表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
価値ゼロと判定された俺が、誰もやらない仕事で世界を裏側から変えていく話  作者: 空城ライド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/21

第17話 噂

 噂は、いつも正確じゃない。


 だが、

 完全な嘘にもならない。


 仮置き区域で、事故が起きなくなった。


 それが最初の噂だった。


 最初は、偶然だと笑われた。

 次に、運が良かっただけだと言われた。


 だが、それが続くと――

 言い訳は、減っていく。


「最近、あそこ静かじゃないか」


 第二層の兵士が、休憩中にそう言った。


「前は、月に一度は警報が鳴ってた」


「……確かに」


 別の兵士が、腕を組む。


「実験棟より、

 仮置き区域の方が安定してるって、

 どういう冗談だ」


 笑いは、起きなかった。


 笑えないからだ。


 その日の午後、

 エルナは珍しく、仕事を回してこなかった。


 代わりに、

 端末を閉じたまま、

 俺の前に立つ。


「……隠しきれなくなりました」


 声は低い。


「何が」


「あなたの関わった案件です」


 彼女は、端末を開かない。

 見せられないからだ。


「事故率、四割減」

「復旧速度、平均の二倍」

「被害件数、ほぼゼロ」


 淡々と、数字だけを並べる。


「仮置き区域“だけ”です」


 その言葉に、

 空気が少し重くなる。


「正式記録には残っていません」


「でも……

 “違和感”は残ります」


 違和感。

 それは、組織が最も嫌うものだ。


「上層研究部が、

 調査を始めました」


 胸の奥が、静かに鳴る。


「理由は?」


「“原因不明の安定化”」


 エルナは、目を伏せる。


「つまり……

 誰かが、何かをしている」


 俺は、黙って聞く。


「仮置き区域は、

 捨て場所のはずでした」


「それが、

 一番壊れない場所になっている」


 彼女は、そこで言葉を切った。


「……名前が、出始めています」


「俺の?」


「いいえ」


 少し間を置いて。


「“名前のない誰か”です」


 それは、最悪で、

 同時に、最善だった。


 名指しされていない。

 だが、無視もできない。


「レイ」


 エルナは、はっきりと呼ぶ。


「次に来るのは、

 “仕事”じゃありません」


「……評価です」


 俺は、少しだけ考える。


 評価されるということは、

 管理されるということだ。


 管理されるということは、

 価値を、決められるということだ。


「逃げるか」


 俺は言う。


 エルナは、首を振った。


「もう、遅いです」


 その言葉は、

 慰めではなかった。


「逃げたら、

 “異常”として確定します」


「残れば?」


「“資源”になります」


 どちらも、

 良い未来じゃない。


 だが、

 選ばされる未来ではある。


 その日の夜、

 仮置き区域の外が騒がしかった。


 見慣れない研究員。

 増えた警備。


 そして――

 誰も、俺に話しかけない。


 呼べない。

 触れない。


 公式記録に、

 俺は存在していないからだ。


 だが、

 存在していないはずのものが、

 結果だけを残している。


 それは、

 組織にとって、

 最も不気味な存在だった。


 エルナは、最後に一言だけ言った。


「近いうちに、

 あなたは“選ばれます”」


 俺は、空を見上げる。


 今日も、

 仮置き区域から空は見えない。


 だが、分かる。


 この噂は、

 もう止まらない。


 価値がないとされた行動が、

 静かに、

 世界の判断基準を叩き始めている。


 ――次に呼ばれるとき、

 俺は、

 “無視できない存在”として、

 そこに立つことになる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