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エイ  作者: ごめん手
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テロップの装飾は基本何時間かけてつくるものなのだろう

 まじめな道徳家が、地獄を創造したように。道徳なんて使い捨ての道具だろう?ものさしの1つにしかすぎない。それが100円均一商品のように、安価で誰でもが手に入るから、みんながそれで図っているだけ。もっと世界はカオスだろうけど主観は恐ろしく狭いんだ。

 利他的な行為と、自分の意思というものを一致させた方が生きやすいのはそのせいだ。

二つの一見矛盾を、本気で信じるしかない。

 こんなことを考えるのは思春期だからって?若いからだって?世の中はうんぬんだって?罰しないと罰しないと罰しないと罰しないと罰しないと・・・だって?

 劣悪な生育環境だ?ネグレクトだ?母親の愛だ?だからっていつまでそんなロマンを信じるんだ。そんなもの鶏が先か、卵が先かを思い悩むようなもんだ。

 良い悪いなんてないだろう?そこにあるのは判断しかない。そしてその判断も意思なんてものはない。

 言葉のように伝わりづらく、今日の朝ごはんのように自然に無意識に行われるものだ。 そうだろう?


 僕の隣で彼女はテレビを見ている。ゴールデンタイムのバラエティだ。時々たるんだ頬が少し緩む程度で、声をあげて笑ったりはしない。

 なるほど、上品なおばさんだ。笑うときに眉を八の字にさせ、くぼんだ目の影をさらに濃くさせる癖があるようだ。若いころはやや愛嬌のある顔のせいで、好意を寄せられることは少なそうだが、今は年齢に合ったとても魅力的な表情をしている。

 僕はといえば、テロップの装飾の過剰さが気になって上手く入り込めなかった。くそ。あの文字ひとつつくるのに2時間はかかりそうだ。まったくいい仕事だ。

 すると彼女と目が合があった。そらす。目が合う。目を見開き、眉が八の字になる。自分の脇腹を見る。脇腹に刺さったナイフを見る。

 眉がさらに八の字になる。目が合う。目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う目が合う・・・

 彼女が僕の肩にしなだれかかってきた。

 僕はその頭をそっと右手でさわり、さっきのバラエティ番組を見る。やはりテロップの装飾が気になった。

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