救護テントにて
お兄様が私を抱えたままテントに走り込む。
「妹が怪我をしたんだ、早く治療してくれ」
「お兄様、火傷ですから。冷やせば良いだけです」
「それで、エマの手に跡が残ったらどうするんだ。おい、早くポーションを」
「。。。やかましいぞ、エバン」
「げ!!アル。何でお前がいるんだ」
「ポーションを作っていたら、騎士科の方で大量に怪我人が出たので、アシスタントがみんな駆り出されたんだ。いるだけで良いからってここにいるんだ。まさか魔法科の試験で怪我をする鈍臭い奴がいるとは思わなくてな」
アルってアリスターの愛称だから、今朝お兄様が言っていたポーションマスターかしら?
銀色の髪の青年が不機嫌そうな顔でこちらを見ている。
「いいからポーションをよこせ、エマは手を火傷したんだ」
アリスター先生はチラッと私の手を見て。
「ポーションはさっき騎士科に根こそぎ持って行かれたから無い。材料ならあるんだが」
「ならとっとと作れよ」
「今、俺は違うポーションを作っている最中で手が離せない。おい、エマ。教えてやるから自分で作れ」
「え?私ですか?」
「アル、気安くエマの名前を呼ぶな」とお兄様が吠える様に言うが、アリスター先生は慣れているのか動じない。
「ああ、エバンはポーション作りには才能がなくて、材料を無駄にするだけだから」
「私もポーションは作った事ないですが」
「レシピ通りにすれば効力は弱まるかもしれないが、魔力があるなら誰でも作れる。それぐらいの火傷なら十分だ。魔法科に行くとしても覚えておいて損はないぞ」
テーブルにはビーカーと水、青い錠剤があった。ポーションって薬草とか入れて作るのかと思ったけど違うのね。
「その青の錠剤を水に20%の濃度になる様に溶かすんだ、それを作るには。。」
あーー濃度の問題って中学受験で良く出てくるわね。
「ではトータルで100mlになるようにすればいいので、水を80mlに錠剤を20gになるように測って溶かせばいいんですか?」
「。。。。」
あれ、水のgってここでは違うのかな?
「すみません、水は1mlが1gだと思ったんですが、違いますか?」
「いや合っている」
私は言われた通りに天秤を使って錠剤の重さを測る。理科実験みたいで懐かしい。
このままだと溶けにくいのかな?
乳鉢のようなのがあったので、それを借りていいかアリスター先生に聞くと無言で頷いた。
錠剤を粉にしてから、水に少し入れるとすぐ溶けたので、少しずつ入れて完全に溶かしてから次を入れる、全て溶かした所でアリスター先生から指示が出た。
「よし、次は魔力を注ぐんだが。必要以上入れるとポーションが無効化するから気をつけろ。この薬は100以上は入れてはいけない」
「どうやって、どれぐらい魔力が入るか調べるんですか?」
「そこに魔道具があるだろう。触ってみろ」
私は水晶玉のような魔道具に手を乗せる。
すると5と言う数字が出た。
「魔力は常に体から出ている。それは魔力の自然放出が毎秒どれぐらい出ているか測る魔道具だ」
「なるほど、5とでているので。私が20秒溶液にさわれば100になるんですね、これは片手で5だったんですが、両手だと変わりますか?」
「。。。ああ、2倍になる」
「なら10秒でいいんですね。時計はありますか?」
「今俺が使っているから、10秒たったら教える」
アリスター先生の合図で私は容器を両手で包んだ。青い液体がだんだん光ってくる。
「もういいぞ手を離せ、そこからスプーンでひと匙分火傷にかけてみろ」
言われた通りにすると、傷があっという間に治った。
「すごい!治った!」
「おーー俺のエマの薬はすごいな」
アリスター先生は私の手を凝視してたが、
「治ったなら、もう行け」と言って自分の作業に戻る。
「相変わらずだな、アル。もう少し愛想良くしろよ」
「お兄様、失礼ですよ。アリスター先生、ご教授ありがとうございました」
私はお兄様を引きずってテントから出る、私は出る瞬間チラッと中をもう一回見たら、アリスター先生は私が作ったポーションを見ていた。
私はお兄様と控え室に戻ると、今度は魔道具科のテスト会場に移動する事になった。
今回はお兄様は大人しく後ろに座っている。
先程のニコラス先生が前で説明をしている。どうやら、説明書通りにパーツを組み立てて、最後に魔力を流して動かすらしい。
絵麻の時は一人暮らしも長かったので、家具を組み立てたり、直したりは得意なのよね。
周りを見ると説明書を前に悩んでいる子、諦めて何もしない子が多い。
ここにいる生徒は貴族の子供が多いから、こういうのはした事ないのかな?
