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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゼルギュム国シリーズ

公爵令息の復讐

作者: 柳銀竜

王子と王子付きの側近に対する、公爵令息の復讐劇。側近は腹黒公爵令息から王子を守れるのか!

 

クロスは王子が嫌いだった 。


  幼い頃から大嫌いだった。


  この国の王子は、外で遊ぶのが好きな少年だった。


  彼は剣の才能があり、勉強も一回聞いたり読んだりだけで、書物の内容を覚えてしまう程 頭も良かった。


そんな王子と年が同じで、しかも筆頭公爵家の跡取りだった為にクロスは、五歳の頃から彼の遊び相手兼 側近をさせられていた。


  クロスは本が好きだ。


室内で静かに過ごすことが好きで、弟たちはそんなクロスの事を分かってくれていて、読書を邪魔をしたりはしない。


自宅で書物を読んでいる時も、妹と弟達は一切邪魔をせずに、クロスのとなりで静かに本を読んでいる。

まあ…読み終わってからは、弟達がまとわりつくがクロスに暴力を振るう事だけは無かった。


  それから三年後…クロスが八歳の時、彼は生まれて初めて人に殴られた。


理由はと言うと「僕は王子だぞ!僕が遊ぶと言ったら遊ぶんだ」だった。


  その時の時刻は夕方で、毎日その時間に帰っている。


執事が迎えに来たので「迎えが来たので失礼します」と王子に言ったら、まだ遊びたい王子と言い合いになってしまった。

正直クロスは、王子の剣の稽古とかけっこに付き合わされて、へとへとだったので、王子の話に耳を貸さず頭をさげて退室しようした。


それに怒った王子にクロスは、顔面を拳で殴られ鼻血で血塗れに…

そして直ぐに第二撃が飛んできて、床に敷いてある絨毯に叩き付けられてしてしまった。


高そうな絨毯が血塗れに!


クロスは薄れ行く意識の中で、弁償かなとか考えながら意識を手放した。


  翌日。


重いな…と思いながら目を覚ますと、枕元には父が、足元には二人の弟たちがクロスの掛け布団に覆い被さっていた。


重いはずだと思いながら動くと、枕元で寝ていた父がパチッと眼を覚まし、クロスを見るなり大声を上げてしがみついた。


「クロ!大丈夫か、痛いところはあるか!」


  眼をさますなり詰め寄ってくる父に、クロスは若干引きながらも、けして表に出さずにっこり笑っていると、弟達が眼を覚まして叫ぶ。


こっちの二人も声がでかい。


「兄貴!」


「クロ兄上!」


「大丈夫です。しかし…」


クロスが言いにくそうに父を見ると、父は優しくクロスの頭を撫でながら口を開いた。


「分かっている。あの馬鹿王子の遊び相手等もうしなくていいゆっくり休め」


 「ありがとうございます」


  ほっとしたクロスは、また眠くなり眠ってしまった。


  クロスが次に目が覚めた時。妹が枕元に本をおいていた。

目覚めたクロスに気付いた妹は、起こしてしまって申し訳無さそうにクロスを見る。


「あっ。クロ兄様起こした?ごめんなさい」


「ううん。ありがとう」


 城に行く前に読んでいた読みかけだった本と、その続編と灯りを持ってきてくれたらしい。


クロスがもし夜中に目が覚めて、暇だったらと用意してくれたようだ。


家の妹は優しい良い子だと、クロスが涙ぐんでいると、ドアの向こうから女性の声がした。


「クロ起きたの?ミア」


「はい。母上」


 声の主は母だった。


扉の外にいた母は、サンドイッチ(甘いフルーツサンドのやつ)を持って入って来る。

そして母は、サンドイッチをクロスに差し出した。


「はい。お腹すいてなくても食べなさい」


 クロスの大好きな果物がふんだんに使われているサンドイッチは、食欲なくてもかぶりついてしまいそうな位美味しそうだった。


一口食べると一気に空腹感が湧き、一気に五つのサンドイッチを完食してしまった。


その様子を見ていた母と妹は、ホッとした顔をしてた…家族に心配かけたのは本当に申し訳ない。


「心配かけてごめんなさい」


 クロスがそう言うと、母がクロスの背中をポンポンと軽く叩きながら笑った。


「悪いのは馬鹿王子。アンタじゃないの。ほら食べたら寝なさい。ミアももう遅いからね」


「はい。クロ兄様、クッキー焼いたからお腹すいたら食べてね。おやすみなさい」


「おやすみ」


 二人に手を振ってから、クッキーをかじる。


ありがとう…


  その後。


クロスの住む屋敷に国王夫妻が、揃って謝りにきた。

そして後日。王子とその乳兄弟カルも

来たが、俺は過ぎたことですからと国王夫妻と王子の謝罪を受け入れた。


表面上は…だ。


  俺は一生許さない…


謝った程度で誰が許すものか…王子には普段から腹に据えかねていたのだ。


乱暴で我が儘な王子に。


俺は自慢じゃないが頭が悪い。


あいつらが、一回 軽く読んだ位で頭にはいる事が、10回以上読まないと頭に入らない。

頭の悪い俺が、分からない所を王子付きの教育係に勉強習おうとしているとあのバカは邪魔してくる。


バカ王子の側近の利点は、それくらいしかないのにだ!


