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第六夢:現実の日常

エッジ「・・・すぅすぅ・・・ぅぅん・・・ぅ・・・?はっ!?ご、ごめんなさい!寝てました!!えとえと!?み、みなさんこんにちは〜!!!エッジの・・えっと・・・ほのぼの・・・コーナー・・・」

イヴ「あ、エッジさん、起きたんだね」

エッジ「え!あああ!!イブちゃんいてくれたのね!!よかったぁぁぁ」

イヴ「だ、抱きつかないで」

エッジ「で、どうしたらいい?私何も考えられなくって・・・」

イヴ「じゃあ。専門用語とか説明するコーナーとかにしたらいいんじゃない?」

エッジ「!!!いいっ!イヴちゃん超スーパーミラクルナイスアイデアだよ〜!!」

イヴ「そ、そこまで?」

エッジ「じゃあ早速!次回から!」

イヴ「え?次回からなの?」

エッジ「だって時間ないし」

イヴ・エッジ「じゃあみなさん!しーゆー」

緑に囲まれた庭園の中央の噴水広場。柔らかな暖かい風が頬にあたり気持ちの良い陽気である。備え付けのベンチに座る女性の隣に自然に腰を下ろす男性がにこやかな笑顔で女性に微笑んだ。

その男性の着ている白いコートの下の制服のようなものも白、白一色。金色の髪を5分分けにした、青い瞳の端正な顔立ちで、笑顔が良く似合う優しげな顔が印象的な男性だ。

「やぁ、闇の剣とも言われたシェイド様らしからぬ顔だね」

「何の用だ。シャイン、貴様の任務は誰にも姿を見られぬようフォース内を監視することだろう?職務を放棄するつもりか?」

くだらない質問を笑い飛ばすような爽やかな笑顔でシャインはコートからタバコを取り出し咥えた。

「貴方がここに居る時は誰も近づかないだろう?大体、その任務を与えたのは貴方だ。その貴方に見られるのも職務放棄なのかな?」

「ふん。全く、ああ言えばこう言う奴だよお前は」

シェイドが呆れたようにそっぽを向く間にシャインは咥えたタバコに火をつけた。柔らかな光に照らされる紫煙がふぅっと舞う。

「私がタバコが嫌いなのを知っていて吸っているのか?」

「ふ。僕は何でも知ってるさ・・・他人の知りたくも無い事情、感情だってね」

シェイドが表情をきつくし、睨む。飄々とその瞳を正面から見据え、長い沈黙が訪れる。

その沈黙の後、閉ざしていた口を開いたのはシャインだった。


「何故、殺した」

「そんなことを言うために来たのか?お前は自分の任務を何だと思っている」


シャインはタバコの灰が落ちる前に胸のポケットから携帯用の灰皿を取り出し、タバコを揉み消した。

「僕が言う台詞じゃないが、貴方は自分の感情を押さえつけすぎる。あの娘は貴方のお気に入りだったんだろう?あの娘も貴方のことを好いていた。そうじゃないのかい?」

「黙れ」

溜息と共にシャインはベンチから立ち上がる。去り際に顔を背けたまま言う。

「今度の特務隊長、いけ好かない奴だったよ。貴方にしては最悪の人選だった」


誰にも聴こえないほど小さな呟きがシェイドから漏れた・・・。



「済まない・・・エッジ」









暦的にはもう春だというのに寒さは一行に引く様子は無い。

特に朝方は白い息が色濃く映るほどの寒さだ。

剣示は自室のベッドで目を覚まし、開口一番こう言うしかない。

「なんじゃこりゃあー!!!」

この馬鹿寒い季節に窓のガラスはすっぽりと抜け落ちたようになくなっており、吹きさらしの極寒部屋と化していた。

「どうしたの?マスター?」

剣示の部屋のドアが開き、ひょこっとイヴが顔を出す。

「うむ、どうしたもこうしたも。この部屋を見て何か気付いたことはないか?」

「何か?」

キョトンとした表情のイヴを押しのけるかのようにリペアが部屋に入ってくる。

「朝っぱらから大声ださないでくださいよー。近所迷惑っスよ?」

「まぁお前の口癖がいつから、なになにっスとか言うアホな後輩みたいになったのかは知ったこっちゃないが、この部屋に異変があってな」