パーツをつけていくだけなので、そんなに難しくない。しかしこれは小型扇風機のような物だが。羽の部分が剥き出しでちょっと怖い。羽もまっすぐだな。。ちょっと改良しよう。
やっぱりうーーん。羽のカバーが欲しい。
鉄製で穴が空いているものないかな?
「先生!質問があるのですが」と手を挙げると
「組み立ての手伝い以外でしたら何でもどうぞ」とニコラス先生が近づいてくる。
「パーツを足す事はできますか?装飾に近いものですが」
「魔道具が稼働するなら構いませんよ。可愛くしても、加点にはなりませんが。何が必要なんですか?」
「細い針金が欲しいです。私の手でも曲げれるような」
ニコラス先生は少し悩んで、棚からワイヤーを取り出した。
「これはどうでしょうか?」
「まさしくコレです。お借りしてもよろしいでしょうか」
私はワイヤーを同じ大きさ切って、ペンチで編み込んでいく。一時期手作りアクセサリーにハマっていて、大きめで穴を開けられない石を使うときにワイヤーで網を作って入れる方法を習ったのだ。
指が入らないぐらいの網にして、形を整えて、扇風機の羽の部分に被せる。
手持ち扇風機の様になってちょっと可愛い。
出来上がった物はニコラス先生に持って行って、魔力を流してもらう。全てのパーツがきちんと組み立ててあれば、作動するらしい。
大半の人は初めから諦めているか組み立てできず、組み立てても動かない人もいる。
今までで動いたのは5人ほどだ。
私は網を作っていたので、最後になってしまった。そしてお兄様も一緒についてきた。
周りの生徒もみんな私の魔道具に興味深々だ。
「エマさん、何故これをつけたのかな?」
「これって風を起こす魔道具ですよね。そのままでもいいですが、子供がいる家庭では羽が剥き出しだと危ないですからね。安全の為のカバーです」
「成る程、使う側のことを考えているんですね。そして何故羽が曲がっているんですか?落としてしまいました?」
「いえ、真っ直ぐな羽ですと空気を前に押し出す力が弱いので角度をつけたんです」
ニコラス先生が魔力を流してスイッチを入れると、他の扇風機より強い風が起こった。
「なるほど角度をつけることで、羽の回転も早くなるんですね、ならカバーがあった方がいいですね」
ニコラス先生は羽を見て何かぶつぶつ言っている。
「お兄様、こちらはお兄様に差し上げますわ、遠征の時に使えませんか?」
「ああ、テントとで寝る時に暑いときがあるから助かる。今使っているものより音も小さいみたいだし」
「あ、そうするとお父様が拗ねてしまうかもしれません。ニコラス先生、これを作らず退席した生徒がいますので、余っているキットを購入させて頂いてもいいでしょうか?」
「ああ、好きなだけ持っていってくれて構わない。だがこれは私に頂けないだろうか?」
「それでいいですか?網の部分も焦っていたので適当ですし」
「いや、これが良いんだ。ありがとう」
私はお兄様に扇風機キットを持ってもらい、また控え室に戻った。
次はポーションのテストだ。
アリスターはAlistairなので初めの2文字をとってアルと呼ばれる事があります。
ニコラス先生は魔道具オタクなので、集中すると周りが見えなくなるタイプです。




