死者来襲
「さあ、オレの攻撃を受けきれるか?」
校長の動きが、徐々に俊敏になっていく。
(捌ききれない!?)
「オレの身体を斬るんじゃなかったのかね?」
(前よりも速くなっている!)
「威勢は良くなったが、それだけの変化だった!」
「くっ!?」
校長の鋼鉄のパンチを受け、夏郷が大きく飛ばされる。
「大したことなかったようだ。坊主が弱くなったのか……オレが強くなっているのか」
「……死者が成長する……だと」
「有り得ん話ではあるまいよ。こうしてオレが生き返っているのが、論より証拠ということだ」
「俺を殺すことが校長にとっての復讐ですか」
「殺したところで復讐にはならん。坊主の大切な人間をどうこうするほうが効果的の筈だろう?」
校長が不敵な笑みを浮かべる。口元は緩んでいるが、その目は笑ってなどいなかった。
「……まさか……! 雁斗君に何かしたのか!」
「オレは何もしていない。オレは、だがね」
「答えろ! アンタの他に誰が暗躍している!」
夏郷の目がキリリと校長を捉える。
「いい目だ。血の臭いを知っている目をしている」
校長は腕を組むと、目を閉じる。
「なんだ!?」
夏郷の身体を黒い霧が覆っていく。
※ ※ ※
「奇襲のうえに、数の暴力たあ……。いい度胸をしてんじゃねえか!」
雁斗は、あちこちを血だらけにしながら二人の男の相手をしていた。
「ああ!? 殺された奴の気分など解りはしないだろう! 自称悪魔が!」
「勝手に俺を人殺し扱いするなって。お前が勝手に自殺したんじゃねえか。そうだろ……ラグナロク!」
「神を死に追いやったんだ。同じことだ」
「ああそうかい、自称神」
ガントレットを構えて雁斗が警戒する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!! どいつもこいつも神を愚弄しやがって゛ー!」
ラグナロクの横で、ザンが雄叫びをあげる。
「どいつもこいつも……。神ってホイホイなれる穴場職業だったか?」
雁斗は、思わず苦笑する。神を名乗る男が二人、たかが人間への復讐に燃えていたからだ。
「今度こそ殺してやる、抹殺師!」
「仕方ねえ。あの世にお帰りになってもらおうじゃねえか」
雁斗とラグナロクが同時に加速した。




