腸の午後
エイは悩んでいた。
悩んでいたのがわからなかった。
そう思っていた。うん、悩みなどなかったのかもしれないとも思わなかった。
私はただ、エイはさっきまで悩んでいたのだと今思った。
なぜならエイは私の真下で腸をぶちまけていたのだから。
私は少し広めで長めの自分の影をみながら、エイから流れるもののにおいをかいだ。
何もかもが、臭かった。
私の口、私の手、私のしっぽ・・・・。
異臭を放っていたわけでもなく、ただ、いつも通りに臭かった。
だが、悪いことじゃあない。
みんなみんな、悪いことじゃあない。
「はは」
肩のすじが妙に痛い・・・。
私は何をしているのだろう。
上空には、何かが浮かんでいる。
クジラ・・・のような、でも腹の白い、影がかかって灰色になっているその一部に
ぽっかりと穴が空いている。
その穴から、少し長くて、細い舌のようなものが数10本出し入れされている。
きっと近くにいたら、その突起と突起がずれるたび、ねちょ、ぐちゃって嫌な音がするんだろうな。
私は、そうとだけ思うとつかんでいた手すりを離し、屋上を後にした。
17年後の今日、私は殺された。
昼休憩だ。ひるきゅーけい?
はは、人生悲しいよねぇ。ご飯食べるよーんんだ。
でっぷり太った僕の体は、別に食べ物が好きなわけではない、ただ口が寂しいだけ。
健康的な、それこそジョックス的なクラブに入って汗とか汁とか相手に見せびらかすルートもあるっちゃあ、あったんだよ?それでもまぁルートとかループとか考えるのがめんどいからこうなったんだろうけれど。セレンディピティなんて・・僕の体には起こらなかった。当たり前のように、みたものに刺激され、当たり前のように、みるものに攻撃される日々。
まぁ、痛みなら結構耐えられるんだよ、意外と。案ずるより産むが易しってほんとよ。
殴られてみればこのくらいかなとか人によって基準がわかってきて、その比較で安心できたりするんだよねぇ。
比較があれば、より強くても、より弱くてもなんか耐えられちゃうんだよね。比較がないときの、こわいなぁってブルブルしてるときが一番こわいんだよ、わかる?
ヤンキー集団にコンビニ前や、電柱の近くの座れるところ(彼ら器用によくあんな場所みつけれるよね、えらいえらい)ですれ違う前がこわいのと一緒。あれみんなが耐えてるんだから結構なぐられても平気だよ。
たぶん、全自動殴力みたいなのあって、朝一発、かえってきて一発、丁度寝たときに一発(これは地味にやだ)されても、なんとも思わない自信がある。あ、あれ?それあるって?マッサージ機?ああ、そういわれればそうかも。進んで殴られてるよね、あれ絶対そうだよ。
あぁ、学校のカースト、すべてのカーストはまだわからないけれど、少なくとも学校内でのカースト制度では、頭の良さや運動能力なんてものはまったく関係ない。
その人の振る舞いによって、他人がどのように反応するかで、その人のカーストはほぼ決まる。
そして、子供時代は親の考えの気持ち悪いコピーなわけだから、いや、考えというのは正しくないのか、振る舞いをコピーしていって後付けで子供なりの理論をあてはめて『自分の考え』ってやつにしているわけだから、子供のカーストは親のカーストと同じになりやすいとも言える。
しかし、その理論、受け取り方に疑問をもったり、親が反面教師化している子供はその親となるべく同じふるまいにしないようにするので同じではなく、反対(どっからどこまでを反対というのだろう・・・裏って何ですか(笑))になってしまうのだと、そうなったと思い込んでいるいたいけな『被害者』の僕は思うのです。
そうだ今僕はご飯を食べている。飯ではない、ご飯をちゃんときちんとねっちょりした茶色の元々白いものが濁った目のようなハイライトがまぶしくて、そしてナウい唐揚げを口にほおばっている。コンビニでしょう、どうせ?
いやいや、僕みたいな被害者はそんなコンビニエンスみたいなところにいけるわけないでしょう?わかっている、そこんとこ。
行動するって、学校の外に出て買いに行くなんて、どんだけの比較ない状態においこまれる可能性があるのかわかる?
すべてその人のさっきまでの感情と、それ以前の反復行動によって形づくられた自分というものの発露をしめすためと、新たな自分形成のきっかけをお前に与えてやるぅ!といわんばかりのパンチをくらうのは、正直ちょっとしんどいなと思うのです。
唐揚げの話をしていたね、僕がいったいどこで唐揚げを手に入れたか。その話をしていたね。
なに、簡単さ、僕は魔法ってやつが使えるんだよ。
・・・ってここで、実は魔法ってのは、と語りだすと思うでしょう?
それか『ぴゃぁあああ』とか謎の生物の鳴き声が聞こえて肩に乗ってきて僕の唯一の友達を紹介するね、こいつは・・・とか語りだすと思うでしょう?
時間は有限なのです。なのです。だからこう考えて唐揚げとかいろいろほおばっているうちに昼休憩は終わったのです。
僕は今から5限にいかなくちゃいけない。




