表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/134

第80話 EP10-6 師匠と弟子

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 このくに数年前すうねんまえまで、王国おうこく統治下とうちか安寧あんねい平和へいわ享受きょうじゅしていた。

 帝国ていこくぐん侵攻しんこうで、それはもろくもくずった。

 帝国は魔王まおう復活ふっかつさせ、魔王配下(はいか)魔物まものの力をり、圧倒的あっとうてきつよさで王国を征服せいふくした。国には魔物があふれ、秩序ちつじょうしなわれてしまった。

 魔物が見境みさかいなく人間にんげんおそい、人間はとりでみたいな町をつくってを守る、無法むほう世界せかいがここにはある。


   ◇


「この御二人おふたりは、そのみち専門家エキスパートだ。指揮しきしたがってくれ!」

 ジラルドが、ふるぼけた教会きょうかい裏手うらてへとこえをかけた。

心得こころえた! 団長だんちょう判断はんだんしんじよう!」

 ジラルドよりは年上としうえの、気難きむずかしそうな男の返答へんとうがあった。ジラルドの人望じんぼう実力じつりょくはかるには、十分じゅうぶんだ。

 リードが無言むごんうなずき、裏口うらぐちはずれかけの木のとびらからそとた。数名すうめい足音あしおとともない、はなれていくのがこえた。

 のこったエレノアは、帝国ていこく騎士きしズユギと、ズユギひきいる帝国ていこくへい対峙たいじする。

 エレノアは、三十(さい)手前てまえの女だ。あか短髪たんぱつで、ハスキーボイスで、灰色はいいろのコートを魔物まものハンターだ。かつては帝国ていこく将軍しょうぐんだった戦闘狂せんとうきょうだ。

 ズユギは、黒鋼こくこう金属鎧プレートメイルまと帝国ていこく騎士きしだ。ひくくて、ひたい禿げあがって、で、威厳いげんかんじさせない四十(さい)くらいのふとった男だ。

「エっ、エレノア将軍しょうぐん指揮しきといえども、たった二十人の部隊ぶたいだ! 百人でってくれる!」

 ズユギが、自身じしん鼓舞こぶするように、恐怖きょうふはらうように、せま教会きょうかい怒鳴どなった。

「このせまさなら、スピアシールド装備そうびした十人で、足止あしどめと時間稼じかんかせぎができるわ」

 エレノアは、講義こうぎでもする口調くちょうで、たのしげなハスキーボイスで、久々(ひさびさ)集団戦しゅうだんせん心躍こころおどるような微笑びしょう説明せつめいした。

 ズユギと帝国ていこくへいたちが、せま室内しつないを見まわす。わんとすることをさっして、エレノアにおびえた視線しせんあつめる。

 この建物内たてものないでは、よこまわむこともできない。おたがいに、せいぜい十人同士(どうし)よこならんで、正面しょうめんからぶつかるしかない。ぐちはさらにせまとびらで、負傷兵ふしょうへい後退こうたいも、そとからの補充ほじゅう追加ついかもままならない。

のこりの十人は、ゆみ装備そうび帝国ていこくぐん背面はいめん包囲ほうい攻撃こうげきね」

「ふ、ふんっ! そんなもの、そと待機たいきしてるへいで、殲滅せんめつしてやる! ついでに、教会きょうかい裏手うらてにも兵をまわして、はさちだ!」

 ズユギが、ほこった。恐怖きょうふめられた窮鼠きゅうその、必死ひっし抵抗ていこうだった。

 たいして、エレノアはククッとハスキーボイスでわらう。獲物えものを見つめるつめたい目で、えたけん鞘擦さやずれみたいな口調くちょうげる。

「そちらが陣形じんけいえる瞬間しゅんかんに、指揮官しきかんくびねらとすわ」

 気温きおんがさがったようにかんじた。全員ぜんいんが、エレノアのけんでズユギのくびちるところを想像そうぞうできた。必然的ひつぜんてき視線しせんあつまるズユギのかおは、蒼白そうはくだった。

即座そくざ指揮しきげる部下ぶかは、いる? 混乱こんらんして敗走はいそうしたら、この人数にんずうでも半数はんすう仕留しとめるわよ?」

 エレノアは、たのしげに微笑びしょうした。正真正銘しょうしんしょうめい集団戦しゅうだんせんうれしいのだ。ながいブランクをかえいた、あら戦場せんじょうたのしみなのだ。

