表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/134

第86話 EP10-12 懐かしい場所

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 このくに数年前すうねんまえまで、王国おうこく統治下とうちか安寧あんねい平和へいわ享受きょうじゅしていた。

 帝国ていこくぐん侵攻しんこうで、それはもろくもくずった。

 帝国は魔王まおう復活ふっかつさせ、魔王配下(はいか)魔物まものの力をり、圧倒的あっとうてきつよさで王国を征服せいふくした。国には魔物があふれ、秩序ちつじょうしなわれてしまった。

 魔物が見境みさかいなく人間にんげんおそい、人間はとりでみたいな町をつくってを守る、無法むほう世界せかいがここにはある。


   ◇


 オレはリード、十六(さい)の男で、茶色ちゃいろかみ魔物まものハンターだ。武器ぶき長剣ロングソード鉄板てっぱん補強ほきょうした灰色はいいろ革鎧かわよろい装備そうびし、あかいマントをまとう。

 とうとう、幼馴染おさななじみとむらみんなかたき帝国ていこく将軍しょうぐんシュッツがおさめるきた大砦おおとりで辿たどいた。エレノアとレジスタンスのおかげだ。

「エレノア将軍しょうぐんもなく、わたくし別荘べっそうきます」

 女騎士(きし)ジュディスの案内あんないで、よるの林をあるく。

 ジュディスは、たかく、薄紫色うすむらさきいろのサラサラストレートロングヘアで、すずしげな大人おとな美人びじんである。かつてのエレノア将軍しょうぐん腹心ふくしん部下ぶかで、黒鋼こくこう帝国ていこくよろいまと現役げんえき帝国ていこく騎士きしである。

「しかし、エレノア将軍しょうぐんに、そのように立派りっぱ御子息ごしそくがいらっしゃるとは、ぞんじあげませんでした」

おとうとよ」

弟子でしな」

 エレノアの渾身こんしんのボケに、素早すばや正確せいかくなツッコミをれた。

 エレノアは、三十(さい)手前てまえの女で、あか短髪たんぱつで、ハスキーボイスで、灰色はいいろのコートを魔物まものハンターである。オレの師匠ししょうで、かつては帝国ていこく将軍しょうぐんだった戦闘狂せんとうきょうである。

 大砦おおとりでかこたかかべ内側うちがわまち郊外こうがいにある林をあるく。よるくらさで見えないが、建物たてものはほとんどなくて、かわや林や田畑たはたひろがる。建物がないからかりがなくて暗い、ともいえる。

 人通ひとどおりもない。オレと、エレノアと、ジュディスの三人しかいない。

 ジラルドとハルシアとレジスタンスの面々(めんめん)は、別行動べつこうどうだ。やく百人の潜伏せんぷく場所ばしょ確保かくほし、シュッツをつための準備じゅんびをするらしい。

「それで、ジュディス殿どのわたし協力きょうりょくしてくれるものはいそうか?」

すべてをてるとなりますと、わたくしふくめて五人ほどかと」

最悪さいあくいえつぶしになるぞ? 貴殿きでんのような浅慮せんりょが五人もいるとは、あきれるわ。それでもいいなら、いま職務しょくむつづけながら、シュッツのスパイと、潜入せんにゅう手引てびきをしてほしい」

心得こころえました。協力者きょうりょくしゃ心当こころあたりも、わたくしまとめておきましょう」

 ジュディスの返答へんとうに、エレノアが満足まんぞくげにうなずく。唐突とうとつあしをとめ、周囲しゅういを見まわす。くらい林にひと気配けはいがないと、再確認さいかくにんしている。

ほか大砦おおとりでに、協力きょうりょくしてくれそうなもと隊員たいいんがいるかかる?」

「ここに配属はいぞくされるまえ情報じょうほうでよろしければ、分かります。コルトル将軍しょうぐんしたにはノルトリア殿どの、ボネット将軍の下にはキャスアリン殿どのです。ハーシャ将軍の下には、コンキッタ殿どのとラーズモーレ殿どのに、無理むりたのんでのこっていただきました」

家柄いえがらだけのノルトリア殿どのと、本好ほんず眼鏡めがねのキャスアリン殿どのか。不安ふあんしかない人選じんせんだが、はらえられないか」

 エレノアがしぶかおをした。

「ハーシャのたいのこったのは、そうか、コング令嬢れいじょう殿どの御嬢様おじょうさま騎士きし殿どのなのだな。ハハッ。適任てきにんながら、気位きぐらいばかりたかまま放題ほうだいのハーシャの太鼓持たいこもちとは、同情どうじょうする」

 今度こんどは、すようにわらった。こんなに感情かんじょうゆたかに表情ひょうじょうえるエレノアは、はじめて見たかもれない。

 オレが物珍ものめずらしげにエレノアの横顔よこがおを見ていると、唐突とうとつにこちらにく。

「コンキッタ殿どのは、貴族きぞく御令嬢ごれいじょうながら親衛隊しんえいたい随一ずいいち怪力かいりきほこ筋肉女ムキムキマッチョで、コング令嬢れいじょうばれていた。ラーズモーレ殿どのぎゃくに、代々(だいだい)帝国ていこくつかえる由緒正ゆいしょただしい士族しぞく騎士きし御息女ごそくじょなのに、大切たいせつそだてられすぎてナイフすらまともにあつかえないのだ」

