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価値ゼロと判定された俺が、誰もやらない仕事で世界を裏側から変えていく話  作者: 空城ライド


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第9話 選別

 選別は、突然始まる。


 予告はない。

 理由も、説明もない。


 ただ、ある朝、無階位が集められ、

 番号を呼ばれる。


 それだけだ。


「無階位、整列」


 号令がかかり、俺たちは壁際に並ばされた。

 昨日まで一緒に作業していた顔が、いくつもある。


 そして、

 今日の夕方には、いくつかが消える。


 兵士の一人が、紙を手に前へ出る。


「本日、再整理を行う」


 淡々とした声。


「対象は――

 生産効率が低い者、

 規律違反の恐れがある者、

 記録上“異常値”を示した者」


 最後の言葉で、胸の奥が微かに反応した。


 異常値。


 俺は、顔を伏せたまま動かない。


 番号が、順に呼ばれていく。


 一人。

 二人。

 三人。


 呼ばれるたびに、列が崩れる。

 連れて行かれる方向は、実験棟側だ。


 戻ってくる道じゃない。


「……次」


 紙をめくる音。


「――無階位、

 番号・四七二」


 俺の番号だった。


 一瞬、周囲の音が消えた。


 ――来た。


 覚悟はしていた。

 それでも、体は一瞬だけ硬くなる。


 前へ出る。


 兵士の視線が、俺を値踏みする。


「理由は?」


 誰かが、小さく呟いた。


 理由など、意味はない。


「最近、死なない無階位がいる」


 別の兵士が言う。


「危険作業に回しても、戻ってくる」


「使い勝手がいい、というより……」


 言葉が、途中で止まる。


「気味が悪い」


 それで、十分だった。


 俺は、連れて行かれそうになる。


 そのとき。


「待て」


 低い声が、割り込んだ。


 ガルドだ。


 兵士の列の後ろから、前に出てくる。


「そいつは、まだ使える」


 兵士が眉をひそめる。


「使える?」


「第四処理路、

 第七崩落区画、

 毒素残留区域」


 ガルドは、淡々と続ける。


「全部、予定より早く終わらせてる」


 事実だ。


 だが、それを口にすれば、

 別の“使い道”が生まれる。


 俺は、理解する。


 これは――

 助けじゃない。


 延命だ。


「記録は?」


 研究員が尋ねる。


「異常値は出てない」


 ガルドは、視線を逸らさず答える。


 嘘だ。

 だが、記録上は――そうなっている。


 しばらくの沈黙。


「……いいだろう」


 兵士が言う。


「今回は見送る」


 俺は、列に戻される。


 呼吸が、少し遅れて戻ってくる。


 選別は、続く。


 俺以外の何人かが、連れて行かれた。


 その中に、

 昨日、助けた無階位はいなかった。


 ――生き延びた。


 だが、安心はできない。


 ガルドが、作業の合間に近づいてくる。


「いいか」


 声を低くする。


「次は、俺も止められん」


 俺は、黙って聞く。


「異常は、必ず嗅ぎつけられる」


 視線が、遠くの実験棟へ向く。


「ここにいる限り、

 お前は“材料”だ」


 その言葉は、重かった。


 俺は、初めてはっきりと理解する。


 ここでは、

 生き延びることすら、選ばれ続けなければならない。


 そして、

 選ばれる理由は――

 必ず、歪む。


 夕方、作業が終わる。


 空は見えない。

 だが、時間だけは進む。


 俺は、壁にもたれながら考える。


 逃げるか。

 潜るか。


 どちらにしても、

 この場所に留まる選択肢は、もうない。


 価値がないと言われ続ける場所で、

 異常として切り捨てられる前に。


 ――動くしかない。


 その決意だけが、

 胸の奥で、静かに固まっていった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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