 同行どうこうする帝国ていこくへいが、ズユギに進言しんげんする。

「ズユギ隊長たいちょう。やりましょう。隊長は、我々(われわれ)がおまもりします」

 しかし、ズユギはおびって、くびよこる。

「おまえらなんぞに、『将狩しょうが蜘蛛スパイダー』をめられるわけぇだろうが。おれは、小砦しょうとりで領主りょうしゅになって、これからなんだよぉ。まだ、にたくぇよぉ」

 くずれるように両膝りょうひざをついた。涙声なみだごえうずくまった。

 エレノアの口から、落胆らくたんいきれた。たたかわずして、エレノアの完勝かんしょうだ。

「まぁ、抵抗ていこうしなければ、無事ぶじかえしてあげるわ。辺境へんきょう左遷させんされた役立やくたたずをらしても、シュッツとくにしかならないし」

 ジラルドも帝国ていこくへいも、蒼褪あおざめてエレノアに注目ちゅうもくする。てき味方みかただに関係かんけいなく、畏怖いふする。

「ところで、わたしふたは、そんなのしかないの?」

 エレノアは、不満ふまんげに、微笑びしょう口元くちもとらせた。


   ◇


 オレはリード。十六(さい)の男で、茶色ちゃいろかみ魔物まものハンターだ。武器ぶき長剣ロングソード鉄板てっぱん補強ほきょうした灰色はいいろ革鎧かわよろい装備そうびし、あかいマントをまとう。

「きゃぁーっ?!」

 女の子の悲鳴ひめいひびいた。

 黒雲くろくもみたいなゴワゴワむくじゃらの大猿おおざるが、つちみちたおれた女の子におそいかかる。哭猿こくえんばれる、大人おとなの二(ばい)くらいある凶暴きょうぼう魔物まものである。女の子は、すそのところどころやぶれた麻布あさぬのふくて、かみはだよごれて、まずしい家庭かていおお壁近かべちかくではよくいる容姿ようしである。

せてろ!」

 オレは、こし長剣ロングソードいて、哭猿こくえんりかかった。

「ギィッ」

 哭猿こくえんが、みじかえて、後方こうほうへとんだ。

 長剣ロングソードけられて、くうった。

だれか、その子を避難ひなんさせてくれ。のこりは、オレと一緒いっしょに、この大猿おおざる退治たいじするぜ」

 長剣ロングソード両手りょうてにぎり、かおたかさにかまえる。大通おおどお一本いっぽんほどの距離きょりで、哭猿こくえんにらう。

 哭猿が、くろいゴワゴワのおおわれた背中せなかを見せて、した。かうさきは、粗末そまつ木板きいたいえがゴチャゴチャとなら区画くかくだ。

 魔物まものひとおそれない。だが、哭猿こくえん悪知恵わるぢえはたらく。武装ぶそうした人間にんげん十人よりもらくれる獲物えものさがだろう。

いそいでうぜ。ぐの追いけっこじゃあ追いつけないから、地形ちけいで追いみたい。できれば袋小路ふくろこうじがいいんだけど、心当こころあたりはあるかい?」

 はししながら、同行どうこうする自警団じけいだんいん意見いけんもとめる。長槍ロングスピア軽装けいそう金板鎧ラメラーアーマー武装ぶそうした男女だんじょである。

小砦しょうとりで建設けんせつ物見櫓ものみやぐらがあります。あのあたりは、防衛線ぼうえいせんとして使つかわれていた石垣いしがき半壊はんかいして、袋小路ふくろこうじおおい。いま放棄地ほうきちだから民家みんかもない」

 よろいをガチャガチャとらしながら並走へいそうして、ジラルドよりはわかい、しっかりものつよそうな女がこたえた。自警団じけいだん副団長ふくだんちょうといったかんじだ。

「そこなら、オレも見たことあるな。よし、みはアンタにまかせる。あの大猿おおざるは、人間にんげん相手あいておな感覚かんかくでいい魔物ヤツだから」

了解りょうかいしました。デック、ミカリ、ジュンゴ、三人で右から先回さきまわりして。無理むりはしないでね」

 女の指示しじに、三人がみちを右の分岐ぶんきへとわかれる。

のこりは、魔物まものみちなりにう。このあたりは道がせまんでるから、追いつくのはむずかしくない。ただし、不測ふそく事態じたいつね想定そうていしてうごけ」

了解りょうかい!』

 追従ついじゅうする自警団じけいだんいんが、こえわせてこたえた。辺境へんきょうちいさな小砦しょうとりでの自警団員にしては練度れんどたかすぎると、田舎者いなかもの魔物まものハンターのオレでも一目瞭然いちもくりょうぜんだった。


