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おまけ

ラストに入れようと思って、でも冗長になりそうなんで、削った会話。




「……大金使っちゃって、もう、知らないんだから……」

 今さら年上としての負けん気が、憎まれ口を叩かせる。

 自分でも、可愛くないなー、と思いつつ全て栄の思い通りのようで少し面白くなかった。

 むくれている朋花には構わず、栄は手に入れた想い人を腕の中に囲い込んでご満悦だ。

「どうせ朋花との結婚費用に貯めてたものだし。妥当な使い道だよね」

 ケロリとそんなことを言って、忍び笑いを漏らす。

 どこまでも彼女中心の発言をする栄に、赤い頬を押さえながら、朋花は気がかりなもうひとつのことを尋ねた。

「……友だちにもお金、出してもらったって、」

「ああ、それなんだけど。借りたんじゃなくて、出資。要は、僕とアイツで【花崎】のオーナーになった、ってことで。朋花は今まで通り店長ね。

 僕たちが学生のうちは、朋花に大概のことをまかせちゃうかもしれないけど、そのうち、【花崎】って言えば、「あの」ってみんなが頷くくらいのお店にしてみせるから」

 黙って聞いていれば、とんでもないことを豪語する栄に、朋花の方が慌てた。

【花崎】は街の小さな花屋さん。そんな大層なものにするなんて、考えていない。

 なのに、栄は自信たっぷりに笑う。

「朋花なら、出来るよ。みんなが作り上げた【花崎】の心を忘れないまま、もっと、たくさんの人を笑顔で幸せにすること」

 ――だって、そうしたいと願っているでしょう?

「僕も手伝うし」

 背中から包み込むように抱きしめる、若い恋人の言うことは無謀だ。だけど、出来るような気がするのは、何故だろう?

 しん、と静寂に満ちた薄暗い店内。数時間前そこにあったよそよそしさは、今はない。

 ガランとしたその身に飾る花を、わくわくしながら待っているような、そんな気配を感じる。明日は、早く起きて、花を仕入れにいかなきゃ。アルバイトを少なくとも一人、雇いたい。

 それから、お世話になった人たちにも、お礼を言いに。ミニブーケを作る余裕はあるかしら。

 次々に浮かぶこれからのことを、考え続けていると、頭の後ろで栄が笑った。

 振り返ると、ただ自分だけを見つめる、揺るがない瞳。

 この腕とまなざしがあれば、ずっと、咲き続ける花でいられると、信じられた。


end.

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