「あ、うん。そうなんだ」

 そんな情報じょうほうきゅうられても反応リアクションこまる。それがりたくて見ていたわけではない。

「二人とも人当ひとあたりがくて、不仲ふなか相手あいて勢力せいりょくとも上手うまっていた。任務にんむさいには、たがいのはしとなってもらってもいた。あの二人以上(いじょう)適任者てきにんしゃはいないだろう」

 エレノアが、われながら納得なっとくとばかりに幾度いくどうなずく。一頻ひとしきり頷くと、満足顔まんぞくがおあるす。

「さぁ、こう。ジュディス殿どの案内あんないたのむ」

「はい。もなくきます。林のおとこえる、しずかでける場所ばしょです」

 すずやかな微笑びしょうで、ジュディスもあるす。オレは、歓談かんだんつづける二人のあといていく。

 しばらくあるいて、くらい林のなかに、建物たてものまどかりが見えてきた。オレは、フゥと安堵あんどいきをはいた。

 ここは大砦おおとりでかべ内側うちがわで、外側そとがわちがって魔物まもの危険きけん地帯ちたいではない。それでも、寝泊ねとまりできるいえが見えて、やっと今日きょう一日いちにち緊張感きんちょうかんから解放かいほうされた。やっと、本当ほんとう安心あんしんできていた。


   ◇


 くらい林の足元あしもとを、まどかりが煌々(こうこう)らす。木造もくぞう小規模しょうきぼ宿屋やどやみたいな、しろくオシャレな外観がいかん建物たてものである。

 正面しょうめん玄関げんかん両開りょうびらきのとびらおおきくひらかれ、玄関ホールのひかり背中せなかけてたたずむ、だれかのシルエットが三人をむかえた。

「おかえりなさいませ、ジュディス御嬢様おじょうさま御夕食ごゆうしょく用意よういととのってございます」

 メイドふくた、ヨボヨボでシワシワの老婆ろうばだった。小柄こがらで、まるっこい体型たいけいで、背中せなかがっていた。

「ありがとう、ばあや。こちらの二人は、わたくし客人きゃくじんだ」

 ジュディスにすずやかに紹介しょうかいされて、オレは老婆ろうばメイドにあたまをさげる。

「あ、えっと、魔物まものハンターのリードだ」

「おっ、おまえはぁっ! ヌーベルグ不良娘ふりょうむすめぇっ!」

 老婆ろうばメイドが、シワシワのかおにしていかって、卒倒そっとうしそうに興奮こうふんして、エレノアに金切かなきごえをあげた。

「なんと! まだきていたか、ばあや! 相変あいかわらずヨボヨボでシワシワだな!」

 エレノアが、心底しんそこうれしそうなハスキーボイスで、老婆ろうばメイドの両肩りょうかたに手をいた。

 老婆メイドは、歴戦れきせん戦士せんしもかくや、の高速こうそくでエレノアの手をはらける。にらみつけ、いかりにあらぶる。

「おまえなんぞのばあやになったおぼえはないわぁっ! 悪運あくうんつよいお前がんだとはおもっとらんかったが、……いないないな!、ジュディス御嬢様おじょうさまちかづくなと、何度なんどえばかるかぁ! 御嬢様に不良ふりょう伝染うつしたら、ただではまさんぞぉ!」

 すごい。いまにも包丁ほうちょう片手かたておそいかかりそうな雰囲気アトモスフィアだ。

「まぁまぁ、ばあや、今日きょう勘弁かんべんしてあげてくれ。遠路えんろはるばるたずねてきてくださったのだから、こころよりさねば家名かめいどろることにもなろう」

 ジュディスが、すずやかな微笑びしょう仲裁ちゅうさいはいった。手慣てなれていた。

「ぐぎぎぎ……。御嬢様おじょうさまがそうおっしゃいますならば、今回こんかい我慢がまんいたしましょう。さきに、御部屋おへや御案内ごあんないいたします」

 老婆ろうばメイドが、いかりをおさえる歯噛はがみをらしながら、会釈えしゃくする。ヨボヨボのシワシワながら、上品じょうひん丁寧ていねい上流じょうりゅう階級かいきゅうつかえるメイドぜんとしている。

「あ、よ、よろしく」

 オレだけ緊張きんちょうして、恐縮きょうしゅくしながらあたまをさげた。

「ハハハ。あまり血圧けつあつをあげると、老朽化ろうきゅうかした血管けっかんがプチッといってしまうぞ」

「エレノア将軍しょうぐんばあやは、むかしからずっと犬猿けんえんなかですね」

 エレノアとジュディスが、談笑だんしょうする。ゆるせるともとの再会さいかいよろこう。

 このにはきっと、エレノアのなつかしいおもがある。過去かこの、大切たいせつ時間じかんがある。



帝国ていこく征服せいふくされて魔物まもの蔓延はびこくにで女だてらに魔物ハンターやってます

第86話 EP10-12 なつかしい場所ばしょ/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