ガディラの亡者
「着いたけど、細部を見れば見るほど凝られてるね」
「夏郷さん、感心してないで! 中に入らないとだぜ!?」
「分かってるよ。この街の事を訊かないと、だね」
夏郷は、入口で立っている人に近寄る。
「あの。中に入りたいんですが」
「オヤジの許しを得ているか」
「いえ。アポなしです」
「許しがなければ通せない。去ることだ」
「そこをなんとか」
「ならない。入りたければ許しを得ろ」
「……どうすればいい?」
「ジブンを倒せ」
守衛が構える。
「簡単でいいね、それ」
夏郷は刀を構える。
「フン!」
守衛が拳を突き出すと、夏郷に向かって圧が掛かった。
「重い!」
夏郷は刀でガードをすると、そのままジャンプする。
「空中では無防備だ」
守衛が圧を放つ。
「当たらないよ!」
夏郷は鞘を投げると、刀を守衛の腕に突き刺した。
「うっ……腕が!!」
「悪く思わないでね。傷は治すから」
夏郷は刀に付いた血を払うと、鞘に納めた。
「相手がオレ達でよかったな。じゃなきゃ、傷口が悪化して取り返しのつかない事になっただろう」
ムロが守衛の傷口を治した。
「行かないほうがいい。オヤジは、とてつもなく強い」
「構うもんか、オレ達だって覚悟を決めてきてるんだ」
「……オヤジなら最上階に居る。忠告はした」
「確かに頂戴した」
夏郷が、こくんと頷くと一斉に中に入っていった。
「最上階、と」
夏郷は、エレベーターのボタンを押した。
「どんな奴だと思う」
「さあ。高い場所が好きな奴かもね」
「見た目からしてイケ好かねえ野郎だったらぶん殴る!」
「その辺も変わってないよ、ムロは」
「お喋りは終いらしいぞ、お兄さん方」
エレベーターが最上階に着き、扉が開いた。
「誰かね?」
エレベーターに背を向けて座る男性が窓を眺めている。
「無礼を承知で訊きたいことがあります」
「……名は?」
「飯沼夏郷、訳あって旅をしています。この街を見てまわりましたが、あの有り様は何なんですか」
「人が死んでいるのがおかしいのか?」
「普通じゃない! 何か存じてますか!」
「この街、ガディラの管理は私が任されている。管理の結果に過ぎんよ」
男性が椅子を回転させた。
「!? ……イード!」
「驚くことかね? イードの人間が街の管理をしているのが」
「何が目的です!」
「イードの目的の為の目的さ。その為に出てしまった犠牲者に過ぎんのだよ」
「てめえ、さっきから聞いてりゃ!」
ムロが前に出るのを夏郷が遮る。
「イードは、この事態を知っているのか!」
「いちいち報告などしておらん。私の独断だ」
「リリ、キサマを知らない。イードの目的と繋がらない」
「何だ小娘。知った風に」
「リリもイードだ。だから判る」
「イードに歯向かうのか、小娘。イードを裏切ることがどういうことか知っての行動か」
「知っている! それでもリリは足を洗いたい!」
「イードの目的の障害になるのなら、相手が誰であろうと同じこと。始末する!」
男性は、衝撃波を放つ。
「させねえ!」
ガリガリと音を立てながら、雁斗のガントレットが衝撃波を防いだ。
「イードの決まりに首を挟むな」
「……悪りいけど、リリから話を聞いてるんでね。既に十分突っ込んでんだ。この国の再生が、イードの目的ってんなら素直に応援するが、国民の犠牲の上で成り立つ再生なら、問答無用で邪魔させてもらう!」
「目的を知っての妨害か……いいだろう」
男性は立ち上がり、机をエレベーターに向かって蹴り飛ばした。
「これで逃げ道はなくなった。古い人間を消せば国を変えられるというのに……。私のやり方に異を唱えると言うのなら、全員纏めて血祭りだ! イード第一部隊、グリム……参ろう」
グリムの身体をラームが包む。




