役者は揃う
「……何故、生き返っているのかは分からない。これ以上は何も出ない」
ザンは、言うだけ言うと目を閉じた。
「世界の環……それを乱す二種類の黒い霧。魔物と死者、か」
夏郷は、ナーデとの通信を試みる。
《ドウシタ? カザト。ソコマデ ワタシヲノゾムトハ》
「お? 案外簡単にいった」
《キョウイノイチヲシリタイノカ?》
「それもそうだけど。その脅威……黒い霧が二種類あることが判明したんだ。……脅威の違いって判ったりするかな?」
《ザンネンダガ、ハンベツハ ツカナイ。シカシ、キョウイノハンノウガ、フタツ アル》
「どこ?」
《キラーシン ト ルリベ》
「キラーシンとルリベだね? 分かったよ」
《キヲツケロ。ミョウナカンジガスルノダ》
「警戒するよ」
「夏郷さん?」
「あ……ごめんごめん。ナーデと話をしてたんだよ。ナーデにも黒い霧の区別はつかないらしい」
「ナーデにも!?」
「でも、黒い霧の居場所は判ったよ。キラーシンとルリベって所らしいんだけど」
「キラーシンはドゥンに乗って四十分。ルリベは十分だ、カザト」
「ありがとう、リリちゃん。助かるよ」
「と、当然だよ! リリは賢いんだもん!」
「そうでなくっちゃよ! あたしと一緒にアイドルをやるって決めたものね」
「あうう!? セイララ~!」
「照れちゃってー。かわいー!」
セイララは、リリをぎゅうっと抱き締める。
「ザン。オレがお前を許すことはない。それでも、オレ達に付き合ってもらうぞ」
「ムロ・クライム。やるようになったか」
(ミナヨ、スマナイ。ジョウキョウガ カワッタ。キラーシン ノ キョウイガ ショウメツシタヨウダ)
「「!?」」
(リユウ ハ ワカラナイ。タダ、ルリベ ニ ムカウノナラ、キヲツケルノダ)
(わーたよ、ナーデ。俺達は変革者なんだろ? 心配要らねえよ)
(漢達が負けないように応援頼むぜ!)
(タノム……ヘンカクシャタチ)
ナーデは通信を切った。
「行こう。気を引き締めてね」
夏郷の言葉に皆が頷く。
そして、八人はドゥンに乗り、ルリベへと向かった。
※ ※ ※
「リリを連れ戻しに向かわせてください!」
「ならない。リリちゃんの意思は固かった」
「ウダホ隊長は、リリの言葉を鵜呑みにするのですか!? 敵に囲まれていた状況のリリの言葉を!」
「……エミル……。私は悩んでいる。リリちゃんをイードに居させて正解だったのかと」
「リリはウダホを尊敬していた! 敬っていた! それでも間違いだったのかと!?」
「ウダホ隊長、失礼します! ただいま、リリ様の目撃情報が上がってまいりました」
「……場所は」
「シャームロからドゥンに乗った模様……行き先は、ルリベだそうです!」
「ウダホ! 私は行きます。妹を連れ戻しに」
「待ちたまえ! 君だけを行かせるわけにはいかん。私も行こう」
「ウダホ!」
「報告感謝する。全隊に伝えてくれ。私とエミルで特務に出る。指示があるまで待機と!」
「ハッ! お気を付けて」
「エミル、遅れるなよ」
「その言葉、そのまま返しますよ隊長」
ウダホとエミルも、ルリベに向かった。




