見取り屋さん久遠の苦悩 ー 見えない者と、視える者 ー
死にたくない 死にたくない 死にたくない...
当たり前だ。平均寿命が100歳近いこの頃で、齢17の俺が死んでいい訳がない。嫌だ いやだ..
心の中でそんなことを延々と唱えて、必死に意識を繋ぎとめようとしたのも虚しく、俺という存在が次第に薄れていく。そんな感覚だけを感じ取った。
ーーー数時間前へと遡るーーー
俺の名前は柊久遠。言っても反応されずらい、少し変わった趣味を持つがそれ以外は至って普通の男子高校生。昨日と同じ今日を繰り返し、無意味に青春を謳歌する。...このままで本当に良いのだろうか?
俺の少し変わった趣味とは一体何だろうか。それは、不気味な物を集めて周る、「怪異の収集家」とでも表そうか。廃墟や川、墓地だったりなど、いわゆる出そうな場所を撮影してみたり、そんな場所で見つける奇妙な物を拾って持ち帰ってみたり。
でも別に俺は霊感があったり、怪異を見る力なんて大それた力は無く、ただただ自分のコレクションを増やして満足している一般人だ。変わってると思うか?俺もそう思う。
今日のバイトが終わったら、何処へ行こうか。海でも良いし川でも良いし、山でもいい。
俺の深夜徘徊先を思案していると、先生からの、ありがたい話が飛んできた。
先生「じゃあ柊、ここの問題の答えを黒板に書いてくれ」
俺 「すみません、先生、難しくて分からないです」
突拍子も無く質問するのだけはやめて欲しい。結構心臓に悪いのだ。
先生「そんなんじゃ社会に出ても通じないぞ?大体な、授業の前にいくらでも教科書を予習する時間くらい有っただろう?俺の若い頃なんてな....... 」
10分くらい話してただろ。と思いながら時計を見ると、3分くらいしか経っていなかった。途中から相槌だけに集中し、くだらない説教の内容は、脳のストレージから絶えずパージしていった。
先生「分かったか?次からは先生を困らせないでくれよな」
俺 「ありがとうございました。以後、気を付けます」
つまらない授業が終わり、気づけば学校は下校時間を迎えていた。俺は学校の近くに停めていた原付にまたがり、いつものバイト先へ直行した。今日も今日とて鬱陶しい時給のお相手をし、3時間きっちりと働いた。
さあ、行こうか
結局、俺は廃墟へ行くことにした。理由なんてない。ただ、そこへ行かなくてはならないと思った。それだけだ。
原付を飛ばして30分。現地へと俺は到着した。
ここは中々雰囲気があるな。。と、内心では来たことを後悔していたのかもしれない。普段から不気味な場所を探検している俺でも、恐怖の感情は勿論ある。ただ、何かを見つけたり、雰囲気のある写真を撮れた時の達成感が、俺の生活の質を満たしてくれる。
ただ、今回は、何かが違う...
なんてことはない。普通の廃墟。いや、廃アパートと言ったところか。懐中電灯で照らしてみると、窓は割れ、ツタは伸び放題。よく公園などで幼子がまたがる変な動物の乗り物が不法投棄されていて、色褪せた外壁にはかなりの年季を感じる。
これだけなら普通の廃墟なのだが、今日はなんだか空気が重い。雨なんて降ってないのにすごくジメジメする感じというか、やけに生暖かい風が、俺の体を撫でるというか。
まあ夜だしな。足元も悪いし、今日のところは帰ってやろう。危ないしね。
なにも散策しないで帰るなんてことは、今の今まで無かったことだが、仕方がない。人間の直観を侮ってはいけない。俺は何かを見落としているのかもしれないし、何かを感じ取ったのかもしれない。
来て早々の廃墟を回れ右し、俺はそそくさと原付のエンジンを掛け、帰路についた。
なんだったんだろうな。あの感覚は。
15分もすれば見知った国道へ合流し、俺の中の恐怖は少しづつ、薄れていった。今度は明るい時間に行ってみよう。それなら多少はマシだろう。
法定速度を無視しながら、風を肌で直に感じていた俺は気分が良くなり、大きな声で歌おうとした。
俺「♪~~......!?!?!?
...俺の美声を轟かせようとした瞬間だった。
車のブレーキの音。
眼を串刺すような鋭い光。
時間が1/100にでもなった様な感覚。
刹那の時間で俺は走馬灯を見た。なんてことの無い、俺の人生の断片を。
原付に乗っていた俺は、何故だか車に撥ねられ、硬いアスファルトの上に体を預けていた。
死にたくない 死にたくない 死にたくない...
目が覚めた。
ここはどこだろうか?清潔なベットに、白い壁。十中八九、病院であろう。
俺「生きてた。。のか。。」
母「久遠?起きたの!?今すぐ先生呼んでくるから!じっとしててね!」
母さん、病院にはナースコールなるものがあってだな。。と言おうとしたが母の姿はもう見えなくなっていた。放任主義な俺の親だが、俺の事を気にかけて付きっきりで看病してくれていたと、頭が上がらない。ふとベットの横の小さな机に置かれたデジタル時計を見た。物語の中の話なら数年は経っていてもおかしく無いが、ここは現実。日をまたいだ朝の5時頃。事故ったのが昨日の21時ぐらいだったとして、8時間くらい意識が無かった計算か。にしても不思議だ。交通事故の後だと言うのに、不気味な程体が軽い。
ふと、気づいたことがある。俺の視界の端に何かが立っていた。
!?!?!?!!!
驚いた。本当に驚いた。心臓がひっくり返ったかと思った。
何かをよく観察してみると、それは形を保ってはいなかった。
影のような、煙のような、霧のような。
形容し難い何かは、揺れながらも人の形に近いことを発見した。
頭、胴、足
不気味に揺蕩う何かは、今すぐこちらに危害を加える様子は見られない。
眼を閉じても消えない。
消えろと念じてもそいつは姿を現し続ける。
「...ああ」
その瞬間に理解してしまった
ーー俺は視えるようになってしまったのだ
深淵を覗くとき、深淵もまた此方を覗いているのだ 言いえて妙だ。現に、部屋の端に立つ何かの、顔の様な物は、こちらを凝視している気がする。
今まで遊び半分で怪異を集めていた俺はここに来て、後悔していた。
だがもう遅い。何もかもが。
ガラガラ
扉の開く音が聞こえた。
とりあえず、モチベが無くなるまでは書き続けます




