リベンジャー
「この世界の人達じゃなかったの!? にわかには信じられない話だけど、きみ達の事だと思えば不思議と信じられるのよね~。それにしても、あたし達の国で大層な事が起きてたなんてさ」
「雁斗君が向かった場所にも魔物が居るんだよ。倒していかないと、どんどん世界の脅威となっていってしまうんだ」
「シャームロにはいつまで?」
「雁斗君が魔物を倒してしまえば用事は済むよ。あとは、緋の気分次第かな」
「漢が気になっているのは、やっぱりこの国のゲームだぜ。この国のサブカルが集まったシャームロなら色々なゲームが有りそうだ」
「ゲーム?」
「えーと。画面を観ながらボタンを押したりとか~、ないか?」
「ひとつあるの。けど、大した遊びじゃないわ」
「あるんだな! それだけ分かれば充分だぜ! 夏郷さん、明日の朝一で覗いてみたいぜ……どうかな?」
「構わないよ。緋の勉強にもなるんだろう?」
「よっし!」
「話が纏まったみたいね。なら早く寝ましょう。何事にも睡眠は大事」
「そうだね。今日は色々とすまなかったね。俺達のこと、信じてくれてありがとう。お休み」
夏郷、ムロ、緋はセイララとリリの部屋を出た。
「アイドル……楽しいの?」
「あら、オバサンに質問?」
「リリ、ずーっと、イードが日常だった。普通の女の子のことが分からない」
「イード、ね……迷惑な話よ。国を変える為なら手段を選ばない野蛮な組織。自分達の都合の良いように国を変えるけど、変えたあとの事なんて考えてない。違う?」
「わからない。イードの偉い人の考えなんて……リリ、話したことないもん」
「運が良かったのね、きみ。きっと会っていたら逆らえなかったでしょうから」
「オバサンは、どうしたらイードを止めれると思う?」
「あたしみたいな一般人に止められるなら苦労しないわ。待つしかないのよ、真の変革者を」
「そうだね。アイドルも無敵じゃないよね。変なこと訊いた、ごめん」
「構わないの。話、してくれてよかったよ。ねえ、なんなら目指さない? アイドル」
「……リリが……アイドル!?」
「素材は良いと思うのだけれど?」
「あわわわわ! リリがアイドル!?」
リリの鼓動が早くなった。しかし、睡魔には勝てず眠りについた。
※ ※ ※
翌朝。約束通り、セイララの案内でゲームを目の当たりにした緋は、無邪気な子供のように騒いでいた。
「ラームを使っての遊びは革新的だったぜ! 充分堪能させてもらったぜ!」
「案内甲斐があったってものね。……そういえば雁斗くんは? 全然見ないけれど」
「ホテルには来てたみたいだけど、少なくとも朝は見てないよ」
「夏郷が見てないんじゃあ知らん。オレ、起きてなかったからよ」
「ガント、どこいったのかな」
「雁斗君の事だから心配は要らないだろうけど……!?」
夏郷の刀が小刻みに震えている。
「……復讐の時だ……」
(え!?)
夏郷の背後で、聞き覚えのある声が聞こえる。夏郷は反射的に振り返った。
「……どういうことだ……なんで!?」
「驚くことはないぞ? 野望を潰した罪、その身をもって償いたまえ」
「校長」
夏郷の目には、信じられない人物が立っていた。




