度を超えた愛情
「いーい! アイドルが一緒にご飯なんて普通じゃないんだから! 解っているわけ!?」
セイララの案で、夏郷達は一緒に食事を摂っていた。
「別に頼んだわけじゃねえし」
「つべこべ言わずにコレも食べなさい!」
セイララは、次から次へと雁斗に料理を持っていく。
「俺、いくらなんでもこんなに食えねえよ!?」
「なんですって!? あたしの料理が食べれないっての!」
「お前は頼んだだけだろ」
「アイドルにお前ってなんなの! きみ幾つなわけ」
「十四だ」
「あ・た・しは十六よ! 年上にお前はない」
「じゅ、十六でピンクのスカートにツインテール!? おまけに髪までピンクって。ちょいとムリがあるんじゃねえか?」
「アイドルに限度なんてないのよ。みんなのセイララでいる以上、常に進化していかないと駄目なの」
「意外に考えてるんだ。見た目とのギャップが効いてるじゃねえか」
「雁斗くん、だっけ? あと数年すれば、わりと色男になるんじゃないの?」
「お前だって数年後にはオバ……!」
雁斗の頭に激痛が走る。
「だれがオ・バ・サ・ンですって~?」
「叩くこたあねえだろ。まったく、それでもアイドルかよ」
雁斗は頭を擦っている。
「ガントは、オバサンには興味ない。自分より歳上には興味ないの」
「あたしを年増扱いするだなんて大した自信だね?」
「本当だもん」
リリの目線はセイララの胸にいく。
「あたしの胸が羨ましいのかなあ? きみには、まだないみたいね?」
セイララは、口元に手を当て、あららという感じでいる。
「いいもん! 無いなら無い分、ガントと密着できるから」
「そうやって強がるのはお子様の証拠よ」
「おいおい!? 食事中に寄ってくんじゃねえ!」
リリとセイララに両手を塞がれ、雁斗が困り果てる。
「おい!! 僕のセイララちゃんと何してるだ!!」
突然、メガネの男性が雁斗に詰め寄ってきた。
「誤解だって!? セイララが、一方的に抱き付いてきたんだ」
「雁斗くん、それはどういう意味なの! まるで、あたしには興味ないって言ってるみたいじゃない」
「だから言ってんだろ? 俺のタイプじゃねえって」
「な、な、ああ……なんだと! セイララちゃんがタイプじゃないだとー!」
男性は眼鏡を外すと、無理矢理セイララを引き寄せた。
「何するの!? あたしは今、プライベートなのよ! 離しなさい! サインならあげるから」
「サインは要らないさあ。僕、セイララちゃんが欲しいのさあ」
「うわあああ!?」
男性に頬を舐められ、セイララは身の毛が立つ思いをした。
「僕の愛を受け取ってよお」
男性の唇がセイララに迫る。
「やめなさいの!」
セイララがパチン! という音を男性の頬に響かせた。
「……いたい……ひどいよお……」
「言ったでしょ! プライベートだってね。今は、みんなのアイドルじゃなくて、一人の女なの! そこを履き違えてはダメよ」
「アイドルは、いつでもどこでもアイドルでなきゃ駄目なんだよお!」
「!」
男性に掴まされ、表へと放り投げられてしまい、セイララは顔に擦り傷を負ってしまう。
「ファンの愛を受け止められないアイドルなんか要らないよお! 僕が消してあげるう」
「……女の子に手を上げるなんて……男が泣くよ」
「知らないよお。他所は他所、僕は僕う」
男性は、一気にセイララに近付いた。
「……悪いな。流石に見てられなくなった。お前を叩き直してやる!」
雁斗が頭突きを食らわせた。




