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呪われ剣士と、浮いてる神官  作者: porori
破邪の直剣編
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ex2 擬態する直剣

「やっぱ死んでたみたいです〜〜〜〜〜っ!!」

「ちっ」


 僻村から半日かかる峡谷。


「ふん。やっぱり。また空振りじゃない」

「えぇ〜〜? まあいいじゃないですかぁ! ラクできたんですし……儲けものですよぉ」


 白鼬オコジョの獣人族の剣士――ロアが剣の鞘で、峡谷に作られた塚をつつく。

 もう一人、神官のクォンがきょろきょろと辺りを見回しながら調査を始める。


「今だけラクしたって意味ないでしょ」

「まあそのぉ……確かにぃ。“アルゴンの直剣”らしいものは影も形もないですけどぉ……」

「もうちょっと調べて」


 村人からの話で、獣人族の剣士と神官の二人組がヒグマと思われていた魔物を討伐したことは聞いていた。

 こうして検分には来たものの、塚以外は特に何も見つからない。


「直剣の魔法具みたいなものの痕跡は特に無いですけどねぇ?」

「本当に? もっとよく探しなさい」

「うーーん……」


 きょろきょろしながらクォンが歩き回る。魔法や奇跡の痕跡を探知する奇跡が使われているようで、手に持っている大ぶりの杖が光っていた。眼鏡も光を反射して少し間抜けだ。


「あ、塚の石。共通語と古代文字で何か書いてありますね。えー、『剣士マノリアが討伐す。』 あ、隠し文字もある。おしゃれ〜。えーっと、『愛らしき狼耳の』……。はぇ? なんでこれ隠した?」


 後半のクォンの独り言には反応せず、ロアが簡潔に言う。

「マノリア、聞いた名前ね」

「へ? そうなんですか? お知り合い?」

「まぁね」


「……」

「……何よ」

「……あにょ」

「ふん」


「何よとかふんじゃなくてぇ! 教えてくださいよ! 誰なんデスかあこのマノさんって! どういうお知り合いなんですかぁ」

「ちっ……。歩きながら説明するわ」


「ロアちゃんの説明って二言くらいで終わるんだから今言ってくれても」

「うるさい」

「はい……。ぎゃあ!?」

「そこ滑るわよ」

「先に言ってくださいよお!」


 転んだクォンをロアが一応は助け起こす。

 鼻先に泥をつけながらクォンは起き上がり、山歩きの不平不満を一通り述べた。


「私は可愛い可愛い神官なんですよぉ! きつい、くるしい、きたない仕事はまっぴらです!」

「きたないのは拭けばとれるわよ」

「私はロアちゃんみたいに野性的じゃないんですぅ。あ……でも……、拭けばまたきれいになる……つまり私が可愛いってことですよね? 多少汚れていても素の輝きは隠せないっていうかあ」

「はいはい、そうね」

「でぃへへ……。えぇ〜〜? 照れますねぇ」


 ロアが歩き出す。……直前に少し思案して、歩きやすい道を選んで先導し始めた。


 二人は冒険者ギルドと太陽神の神殿からの依頼で“アルゴンの直剣”と呼ばれる魔法のアイテムを探していた。司祭アゴタの疑惑と調査はその途上で浮上したものだ。


 アゴタも呪いの剣を持ってはいたが、探していたアルゴンの直剣ではなかった。次に耳にしたのが、僻村のそばの山奥の魔物が偶然保持したのではないかという噂だった。


「いい加減な情報ばかりね。だいたい倒されたら痕跡も消えるような弱い魔物が魔法の長剣を持ってるわけないじゃない」

「ですよねぇ! ほんっとに! ギルドなんていい加減なんですからぁ!」

「神殿もでしょ」

「違うし……。神様は間違ってないし……」


 数時間は獣道を歩いた後に、やっと人が作った山道が見え始める。

 すると同時に炭焼小屋も見えてきた。


「猟師のかしら。ちょうどいい、休ませてもらうわ」

「ハァ、ハァ……、やっと休憩……。ひぃ〜〜〜」

「夕方までには村に着きたいところね」

「も、もう今日はここに泊まっていきましょうよぉ〜〜」


 クォンの声を聞きつけたのかそれとも偶然か、猟師らしき男が道を上ってくる。

 二人は猟師と軽く挨拶を交わし、軒を借りる礼を述べた。


「ところでお話ついでなんですけど。最近この辺で魔法がかかってそうな長剣って見なかったですか?」


 長剣、と猟師の男が不思議そうな顔をする。


「片手で扱える感じで、鞘が白銀らしいんですけどねぇ。全体的に繊細華美みたいな」

 猟師は何かを案じるように眉をひそめる。


 するとロアは急に立ち上がって、猟師の胸ぐらを掴んだ。

「何か知ってるわね。全部吐きなさい」

「――え!? えっ、ちょっ、ロアちゃあん!!」


 クォンの仲裁もあって、猟師からは穏便にすべてを聞き出すことができた。


 曰く――およそ一ヶ月ほど前に、長剣ではないが、短剣なら拾った。鞘は白銀ではなく錆色だった。売ることも考えていたが恐ろしくなって、つい先日、黒髪の獣人族の剣士と風と旅の神の神官に渡したという。


「嘘じゃないでしょうね」

「ろ、ロアちゃん! 落ち着いてくださいっ。嘘じゃないですよぉ! ほ、ほら、長剣だし鞘の色も違うし……。猟師さんも怪訝に思っただけですって!」


「ふん」

 ロアが胸ぐらを掴んでいた手を緩める。

「悪かったわね」


 猟師の男は気まずそうに、だが迷惑そうにもしつつ炭焼小屋から離れていく。


「もう〜〜、ロアちゃんはすぐコレなんだから。もっと穏やかにいきましょうよぉ。へへ、へへへ……」

「うるさい」

 クォンの半笑いを見ずにロアは視線を伏せた。さすがにやりすぎたと思ったのかもしれない。


「そうじゃないと出てくる情報も出てこなくなりますから」

「そうね。クォンが止めてくれて助かったわ。ありがとう」

「ね、ね、ね。私って役に立ちますよね? ね?」


 ロアがため息をつき、立ち上がる。

 休憩は終わりという合図だろう。


「あの、それでですね。役に立つ私が今思い出したんですよ」

「は? 何よ」


「“アルゴンの長剣”って、不活性化してるときは短剣の姿になるって聞いた気がします」


 立ち上がったロアが一瞬棒立ちになる。

 それからゆっくり振り返る。


「それを早く――ッ」

「わあああごめんなさいごめんなさい忘れてたんですぅうううう!!」


 肩を怒らせたロアが細く長い息を吐いた。

 傍らの太薪を取り、空中に投げてからファルシオンで一刀両断して薪を増やす。

 三度ほど繰り返すと落ち着いたようだった。

 

「ふん……」

 両手剣を鞘に納め、まっすぐにクォンを見る。


「マノリアを追うわよ」

「ふぁい……」

「村人の誰かが向かった方向くらい知ってるでしょ」


 まっすぐに歩き出すロアを追いかけながらクォンはぼそぼそと言った。


「あの……それはいいんですけど……。マノさんって誰なんですかぁ……?」


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