リペアもイヴと同じくキョトンとした表情で訊き返す。

「異変って何です?」

「窓がその意味を失っている」

「そりゃ、ガラス割れちゃったんですから仕方ないでしょ?騒ぐほどのことですか??」

何を言っているのか分からないといった感じでリペアは困惑した表情した。

「問題はそのガラスが割れちゃった原因だ!朝起きたらいきなり無くなっている窓ガラス!割れた形跡すら残さないこの犯行はまさにミステリィだ!NASAの電話番号は何番だ!?」

「ミステリィって。エッジが割ったんでしょ、それに形跡ってかなり前の話じゃないですか」

「何だ。そのエッジってのは?かなり前って・・・?何の話してんの?」

「何の話をしてるのか聞きたいのはこっちですよー。エッジって言うのは剣示さんも知ってるあのふぉーぶっ・・・ぐ・・・」

リペアは話してる最中に見えない何かに張り倒されるように1mほど吹き飛んで、クローゼットに頭をめり込ませた。

「イヴ。朝っぱらから破壊活動は止めなさい」

「ごめんなさい。窓割ったのリペアなのにわけのわからないこと言ってマスターを混乱させようとしてたから・・・」

「よくやったイヴ。そういう時は全然OKだ」

「それじゃあマスター。私達も学校があるから支度するね」

イヴはリペアを引きずりながら剣示の部屋を出る前に微笑み、剣示には聴こえないほどの声で「おかえりなさい」と言った。





気絶したリペアを自室まで引きずり、軽く頬を叩いて気を付かせる。

「うんぁ・・・いたたたた・・・な。なにをするのよ!?」

「ごめんね。まだリペアには伝えてなかったけど、マスターの記憶はエッジに関することを消滅させてるの」

「あら・・・まぁ。何で?」

強かに打ちつけた頭を撫でながら聞き返す。

「死んだから」

「はぁ。エッジが?ふぅん」

二人の会話は人の生き死にの話にしては淡白すぎるほどだった。

それは、二人にしてはごく当たり前のことだったからだ。フォースという組織に属するものには常に危険が付きまとう、死傷者も当たり前のように出る任務がその大部分を占めているのだ。顔見知りが死んだとしてもなんら不思議でもなんでもない、そういうことなのだ。

「でも、何で剣示さんの記憶消さなきゃならなかったわけ?」

「マスターの世界でエッジはマスターの恋人だったから」

「うひゃぁ〜・・・そういうのって普通ヒロインとかがそうなるんじゃないの?ねぇ?」

エッジの訳の分からない話を聞き流しながらイヴは淡々と朝の支度をし始める。

「ヒロインてなに?」

「いや、ヒロインは私」

イヴは会話しつつも教科書を鞄にいれ、パジャマを脱ぎ始める。

「死にたかったの?」

「そういうことを言ってるんじゃなくて〜・・・というか私ってあんまり・・・ほら、活躍というかいいとこなくない?萌え〜とかいうシーンとかないじゃない?」

制服を身に着け、髪を梳かしながらリペアを振り返る。

「さぁ?よく分からない」

「これってさ〜。人気投票とかしたらヤバイことになる予感がするのよね」

髪をリボンで結び、イヴの朝の支度は終了した。

「何とかして!!マジで、活躍させてよ!ホントお願いしますって」

「私に言われても・・・」

「夢幻商店街の福引券あげるから!ね!」

ごそごそとスカートのポケットからくしゃくしゃになった福引券をイヴに差し出す。

「だから。私に言われても・・・」

そんなこんなで朝からこの家にも活気がついた。それは二人も剣示の両親も喜ばしいことだった。


剣示がこの世界に還って来た後、イヴもリペアも大忙しに動き回った。

まずは剣示のいなくなった時の事後処理をなかったことにしなければならない。

両親や隣人、果ては学校の関係者などほぼ剣示を知る人間の記憶はイヴによって改ざんされていった。その後は物的なものの処理だ。エアメールに写真、向こう側の家族、全てを無かったことにするには相当の労力が必要とされた。

リペアは事務を得意分野としてもっていたこともあり、その処理は比較的速やかに終了した。

そして、この世界に還って来た剣示は数週間の間、風邪をこじらせ肺炎を起こして入院したということになった。

エッジのことを伏せ、イヴは剣示がどうなったのか、どういう処理をしたのかを事細かに学校へ行く前に説明し終えた。


「というわけなの」

朝ごはんを終え、リペアとイヴと剣示は登校中にその話をしていた。

「ふむ。じゃあ俺は肺炎で入院してたってことでいいんだよな?」

「そう、ちゃんと病院の診断書もあるし、病院には入院患者としての履歴もあるよ」

「すげぇなぁ。CIAみたいだな」

感心したように頷きながら剣示はイヴの頭を撫でた。その途端何とも嬉しそうに頬を染めるイヴが愛らしい。

「私も大活躍でしたよ。エッヘン」

「うむ。ヨキニハカラへ」

あまりにどうでもいいような台詞にリペアは頬を膨らませながら拗ねている。とそのとき、道の向こう側からひょろりとしたモヤシ少年みたいな、メガネをかけた変な男が嬉しそうに手を振りながらこっちへと一直線で近づいてきている。

「おーい!剣示くぅーん元気になったんだねぇ〜心配していたんだよぅ〜」

と、そんなことを言いながら爽やかともなんとも言いがたい笑顔で走ってきている。

「知り合いですかー?」

「お兄ちゃんの知り合い?」

二人して剣示に向って同時ともいえるほどのシンクロでそう訊いて来た。

「あ、あれは!?第一話に名前だけ出てきて今まで一度も出てこなかったオタッキー佐藤だ!忘れていたわけではないのに登場シーンを作ってもらえず今更ながら登場したわけだ!」

「いやに説明的な表現ですね・・・本当に友達ですか・・・?」

たった十数メートルの距離を走ってきただけなのに肩で息をしつつ剣示の手を勝手に握りながら「よかったよかったよぅ」と嬉しがっている。

「お、お兄ちゃん・・・」

「怖がるなイヴ、根はいい奴・・・と思うぞ」

剣示がイヴに話しかけた途端、オタッキー佐藤のメガネがキラリと光った。

「だ、誰だい!?この萌え度満載の妹的キャラは!?ねぇ、君、写真とらせてくれない?十枚!いや三枚くらいでもいいからさぁ!」

しつこく迫る佐藤の腹にリペアの足がめり込んだ。

「ちょっと!だけの写真を撮るとか、姉である私(を差し置いて)の許可無く迫らないでくださいよ!!」

「お、お姉ちゃん・・・」

イヴはリペアに対して尊敬の眼差しをするが、次の瞬間にそれは失われた。

「いいですねぇ!妹をけなげに守る美人姉!萌え・・萌えですよ!!おねーさん妹さんと一緒に撮らせてもらっていいですか!!!」

「え!?そ、そこまでいうのなら・・・いいですけどー・・・綺麗にとってくださいよ?」

佐藤が鞄からカメラを取り出す前に剣示は佐藤の襟を掴み引きずり歩く。

「おらっ。佐藤遅刻すんだろ!学校いくぞ」

「まってよぅ剣示くん!萌えが萌えが目の前にあるんだぁあっぁ」

「じゃあなぁ〜お前らも遅刻すんなよ」

といってリペアとイヴの前から遠ざかっていった。

剣示は佐藤を引きずりながらも、この感じが嬉しく思えていた。

何故だか、とても普通に感じたからだ。そう、非現実じゃなくありふれた日常のひとコマに思えたのだ。

剣示の心にあった少しチクチクする棘のような存在も今は忘れ去ることが出来た。


そう、剣示は現実の空気を胸いっぱいに吸い込み、朝の日常を楽しもうと心に誓った。


その後、引きずっていた佐藤のズボンが尻の部分だけ破れていたのは言うまでも無い。

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