   ◇


 哭猿こくえんを、石垣いしがきかこまれた袋小路ふくろこうじめた。足元あしもとは、湿しめったつちくさえる草地くさちだ。

 石垣のたかさは、大人おとな十人(ぶん)ほどある。くずれてひく箇所かしょも、六人(ぶん)はある。

 哭猿こくえん石垣いしがきにして、長槍ロングスピア先端せんたんける自警団じけいだん九人にえる。

「ヴギィィィ!」

 たかにぶ耳障みみざわりな威嚇いかくだった。小心者しょうしんものでは、けて一目散いちもくさんすだろう。

等間隔とうかんかくたもって鶴翼かくよく! 足並あしなみをそろえて距離きょりめる! 突出とっしゅつしないようにをつけて!」 

 だが、自警団じけいだんいん勇敢ゆうかんである。副団長ふくだんちょう指揮しきで、長槍ロングスピアかまえた九人が哭猿こくえんせまる。あと数歩すうほすすめば、穂先ほさきとどく。

「ギィッ!」

 哭猿こくえんが、きゅう自警団じけいだんいんびかかった。くろむくじゃらのながうでばし、おおきな手のとがったつめで、団員だんいんの一人をいた。

「うわっ?!」

 かれた青年せいねんが、動揺どうよう悲鳴ひめいをあげた。つめかた板金いたがねたって、背中せなかから地面じめんたおれた。

負傷者ふしょうしゃをカバー! 冷静れいせい対処たいしょして! 一斉いっせい攻撃こうげき!」

 たおれた青年せいねん以外いがい全員ぜんいんが、哭猿こくえんけて長槍ロングスピアす。

 哭猿こくえんは、即座そくざ後方こうほうへと退く。長槍はくうき、何本なんぼんかはって、カカンッとかわいたおとらす。

いそいで体勢たいせいなおして! 武器ぶきかまえて! つぎそなえて!」

 副団長ふくだんちょうが、あせって指示しじばした。この強さ(レベル)魔物まものには不慣ふなれだと、顔色かおいろていた。

 しかし、哭猿こくえん追撃ついげき強行突破きょうこうとっぱもしなかった。袋小路ふくろこうじへと退いてから、うでくらべてみじかあしかがんで、力をめた。

「ヴギギッ!」

 うえへとびあがって、くずれかけの石垣いしがきった。両手りょうて頭上ずじょうたたわせて、嘲笑あざわらった。この程度ていど簡単かんたんのぼれると、められたフリで揶揄からかっていただけだと、凶暴きょうぼう猿顔さるがお嘲笑あざわらっていた。

 副団長ふくだんちょうが、呆気あっけられて哭猿こくえんを見あげる。

 かくれていたリードが、たか石垣いしがきうえあらわれる。長剣ロングソード両手りょうて逆手さかてにぎり、頭上ずじょうりあげ、哭猿こくえん背中せなかへとむ。

 まった気付きづかれることなく、くろむくじゃらのむねを、背中せなかから長剣がつらぬく。哭猿がえて、つやのない黒い宝石ほうせきちる。

 哭猿こくえん一撃いちげき仕留しとめたリードは、石垣いしがき着地ちゃくちした。

「よし! 一番いちばんらくかたができたぜ。アンタらのおかげだ」

 長剣ロングソードこしさやおさめ、カチンとつからす。み、追いめ、みち用意よういし、逃げきったと油断ゆだんしたところを不意討ふいうつ、理想的りそうてきすじである。

「すっ、素晴すばらしい勝利しょうりです! お見事みごとでした、リード殿どの!」

 副団長ふくだんちょうほお紅潮こうちょうさせて、リードをたたえた。自警団じけいだんいん尊敬そんけい眼差まなざしが、リードにはれくさくも心地好ここちよかった。



帝国ていこく征服せいふくされて魔物まもの蔓延はびこくにで女だてらに魔物ハンターやってます

第80話 EP10-6 師匠エレノア弟子リード/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