よれよれこんの夜
お題:輝く木 必須要素:ぬりかべ 制限時間:30分
ざんざんざんと四日も続けば流石の雨も大人しい。
おれは巣穴で寝ころんだまま、木の実をより分け遊んでいた。まるまる太ったどんぐりは碧いヒスイの玉にしよう。ころころしたハシバミは朱いサンゴの玉にしよう。
虫穴付きをいくつか捨てて巾着袋にしまっていると、ほぉーイと夜鳴きの声がした。ぴょこん、と穴から顔を出せば、いつしか雨は止んでいて夜露がきらきら光っている。
「よれよれこんの夜がきたあ!」
おれは穴から飛び出すと、ぽんぽんぽこぽこ腹を叩いた。しっとりしとどな蜘蛛糸がぼよよん遠くに広げてくれる。
やいやい よれよれ ぽんぽこぽん
いっしょにあそぼよ よいよいよい
元気に腹を打ち続けていると、ぼおぉーん、と返事がやってきた。
髭と尻尾がびりびり震える。
どんな相手かわくわくする。
ぼおぉーん
ぼおぉーん
やってきたのはぬりかべだった。
口の代わりにぽわぽわ光り、その度、ぼおぉーん、と訊いてくる。
「はい。呼びました。ぽんスケといいます」
かしこまって答えると、ぽわぽわがいっそう強くなった。
「ヒスイとサンゴの玉もあります。首飾りはどうですか」
ぱちん、とぬりかべは弾けて消えた。
あんまり眩しかったものだから思わずぎゅっと目を瞑る。
いつまで経っても瞼が白くて、そおっと開いてそちらを見れば輝く大木が立っていた。
ああ、よかったあ。気に入ってくれた。
近付いて、こちらに伸びる枝を握れば、ぽんっ、と大木が姿を変えた。
恥ずかしそうに頬に手をあておれを見ているおんなのこには、黄色い耳に尻尾が三本。
「こんばんは、おれのおよめさん」
お見合い夜鳴きがほぉーイと鳴けば、寄れ寄れ婚の夜の合図。
一匹ぼっちの化けモン同士が、もじもじ出会う一夜となる。




