世界の環
夏郷、緋、雁斗の三人とムロ達は合流すると、人目のつかない路地裏に行った。
「ガント、誰それ?」
「リリ嬢は、こういうのタイプ?」
「リリのタイプなわけない!」
「セイララは?」
「妙なこと訊くのね、雁斗くん。あたしの理想は高いのよ。そんな奴等、話にならない」
「二人のタイプだったら、丁重に扱おうと思っただけ。そうじゃねえなら遠慮は要らねえ、な?」
雁斗は、リリとセイララに目で再度確認すると、気を失っているザンとラグナロクをおもいっきり叩いた。
「……うっ」
「あ゛」
「目ぇ覚めたかよ、自称神のお二人さん」
「ワタクシを何度も痛め付けて何が面白い!?」
ラグナロクが拳を握り締めている。
「だから、お前は自分で死んだんだろ。俺を恨むのはお門違いってもんだ」
「下等め! ワタクシを見下ろして!」
ラグナロクは地べたに座っているため、立っている雁斗に見下ろされる形になっていた。
「どうでもいい。俺が知りたいのは、どうしてお前が生き返ってんだってことだ」
「……知らない。再び下等の地を踏み締めたと思うだけでヘドが出る゛!」
「しゃーねえ。んじゃま、力ずくで」
雁斗が拳を振り上げる。
「てめえ、ザン! どの面下げて現れやがった!」
「貴様。貴様の顔をまた拝むことになるとは。世界は狭いようだ」
「てめえは、どうしようもない野郎だ。さんざん人を殺したてめえが、なんで生き返ったんだ!」
「さあ。神を望む人間の願いが通じたんだろう」
「てめえが神だなんて信じない」
ムロは、武装石をザンに見せる。
「なんのつもりだ?」
「てめえの武装石も融合してるんだ。今のてめえ相手なら楽勝だ」
「……黒い霧……でもか」
「あんな魔物、オレ達の相手じゃない。さっさと倒して戦いを終わらせる」
「魔物、か。そんな可愛い存在なら良かっただろう」
「どういうことだ?」
「黒い霧。それは、世界の環を乱す存在。それこそ世界の脅威になるような」
「知ってる。だから魔物を倒してんだ!」
「世界の環。生と死の理を乱すもの。それが黒い霧……魔物」
「ザン、てめえ!?」
「魔物の霧と死者の霧。異なる黒い霧にどう対抗するのか興味深い」
「この状況を楽しんでるのか、てめえ!?」
「臆するな」
ザンがニヤリと笑んだ。




