人探し
あれから数日、魔理沙が3回ほど神社に来た。
毎日来るとは行っていたが翌日には来なかった。
忙しいのか気分屋なのか。
「よぉ!元気か?!」
「おっす、元気か?って聞くほども空いてないじゃないか」
「いいんだよ別に、ここじゃ いつ妖怪どもに殺られるかわかんねぇんだからさ」
呑気そうに答える魔理沙に質問する
「なぁ、魔理沙。妖怪について教えてくれないか?そこにあうんちゃんが居るだろ?あんな風に人間サイドの妖怪って結構居るのか?」
境内で鞠を蹴りながら遊んでいる可愛い女の子に目線をやる。
妖怪とは一括りに呼んでも、ここ幻想郷には勢力がある。外で知ってる知識はそれなりに当てにはなるが、人となりや容姿は流石に違う。
霊夢と魔理沙とあった次の日、博麗神社には参拝客が2人と1匹来た。2人は見知らぬ妖精、信仰心があるかは分からないが、賽銭を持って参拝しにきたのだ。見た目も羽根の生えた量産型ではなくコロポックルのようなヤツだ。色んな姿があるようだ。
魔理沙曰く、妖精は人並みの賢さや知恵を持たないようだが、恐らく参拝客をみて真似事がしてみたかったのではないかと。
そしてもう1匹が八雲藍。
伝説の白面金毛の九尾
正真正銘、伝説級の化け物
なのだが、どうにもあのグラマラスなお姉さんではなかった。
シンプルに狐。
ケモっ娘とかそう言うのじゃなくて、獣。
おしゃべりさえ出来ずにワンワンと吠えられた。
えぇ……。
霊夢に聞くと、人型を取ってないだけでたまに人として現れるとか。どんな容姿が尋ねると、犯罪者を見るような目で見つめられた。
気になるなぁ。
「もちろん、それなりには居るぜ!ただまぁ、完全に信用出来るやつは1人か2人ってとこだな」
「腹に抱えてるものはあると」
「どの勢力にも人を喰ってるヤツは居るさ」
肝の据わった物言いの魔理沙が答えた
「どの勢力もって……博麗組もか?」
霊夢の後ろ盾は、彼の賢者様だ。そういうこともあるのではないかと思い、聞いてみる。
「もちろんだ!人を食い物にする巫女が居るじゃないか」
ゴスッ!と鈍い音がし、魔理沙が後頭部を抑えて呻く。
本人を目の前によく言う……。
「人喰い妖怪は多いわよ、あんたみたいな能無しは直ぐに喰われるわ」
ここで言う能無しとは、能力のない者らしい。
俺はただの人間だ。特別な素質も技術もない。平凡な人生を送ってきた。
昨今では転生物の作品が多く増え、大抵何かしらのスキルなりを貰うらしいがそんなものない。ただ結界を越えただけなのだから。
「それより、宴会の日時が決まったわよ!四日後の夜!
文を遣いに出すと楽で良いわねー!」
ポンポンと丸めた新聞紙を手のひらで叩きながら教えてくれた。
「アイツ、定期購読してやるから融通効かせなさいって言ったら、何でもやってくれそうな感じよっ!」
異変解決も任せようかしら、なんて言い出したり。
「貧乏巫女のくせに定期購読だ?脅しのネタでも掴んだのか?」
「もう貧乏じゃ あ・り・ま・せ・ん〜!私には1000円札があるんだものっ」
「両替出来るところがなくて使えないって嘆いてなかったか?」
事実、人里で販売している商品のほとんどが1円以下、高くても5円位がほとんど。
やっぱり1000円札はやり過ぎたか……。
口が裂けても万札があるなんて言えない、幻想郷の経済を破壊してしまう。紙幣として認めてくれれば、の話だが。
「それでも1000円は1000円なんだから!私は大金持ち巫女様よ!」
「ちぇ!……おい、私にももう少し弾んでくれてもいいんじゃないか?!こうしてオマエの為にあれこれと話をしてやってるじゃないか!」
金持ち自慢をされて悔しがる魔理沙が不貞腐れる。
「ダメだ、これ以上金の価値を落とす訳には行かないからな」
「あとどんだけ通えば1000円にたどり着けるんだよ〜……」
縁側に寝転び、魔女帽子で顔を隠す
あーとかうーとか言いながら左右に体を揺らして不満を訴えてくる。猫を見ているかのようだ……嫌な猫だな。
「ほら、二人で食材買ってきなさい。魔理沙が付いてたら里まで安全にたどり着けるでしょ」
寝転ぶ魔理沙を見下ろすように仁王立ちになる
「ひとまず今日と明日の分頼んだわよ、私はいつも通り全体の見回りをしてくるから。
あうん!留守番頼んだわよ!」
へいへいと生返事の魔理沙を横目にふわりと霊夢の身体が浮く。
すると急いで駆け寄ってきたあうんが言う。
「霊夢さん待ってください!お客様です」
「珍しいじゃない、あんたが来るなんて」
博麗神社を以てして珍しいと言わしめる人物
月の頭脳、永遠亭の天才医師、八意永琳だ
「ちょっと……ね。相談いいかしら?」
……………
………
……
「分かった、気に掛けておくわ。こっちでも何人かに声を掛けておくから」
「ええ、お願いね」
一通り話終えると永琳は元来た道を歩いて帰ってしまった。
「で、なんだってんだ?異変か?」
