第一夢:夢ノハジマリ
リペア「どーん!どうもみなさーん!毎度読んでくれて嬉しい限りっす♪」
イヴ「ありがと」
リペア「さてさて、この”夢よこ”(夢幻町へようこそ)も新章突入っす。そういうわけでまぁ登場人物やら関係などなどをちょこっと説明しちゃおうかなぁと思っております!」
イヴ「余計なお世話?」
リペア「そこ!ちゃちゃいれない!ただでさえ今回笑いとか一切ないからここでちょっと馬鹿やっとかないとモタナイのよ!」
イヴ「うん。これ読むのね?えっと・・・リペア。アカシッククロニクレス図書館の司書として働いていたが、最近クビにされる。年齢は不詳。身長は157cmで体重は・・・」
リペア「ごらぁあああ!!リペアチョーップ!」
イヴ「痛いよ・・・」
リペア「どっから持ってきたんなもん!?」
イヴ「天の声が聞こえて・・・」
リペア「ま、まぁ。そんなわけで私の好きな食べ物はもちろん甘いもの全般でっす♪嫌いなものはあんまないっすねぇー。ま。そんなわけで今回のキャラ紹介はワタクシことリペアでしたー♪しーゆー♪」
イヴ「しーゆー。ばいばいみんな」
リン・・・
鈴の音が聞こえる。
リン・・・リン・・・
「ん・・・朝か」
「おはよう。剣示さん」
柔らかな日差しが二人の眠るベッドを照らし出す。剣示の腕枕で眠っていたエッジが身じろぎし、柔らかな唇を剣示の唇に重ねる。
「ふふ。おはようのキス・・・もう慣れた?」
「恥ずかしいぞ」
剣示は照れくさそうに優しくエッジの頭をずらして起き上がる。
「誰もいないんだから恥ずかしがる必要ないじゃない?」
「そうだけど・・・何か・・・な」
クスクスとエッジが笑いながら起き上がってシーツを剥いでからクローゼットに入っている自分の服を身に着けた。勿論二人共裸で寝ていたのだ。つまりはそういう関係だ。
「何食べたい?」
「何でもいいよ。エッジが作るものなら何でも食べるさ」
ボブカットの髪をゴムで纏めながらエッジはクスっと笑って振り返った。
「ねぇ、知ってる?剣示さんいつもそう言ってるのよ?」
「そうだっけ?」
たまに思う。俺は誰だろうかと。
エッジのことも本当は分かっていないのではないだろうかと。
俺は相島 剣示。それは只の呼称にすぎない。彼女はエッジ。それも只の呼称にすぎない。
「ただ、気付いたらエッジと暮らしてたんだよな・・・」
「うん?何?剣示さん・・・?」
「いや、別に何でもないよ。そうだ、今日はエッジの得意な卵のフルコースがいいな」
「ふふ。分かった、すぐ用意するね」
ニッコリと笑ってエッジは寝室を出て行った。いつもと変わらない日常。ただ平穏で、変わり映えはないが幸せに満ちた日常。
俺は・・・何者だ?
そう、それは恐怖。自己を知らないというとてつもない恐怖。
ただ、世界が自分という存在を容認している。とても都合のよい形で。
そう、剣示という存在はこの世界に必要であると。誇示するかのように剣示は愛されている。
「この世界は・・・核心に霞がかかっている気がしてならないんだ・・・」
キーンコーンカーン・・・。終業のチャイムが鳴っている。
リペアは大きく伸びをして欠伸をかみ殺した。
「ふぅ。退屈だわー」
「リペアさん?妹様がお迎えに来てますわよ」
リペアが教室のドアのところに目をやるとイヴがちょこんと突っ立っていた。
「じゃあ帰りますねーまた明日〜」
「御機嫌ようさようなら、リペアさん」
教室内で女子達が挨拶を交わす。
ここは舞阪市立のエスカレータ式の名門夢幻女子学園の高等部でほかにも小等部と中等部がある。リペアは最近からこの学園に通っている。イヴも同じくこの学園の中等部に通っている。
つまりは辻褄合わせなのだが、リペアはどうにもこうにも馴染めないでいた。
学園からの帰り道、いつもながらに同じことを言わなければ気が済まない。
「イヴー・・・名門女子高はやめて欲しかったわよ・・・」
「交換留学を行ってるところがここしかないと言ったはずでしょ?」
これをまた律儀に同じ答えを繰り返すイヴ。全く同じやり取りを行うことに何の意味すらないが二人の恒例の行事となりつつあった。
「それで、姉さん。何か進展はあったの?」
「まぁ、アカシッククロニクレスにハックかけるのは精神的にものすんごいシンドイから長時間は危険なのよ・・・」
「それで?マスターは・・・?」
リペアの不幸自慢を軽く流しながら次を促す。その様子にリペアは溜息を吐きながら答えていく。
「簡単に言うと剣示さんは、フォースの隊員を取り込んで世界を創ったのよ・・・どうやら”闇の剣”が一枚かんでるみたいね」
「フォースのトップね?コロシテやろうかしら・・・」
本当に憎しみを込めたような声でイヴは忌々しげに言い放った。
「ちょっと。その危ない発言は止めて?怖いから」
それからイヴは一言も話すことなく黙々とリペアの後をついて帰る。
夢幻女子学園から数分の所にあるバス停のベンチで二人何の会話も無く、只、バスを待つ。
このバスで10分くらいの駅前に降り、それから電車に乗り継ぎ3駅目で降りると剣示の家の近くの駅に着く。
登校時間はそこまではないが、乗り遅れるなどした場合、完全に遅刻したりするのだ。
だからイヴもリペアも常に腕時計を見る癖を身につけてしまった。
剣示の周辺の事後処理なのだが、イヴとリペアが結託し、うまくやっていた。
剣示が行方不明になってからイヴの力を使い、剣示の家族や周辺に暗示をかけ、剣示は交換留学で外国にホームステイしていることになった。
たまにリペアがエアメールを作成し、イヴの力で転送しこちらに郵送してくる。
リペアの能力もあってかキッチリとケアしているもので、剣示がホームステイしていることになっている家に電話をするときちんとそちら側の家族が剣示の様子などを報告してくれる。
もちろん人間の雛形を作成し、擬似人格を植えつけた仮初の家族である。
手っ取り早く事故処理をするのであれば、剣示の雛形を創り、擬似人格をアカシッククロニクレスにアクセス後に剣示本人の記憶を植えつけたものを雛形に移植すればよいのだが、それにはイヴが猛反発した。
何故か分からないが、イヴの言い分では剣示の雛形は最早創ることが不可能だということだった。
リペアが最近アカシッククロニクレスを調べたところ、事実剣示の記憶はおろか、剣示という存在自体がゴッソリと抜け落ちるかのように白紙になっていた。
電車にユラユラと揺られながらリペアは考え事をする。
短い時間だがリペアにとって時間などは問題ではない。脳内でアクセス記録を圧縮し、整理することは司書の時の癖ではあるが、ずっと司書をやって来たリペアにとってそれは最早習慣となっている。
「ふぅ・・・」
一息吐いたリペアが隣を見るとイヴはうつらうつらと小船を漕いでいた。
「・・・端から貴方は剣示さんを選んでいたの・・・?イーヴァルズグラァックス・・・」
リペアは疑問を整理するかのように誰にも聞こえないような小声で呟いた。
その声はカタンカタンと電車の走行音に掻き消され、自分の耳にも残ることはなかった・・・。
「サッド様・・・?」
「ん・・・ああ、サッド。少しウトウトとしていたよ」
薄暗い家屋の中、場違いな豪華な椅子に肘をついて目を瞑っていた”彼”がサッドの声に目を開けた。
「そうですか。起こしてしまって済みません」
「いや。構わないよ・・・それにしてもここまで私の思いのままに事が運ぶとは嬉しい限りだよ」
「・・・剣示さんのことですか?」
サッドが俯き加減に訊くと”彼”は薄く笑って「そうだ」と短く答えた。
「彼に何をさせるお積もりなのでしょう?」
「何をさせる?何を言っているのか・・・サッド。彼には只、思い出してもらうだけでいいのさ。自分が何であるかをね・・・」
”彼”は足を組みなおし、口元を歪めて禍々しく微笑んだ。
その家にはサッドの好きなオルゴールの音色が只永遠と流れ続けていた。
悲しい音色と共にサッドは薄暗い縁側に座り、その音色を聞くとただ頬に雫が伝うのだった。
今回はシリアスな部分が多くて面白くなかったかもしれませんが、前書きの二人の微妙なコントで勘弁してください・・・。これからもどうぞよろしくお願いいたします。