かった。

鏡の前にたった自分は鏡に映っている私にむかって愛を囁き出した。

余計に怖く感じ気持ち悪いと思った。

愛を囁くときの口調は私の口調とは違い、男の口調という感じだった。

愛を囁いた後満足した表情をし、布団に戻った。

朝になり目が覚め、最初は夜のことは夢だと思った。

だけどそれから毎日夕方か夜にそれが起こるようになった。

私はこれは別の人格、いわゆる二重人格になってしまったのだと結論づけた。

夕方にもこの人格は出てくるときがあるので、友人と遊ぶことも部活をすることも出来なくなってしまった。

私の両親はほとんど帰ってこないので、それだけは救いだった。


それから1年ほど経ち、二重人格は治らないままだった。

1年間毎日私じゃない人格が出てくるのにも、恐怖は感じなくなっていた。

慣れって恐ろしい。

でも鏡に映っている私にむかって、愛を囁く行為は気持ち悪いと思うままだったけど。


そんなある日気になる先輩が出来た。

委員会で仲良くなり、とても優しい先輩だった。

その日に出てきた別の人格は少し様子が変だった。

鏡の自分にむかって愛を囁くところは同じだけれど、『どうして僕を見てくれないんだ』とか『キミは僕だけのものだ』とかそういうことを言っていた。

はっきり言って気味が悪かった。


それから私は先輩とどんどん仲が良くなっていった。

仲が良くなればなるほど、別の人格はおかしくなっていき、ときには私を殴った。

自分で自分殴るってどんだけシュールなんだ。


そしてある日先輩に告白された。

もちろん告白の答えはYesだ。

嬉しくて先輩と過ごす毎日が楽しみだった。

でもその夜の別の人格は今まで以上におかしくて、ヤバいと思ったときにはもう包丁を持ち私のお腹に刺していた。




『キミが他の男のものになっちゃうのが悪いんだよ。次は僕のものに……』




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




これが私の前世の記憶だ。

今の私に生まれ変わってからは普通に生きられる喜びを凄く感じる。

別の人格がいないおかげで、友人と放課後遊びにも行けるし、部活もできる、誰かと旅行行くこともできる。

本当に毎日が前世より楽しくて充実している。






「ねぇねぇ、転校生が来るんだって」


ある日学校に行くと転校生の噂で賑わっていた。



「転校生○○社の社長の息子なんだって」


「え〜じゃあもし結婚できたら玉の輿じゃん!」


「いや〜無理でしょ」


「だよね」





鐘が鳴り担任が教室に入って来た。

クラスメイトたちは転校生が紹介されるのを、今か今かと待ち構えている。

担任が転校生の名前を呼び転校生が入って来る。

転校生は男でとても整った容姿をしていた。

女子生徒たちが色めき立つ。

だが私はその転校生の姿を見た途端、背筋が凍った。

知ってる。この人。

昔何処かで会ったことあった?

いや、違うもっと前だ。

私が生まれる前。

違う。違う。違う。

この人は……

やだ。やだ。やだ。

前世での……

認めたくない。

別の人格だ……

面白いほどに冷や汗が出る。

上手く呼吸が出来ない。


気がつけば転校生は私の近くに立っていた。



「僕この席がいいです」



私の隣の席を指差す。

私の隣の席の男子生徒は女子生徒たちに色々言われ、席をはなれようとした。


やだ、席変えないで。

お願い、誰か助けて。


私の願いは叶わず、転校生が私の隣の席に着く、そして私の耳もとで囁いた。



「**やっと見つけた。今度こそ僕のものだよ」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




目を開けると真っ白ななにもない部屋にいて、目の前には扉がある。



手は鎖で繋がれ身動きは出来ない。



扉が開きあいつが入って来る。




「元気にしてた?」


「………」


「愛してるよ**」



違う!私は佳奈だ。

**は死んだ。

私は**なんかじゃない!!

**になんか戻りたくない。

せっかく幸せになれたのに……


どうしてこうなったの?

私の幸せを返してよ……




何度も何度も涙が頬を伝う。


あいつはそれを満足そうに見て笑った。








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