魔理沙が食い気味に尋ねる
「いえ、そんな感じじゃないけど……。メディスンが捕まらないらしいのよ」
「毒使いの人形か?」
メディスンの名前を聞いてつい、口を挟む
「知ってるの?」
「外の知識だけど……詳しくはあまり」
「まぁ、ひとまず色々な人に当たりましょう。それからどこかで見かけたら教えてちょうだい」
「任されたぜ!」
「少し遅くなったけど、買い出し頼んだわよ!見回り行ってくる!」
勢いよく飛び立つ霊夢を目で追ってしまう。
「私達も行くか、ついでに里の連中にも当たってみよう」
魔理沙が箒を持ち出すとコンコンと地面を叩いて指先で柄をなぞる。
すると何も無い空中に箒だけが浮かぶ
「乗れよ!暗くなる前に行かないと人も居なくなるからな!」
初めての飛行
固唾を飲んで後ろに跨る
「お、堕とすなよ……?」
何も言われる前から魔理沙を両手でホールドする
「おいおい、しっかり掴まっとけと言うつもりだったが……変なとこ掴んだら堕とすからな!」
ジッと睨みつけられる
「そんなこと言ったって、掴むしかないじゃん!」
「心配すんな!私の飛行テクニックは超一流さ!」
魔女帽子を目深に被りこちらも勢いよく飛び立つ
凄まじい加速Gだ、生身でこんな加速を味わうのはどこかの保養施設のアトラクション以来だ。
以前、ハーネスを着けてカタパルトから発射する擬似ロケット人間アトラクションを経験したが、あれはある程度でゴムが伸縮し、前進が止まってしまったが今回はどこまでも加速し続けている。
「うっ、おおおぉぁぁぁ!!!」
振り落とされぬよう魔理沙をホールドする腕に力が入る
「ったく、この程度でビビってたら幻想郷じゃ生きていけないぜ?」
チラッとこちらを見た魔理沙の口角があがる。
「そらっ!」
視界があらゆる方向を向いて暴れ出す
あらゆるアクロバティックな技を披露する度世界が何度も回転する
幻想の者らの暮らす空に絶叫が虚しく響いた
「ついたぜ、人里だ。まずは道中で顔の見知った連中にメディスンの目撃情報を集めながら、市場で飯の買い出しをしよう」
地面に膝をつき胃の中の物を吐き出す勢いで嘔吐く
「大丈夫か?」
「ひ、他人事みたいに……!なんて乱暴な操縦だ」
ひっひっひっひ、楽しかったろ?と笑い出す魔理沙が憎らしい
「本当に落ちるかと思った」
「なに、大丈夫さ。なんなら指先で私の服を摘む程度でも振り落とされはしないぜ?」
そんな訳、むちゃくちゃな加速で振り落とされないわけがない。
「なぜなら、私の飛行魔法は重力の影響を切り払うからな!」
不思議な顔で見つめ、理屈を考えてみるが
「まぁ、この辺は複雑な話だから、またいつかな!それより話を聞きに行こうぜ」
土地勘のないため、魔理沙の歩みに合わせてひたすら着いていく。
「まずは慧音だ!あいつは情報通だからな!里のことなら何でも知ってるはずだ」
意気込み寺子屋を尋ねる
「慧音ー!ちょっといいかー?」
玄関の戸をあけ声をかけると浴衣を着た女性がいた
「魔理沙か、珍しいな寺子屋にまで来るなんて。だれか子どもを探しているのかい?」
物腰の柔らかい女性からふわりとお香のような匂いがした
「子供といえば、子供だが……。メディスンを探していてな、慧音が知らなくてもいいんだ!だれか心当たりのあるやつを教えてくれないか?」
「メディスン……私も居場所は分からないが、恐らくだが今頃幽香に絞られてるんじゃないか?」
「「え?」」
ふいに魔理沙と同じ反応をしてしまう
「何か怒らせるようなことでも?」
こちらと目が合い誰だったかと思案している
「すいません、最近幻想郷に来た者です。挨拶が遅れました」
「いや、そうかい。それなら次の宴会の主役は君の事か。なるほど、よろしく」
「それはそうと、なんで幽香が?メディスンの事はかなり気に入ってるって聞いてたぞ?」
魔理沙に向き直り、昨日の事を教えてくれた
「里の外、西に少し行くと山の麓に花が咲いている場所があるんだが不自然に枯れてしまったんだ。
里の住人が狩りをしに出た時に見つけたそうだが、枯れている場所だけ地面の色が変わるほど汚染されているようだった
「なるほど、それで毒って訳か」
「幽香が知れば間違いなくこっぴどく、ね」
うんうんと納得する魔理沙が
「助かったぜ、次は幽香のとこだな!じゃあ慧音!」
腕を捕まれ次の目的地へ足を向けるが
「魔理沙、幽香さんって里に居るのか?」
「いや、だいぶ離れてるけど私の箒があればひとっ飛びさ!」
さすがはスピード狂、しかしやるべき事がまだあるのだ
「晩飯のお遣いは?俺たちが霊夢に搾られる番になるなんてやだよ?」
「あっ、と忘れてたぜ……」
そうだったと慌てて市場の方へ歩き出す
「今日はもう遅いから買い出しが終わったら神社に帰ろう」
「頼むから帰りは安全運転で……」
またアクロバティック飛行をされたらたまったものではない
「私の飛行テクニックは超一流さ!」




