表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/44

NIGHT TEA

お題:ロシア式の月 制限時間:15分


即興小説トレーニング⇒http://sokkyo-shosetsu.com/

 そこそこ大きな公園のそこそこ長いランニング・ロード。

 金曜の夜は一旦帰宅後にスポーツウエアに着替え、この道を10週程回ることにしている。

 ハアハアと息を付きながら残り僅かになったペットボトルの水を飲み干す。なかなかに爽快だ。

 俺はタオルで汗を拭うとスポーツバイクに掛けていた小さなリュックを引っ張る。盗られても惜しくない程度に使い込んだリュックの中には、俺の楽しみが一式入っている。

 少し歩きいつもの場所に出る。

「――こんばんは」

 大きな池を前にベンチで音楽を聴いていた女性の傍に寄り、驚かせないように前に回って挨拶をする。あ、という顔をして赤いメガネの彼女は頷き、イヤホンを取りながらベンチの左端側に身体をずらした。

「何を聞いていたんですか」

「映画のサントラです。この間観た作品がちょっと気に入っちゃって」

 他愛もない会話をポツポツと続けながら、俺はリュックから一式を取り出す。

 魔法瓶とジッパー付きのビニール袋に入れた三角形の紅茶の袋、ウォッカの小瓶、それからイチゴジャム。

「ジャム?」

 彼女が眉を上げてしげしげと眺める。

「ええ、今夜はロシアン・ティーです」

 魔法瓶の蓋にウォッカを少々注ぎ、イチゴジャムを加えてくるくると混ぜる。魔法瓶に紅茶の袋を落とし、暫くして紐を引き上げる。

「――準備してきました?」

 彼女は頷いてマグカップを二つ取り出す。その中にたっぷりのウォッカ入りのジャムを入れ、紅茶を注いで出来上がりだ。

「これが、ろしあんてぃー……」

 不思議そうに彼女が呟く。

「かき混ぜてもそのままでもいいですよ」

 俺は軽くかき混ぜて口を付ける。

 紅茶の表面に光る月が、とても綺麗だ。

 赤いジャムは彼女のメガネのフレームを意識した、なんて、言ってみれば何かが変わるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