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photosynthesis man

制限時間30分、お題は「もしかして冬」でした。

■即興小説http://sokkyo-shosetsu.com/

 ジャラジャラと繋がれた鎖を引きずりながら、ワタシは格子の外を見る。

 外、といってもそこには何も無い。

 昔読んだ宗教絵本に出てきたような、『ショクブツ』という緑色をしたものも色の付いた『ハナ』というものも、『トリ』という羽を持つ生き物も、何も。

 見えるのは干からび切った土と地表を舞う砂埃。そうして、その遠い奥には何処までも高い岩を積み上げた壁があった。

 壁の向こうに広がる景色も、似たようなものだ。


 ワタシは『タベル』という行為に興味を持ったため、この強制道徳署に収容されている。

 こうして格子付きとはいえ大きな窓が付いているのは、ここから光合成を行わせるためだ。


 昔々、ワタシ達の祖先である神々は生き物を『タベル』事を常として生きながらえていたという。

 『タベル』を行うと、その生き物の持つエネルギーを摂取できることから、神々は地上の生き物の全てを枯渇するまで追い回し、口にしていたそうだ。


 ただし、これは神話世界の設定。

 作り話だから、神の行為だから、許される想像。



 同じ生き物を『タベル』なんて、おぞましい。

 ただでさえ、もうこの地上に残った生き物は極僅かしかいないというのに。


『タベル』に興味を持ったワタシを、家族も周りも批判した。


「光合成を始める前の人間は、きっと『タベル』をしていたんだ。

 ワタシも『タベル』をしてみたい」


 そう言い出したワタシは犯罪予備軍として強制道徳署に連行された。

 ここで、考えを悔い改めるまで生活をしなければならない。




 もうあれから幾日が過ぎたのだろう。

 曇り空の下、格子窓から手を伸ばし弱々しい光を受け止め、細々と光合成をする。

 ああ、『タベル』を実験してみたい。

 春に生まれ夏に交尾をし、秋に種をスリープマシンに残して冬の初めに死んでいくだけの人生は嫌だ。

 『タベル』をして、冬を越したい。

 もっと、もっと生きてみたい。


「ワタシが間違っていました。

 タベルは恐ろしい行為です」


 道徳署では連日同じ台詞を何百回も言わされ、ノート一冊に延々書かされた。



 やがて、ワタシは模範態度を認められ道徳署から釈放された。



 岩壁の外に一人出る。

 延々広がる砂舞う地。

 ワタシは足元にひょろりと生えた枯れかけの『ショクブツ』を引っ張った。

 ぷつり、とちぎれたそれを口にいれ、タベてみた。

 気持ち悪い。

 胃がせりあがってくる感覚にげええっと今口にしたソレを吐き出す。


 大丈夫、寒いから冬が近付いてきたのかもしれないけど、まだ死ぬまで時間は残っている。



 ワタシは食べる。

 冬を越す。

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