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なーろっぱ世界の短編 婚約破棄とか聖女とかドアマットとか転生とか

婚約者がアレな殿下の側近にされてしまいました。 ~普通のことしかできない彼が好きです~

作者: マンムート
掲載日:2026/09/14


 わたしは平凡です。


 黒髪、黒目、顔は十把一絡げ、体もまぁ……可も不可もありません。


 そして、婚約者である彼も平凡です。


 金髪で、でもキラキラではなく、碧眼ですがしょぼしょぼ、つまり十把一絡げです。



 ふたりとも成績別クラスで真ん中のクラス。


 ふたりの実家もまた凡庸です。


 可も不可もない伯爵家同士。



 両家のちょっとした利益のために婚約して、月一回交流を続けて、別に何の波乱もなく交流を重ねているうちに親しみが増し。


 学園で昼食の時は、お互い友人からの誘いがなければ、一緒にランチをします。



 今は、この人でよかった、とお互いに思っています。




 そんな彼がランチの時、少し困った顔をしていました。



「どうしたの?」


「……殿下の側近に指名されてしまった」



 困った顔に納得です。


 正直、王太子殿下は、アレです。



 去年から、平民あがりの男爵令嬢に夢中。


 婚約者である公爵令嬢にろくに会おうとしません。



 そんな困った人の側近に指名されるのは誰だって面倒です。



「でも、どうして?」


「側近候補がまた辞めた」


「そうでもなかったら、あなたにまわってこない、か」


「父上は、断れないと」


「でしょうね」



 伯爵家ではね。


 正面切って、王太子殿下はアホなので、息子を側近にしたくありません。


 とは言えませんね。



「断れないから、受けるしかないんだけど……気が重い」


「あなたなら大丈夫」


「どうして?」


「今までの人はみんな辞めてるか、辞めさせられているんでしょう」


「だけど、オレの実家は伯爵だからな……自分から辞めるのは無理」


「大丈夫。あなたが普通にふるまえば」


「そうかな。まぁ……オレはそうするしかないんだけど」


「だって、あのひとたち普通じゃないから」


 婚約者は、一瞬、目をぱちくりして。


 それから、ちいさくわらった。


「……ああ、そうだね」




      ※      ※      ※




 半月後。


 いつも通りの、ランチの時間。



「君が言っていた通りになった」


「ようございましたね」



 側近になった彼はごく普通にふるまいました。


 彼にはそれしかできないんですけどね。



 彼がやったのは側近としてごくごく普通のことばかり。


 殿下には、婚約者に対する態度をいさめ。


 男爵令嬢には、相手との距離を考えるべきだと忠告し。


 殿下から『婚約者が男爵令嬢をしいたげているから調べろ』と言われたので、真面目に調べて、そんな事実はありませんでした、と正直に報告し。


 殿下の婚約者には、なんらかの手を打つべきだと提言し。


 いろいろな大人たちには、報告し。



 結果、全方位的に煙たがられて、クビにされてしまったのです。



「だけど、驚いたよ」


「『貴様はクビだ!』ですね」



 婚約者は、王太子殿下に指を突きつけられて、『貴様はクビだ!』と宣言されたのだそうです。


 で『了解しました』と、あっさりと承諾して、呆気に取られている殿下と側近をしり目に退出。



 婚約者の父上は、各方面に『殿下おんみずからクビと言われましてしまいました。そう言われた以上、お仕えはできません』と通知しておしまい。



「普通の神経の持ち主なら、あんなことこっぱずかしくてできないと思うんだけど……」


「あなたも一度くらいなら、してみたいですか?」


「いや。似合わないな」


「平凡な人は、平凡に行動するに限ります」


「ほんとだね……まぁ、それしかできないんだけどさ」


 婚約者は苦笑した。



 わかりはします。


 たまには、突拍子もないこととかしてみたいですよね。


 そもそもそれができないんですけど。



 でも、わたしはそんなあなたが結構好き。


 平凡な人が、平凡な行動しかできないっていうのは、結構、才能かもしれないから。



「でも、それしかできないオレを、それしかできないから大丈夫って言ってくれる君のこと。オレは好きだな」



 頬がちょっと熱くなったのはナイショです。




      ※      ※      ※



 殿下は、そのあとすぐ、本当に婚約破棄事件を起こし廃嫡されて離宮へ。


 男爵令嬢の家はお取り潰し。男爵令嬢は、平民に。


 側近達もみんな廃嫡されたりいろいろ大変でした。


 こうなる前に、さっさと辞めていた元側近達も、ちゃんと報告しなかった人たちは、それなりの目にあったようです。


 そして婚約者であった公爵令嬢も、何も手を打たず大人に報告もしなかったのを咎められ、公爵家の長女である自覚ナシと、修道院に送られました。



 でも、普通に対応し、かつ、ちゃんと報告や記録を残していたわたしの婚約者には、何のお咎めもありませんでした。




 いつものようにランチをしながら、婚約者はしみじみと、


「普通って大事だよな……」



 問題が起きそうだったら、上のひとに報告、連絡、相談する。


 ごく普通です。


 それを皆様がしていれば、婚約破棄のドタバタは起こらなかったでしょう。



 だけど。


 わたしはこっそり思うのです。


 どこまでも普通のあなたは、実は普通じゃないなって。



 そんなあなたをわたしは。



「……あなたのこと好き」


 と思わず言ってしまいました。


「え」


「わたし、あなたのこと好きです」


「……オレも君のこと好きだよ」



 でも、告白なんて普通ですよね。


 だって、わたしたちごく普通のカップルなんですから。





たくさんの作品の中から、本作をお読みいただきありがとうございました。


最後までお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。


少しでも心に残るものがあったり、何かを感じていただけたなら、


評価や感想をいただけるととても励みになります。


別の物語も書いておりますので、もしよろしければ、そちらも覗いてみてください。


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― 新着の感想 ―
普通の定義にもよりますが普通でいる事も意外と大変なのでは?とたまに思いますw
煙たがれようが、必要なことを確実にする人は組織に一番必要 なかなかできない
普通と言うか真面目くん?そして普通に優秀。 そして周りはアタオカしかいなかった、と。一般常識的な言動が狂人扱いされてる辺り。まあ、展開が想像ついたとは言えどメンタル壊さなかった点ではむしろ化物か(おい…
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