レヴィス・タワー
《セカイ ノ キョウイ ガ ウゴキダシタ。ハヤクシナケレバ セカイハ トリカエシノツカナイコトニナル》
「!?」
「どうしたんです? 夏郷さん」
「今、ナーデの声が聞こえたんだ」
「ナーデの声が聞こえた!?」
緋は、思わず大声で叫んでしまった。
「皆は聞こえなかったのか?」
「オレには聞こえてない」
「漢もだぜ」
「俺も聞こえなかったけど」
「そうか」
(何故、俺にだけ語りかけてきたんだ? ナーデ)
「夏郷、大丈夫か」
「大丈夫だよ。気にしないでムロ」
「それならいいが……用心に越したことはない」
「そのつもりだ」
(ナーデは、何か隠しているのか。今は詮索はよしたほうが良さそうだね)
「あん? 治安の奴等だ! 今頃ノコノコどのツラ提げて現れやがった!」
レヴィス・タワー前に集まっているレヴィス治安局に雁斗がガンを飛ばす。
「何だその目は」
「こういう視線には敏感なんだな。気付かなきゃなんねえ事が起きても知らん顔なのによ」
「イードの件なら聞いている。あとは任せなさい」
「信用ならねえ。お前達じゃ役不足だ」
「我々に喧嘩を売っているのか?」
「そう思いたきゃ思ってろ。街の人達が、どんだけ怖い目にあってお前達を待っていたか……思っとけ!」
雁斗がレヴィス・タワーに入っていく。
「現在は立ち入りを禁じている!」
「入口で突っ立ってるだけなら誰でもできる」
「待ちなさい!?」
治安局員の制止を聞かず、雁斗は中へと入っていく。
「ここが展望台か」
三百六十度ガラス張りの空間に、レヴィスの観光地図や歴史の品が飾ってある。
「ここなら街を見渡せるわけか」
「雁斗君!」
夏郷達も展望台に上がってきた。
「雁斗ち、先走り過ぎだぜ」
緋が息切れしている。
「悪い……ああいうヤツ等を見てると胸糞悪くてな」
「オレも雁斗に同感だ。治安局がこの街の警察だと思いたくない」
「ムロにとって警察は特別なんだな」
「おう。オレの尊敬してる人も警察だったんだ。普段は飄々としてて抜けてるんだが、いざとなると、持ち前の正義感で突っ走っていく。オレ、その人の本質に憧れてんだ」
「へー、そんな思いが」
「雁斗、イードを片付けるぞ」
「わーてる」
バチンと灯りが落ちて、展望台が薄暗くなる。
「……来やがった……皆、構えろ!」
雁斗が武器を召喚し構える。
「よく判るな」
ムロが武装石を発動し、右腕に剣を装備した。
「判るんだ……ピリピリとした殺気が来たのがな」
「雁斗ちは、余程の修羅場を乗り越えてきたとみるぜ。頼りにするぜ?」
「年下を頼れるってことは、頼る人間の器が大きいってこった」
「漢の器は大きいわけか!」
ガシャン! と大きな音を立ててガラスが展望台に散らばる。
「見つけた。ウダホ隊長の敵……リリの敵!」
「君は?」
「リリはリリ。敵に情けは要らない。カザトだな? 映像通りの惚け顔だ」
「見たところ子供だよね? 君なんかが何故イードに」
「黙れ。話など不要」
「君のような子供と戦うことなんかできない!」
「リリを子供扱いするな! 十年も生きていれば、物事の区別くらい付く。おまえは敵だああ!」
リリの周りが震える。
「まだ十年だ」
夏郷が刀を抜く。
「はあああ!!」
リリが蹴った箇所が抉れた。
「くたばれええ!!」
リリの拳が床を抉る。
「君は、まだ子供だよ」
夏郷は、刀を鞘へと納める。
「リリの髪を切った……切ったなあああ!!」
リリの健康的な脚が夏郷に向かう。
「……灯刀・早姫乱れ流……」
夏郷は、リリの飛び蹴りを簡単に避けると、そのままリリの後ろ首を鞘で叩きつけた。
「……気消閃!」
「あ……」
リリは、気を失った。




