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甘いくちづけ

「即興小説」http://webken.info/live_writing/top.php

■テーマは「忘れたい海辺」

■制限時間は15分

 あなたとの初めてのデートは、花火大会だった。

 その日の私はずっと前から準備していた浴衣を着て、精一杯可愛く見えるように努力した。

 人ごみの多い中、海辺の屋台を手を繋ぎながら歩く。真っ黒な水面みなもにきらきらと明るい光が反射する。

「始まったね」

 ドーン、というお腹に響く音と共に大輪の花が夜の空に色付く。パラパラと崩れていく火の粉の儚さに、

「綺麗」

 と私が呟くと、

「今日の君も」

 と照れくさそうに言ってくれた。いつもはそんな気障な台詞を言わなかったから驚いていると、

「ずっとドキドキしてた」

 って言ってくれた。

 花火大会が終わると、私達は防波堤で並んで座った。買ってきたたこ焼きやわたあめ、それからりんご飴なんかを晩御飯代わりにはしゃぎながら食べていると、不意にあなたは

「キスしようか」

 と呟いた。

 私はそれまでキスなんてした事が無かったから、緊張でがちがちに固まってしまったのだけれど、そんなあなたは「大丈夫だよ」って、優しくリードしてくれた。

 初めてのキスは、甘い砂糖の味がした。

 抱きしめられて、互いにため息をついて、

「良かったね」

 なんて言いながら、ぴったりとくっついて過ごした。

 それから、波に足を入れてみたり、砂浜に棒で落書きをしてみたり。

 幸せだと思った。

 私は彼が大好きで、彼も私が大好きで。

 ずっとこんな日が続けばと思っていた。


 けれど、あなたはもうここにはいない。


 あの花火大会の日から数日も経たないうちに、

「ずっと好きだった人と両思いになれたから」

 と私はあっさり振られてしまった。

 恋なんてそんなものなんだって、私は初めて知った。


 だから、私はもうあの海には行かない。


 新しい恋人と、いつか訪れる日が来るまで。

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