表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

駐在所の春

制限時間15分、お題は「愛すべき平和」でした。

■即興小説http://sokkyo-shosetsu.com/


「こんにちは、お巡りさん」

 にこっと笑いかけながら少女が顔を覗かせる。

「はい、こんにちは」

 ペンを走らせ答えながら、

(今日は遅かったな)

 と思っている自分に、ああ、待ちわびていたのだと今更ながら気付く。


 彼女と初めに出会ったのは「露出狂に遭った」と交番に飛び込んで来てからだった。

 震える少女は目に涙をために俺の傍にずっといた。

 華奢で化粧っけも全然無くて、なのについ目がいくほどに可愛らしくて。


 今思えば、この時既に惹かれていたのかもしれない。



 彼女はそれから毎日こうして帰りに交番へやってくる。

 たまに、入口で雑談をすることもある。

 ささやかな楽しみに出勤に意欲が沸くようになった。



「今日で最後なんです」

「えっ……」

「私、明日で卒業するから」

「ああ、もうこの道は通学路じゃなくなるのか」

「はい」

「そうか」

「あの、お巡りさん」

 少女ははにかんだような顔で俺を見上げた。


「中学生になっても、時々ここに遊びに来てもいいですか」


 赤いランドセルを背負い不安そうにぎゅっと持つ彼女の前に、俺は膝を付きにっこり笑った。

「勿論、いつでも遊びにおいで」



 ――これが、今の嫁との出会いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