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エイ  作者: ごめん手
22/22

なんだかんだで魔法が最後[最終話]

 私は今、小学校の教室にいる。今日は入学式だ。

 緊張する。詠実が後ろを振り向いてこっちを見ている。ふう、見ないでよ、やだなあ。

左隣は化粧と香水臭いし。お母さん、大丈夫かな。緊張するとめまいがして、血圧上がるのよね。

 しかし詠実にどう言い訳したらいいかな。ランドセルを持ってこいなんて忘れてた。

 今どき、ハガキで連絡ってどうなのよ。みちゃいないっての。

 まあ、ランドセルはもう注文したし、もうすぐ届くから別にいいわよね。

 詠実もとくに気にしてなさそうだし。あ、隣の子に話かけてる。へらへら笑ってるわ。

ほんと、自分から生まれたとは思えないくらい社交的。良かったんじゃない。

 きっと詠実は、何も知らずに充実感をつかめられる人間になるわ。

 右隣に立っているお母さんをつっつく。

「ほら。ほらみてよ、詠実。もう仲良くなってる」

 すると、不機嫌そうにむすっとしていた母から吐息がもれ、次第に笑みを浮かべはじめた。

「詠実は誰とでも楽しそうでいいね」

 いいことだねとつけたしてから、また押し黙った。

 普段から上品ぶってる母親の悪い癖だ。会話を続ける気がない。

 そんなんだから、今になって友達1人もいないんだ。かわいそうな人。

「ん」

 そういえば、お母さんは、私が小さいときから一人だった。誰も尋ねてくる人なんていないし年賀状も事務的なものしかなかったっけ。

 昔はたぶん美人の部類に入っていて、仕事もバリバリやっていたはずなのに。仕事。あれ、お母さんは何の仕事をしていたっけ。

 お母さんのこと、全然知らない。お母さんあなたは何を感じて生きているの。

 そう思うと、急に宮本恵理子のことを思い出して泣きそうになってしまった。

 どうしても、恵理子と母親がかぶってみえる。容姿なんて雲泥の差なのに。恵理子がきいたら笑っちゃうよ。

 きっと生理前だからだね、もう、こんなことを考えるのはやめたはずなのに。

 あらゆることは過ぎ去っていくんだ。思春期に悩んだことさえも、何もかも忘れちゃって、気まぐれに恋なんてして、子供を生んで・・・。

 もう何も気に留めなくなっていたというのに。第一私は忙しいんだ。

 でも、この感覚は何だろうね。うれしいような、かなしいような。

 恵理子、聞いてるかな。あのとき話したこと覚えてる?

 もう1人ね。もう1人いたんだよ。私の隣に。

 なぜ気付かなかったのかな、今まで。

 ランドセルを忘れた子は私だけじゃなかったんだ。

 そうだよね、お母さん。恵理子。そしてエイ。

 私はあなたをずっと忘れてた。

 私達はずっと一緒だったんだ。生まれたときから。

 不思議だ。お母さんになぜ気付かなかったのだろう。

 もっと、気に留めてあげられなかったのだろう。

 そして翌日、私、日枝明里は殺された。

 犯人をつきとめてください。

 ヒントは魔法。あなたに幸あれ。


感想とかくださると嬉しいです。

つらいときに書きなぐった小説とも言えないかもしれない何かではありますが、

読んで下さる人がどのように感じるか知りたくてたまらないです

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