本当の力
「今すぐ退いてくれるってんなら、身体を自由にしてやる」
「随分と舐めた口を利く貴公だ」
エミルは、稲妻を溜め始める。
「退く気はねえか」
雁斗のリストバンドが光り、両腕にガントレットが現れた。
「考え直すなら今だぜ?」
雁斗は、掌をエミルとウダホに向ける。
「それはどうか?」
ウダホの口元が緩む。
「なっ!?」
雁斗の身体が金縛りにあう。
「油断したか。封じたい相手を視界に捉えていれば金縛りを起こせるのだ」
「へー。そいつは初耳だ」
雁斗は、ウダホ達への金縛りを解いた。
「しめた!」
エミルの鞭が雁斗に向かう。
「ふーん」
雁斗は鞭を掴むと、そのまま振り回した。
「私を振り回すだと!?」
「抹殺拳!」
雁斗が急加速してエミルの身体に拳を打った。
「エミル!」
「……くっ……」
エミルは、腹部を押さえ悶えている。
「どうしてだ、どうして金縛りが効いてない!?」
「悪いな。俺、最初から効いてなかった」
「私の金縛りが効かないというのか!?」
ウダホが金縛りを試みる。
「……終わりか?」
「本当に効いてないのか!?」
ウダホがラームの弾丸を撃つ。
「よっ!」
放たれる弾丸に対して、雁斗は掌から光の矢を放ち相殺させる。
「どうしてこうも最新鋭が負かされる!」
「知らねえよ」
ガントレットからトンファー状の刀に抹殺器を変え、ウダホの銃を切り落とした。
「そんな……筈が……」
「今なら間に合う。全員連れてさっさと去れ!」
ウダホの喉元に刃を突き付け、雁斗が忠告する。
「ふん。子供に脅され逃げるほど、イードは脆くないのだ」
「去れ、最後の忠告だ」
雁斗の両眼が金色に変わる。
(なんだ……この子供は!?)
ウダホの全身に鳥肌が立つ。
「分かった」
ウダホは気力で身体を起こすと、隊に撤退の指示を出した。
「隊長、正気ですか!?」
エミルも痛みを押さえながら立ち上がる。
「正気だ。体制を立て直す」
「イードが退くことになるとは」
エミルが握り拳を作る。
「……行くぞ」
ウダホの合図で第七部隊が去っていった。
「ふー。なんとかなったな」
雁斗は、武器をリストバンドに戻した。
「君、凄かったよ」
夏郷が驚いている。
「そう? 俺からしてみれば、本気を出さずに苦戦していたあんた達に驚いてるけど」
「てめえ、どうして分かる!?」
「なんとなく、だ」
「なんだか分かんないが、スゲー奴が現れたぜ!」
「凄くねえよ。俺なんかまだまだ」
「謙遜はいい。礼を言うよ。俺は、飯沼夏郷だ」
「オレは、ムロ・クライムだ」
「漢、紅蓮緋だぜ」
「俺は、桜庭雁斗だ。どうぞよろしく」
夏郷、ムロ、緋と雁斗が握手した。