それにあいつは…俺の顔を殴った。


大好きな…最愛の父に似た俺の顔を…


許さない…


ああ…復讐は何にしようか…


フフフフ…楽しみだな…


  数年後。


クロス・フレイシスの妹であるレミア・フレイシスが他国に逃亡。


王子は婚約者を婚約者の兄と共に探すが、何故か盗賊に襲われたり(盗賊が出るルートをわざと選択して、自分は馬に乗れないからと後から行くふりをして別ルート)魔物に襲われたり(魔物の狩に使う撒き餌をまいた。自分はいち早く避難)スリに置き引き(気付いて放置)果ては身分査証でつかまったり(王子の身分証をコッソリ棄てた)


 二年探しても彼女は見つからず、王子が諦めて国に帰ると、なんと彼女が帰っていた。


ある男性と共に(クロスは一年も前から、妹に婚約者がいるのを知っていた)


 クロスはしつこい男である。


彼は生涯。王子の足をひっぱり、カルは定期的に毒を盛られ(新薬の実験)王子は凶暴な戦姫をめとるはめになった。


王子の結婚生活は、姫に殴られ罵られる毎日で、何でこうなったと老衰して死ぬまで言い続けたらしい。


(強いたげられたわりには、王子は九十まで生きた)


  彼知らない…


姫に結婚を迫られた男が、姫に睡眠薬を盛り王子の寝室に姫を放置したことを 。


その際。姫と王子の服をむき、自分の手をナイフで刺して血をベッドに垂らすような細工をした事を。


翌朝。


侍女達が二人の状態を見て大騒ぎして城中に知れ渡り、三ヶ月の婚約期間の後。

王子は結婚した。


姫の祖国では、結婚は一度きりで処女でなければならない。


最後まで姫は抵抗したが、国の恥になるのかと父王に言われてあきらめた。

細工をしたのを知っているのは、カル(無理矢理手伝わせた)とクロスのみだ。


  其から数十年…クロスはベッドの中で笑っていた。


何時ものイジワルイ笑いでは無く、とても楽しそうに…


「クスクス いいきみだね。好きでもない恐妻をもらい、罵倒され、殴られ 親友と勘違いした相手に先立たれる。最高だねこれ以上の復讐はないよ。ゴホゴホ」


 ベッドの中で、むせ混んだクロスの背中をカルが優しく撫でる。


カルは既に仕事を引退していて、最近は毎日の様にフライシス家に来ていた。


クロスが体を壊して、ベッドから出られなくなったからだ。


今日もお見舞いのアップルパイを持って、クロスの寝室に訪ねて来ている(好物だからと言って病人に食べさせて良いメニューではない)


「無理するからだ。あと先立たれるとか言うな」


 クロスはカルの顔をみてニヤリと笑う。


「いや 死ぬでしょ?こんだけ弱ってるんだよ?君らと違って風邪引いたぐらいで危ないの。クスクス…そういえば 死ぬ前に言っておきたいことがあったんだ」


 クロスは上半身を起こして、カルの耳元で囁く…カルは真っ赤になりながら、心の中で顔が近いと喚いていた。


「だいっ嫌い」


「おまえな…クロス?クロス!クロス!!」

 意地悪をされたカルは、寄りかかって寝てるようにも見えるクロスを揺するが動かない。


まさか!!と思い呼吸を確認するが、息をしてい。


カルはクロスを優しくベッドに寝かせると、急いでフライシス公爵家の人間を呼びに駆け出した。


その後…


国王夫妻(五十才で先代がなくなり王になった)にも、クロスの訃報が知らされフライシス公爵家の人間は葬式の準備と押し掛けた国王夫妻の世話に追われた。


ワアワアとが泣く二人にキレたフライシス公爵は、睡眠薬入りの紅茶を国王夫妻に振る舞い、防音のきいた地下室に閉じ込めた。

父似である公爵は、王子夫妻に連絡して迎えに来て貰い、王子夫妻は彼の期限が悪いのを察知して、両親を回収逃げるように帰って行った。


葬式の準備が一段落すると、彼は棺桶を安置している部屋に入る。


「父上。いますか」


 彼が棺桶に声をかけると、若い男か棺桶の上に現れる。


現れた男は、楽しそうに彼に微笑んだ。


(すごいね。いいな~俺も欲しかったよ!その能力)


「母方の能力だからな。そんなこと言うから 母上捕まったんだろ」


(乱暴者の戦姫に迫られた時は。気持ち悪くて吐き気したけど、ディネに迫られた時は嬉しくてすぐ ことに及んじゃって大変だったけどね。ああ それが君だよ)


「聞きたくなかったよ」


(フフッ君だって似たようなものでしょ)


 無邪気に足をバタバタしている彼は、見た目は二十代なのに仕草がかなり幼い 。


(あ~楽しい人生だったよ。孫まで見れたし。報復はしてやったし)


「カル様にしかしてない気がするけど?」


(俺が先に死んだのと 姫を押し付けた事で復讐は完了。最後のあれは、ただの意地悪だよ)


「カル様…可哀想だな…」


(フフッじゃあ もう行くね)


 若い男…クロスがそう言うと、彼の体は薄く光スーっと消えていった。


  カルは知らない…


カルが恋愛的な意味でクロスを好いていた事に、クロスが気付いていたことに…


クロスはナルシストで、好かれている事に悪い気はしなかった事に…


クロスが大好きなアップルパイを、カルがいつも焼いてくれたことを嬉しく思っていたことを…


  カルは知らない…


彼がとっくの昔にカル(あくまでもカルのみ。王子は心底怨んでる)を赦してること…

新薬の実験と称して、病気の予防薬などを飲ましていたことに…


  みんな知らない…


妻を除く人間の中では、一番大好きな人であることを…


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