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放たれる魔物

「うーん、やっぱり駄目か」


「夏郷さん、どうかしたんです?」


「ほら、ナーデが俺に直接話し掛けてきたから、俺のほうからも話せないかと思ったんだけどね……」


「向こうからは話し掛けてきて、こっちからは話せないだなんて。なんか不公平過ぎませんか」


「そうだよね」


「そもそも世界を創った張本人が手に負えないってのもおかしな話だよな。オレ、ナーデを全面的に信用はできないな」


「ムロの言うことに一理あるね」


「緋はどう思うか?」


オレは、ムロや夏郷さんみたいに割り切れないぜ。ナーデにも事情があるだろうし、オレ達を頼ってくれているのがなんとなく嬉しいんだぜ」


「緋のお人好しは誰の受け売りだ?」


 ムロは、夏郷を定め見る。


「俺なのかな?」


 夏郷は、なんとなくむず痒い気持ちになった。


「逃がすな! 捕らえろ!」


 治安局の者達が素早く走り去っていく。


「ちっ! 治安局ポリスの連中……自分達は頑張ってますよアピールってか」


「そうかな? なんだか違うような」


「夏郷、あんな奴等ほっとけよ。お人好しにも限度があるって」


「うーん」


オレ、見てきます!」


 緋が治安局達を追い掛けていった。


「行っちまった……。たく、お人好しの後輩君だな、夏郷」


「はは、緋には迷いないからね」


「「ぎゃあああ!!」」


「野太い悲鳴だ。いい気味だこと」


「ムーロ。あまり悪口は良くないよ」


「へいへい」


「暴れんなって!」


 緋が変身して立ち回っていた。


「ガアアアア!」


 レヴィスに獣の声が響く。


「ムロ……どうする?」


「お人好しの馬鹿野郎! 友達ダチのピンチに駆けつけないわけにいくかって!」


 ムロは、武装石を発動すると、テレポートで獣の前に飛び出した。


「ムロ!?」


「オレは、治安局あいつらの助けをするわけじゃない。お前を助けるために来た」


「正直助かった、アレ強いぜ!?」


「ただの獣じゃなさそうだ。魔物って感じか?」


「ガアアアア!」


 禍々しく黒い体の魔物は、まるで体全体でムロを食うかの如く襲い掛かる。


「闇には光ってな……神聖な判決ホーリージャッジメント!」


 ムロが右腕の剣から、聖なる光を放った。


「ガアアアア!?」


 魔物は、浄化されるかのように消えていった。


「呆気なかったな」


 ムロが武装を解いた。


「助かったぜ、ムロ」


 緋も変身を解いた。


「何処へ行った!?」


「見失っただと!?」


 治安局が魔物を探しまわっている。


「行こうぜ? 緋。街の見廻りを強化しろってんだ」


「何だったんだ? あの黒い獣」


「さーな。また現れたらオレが消してやる」


 ムロと緋は、夏郷の元に戻った。

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